クソニート、TSするってよ   作:いたちしゃーく

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ラブしたい( ;∀;)アイテイナイ


クソニート、お友達が出来るってよ

「あなたね!みよりのブーコをたぶらかしてるのは!」

 

日課であるウォーキングの休憩中。

最近当たり前のようにご飯をねだりにきたブーコへ、これまたいつものようにオヤツをあげてると、塀の所に膨れっ面の女の子が顔を覗かせた。ブーコは一度女の子を見るけど直ぐに興味を失って、まるで何事も無かったかのようにオヤツをモシャモシャ齧る。絶対にブーコが関係あるんだから、もっと興味示して欲しい。

 

そんなブーコを見ると女の子は更に顔を不機嫌そうに歪ませた。

 

「ブーコ!みよりをむしするなんて、もう!あなた、そこでまってなさい!!ブーコもまつんだからね!!いい!?まつんだからね!!」

 

ビシッと突きつけられた指に頷くと、自分の事をみよりといった女の子は塀の向こうに消えて、元気な足音が足早に遠ざかっていった。

すると女の子の声を聞いたのか、お母さんが不思議そうに台所から顔を出す。

 

「今の声、もしかしてみよりちゃん?」

「・・・ん、た、ぶん?」

 

たしかに自分でそう言ってた。

僕自身みよりちゃんとは面識はないから断言は出来ないけど、お母さんから聞いてた通りツインーテールと大きい目が特徴的な女の子だった。

 

不意にチャイムが乱暴に鳴らされた。

僕とお母さんが玄関へいくと、玄関にある磨りガラスの向こうに小さな影が一つ見える。鍵を外してドアを開けると頬を膨らませた女の子が仁王立ちしていた。

 

「そこまでよ!!このどろぼうねこ!!みよりがきたからには、もうブーコをゆーわくなんてさせないんだから!!おっぱいおおきいからってっ・・・・・・うづきおばちゃん、こんにちわ」

「はい、こんにちわ。みよりちゃんは今日も元気ねぇ。今日は小学校お休みなのかしら?」

「きょうはそーりきねんびなので、がっこうはおやすみです」

 

僕に噛みつこうとしたみよりちゃんだったけど、お母さんの姿を見ると急にしおらしくなる。お辞儀する仕草を見てると違和感がないし、元々礼儀正しい子なのかも知れない。

 

「それで、今日はどうしたの?みよりちゃん。晶くんに何かご用かしら?」

「はい、このどろぼうね・・・・このひとが、みよりのブーコをたぶらかしたから、とりかえしにきました」

「あらあら、そうなの。ブーコちゃんのお迎えなのね。ブーコちゃん今はお庭にいると思うから、お迎えにいってあげてね」

「はい!しつれーします!」

 

ペコリと頭を下げるとみよりちゃんは僕を一睨みしてから庭の方へと駆けていった。お母さんはそれを楽しそうに見送ると、僕に意味ありげな笑みを向けてきた。

 

「ふふふ。最近ブーコの事気にしてるの思ってたけど、晶くんたぶらかしてたのねぇ」

「・・・・ちっ、ちが、うぅ」

 

たぶらかしてたなんかいない。

なんか勝手にくるだけだからね。

それはこの間の事は感謝はしてて、そのお礼にオヤツはあげてるけど・・・でもそれだけだし。別に撫でたりとかしないし。

 

少しするとみよりちゃんが重い足取りで戻ってきた。

けれどその手には何も持ってない。あの勢いから縄をつけてでもブーコを連れ帰るのかと思ってんだけど。

 

「あら、ブーコちゃんはどうしたの?」

「・・・・・いなかった」

「あらあら、それは残念だったわね。さっきまでいたのよ。ねぇ、晶くん?」

 

お母さんの言葉にみよりちゃんは俯く。

心なしかツインテールまでしょんぼりしてるような気がする。お母さんが心配して事情を聞いてたみると、みよりちゃんは少しずつ話始めた。

 

「このごろ、ブーコがうちにあんまりかえってこないの・・・・ママとパパはごはんのときにかえってくるから、だいじょーぶだっていうけど・・・でも、ブーコまえは、みよりといっしょにいてくれたの・・・」

「あらあら、そうなの・・・」

 

泣きそうな声でそう呟くみよりちゃんを見て、お母さんはしゃがみこんで小さな頭を撫でた。それから困ったような顔でこっちに振り返ってくる。

 

「晶くん、何か知らない?」

 

教えてあげたいのは山々だけど、残念な事に特別心当たりがない。でも、しいて言えば少し━━━。

 

「・・・・すこ、し、やせた、かも?」

 

僕がそう伝えると、みよりちゃんはボタボタ涙を溢して泣き始めてしまった。号泣という言葉がよく似合う程に。

 

