クソニート、TSするってよ   作:いたちしゃーく

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なんか、読んでくれてる人達が増えてきたみたい。
ありがてぇこってぇいですわ(*´ω`*)


クソニート、お招きするってよ

「いってきまーす」

 

そう言って元気に俺の前を駆けていったのは、俺の五つ年下の妹のみより。以前は休みの日になれば後を追い付いてきたり、飼い猫のブーコと遊んでたりしてたんだけど・・・最近休みの日は猫の世話を一通り焼くといつも何処かへと出掛けてしまう。

 

別にそれが寂しいとかじゃない。

ついて回られると面倒臭いし、そうしてくれた方が俺も気が楽だし・・・・でも、なんだ、おかしいと思うんだ。だから凄く気になっている。

 

みよりは小学生になってから少し大人しくなった。家では以前として変わらないけど、学校で見かける姿はいつも初めて家にやってきたブーコみたいに大人しい。

というのも、幼稚園で仲がよかった子が皆私立の小学校に入ってしまっていたのだ。性格は暗いやつじゃないから、声さえ掛けられれば仲良くなれるんだろうけど、今のクラスの雰囲気にイマイチ馴染めていないみたいなのだ・・・いや、友達の妹に聞いてもらった話と合わせた想像だけど。直接は聞けないし。いや、心配とかはしてない。全然。寧ろ早く友達でも作ってもらって、俺について来なければなぁと・・・・まぁ、今はついてきてないんだけども。

 

そんな訳で俺は、今日みよりが何処にいってるのか突き止める事にした。相手が幼稚園での友達なら良いけど、もしそうじゃなくて変なやつだったらお母さんとお父さんが心配するだろうから。

 

俺は父さんの帽子を被って、走る妹の背中を追い掛けた。

 

「━━━━━涼介!あんたお父さんの帽子被って何処いくの!」

「!?あっ、お母さっ、えっと、ご、ごめん!行ってきます!!」

「ちょ、こ、こらぁぁぁーー!!それクリーニング出すんだから待ちなさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

お母さんを振り切って少し。

一旦見失った妹を何とか見つけられた俺はそこを覗いていた。

 

「しょうちゃん、じょうずー!!それじゃぁね、こんどはね、ブーコかいてー!」

 

みよりが居たのは二つ隣の卯月さんの家。

塀の向こうには縁側のついた窓の側で、みよりの相手をしてる女の人が見えた。女の人は多分中学生とか高校生くらいの人で、おっとりした雰囲気の人だった。幼稚園の友達では勿論ないけれど、変なやつかと言われると微妙な相手だ。声が小さい人なのか、みよりの声は聞こえても女の人の声は聞こえてこない。

 

「わぁーじょうずー!ブーコだ!ねぇねぇ!となりにプーコもかいて!」

「━━━━━?」

「んとねー、ブーコとおんなじかおだけどー、でもおかおはちいさくてー、おめめがぱっちりしててー、おひげはぴーとしててねー・・・あっ、そっくりー!プーコだー!」

「━━━━━」

「えーじょうずだよー?しょうちゃんえかきやさんになったほうがいいよ!みよりが・・・えっーと、んんっと?んん?はっ!!たいこ!たいこをね・・・たいこを・・・たたくよ!」

 

けれど、何となく悪い人ではない気がする。

みよりの話をちゃんと聞こうとしてくれるし、それに笑った顔がすごく、こう、なんていうか・・・優しい?と思う。

 

 

「何してんの、涼介」

 

 

突然掛けられた声に心臓が跳ね上がって、バランスを崩して塀から落ちた。頭は打ち付けなかったけど、代わりに地面にぶつかった背中が物凄く痛い。

痛みに悶えながら声のした方へ向くと、同級生の遥がいた。しかもなんか、犯罪者でも見ているようなそんな目で見てくる。

 

「お前こそ何してんだよ?」

「あたしは・・・うるさい、色々あんのよ。ていうか、あんたが言える立場にあると思ってんの?寧ろあんたこそ何してたのよ。人ん家覗いて。下着泥棒でもすんの?」

「しねぇよ!下着なんて泥棒してどうすんだよ!きたねぇ!意味わかんねぇよ」

「・・・はぁ、お子ちゃまねぇ。少しは考えたら?まっ、あんたには当分分かりそうもないけどさ」

 

