転生引きこもりは狸娘の夢を見る   作:マーカス・クラン

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第17話 避難魔物との戦い

 俺たちは、山道の途中で、魔物の群れと対峙していた。その数およそ100。ポイズンフロッグやポイズンフライと言った毒系の魔物から、ウサピル類やヤマアラ類といったおなじみの魔物たち、はたまた、巨大昆虫に至るまで、多種多様の魔物が群れとなって移動していた。

 これは、たぶん、俺たちの所為だ。ドラゴンの毒に汚された大地に集まった魔物たちが、俺たちが、毒を浄化してしまったため、住処を追い出された形になっている。言ってみれば、彼らも、行き場を失くした避難民ならぬ避難魔物なのだが、村人から討伐の依頼があったので、仕方ない。悪いが成仏してもらおう。

 俺は、他のパーティーメンバーが戦闘準備を終えていることを確認すると、敵のど真ん中に魔法を放った。

 「ファイヤーストームVI!」

 魔物たちが散開するが、大半は炎の渦に呑まれた。7割ほどは殺ったか。それでも、正面から突っ込んでくる馬鹿な魔物は多い。俺は、ファイヤーレーザーを掃射する。レベルはVだ。炎の光線が、魔物たちを薙ぎ払う。

 俺は後退する。接近戦は、尚文君たちの出番である。

 まずフィーロが飛び出し、リファナが続く。この二人は敏捷が高いため、尚文君が追い付けずにいる。フィーロがポイズンフロッグを蹴り飛ばし、引き裂く。リファナは短剣で、ウサピルの首筋を斬り、絶命させている。彼女には、もう、病の気配はない。戦い方こそ違うが、同じくらいのレベルだった頃のラフタリアと比べても、戦闘力は劣らないだろう。

 そのラフタリアは、まだ少し動きが鈍い。呪いの影響だろう。その分、尚文君が押さえた敵を攻撃するという、盾のパ-ティーの連携の基本に則って、着実に敵を仕留めている。

 俺は、彼らの死角から攻撃しようとする魔物を、魔法で葬った。

 10分ほどで、生きている魔物はいなくなった。尚文君が、死骸の山に分け入り、何やら盾に吸わせている。まだ吸わせていない魔物がいたのだろう。

 フィーロは、何かをついばんで、咀嚼している。雑食なのはいいが、変なものを食って、腹を壊さねば良いのだが…。

 リファナは、興奮冷めやらぬといった感じで、まだ獲物はいないかと、しきりに辺りを探っている。少しは、吹っ切れたのだろうか。

 ラフタリアは、息を切らしている。やはり、呪いは持続力にも影響するのだろう。尚文君が、気遣って声をかける。

 「ラフタリア、大丈夫か。」

 「大丈夫です、ナオフミ様。まだまだ戦えます。」

ラフタリアは笑顔で答える。が、少し心配だ。この娘、頑張りすぎるところがあるからな…。

 そんな風に、皆を観察していると、ステータス魔法から通知が来た。画面を見ると、レベルが40になっていた。成長限界である。これ以上は、クラスアップしないと、レベルが上がらない。

 と同時に、俺は、新しい魔法を覚えられる。候補を見てみると、ライト、フライト、ホーリーとある。ライトは光、フライトは飛行、ホーリーは聖なるもの、たぶん、呪いに対抗する力だ。アンデッドを退散させることも出来るだろう。

 対ドラゴンゾンビ戦に間に合っていればとも思うが、ラフタリアの呪いにも効くはずだ。

 さて、どれを習得するか。便利そうなのは、フライトだ。自分だけでなく、他者にも作用させられるならば、いろんな使い方が出来る。重いものを持ち上げたりも出来るだろう。

 が、痛々しいラフタリアの痣を消す事が出来るのなら、ぜひともホーリーを習得したい。

 しばし悩んだ後、俺は、ホーリーを選択した。やはり、ラフタリアの役に立てるという誘惑には勝てなかった。

 俺は、成長限界が来たことと、新しい魔法を覚えたことを、尚文君に報告した。

 「成長限界?」

尚文君が、いぶかしげに訊く。

 「ああ、クラスアップするまで、レベルが上がらない。」

 「クラスアップ?いつかの山賊の用心棒が、言っていたやつか。」

そうして、尚文君は、しばらくステータス魔法の画面に没頭する。該当するヘルプの項目を見つけたのだろう。

 「龍刻の砂時計で、出来るのか。城下街に戻る必要があるな。」

 「ラフタリアとフィーロは、レベル39だから、すぐだな。」

と俺が言う。

 「なーに、なんの話ー。」

とフィーロが割り込んでくる。うーん。この鳥には、話しても解るかどうか…。

 「いや、なんでもない。」

と尚文君。思いは同じか。

 「ぶー。」

話に入れなくて、フィーロがぶーたれる。

 「ラフタリアの治療のために、強力な聖水を手に入れる必要があるし、明日にでも、城下街に戻るか。」

尚文君が言う。

 「そのラフタリアの治療だが、俺の新しい魔法が使えそうだ。」

俺は言う。

 「ホーリーと言うんだが、たぶん、リムーブ・カース的な使い方が出来ると思う。呪いを除去できるはずだ。」

 「あの、お父さんが、おんなじ名前の魔法を使って、骸骨兵を倒してました。」

とラフタリアが言う。

 「俺の魔法は、この世界の魔法とは違うが、用途は同じと言う認識で、いいと思う。」

 「それじゃあ、早速、試してみたら、どう?」

とリファナが言った。

 「そうだな。」

と俺。

 「行くぞ、ラフタリア。」

 「は、はい。」

ラフタリアが、若干緊張した声を出す。

 「ホーリーアタックIX!」

ラフタリアの体が淡く光る。

 「アタックって、お前、攻撃じゃないんだから…。」

尚文君があきれて言う。いや、これは、新しい属性魔法の扱いみたいだから、形態をつけなくてはならない。

 「ラフタリア、どうだ。」

俺は訊く。

 「うーん、体があったかい気もしますが…。」

ラフタリアの顔を見ても、顎のあたりの痣の濃さは変わっていない。威力が足りないのか。ならば、と、範囲魔法を集中して使ってみる。

 「ホ-リークラウドIX!」

ラフタリアの顎のあたりが、淡く光る。そのまま30秒ほど持続させる。今度は成功だ。痣がかなり薄くなっている。

 「おねーちゃん、少し、白くなった。」

とフィーロ。

 成功だが、魔力消費が思ったより大きいな。

 「使えるみたいだが、少し効き目が薄そうだな。」

尚文君が言う。

 「ああ、思ったより、魔力を使う。包帯を巻きづらい部位に魔法を使って、聖水の治療も併用した方がいいだろうな。」

言いながら、もう一度、ラフタリアの顎に、魔法を施す。一分ほど持続させると、顎の痣は完全に消えた。が、魔力の残りも心もとなくなった。

 「ラフタリアちゃん、顎の痣が、消えたよ。」

とリファナが言う。

 「ありがとうございます、カツヒコ様。」

ラフタリアがお礼を言ってくれる。フライトを蹴った価値があった。

 少し休んだ後、俺たちは撤収した。取り敢えず、村へと向かう。

 

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