「ブーコがっ、しんじゃうっ、やだああああ!!」

「大丈夫よ、みよりちゃん。ブーコちゃんはちょっとお出掛けしたいだけよ。ほら、ご飯になったら帰ってくるでしょう?」

「ひっぐっ、だっ、だって、りょうちゃんがっ、ぃっ、ひってだもん!ねこちゃんはっ、しんぢゃうとき、おでかけっ、いっぱいするって、りょうちゃんひってだもん!」

 

りょうちゃんという名前に首を傾げると、お母さんが「みよりちゃんのお兄さんよ」と補足してくれた。今良く分かったな、お母さん。たまにエスパーなんだから。

 

泣きじゃくるみよりちゃんとそれを宥めるお母さんを見てると、この間の神社を思い出した。あの場所にブーコがきたのも、僕を助ける形になったも偶然だと思ってた。だけど、もしかしたら僕を誘導してくれた事はともかくとしても、あの場所にブーコがいたのは理由があったのかも知れない。

 

僕はお母さんと同じようにしゃがみ込んで、みよりちゃんと目を合わせた。みよりちゃんの真っ赤な目が僕の目とあって、じっと見つめあう形になる。その視線に少し緊張したけど、自分よりずっと小さい子を怖がる訳にはいかないので心の中で気合いを入れて口を開いた。

 

「・・・あのね、もしか、したら、ブーコの、居場所、分かる・・・かもしれな、い」

 

なんとか絞り出した言葉にみよりちゃんは鼻水をすすりながら「ほんとに・・・?」と聞いてきた。

すがるような声に僕はゆっくり頷く。

 

「・・・僕は、この前ね、そこで、あったよ。今も、いるのか、は、分からない、けど・・・いっしょに、いってみ、る?」

「・・・・・ぅん、いくぅ」

 

返した言葉にみよりちゃんも頷いた。

話を聞いていたお母さんは目を丸くしてたけど、今度こそスマホを持っていくので何かあっても大丈夫だと伝えると、少し不安そうな顔をしながらも「遅くなるようなら連絡するのよ」と行く事を許してくれた。

 

僕は一旦みよりちゃんの相手をお母さんに任せ、着替える為に部屋に戻った。出かけるように用意しておいたパーカーとズボンに着替え、今度こそスマホをポケットに入れる。何かあるかも知れないから財布も。

 

何度か忘れ物がないかチェックしてから、ドアの近くに掛けてある帽子を被り部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのね、ブーコはね、みよりがみつけたの」

 

手を繋ぎながら神社に向かう途中、みよりちゃんはブーコの事を話してくれた。お兄ちゃんと遊んでる時に草むらにいるのを見つけたこと、お腹が空いてるように見えておやつをあげたこと、家に持ち帰ってパパやママに一杯怒られたこと。

 

「でもね、ブーコがね、かわいそうだからね、おねがいしたの。おなかすいちゃったら、みよりもんーーってなるから。そしたらね、パパがね、ちゃんとおせわするならかっていいよっていったの」

「・・・・そう、なん、だ」

「うん!だからね、ブーコのごはんあげるのは、みよりのおしごとなの!ブーコね、いっぱいたべるの!おみずも!でもみよりはおねーさんだから、ちゃんとよーいするんだよ。えへへ」

 

最初こそ睨まれたりしたけど、すっかり慣れたみたいでみよりちゃんは楽しそうに話してくれる。あの強い口調はブーコを取られたくない一心で口にしてただけで、こっちの方が素なんだろう。お母さんへの態度も礼儀正しかったし。

 

「・・・でもね、ブーコ、さいきんごはんたべると、すぐどっかいっちゃうの。まえはみよりといっしょにあそんでくれたのに・・・・・」

 

ブーコがいない事を思い出してみよりちゃんは笑顔を曇らせた。しょんぼりしてる姿を見てると何とかしてあげたくなるけど、どうすれば良いのか分からない。

取り敢えずまた目線を合わせてから、ゆっくり頭を撫でてみた。するとクリクリした大きな目が僕を見る。言葉が思いつかなかったので笑ってみせたんだけど、何故か笑われてしまう。何故。

 

「おねぇちゃん、へんなかおー!ふふふ!」

「そう、かな・・・・?」

「へんだよ!おねぇちゃん、へんなかおー!」

 

少しは元気が出たみたいで、クスクス笑う姿にさっきみた寂しそうな気配は感じない。少し複雑だけど、しょんぼりしてるよりはずっと良いと思うから余計な事は言わないでおいた。

 

それから少し手を繋ぎながら歩いて、僕達は神社に着いた。最初ここに来た時は何処にいるのか分からなくて大変だったけど、今は近くに家がある事をよく知ってるので何とも思わない。いや、少し胸がドキドキしてるけどさ。うん。

 

「いないねー」

 

みよりちゃんの声を聞いて僕も見渡す。

みよりちゃんの言うとおり、視界の中にブーコらしき姿はなかった。

 