意味の分からない事を言って遥は俺を馬鹿にするように溜息をついた。何となくムカついて睨むと、倍返しくらいのきつい視線が返ってきて背筋がぞくりとする。

 

「それで、結局何してたのよ。教えないなら今ここで通報するわよ」

 

チャッとスマホを出されてまえば、俺に話す以外の選択肢はなかった。遥は割りと容赦ないやつで、やると言ったらやるやつだからだ。仕方なしに事情を話すと遥は目を丸くして「あんた兄貴の自覚あったんだ」と呆けたように言ってきた。ムカついたけど、スマホがちらついて言葉は出なかった。くそぅ。

 

「そういう事なら、まぁ、見なかった事にしてやっても良いわよ。確かにみよりちゃんの事はあたしも気になってたし」

「ほ、本当か?」

「本当、本当。でもあたしも交ぜなさいよね」

「はっ?」

 

何をいってんだと遥を見ると、妙に迫力ある笑顔が返ってきた。お母さんがお父さんを怒る時に見せる、笑ってるのに全然笑ってないやつだ。

 

「通報されたいの?え?」

「べ、別に好きにすれば良いだろ・・・通報すんなよ」

「しないわよ。それより、ほら、しゃがみなさい」

「・・・?なんだよ、いきなり。しゃがめば良いのか?」

 

言われた通りしゃがめば、遥が肩に乗っかってきた。

思わずくぐもった声を漏らすと「男でしょ、ほら持ち上げる」と命令が来る。塀に手をついてバランスを取りながら立ち上がろうとしたけど、死ぬほど重くて持ち上がらない。

 

「━━━っそ、遥、お前、重い・・・」

「はぁ?!」

「何でもねぇよ、くそっ!!」

 

気合いと根性で立ち上がると遥から「おおー」と歓声があがる。どうやら向こう側が見えたようで「へー」とか声も聞こえる。

俺は全然見えないけど。

 

「━━━━はぁ、なんか随分なついてるみたいだけど、あれ誰?見たことないんだけど」

 

それは俺も思った。

卯月さんの家のおばさんは何度か挨拶したことあるけど、あんな人は見たことがない。何処と無くおばさんに似てるから親戚なんじゃないのかとは思ってる。

 

「・・・そういえば、あたし聞いた事あったかも。卯月のおばさんに、なんか病気の子供がいるとか?なんとか?」

「病気!?お、おい、大丈夫なのか!その病気とか、みよりにうつったりしないのか!?」

「えぇーーー知らない。私もお婆ちゃん達が話してるのちょっと聞いただけだし。でも見た感じだとそういうのでもなさそうだし・・・・それに病気っていったって色々あるでしょ?うちの兄貴も病気だし」

「・・・・・夏雄の兄ちゃんは、病気とは違うだろ」

「病気よ、病気。今日も人形片手にアニメ見てたわ。蹴っ飛ばしてやったわよ。まじキモかった、死ねば良いのに」

 

確かに人形はキツイけど、でもアニメくらい見させてやれば良いのに。夏雄兄ちゃんは、もう仕方ないんだと思うんだよなぁ。俺はまだ彼女とかどういうものか分からないけど、フラれて帰ってきた時死にそうな顔してたもん。アニメに逃げるくらい許してやって欲しい・・・いや、それはいつかは前の兄ちゃんに戻って欲しいけども。

 

「・・・ま、兎に角よ。大丈夫そうだと思うわよ。勘だけど」

「勘かよ」

「女の勘は当たるのよ。その似合わない帽子お父さんのでしょ。あとで怒られて泣きべそかいても知らないわよ」

「!?お、俺のかもしんねぇだろ!」

「はいはい、答え合わせご苦労様━━━━━あっ」

 

不意に遥が間の抜けた声をあげた。

何かあったのかと思って見上げようとしたら、「ひゃっ!?」とか言って肘鉄を顔面に落としてきやがった。

突然の攻撃に思わず体がふらついて、そのままバランスを崩して二人で倒れた。頭から落ちるのは何とか回避したけど、やっぱり背中から落ちた。遥の体重まで乗っていたせいで、二度目の背中へのダメージはハンパじゃない。こいつ、まじでデブ過ぎる。

 

