転生引きこもりは狸娘の夢を見る   作:マーカス・クラン

30 / 76
 皆さん、お久しぶりです。
 復活した訳ではないのですが、フィーロVSフィトリアの辺りまで、何とか書いたので、投稿を再開します。
 良ければ、また、お付き合い願います。


第29話 王城にて

 翌日、俺たちはまだ日が高くないうちに城下街に入り、そのまま、王城に入城した。

 俺たちは、騎士団長に連れられて、城の仄暗い通路を進んだ。一言も口をきかないので、案内されているという感じがしない。まるで、連行されているようだ。

 他の勇者パーティーは、別行動だ。恐らく、治療か、事情の聞き取りが別個に為されるのだろう。

 

 騎士団長が、とある部屋の前で止まる。

 「従者はここまでだ。ここからは、盾の勇者だけ来てもらおう。」

と言う騎士団長に、尚文は、

 「なぜだ?」

と訊いた。

 「王への報告は、勇者からだけで十分だ。報告は簡潔が良かろう。それに、飲み物や軽食も用意してある。従者たちは戦いと旅の疲れを癒すが良かろう。」

 騎士団長にしては、物言いは丁寧だが、なんだか、猫なで声のような気もする。

 「じゃあ、私たちにここで待って居ろって言うの?」

とリファナ。

 「その通りだ。」

と騎士団長が言う。

 「仲間と一緒でなければ行かないと言ったら?」

尚文が言う。彼も、胡散臭いものを感じているようだ。

 「何をもってそんなことを言うのか理解しがたいが、わしのお前への評価がさらに下がり、王の機嫌を損ねるだけだ。お前にとって良い事は無いと思うが。」

尚文は黙って考えている。

 

 ここで、尚文を一人で行かせるのはあまり得策ではない。特に、ラフタリアが傍に居ると居ないとでは、彼の冷静さが違ってくる。

 尤も、向こうは、尚文とこちらを引き離したいらしい。だったら、それにのって、向こうの出方を確かめるのも一興だろう。

 それに、俺がついて行って、グラスのことをあれこれ聞かれるのも面倒だ。その辺は、まだ曖昧にしておきたい。

 更に、パーティーで行こうが、尚文一人で行こうが、王との謁見は不毛なものに終わるのは間違いない。だったら、尚文一人で行かせ、言いたいことを言わせて、彼の鬱憤を晴らさせるのがいいのかもしれない。

 

 俺は言った。

 「尚文、王と会って来るといい。大丈夫だ。皆は、俺が守る。」

 「本当に大丈夫か。お前は危なっかしいからな。」

と尚文が言う。

 「大丈夫です。自分の身くらい、自分で守れます。それより、ナオフミ様は大丈夫なのですか。」

ラフタリアが心配そうに言う。

 「大丈夫だ。俺にはこれがある。」

尚文は、左手に付いている盾を見せて、言った。

 

 「では、わしについて来てもらおう。」

と騎士団長。後に続く尚文に、

 「なおふみ様、気を付けて下さい。」

とリファナが言う。尚文は、こちらに手を振った。

 「いってらっしゃい!」

とフィーロ。

 残った俺たちは、部屋へと入った。

 

 部屋は、6畳ほどの広さで、俺たち4人には、やや狭く感じた。鉄格子が嵌った窓からは、日の光が僅かに射している。大きめのテーブルと椅子が4脚あり、壁は、大きめの砂利を何かで固めたような作りになっていた。

 テーブルには、水差しとコップ、ビスケットのような焼き菓子がバスケットに入って置かれていた。

 

 「取り敢えず座りましょう。」

とラフタリアが言った。

 俺は、その言には従わずに、あるものを探した。それは、程なく見つかった。壁を構成している石の一つが、きらきらと透明に光っていた。水晶である。恐らく、魔法の。今でいう、監視カメラだ。

 俺は、ロックウォールを唱えて、水晶を覆った。ラフタリアとリファナが、何事かと目を丸くしている。

 

 「次は…」

 俺は壁を探った。リファナが訊いてきた。

 「何をしているの?」

 「穴を探しているんだ。」

と俺は答えた。その答えで、彼女はピンと来たらしい。さすが、物語好きなだけはある。多分、勇者の冒険譚で、部屋に閉じ込められる場面があったのだろうか。

 「私、こっちの壁を探すわ。」

と、リファナが、反対側を探り始める。ラフタリアとフィーロは、相変わらずきょとんとしている。

 

 数分程で、全部で6つの穴が見つかった。

 俺は、ロックウォールでその穴を一つずつ塞いでいく。ウォールの形状を穴に合わせるのに手間取ったが、うまく全部の穴を塞ぐ事が出来た。

 先ほどの水晶と合わせて、ロックウォールの魔力消費は、範囲が小さいので、ほとんどない。尤も、魔法発動中は、神経を集中しなくてはならないので、気疲れがする。

 

 「一体、何をしていたんですか?」

とラフタリアが訊いてきた。俺が答えようとすると、フィーロが、水差しの水を飲もうとしていた。そうして口に含むと、そのまま水をだらだらとこぼした。まるで、某大御所芸人のギャグのようだ。

