復活した訳ではないのですが、フィーロVSフィトリアの辺りまで、何とか書いたので、投稿を再開します。
良ければ、また、お付き合い願います。
翌日、俺たちはまだ日が高くないうちに城下街に入り、そのまま、王城に入城した。
俺たちは、騎士団長に連れられて、城の仄暗い通路を進んだ。一言も口をきかないので、案内されているという感じがしない。まるで、連行されているようだ。
他の勇者パーティーは、別行動だ。恐らく、治療か、事情の聞き取りが別個に為されるのだろう。
騎士団長が、とある部屋の前で止まる。
「従者はここまでだ。ここからは、盾の勇者だけ来てもらおう。」
と言う騎士団長に、尚文は、
「なぜだ?」
と訊いた。
「王への報告は、勇者からだけで十分だ。報告は簡潔が良かろう。それに、飲み物や軽食も用意してある。従者たちは戦いと旅の疲れを癒すが良かろう。」
騎士団長にしては、物言いは丁寧だが、なんだか、猫なで声のような気もする。
「じゃあ、私たちにここで待って居ろって言うの?」
とリファナ。
「その通りだ。」
と騎士団長が言う。
「仲間と一緒でなければ行かないと言ったら?」
尚文が言う。彼も、胡散臭いものを感じているようだ。
「何をもってそんなことを言うのか理解しがたいが、わしのお前への評価がさらに下がり、王の機嫌を損ねるだけだ。お前にとって良い事は無いと思うが。」
尚文は黙って考えている。
ここで、尚文を一人で行かせるのはあまり得策ではない。特に、ラフタリアが傍に居ると居ないとでは、彼の冷静さが違ってくる。
尤も、向こうは、尚文とこちらを引き離したいらしい。だったら、それにのって、向こうの出方を確かめるのも一興だろう。
それに、俺がついて行って、グラスのことをあれこれ聞かれるのも面倒だ。その辺は、まだ曖昧にしておきたい。
更に、パーティーで行こうが、尚文一人で行こうが、王との謁見は不毛なものに終わるのは間違いない。だったら、尚文一人で行かせ、言いたいことを言わせて、彼の鬱憤を晴らさせるのがいいのかもしれない。
俺は言った。
「尚文、王と会って来るといい。大丈夫だ。皆は、俺が守る。」
「本当に大丈夫か。お前は危なっかしいからな。」
と尚文が言う。
「大丈夫です。自分の身くらい、自分で守れます。それより、ナオフミ様は大丈夫なのですか。」
ラフタリアが心配そうに言う。
「大丈夫だ。俺にはこれがある。」
尚文は、左手に付いている盾を見せて、言った。
「では、わしについて来てもらおう。」
と騎士団長。後に続く尚文に、
「なおふみ様、気を付けて下さい。」
とリファナが言う。尚文は、こちらに手を振った。
「いってらっしゃい!」
とフィーロ。
残った俺たちは、部屋へと入った。
部屋は、6畳ほどの広さで、俺たち4人には、やや狭く感じた。鉄格子が嵌った窓からは、日の光が僅かに射している。大きめのテーブルと椅子が4脚あり、壁は、大きめの砂利を何かで固めたような作りになっていた。
テーブルには、水差しとコップ、ビスケットのような焼き菓子がバスケットに入って置かれていた。
「取り敢えず座りましょう。」
とラフタリアが言った。
俺は、その言には従わずに、あるものを探した。それは、程なく見つかった。壁を構成している石の一つが、きらきらと透明に光っていた。水晶である。恐らく、魔法の。今でいう、監視カメラだ。
俺は、ロックウォールを唱えて、水晶を覆った。ラフタリアとリファナが、何事かと目を丸くしている。
「次は…」
俺は壁を探った。リファナが訊いてきた。
「何をしているの?」
「穴を探しているんだ。」