「ごっ、ごめんっ!でもあんたがいきなり上向こうとするから・・・・」

「・・・・っの、デブ、くそデブ遥!痩せろよ!」

「はぁぁぁぁぁぁ!?あんた喧嘩売ってんの!?誰がデブよ!!あたしは適正体重です!!あんたがチビで、ひょろいのがいけないんでしょ!!」

「はぁぁぁぁぁ!?誰がチビだよ!!俺、クラスで真ん中だぞ!!」

「クラスで真ん中だって、チビはチビでしょ!あたしの方が全然大きいじゃん!ちーーーーび!!」

 

いい加減カチンとくる。

遥の横っ腹に蹴りでも叩き込んでやろうかと立ち上がった所で「あーーーー!」と妹の声が聞こえてきた。振り向くと塀の所にみよりの顔が乗っかっていた。

 

「りょうちゃんだー!はるちゃんもいるー!なにしてるの、みよりもまぜ━━━はっ!」

 

みよりは一度後ろを振り返って、ちょっと間を開けてからまたこっちを見た。

 

「ざんねんでした!みよりはいま、みよりのおともだちとあそんでるので、まざりません。またのきかいをごりようください」

 

ペコリと頭を下げると、みよりは塀の向こうへ消えていった。遥はその姿を見た後、こっちを見て小さく噴き出して笑った。

 

「・・・・ぷっ、フラれてやんの」

「フラれるとかじゃねーから!」

 

夏雄兄ちゃんはみたいにいうなし!!

俺はあんなヘタレじゃ━━━。

 

 

「━━━━あ、の」

 

 

続けて遥に文句を言おうとしたら、小さな声が聞こえた。金切り声でキーキー騒ぐクラスの女子とは違う、静かで優しい声。見上げればみよりじゃなくて、さっき見た女の人がこっちを覗いていた。

 

女の人は俺達が見ると途端に固まった。

表情も固くなって、みよりに見せていた柔らかい笑顔はそこにはなくなった。でも何か言おうとしてるのは分かって、俺は待つ事にした。

 

「しょうちゃん、みよりはしょうちゃんとあそぶからいいよ」

 

塀の向こうから妹の声が聞こえてくる。

そうしたら女の人は困ったような笑顔を浮かべてながら、ゆっくり口を開いた。

 

「よ、よかっ、たら、一緒に、どう、かな・・・?」

 

少し言葉が足りない気はしたけど、後ろにいるみよりを気にする素振りとか、柔らかな話し方を聞いてると、その人が何を言いたいか分かって、気がついたら頷いていた。

 

で、何故か遥に蹴られた。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「みよりはね、おもうの。マジェプリのみるひーちゃんは、ぱんちとかきっくとかしないで、すぐびーむうったほうがいいとおもうの。いつもだれかやられて、タイマンジャーがつよくなってからびーむうつけど、おそいとおもうの」

 

思わぬ力説に、僕はテレビに流れるエンディング画面から隣のみよりちゃんに向き直り、そして深く頷いた。

それは僕も思う。物語の流れとか演出のあれこれあるんだからから仕方ないけど、 今期まだ中盤にも関わらず設定的にマジェプリ歴代最強なんだし、敵のタイマンジャーも特別強くないんだから圧倒するくらい良いと思う。初手アザレアクラウンサンダー回とか、個人的にはあって欲しい。

 

「しょ、ショコ、ラも・・・・」

「わかるー!きょうよかったよねー!しょこらちゃんも、もっといっぱいでてほしいよねー。みより、しょこらちゃんかっこいーからすきー!なかまになるかなぁ?」

「た、ぶん・・・・分から、な、ないけど」

 

ビジュアル的にもキャラ背景的にも仲間になるのはほぼ間違いないけど、今期の監督は突拍子もないことする人だから先が読めないんだよなぁ。でもあの監督は王道を外さないと思うし━━━━。

 

「・・・・あの」

 

聞き慣れない声に、僕はハッとした。

視線をそこへ向けると退屈そうな涼介くんと遥ちゃんがいた。そう言えば一緒に見てたんだった。

 

みよりちゃんが涼介くん達と遊びたそうにしてたから頑張って誘ったけど、皆でやるゲームとかないし話だって上手く出来る気がしなくて・・・結局みよりちゃんの助け船もあって録画してた今日のマジェプリを皆で見始めたんだけど・・・・それで・・・・二人のこと完全に忘れてたなぁ。意識すると変な汗が出て来て、急にお腹がキリキリしてきた。現金な体だなぁ、本当に。

 