 「フィーロ、汚いです。」

慌ててラフタリアがフィーロの口を拭く。

 「おねーちゃん、これ、なんか入ってるー。」

とフィーロがぼやく。

 「多分、睡眠薬か何かだろうな。」

と俺。

 「えっ!」

驚くラフタリア。

 「さっきは、ここを監視している魔法の水晶を隠し、催眠ガスか何かを注入するための穴を塞いでいたんだ。」

 「そんな…。」

 

 「奴らは、俺たちを捕まえて、尚文を脅す駒にしたいのさ。」

俺が言う。

 「だからと言って、薬を盛るなんて、ひどいです。」

とラフタリア。

 「ラフタリアちゃん、私たちは、盾の勇者の仲間なのよ。勇者パーティーには、危険はつきものだわ。」

リファナが言う。

 「だから、なおふみ様の足手まといにならないように、いつでもここを出られる準備をしておくのが必要なのよ。」

 

 それから10分程は、何もなかった。ただ、フィーロは、ビスケットの臭いを嗅ぎ、食べられないのを悟ってぶーたれていたが。

 暇を持て余したラフタリアが、スクワットを始めた頃-俺も誘われたが、魔法発動中と言う事で辞退申し上げた-、それは起こった。

 隣の部屋と思しきあたりから、ガタガタと音が聞こえ、咳き込むような悲鳴が聞こえたのだ。

 「何!?」

 ラフタリアがスクワットを止め、身構える。

 「多分、ガスをこの部屋に注入しようとして、逆流したんだろうな。」

俺は立ち上がる。

 「そろそろここを出た方が良さそうだ。」

 

 リファナが扉を開けようとする。が、

 「鍵が掛かっているわ!」

 「じゃあ、ぶち破る?」

とフィーロ。

 「待て、フィーロ。」

俺はフィーロを止めつつ、アンロックの魔法を唱えた。錠前が外れる音がする。

 「じゃあ、開けるわよ。」

リファナの声に、皆が身構える。

 

 扉が開くと同時に、俺は魔法を放った。

 「サイコブラストIII!」

通路で悲鳴が上がる。同時に、抜刀したラフタリアと、獣人姿になったリファナが飛び出す。

 俺とフィーロが部屋の外に出ると、既に4人の兵士が倒れており、リファナとラフタリアが2人の兵士と対峙していた。それも直ぐに決着がつく。ラフタリアが相手の胴を払って気絶させ、リファナの蹴りがもう一人の側頭部に命中する。

 「ねえ、フィーロの出番はー?」

不満げにぐずるフィーロを、俺は撫でてやった。

 

 取り敢えず、城の奥へと向かう。

 時折、兵士が出てくるが、ラフタリアとリファナの敵ではなかった。何を血迷ったのか、フィーロに向かってきた兵士は、ぶん投げられて壁に叩きつけられた。たまに魔法使いが出てくるが、呪文を唱える前に、サイコアタックで無力化した。

 

 「盾の勇者はどこなの!?」

のした相手を捕まえて、ラフタリアが訊く。はたから見ると、結構怖い。だが、相手は知らないようで、力なく首を振る。

 「これじゃあ、きりがありません。」

 「なおふみ様ー!。どこですかー!。」

リファナがしびれを切らして叫ぶ。俺はやめさせようとしたが、なんと、その声に答えるように、奥から、尚文が姿を現した。

 

 「なおふみ様!」

 リファナが尚文の首に抱き付く。

 「ナオフミ様!ご無事で。」

ラフタリアが感極まったように言う。

 「ごしゅじんさまー。おかえりー。」

とフィーロ。

 「ガス攻めなどと、ふざけたことをして来たから、脱出して来た。そっちはどうだった、尚文?」

と俺は訊いた。

 

 「どうもこうもない、話にならない。お前には話す義務があるから話せ、などと、上から目線で言ってきた。挙句の果ては、お前たちを人質に取るとぬかしやがった。」

と、リファナを引き離しながら、尚文は答える。

 「そんなことをしたら殺すと、脅しをかけて出て来た。お前たちが無事で良かった。」

そうして、苦笑いに似た、彼独特の笑みを浮かべる。

 「さあ、城を出よう!」

 

 それから、やや迷いはしたが、城から出る事が出来た。その間、邪魔立てした兵士を、さらに十二、三人蹴散らした。

 

 荷車は、エイク達が確保してくれていたようだ。これだけ騒ぎを起こしたのに、義理堅い奴らだ。

 俺たちは、礼を言って、城を後にした。

 




今回はいわゆる尚文目線(尚文が一人で行動している間の一人称)の話も書いたので、以下に掲載します。

----------------------------------

 皆と別れて、騎士団長について行く。
 やがて、通路が明るくなっていき、開けた場所に出た。いつかの決闘を行った中庭だ。そこを過ぎ、やや明るい通路をしばらく歩く。すると、とある部屋の前で騎士団長が言った。
 「ここで待っていてもらおう。」
 「王と謁見するんじゃないのか?」
と俺は訊く。
 「今頃は、三勇者から事情を聴いているはずだ。盾の勇者は、その後と言う事になる。」
 そうして、部屋を開け、入るように促す。覗いてみると、明るい小部屋で、椅子とテーブル以外、目立った家具は無かった。俺が入ると、
 「では、しばし待たれよ。」
と言って、騎士団長は扉を閉めた。

