転生引きこもりは狸娘の夢を見る   作:マーカス・クラン

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書籍版第3巻読了しました。
メルティと護衛がはぐれた件をネタにしようと思っていたら、なんと番外編に書いてありました。
せっかくのネタがぁ~。



第18話 フィロリアルが好きっ!

 山道を下り、かなり平坦なところまで来ると、フィーロが、

 「なんかいるよー。」

と言った。

 林が切れ、草原が見渡せるようになってきている。そこに、3匹ほどの大きな鳥が座っている。フィロリアルだ。が、よく見ると、その真ん中に何かいるぞ。

 「女の子だ。フィロリアルは、野生か?」

と尚文君。フィーロは、

 「おいしそうな鳥だねー。」

と舌なめずりをしている。それは、お前の同族だ。共食いでもするつもりか。

 俺たちは、女の子をよく見ようと、そっと近づく。

 しかし、フィロリアルたちに察知されたようだ。一瞬の間の後、フィロリアルは立ち上がって、全速力で逃げていった。辺りに、抜けた羽が舞った。

 女の子は、失望した表情で、逃げたフィロリアルを見ていた。髪の毛は青く、長い髪をツインテールにまとめている。整っているが、意志の強そうな顔だ。服装は上質で、その辺の町娘とは思えなかった。歳は10歳ぐらい。実年齢は、ラフタリアやリファナと同じぐらいか。

 女の子が振り返った。そして、俺たちを見た。

 「おっきいっ。」

女の子が見たのは、フィーロだった。そして、話しかけた。

 「あなたは、フィロリアルさんなの?。」

 「フィーロのこと?」

 「おしゃべりも出来るの!?」

女の子は、衝撃を受けたようだった。

 「私、フィロリアルさんと、お話しするのが、夢だったの!」

そうして、自分の服をまさぐると、何かを取り出した。そうして、フィーロへと差し出す。

 「干し肉、食べる?」

 「わーい、ありがとう。」

フィーロが、女の子の側に寄り、干し肉をついばむ。女の子は、フィーロの羽毛をそっと撫でた。女の子は、感激しているのか、頬を紅潮させている。

 「村の女の子でしょうか?」

とラフタリアが言う。

 「いや、身なりからして、貴族の娘か何かだろう。」

尚文君が答える。

 「お名前は?」

女の子がフィーロに訊く。

 「フィーロはね、フィーロって言うの。」

 「フィーロちゃんね、私は、メルって言うの。」

ラフタリアが言う。

 「あの子、フィルリアルのことが、本当に好きなんですね。」

尚文君が、フィーロに向かって言った。

 「フィーロ。俺たちは、村での仕事が残っている。その間、その子と遊んでやれ。」

メルが感激して言う。

 「ほんとですかー。」

フィーロも言う。

 「ほんとー。やったあ。」

そして、どう感激したのか、人型へと変身する。

 「わっ!すっごーい。」

メルがフィーロの手を取る。

 「フィーロちゃんって、変身も出来るの?」

 「うん、そうだよ。」

 「すごい、すごい。」

感激しているメルを見ながら、尚文君が言う。

 「案外あっさりと、変身を受け入れたな。」

 「結構、神経が太い子なんじゃないか。」

と俺。王女様だからな。

 「二人とも、楽しそうですね。」

とラフタリアが言う。

 「ごしゅじんさまー。もう少し、メルちゃんと、遊んでも、いーい?」

とフィーロが訊いてくる。

 「日が落ちるまでには帰って来い。」

尚文君が言う。

 「あと、あまり遠くには行くなよ。」

 「「はーい。」」

フィーロとメルが仲良く返事している。

 俺たちは、二人を残して、村へと戻った。

 

 村へ戻ると、魔物討伐の報告をした。そして、治療師の手伝いをする。

 それが終わって一休みした後、尚文君はリファナの背中の治療をした。

 以前のラフタリアと同じく、リファナにも、背中にはひどい傷跡がある。尚文君は、治療薬を背中に塗る。リファナは、この時間を心待ちにしているように見えた。

 前は、俺などは速攻で叩き出されたが、今は、そういう事もなくなった。

 俺は、魔法でラフタリアの治療をする。今度は、手の甲だ。包帯を巻けない部位ではないが、巻いてしまうと、日常生活が著しく阻害される。

 日が落ちて、フィーロが戻って来た。フィーロがうれしそうに言う。

 「あのね、フィーロに、お友達が出来たのー。」

 「あのメルって子だろ?」

尚文君が生返事をする。

 「うん。あの子もフィーロと同じく、いろんなところを旅してるんだって。」

 「そうか。」

 「そうして、フィーロの知らないことを、一杯教えてくれたの。」

 「そうか。」

 「それでね、フィロリアルと遊んでたら、みんなとはぐれて困ってるんだって。」

 「そうか。」

ラフタリアが突っ込む。

 「ナオフミ様、ちゃんと聞いてます?。」

 「そうか。…って、何だ?」

空いているドアから、メルが入ってきた。

 「すいません。夜分遅くに失礼します。」

礼儀正しく挨拶をする。やはり、育ちの良さが出ているな。

 「どうか少しの間だけ、ご一緒させていただけないでしょうか。」

 「どういうことだ?」

尚文君が訊く。言いにくそうに、メルが話す。

 「私は、城下街に戻る途中だったのですが、フィロリアルさんと遊ぶことに夢中になって、護衛の方とはぐれてしまったんです。」

もしそれが本当なら、その護衛はザルだな。多分9割方、わざとはぐれたか。その目的は、何だろう?

 メルの話は続く。

 「聞けば、聖人様は、明日城下街へ向かうとのこと。どうかそこまで、ご一緒させていただけませんか?」

メルは懸命に頼む。

 「身勝手なお願いだというのは分かっています。でも、どうしても戻らなくちゃいけないんです。お願いします。」

 尚文君は思案している。フィーロが言う。

 「ごしゅじんさまー。メルちゃんのお願い、聞いてあげて。」

ラフタリアも言う。

 「ナオフミ様、困っている人を、見過ごすわけにはいきません。私からもお願いします。」

 リファナはと見ると、なんだか微妙な表情だ。さては、将来の尚文君のハーレム候補だというのを見抜いたか。勘の鋭い子だ。

 「尚文、いいんじゃないか。」

俺も言う。王女にいい印象を持ってもらうのは、悪くない。

 尚文君が言う。

 「礼金は、きっちりもらうからな。」

メルが答える。

 「はい、父上に、頼んでみます。」

 こうして、城下街までの同行者が、一人増えた。

 




勝彦君の、メルの護衛に対する危惧は、杞憂です。
前書きに書いた、ネタの名残だったりします。
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