「・・・・うん、いない、ね」

「おねぇちゃん、どこでみたの?」

「えっ・・・・と、たし、か」

 

境内の中を歩きながら探すと、直ぐ僕が以前蹲ってた場所を見つけた。だけどやっぱりブーコの姿はない。代わりに野良猫はいたけど。

 

「ブーコじゃないねー」

「そう、だね・・・・」

 

段々と気落ちしてくみよりちゃん。

どうしようか考えてると「珍しいお客さんだ」と男の人の声が聞こえてきた。心臓が跳ね上がって、嫌な汗が噴き上がる。ドクドク鳴る心臓の音を聞きながら振り向くと、箒を片手に持った五十~六十歳ぐらいの甚平を着てる優しそうなおじさんがいた。おじさんの側にはたまった落ち葉があって、掃除をしていた途中なのが分かる。そうなるとこのおじさんは神主さんなのかも知れない。少しだけ変質者かと思って申し訳なくなった。

 

おじさんに気づくとみよりちゃんは少し様子を見てから頭を下げて「こんにちわ」と礼儀正しく挨拶する。つられて僕も下げれば笑い声が静かな境内に響いた。

 

「はははっ、今時礼儀正しい子達だねぇ。こちらこそ、こんにちわ。姉妹で今日はお祈りかな?」

 

そう笑顔で問い掛けてくるおじさんにみよりちゃんは首を横に振った。

 

「ちがうの。みより、ブーコをさがしにきたの」

「ブーコ?ブーコ、ブーコ、はて何処かで・・・いかんな、歳をとるとどうも物忘れが酷くてなぁ。わんちゃんかな?」

「ブーコはねこだよ!」

 

少し不満げにみよりちゃんが言うと、おじさんは「猫ちゃんか、成る程成る程」と納得したように頷く。

 

「よし、そういう事なら、おじさんに良い考えがある。ここには物知りがいるから、その物知りに聞いてみよう」

「ものしりー?」

「ほら、そこにいるだろう?」

 

怪訝そうなみよりちゃんの声に、おじさんはニコニコ顔でお賽銭箱を指差した。

 

「最近爺さん婆さんばっかりで、神様もさぞうんざりしていた事だろうからね。若い子が久々にお参りしてくれるなら、きっとお願いの一つや二つ聞いてくれるだろうさ」

 

僕としては何とも言えない話だったけど、みよりちゃんにはそうじゃなかったみたい。こっちを見たみよりちゃんの顔にはそれが浮かんでいた。

 

「・・・・おまいり、しよう、か」

「うん!」

 

一応お参りのやり方は知っていたので、折角だからと順番通りやろうとしたけど、手や口を清める水場が枯れていて早速出来なかった。みよりちゃんが文句を言ったら、おじさんが水道が故障中なんだと苦笑いで教えてくれた。

 

仕方ないので清めるのは止めてお賽銭箱の前へ。

みよりちゃんと小銭をお賽銭箱に入れてから・・・鐘を鳴らそうとしたら鐘が無かった。またみよりちゃんが頬を膨らませて聞いたら、ちょっと前の台風で吹き飛んでいったらしい。現在新品を注文中なんだとか。

 

仕方ないので鐘を諦めて、二礼二拍手一礼でお参りする。なんか色々とあれでご利益なさそうだけど、みよりちゃんのお願いが叶うようにお願いした。

 

 

 

「━━━━」

 

 

 

下げていた頭を上げた時、何かが聞こえた。

耳を澄ませてみれば、それは境内の裏手の方から聞こえてる気がする。

 

「おねぇちゃん?」

「・・・みより、ちゃん。すこし、きて、もらっていい?」

「ん?うん」

 

みよりと一緒に音の聞こえる方へと行ってみる。

何故かおじさんも着いてきたけど、取り敢えずそれはおいておいた。それより聞こえるこの音・・・声の方が大事だと思うから。

 

声に誘われて進んでくとある茂みの所に着いた。

そっと茂みの奥を覗くと小さな子猫達と不機嫌そうなぽっちゃり猫がそこに横たわっている。

 

ようやく痩せた理由が分かった僕は、茂みの前でそわそわしてるみよりちゃんにそっと教えた。

 

「みより、ちゃん、ブーコ、みつけた、よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから何日か経って、ブーコは今、子猫共々森田さん家にいる。神社に迷惑を掛ける訳にもいかないからと、みよりちゃんのお父さんが即日引き取られていったみたい。現在、子猫達は引き取り手を募集中とか。

それでとうのブーコは子猫達が移動された事が気に食わなかったみたいで、時折家にやってきては八つ当たりの猫パンチをしてくる。・・・いや、猫の気持ちとか分からないから、本当の所は分からないけどね?

 

その日もいつものように八つ当たりにくるブーコの相手をしてるとチャイムが鳴った。

 

「しょうちゃん!あそーぼー!」

 

休みの日になるとやってくる。

小さな友達の来訪を告げる、その音が。

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