 俺は、ざっとおかしな仕掛けがないか探ってから、椅子に腰かけた。
 これから、あのクズ王と会うのかと思うと、気分が悪くなって来る。エイクの頼みがなければ、即刻帰っているところだ。
 波の戦闘の報告は、ここに来るまでに馬車の中でたっぷりとしたし、他に付け加える事もない。本来なら、あのクズと対面するのは避けたいところだ。精神衛生的に。

 ラフタリアたちは、今頃どうしているのだろう。まあ、勝彦がいるから、さほど問題ないだろう。多少胡散臭さがある奴だが、俺たちの仲間として流したあの涙は本当だろうし、その点では信頼に値するだろう。何より、精神年齢10歳前後の俺のパーティーの中で、俺以外の大人だ。多少の罠が仕掛けられていても、切り抜けてくれるはずだ。

 しばらく目を閉じて椅子にもたれていると、扉がノックされた。返事をすると、扉が開けられ、兵士が顔を出し、
 「盾の勇者よ、おいでください。」
と言う。
 俺は、やれやれと思いながら、そいつについて行った。

 玉間では、苦虫を噛み潰したような顔のクズ王が、俺を迎えた。曰く、
 「よくぞ波を鎮めてくれた。非常に遺憾だがな。」
それが人に礼をいう態度か。
 勝彦によると、三勇教に踊らされているだけの、ただの間抜けとのことだが、それでも性に合わない。

 部屋には、水晶球から、俺のスキル‘アイアンメイデン’の映像が映し出されていた。一体、いつ撮ったのだろうか。

 映像が終わると、クズ王は唸り、俺に訊いてきた。
 「お前は、どのようにして、この強さを手に入れたのか。お前は、盾の勇者にあるまじき攻撃方法を持っている。そのスキルはどうやって手にしたのだ。お前には、その秘密を話す義務がある。さあ、話せ。」
と上から目線で迫るクズ王。なんの資格があって、この俺にそんな態度を取る。

 俺は腹が立ちすぎて、かえって頭の中が冷静に冷えて行った。俺は言った。
 「知りたければ、土下座をしろ。」
俺は床を指さす。
 「俺がいた世界では、人に教えを乞うときは、地面に頭をこすり付けるんだ。無知なわたくしめに、どうぞ教えて下さいってな。」
周りの者はどよめき、クズ王は屈辱に顔を歪める。
 「貴様ー!」
王の咆哮と共に、抜刀した兵士が俺を取り囲む。

 俺は静かに言った。
 「今の俺なら、お前らを皆殺しにして、正面からこの城を出て行く事も出来るだろう。」
 「はったりを!」
王が憤慨して言う。

 俺は、盾を戦闘用のものに変えた。
 「どうだ、波の化け物を倒した俺と、やりあいたい奴はいるか。」
俺の言葉に、包囲をしている兵たちが怯む。
 「波が終わって、元の世界に帰れるまでは、最低限協力してやる。だから、俺の邪魔をするな。」
俺は言い捨てて、踵を返した。後ろからは、王の歯ぎしりするような憤怒が伝わってくる。王が口を開いた。
 「そうだ、お前の不敬の罪は、お前の忌々しい奴隷共に償ってもらおう。」

 俺はゆっくりと振り向いた。怒りに顔が歪んでいるのが分かる。
 「お前がいくら汚い手段を講じようとも、俺はあいつらを守り抜く。指一本触れさせない。」
 「いいか、あいつらに手出しをしてみろ、地の果てまでも追い詰めて、生まれたことを後悔させてやる!」
俺の言葉に、その場にいたものがすべて動揺する。

 その時、一人の指揮官らしき男が部屋に入って来て、遠慮がちに王に近づくと、何事かを耳打ちした。王は驚き、当てが外れたとでも言うように、渋い顔になる。そして、口を開いた。
 「お前の奴隷共が、部屋から逃げ出し、城内で暴れているそうだ、主人のみならず、部下も礼儀知らずなことよ。」

 俺は、心の中で喝采を叫んだ。そうか、あいつら、やったか。どうせ、王がよからぬ仕掛けをたくらんでいたのだろう。
 「俺の仲間は弱くはないし、お前の計略に引っかかるほど、間抜けでもない。」

 俺はそう言うと、王に向かって捨て台詞を放った。
 「俺もそろそろお暇させてもらう。邪魔立てするなら、相応の覚悟をするといい。」
俺はそのままでかい扉を開け、謁見の間から出た。

 耳を澄ますと、なるほど、遠くで戦闘の音がする。俺は騒ぎの方へ向かった。
 いくつかの通路を曲がると、俺を呼ぶリファナの声が聞こえた。そのまま進むと、いた!兵士をのしているラフタリアたちが見えた。いち早く気付いたリファナが、俺に抱き付いて来る。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。