痛みに堪えながら二人の様子を見ると、二人の為に用意した麦茶はとっくに空だった。表情を見れば飽きてるのは一目瞭然だし、時間もすっかりお昼になってるのにお茶菓子の一つもないときたもんだ。

 

招いておいて僕は何をしてるんだろうか・・・気がきかないにも程がある。お母さんがいてくれたら、こんな事にはなってないだろうに。ああ、こうやって直ぐ頼ろうとする。僕は、まったくもう、はぁ・・・。

 

「の、飲み、飲み物、持って━━━」

「あ、いえ、飲み物は━━━」

 

「みよりものむ!みよりはぎゅーにゅー!」

 

僕と遥ちゃんの声を遮るように、みよりちゃんが元気よく手を上げた。「はやくおおきくなるんだー」と体を揺らしながら、遥ちゃんを捕まえてマジェプリの主題歌を一緒に歌う様子を見てると何だか笑ってしまう。こういうのを微笑ましいっていうのかな?まぁ、遥ちゃん歌全然知らなくてテキトーに誤魔化してるけど。

 

「はるちゃん!ちがう!」

「ご、ごめんね、みよりちゃん」

 

あっ、ばれた。

 

楽しそうな二人はそのままにして僕が立ち上がると、涼介くんも手伝うとついてきてくれた。牛乳と麦茶を持ってくるだけだから手伝って貰う事もないんだけど・・・・結局断りきれず手伝って貰うことにした。

 

「うちのみより、迷惑掛けてないですか?」

 

冷蔵庫から牛乳と麦茶を取り出した所で、涼介くんが声を掛けてきた。

胸の所をアホみたいにドキドキさせながら振り返ると、不安そうな涼介くんの瞳が目に入る。

お母さんから聞いてたけど、良いお兄さんだ。偶然かなと思ってたけど、今日はみよりちゃんの事を心配して様子を見にきてくれたのかも知れない。

 

「あいつ、結構我が儘な所もあるから、多分迷惑掛けることもあるかも知れないけど・・・・お姉さんが嫌じゃなかったら、たまにで良いから、あの、今日みたいに遊んでやってくれませんか。あいつ、今、学校で上手くやれてなくて、その、最近元気なかったから・・・・」

 

迷惑だなんてとんでもない、寧ろ感謝してるくらいだ。

みよりちゃんのお陰で人と話す事に少し慣れた気がするのだ。実際、カウンセリングの瀬戸先生にも以前より言葉がつっかえなくなってるって褒められたくらいだし。

 

僕は了承の意味を込めて涼介くんに頷いてみせた。

 

「━━━僕で、よけ、れば」

 

返した言葉に涼介くんポカンとした。

どうしたのかと首を傾げると、凄い勢いでそっぽを向かれた。何か気に入らない事をしてしまったのかと思って無駄にドキドキしてると、涼介くんは何でもないからと麦茶と牛乳を持って部屋に戻っていってしまう。

 

一人残された僕は近くの食器棚のガラスに映ってる自分の顔を見た。最近見慣れてきた、相変わらずな女の子の顔がある。頬を伸ばしたり、前髪を弄ったりしながらぼーっと見てると、前にみよりちゃんに言われた事を思い出した。

 

「・・・・へ、へんな、顔、してたの、かなぁ」

 

意識した訳じゃないけど、さっき笑ったような気がする。試しに笑顔を浮かべて見ると、ひきつった笑みが僕の顔に浮かんでいた。思わず変な声が出る。

 

これは、変な顔って言われる。

 

 

 

笑顔を作る練習をする事を心に誓った所で、お母さんが帰ってきた。出迎えにいくと玄関に置いてある沢山の靴に驚いてるみたいだった。誤解がないように事情を話したら直ぐ柔らかい笑顔を浮かべて頭を撫でられた。少し気恥ずかしいけど、お母さんが笑ってくれるなら僕に言う言葉はない。良かった。

 

午後からはお母さんのちょっとしたフォローを受けながらみよりちゃん達と過ごした。お母さんがボードゲームが出してくれた時は心から感謝して、家にあったんだねって少し逆恨みしてしまったけども・・・。

 

それからは恙なく過ごせたつもりだけど、帰り際遥ちゃんに涼介くんと何かあったのか聞かれたので、思ったより上手くいってなかったみたいだ。

人をもてなすのって難しい。

 

お母さんにそれを言ったら「あらあら」と楽しそうに笑っていたけど・・・何だろう? ん?

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