転生引きこもりは狸娘の夢を見る   作:マーカス・クラン

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都合により、今回は短いです。



第26話 再び波との戦い(後編)

 人影は女だった。和風の着物を着た、長い黒髪の美少女だ。

 「この程度の雑魚に苦戦とは、それでも、世界の命運を預かる勇者ですか。」

 女は近づいてきた。

 「どうやら、勇者は一人だけのようですね。貴方、名前は?」

女は尚文君に問う。尚文君は答える。

 「人に名を尋ねる前に、まず、自分から名乗れ。」

 「これは失礼。私の名はグラス。勇者であるあなたとは、敵対関係にある、という認識で結構です。」

 グラスはゆっくりと答えた。

 「尚文だ。」

尚文君は言った。

 「では、始めましょうか。真の波の戦いを。」

グラスは余裕ありげに言う。特に身構えてもいない。

 「かかってこないのですか。そこにいる従者でも差し向ければよいでしょうに。」

 後ろで唖然としていた三勇者を指して言う。三人が激高する。

 「僕たちが、」

 「尚文の、」

 「従者だと!」

そうして、それぞれがグラスにスキルを放つ。

 「流星弓!」

 「流星剣!」

 「流星槍!」

三つのスキルがグラスを捉えた。だが、彼女は平然としている。

 グラスが反撃する。

 「輪舞零ノ型、逆式雪月花!」

華麗に舞うグラス。その舞と共に半月状の光の刃が乱舞し、三勇者とその仲間を吹き飛ばした。

 

 俺は前へ出た。尚文君は先の戦いでスキルポイントを使い切っている。ラフタリアやフィーロ、リファナでは荷が重い相手だ。更に相手の正体は魂人、精神エネルギーの塊のような存在だ。精神魔法が良く効くはずである。

 「サイコアタックIX!」

精神魔法の直撃に、グラスは悲鳴を上げる。相手に立ち直る暇を与えず、俺は追撃をする。

 「サイコアタックIX!」

度重なる攻撃に、グラスはよろめく。

 「サイコブラストIX!」

グラスは避けようとするが、爆発範囲からは逃れられず、さらなるダメージを負う。グラスは、出来損ないの3D画像(ホログラム)のように半透明になり、背景が透けるようになって来ていた。

 俺は魔力水を飲んで、再度魔法を放つ。

 「サイコブラストIX!」

あれほど切れの良い動きだったグラスも、今はよろよろと動くだけだ。そこに精神爆発魔法が炸裂し、グラスがさらに悲鳴を上げる。

 「お、お前は…。」

 グラスは、俺の方を憎々しげに見る。

 「お前のようなものに、敗北する訳にはいきませんね。此度は退きます。」

グラスは、最後の力を振り絞るように、跳躍をする。

 「ナオフミ、このような者を使役しているとは、お前は勇者とは言えないかもしれませんね…。」

捨て台詞を吐くと、グラスは空の亀裂へと飛び込んだ。途端にワインレッドに染まっていた空が明るくなり、亀裂は消滅した。波の終焉である。

 幽霊船は、最寄りの崖の上へと着底し、傾いて止まった。

 

 「勝彦、今の戦いは、一体どういうことだ。まるで、敵の正体を知っているような戦い方だったぞ。」

 尚文君が詰問してきた。少々やりすぎたようだ。

 

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