と俺は答えた。その答えで、彼女はピンと来たらしい。さすが、物語好きなだけはある。多分、勇者の冒険譚で、部屋に閉じ込められる場面があったのだろうか。
「私、こっちの壁を探すわ。」
と、リファナが、反対側を探り始める。ラフタリアとフィーロは、相変わらずきょとんとしている。
数分程で、全部で6つの穴が見つかった。
俺は、ロックウォールでその穴を一つずつ塞いでいく。ウォールの形状を穴に合わせるのに手間取ったが、うまく全部の穴を塞ぐ事が出来た。
先ほどの水晶と合わせて、ロックウォールの魔力消費は、範囲が小さいので、ほとんどない。尤も、魔法発動中は、神経を集中しなくてはならないので、気疲れがする。
「一体、何をしていたんですか?」
とラフタリアが訊いてきた。俺が答えようとすると、フィーロが、水差しの水を飲もうとしていた。そうして口に含むと、そのまま水をだらだらとこぼした。まるで、某大御所芸人のギャグのようだ。
「フィーロ、汚いです。」
慌ててラフタリアがフィーロの口を拭く。
「おねーちゃん、これ、なんか入ってるー。」
とフィーロがぼやく。
「多分、睡眠薬か何かだろうな。」
と俺。
「えっ!」
驚くラフタリア。
「さっきは、ここを監視している魔法の水晶を隠し、催眠ガスか何かを注入するための穴を塞いでいたんだ。」
「そんな…。」
「奴らは、俺たちを捕まえて、尚文を脅す駒にしたいのさ。」
俺が言う。
「だからと言って、薬を盛るなんて、ひどいです。」
とラフタリア。
「ラフタリアちゃん、私たちは、盾の勇者の仲間なのよ。勇者パーティーには、危険はつきものだわ。」
リファナが言う。
「だから、なおふみ様の足手まといにならないように、いつでもここを出られる準備をしておくのが必要なのよ。」
それから10分程は、何もなかった。ただ、フィーロは、ビスケットの臭いを嗅ぎ、食べられないのを悟ってぶーたれていたが。
暇を持て余したラフタリアが、スクワットを始めた頃-俺も誘われたが、魔法発動中と言う事で辞退申し上げた-、それは起こった。
隣の部屋と思しきあたりから、ガタガタと音が聞こえ、咳き込むような悲鳴が聞こえたのだ。
「何!?」
ラフタリアがスクワットを止め、身構える。
「多分、ガスをこの部屋に注入しようとして、逆流したんだろうな。」
俺は立ち上がる。
「そろそろここを出た方が良さそうだ。」
リファナが扉を開けようとする。が、
「鍵が掛かっているわ!」
「じゃあ、ぶち破る?」
とフィーロ。
「待て、フィーロ。」
俺はフィーロを止めつつ、アンロックの魔法を唱えた。錠前が外れる音がする。
「じゃあ、開けるわよ。」
リファナの声に、皆が身構える。
扉が開くと同時に、俺は魔法を放った。
「サイコブラストIII!」
通路で悲鳴が上がる。同時に、抜刀したラフタリアと、獣人姿になったリファナが飛び出す。
俺とフィーロが部屋の外に出ると、既に4人の兵士が倒れており、リファナとラフタリアが2人の兵士と対峙していた。それも直ぐに決着がつく。ラフタリアが相手の胴を払って気絶させ、リファナの蹴りがもう一人の側頭部に命中する。
「ねえ、フィーロの出番はー?」
不満げにぐずるフィーロを、俺は撫でてやった。
取り敢えず、城の奥へと向かう。
時折、兵士が出てくるが、ラフタリアとリファナの敵ではなかった。何を血迷ったのか、フィーロに向かってきた兵士は、ぶん投げられて壁に叩きつけられた。たまに魔法使いが出てくるが、呪文を唱える前に、サイコアタックで無力化した。
「盾の勇者はどこなの!?」
のした相手を捕まえて、ラフタリアが訊く。はたから見ると、結構怖い。だが、相手は知らないようで、力なく首を振る。
「これじゃあ、きりがありません。」
「なおふみ様ー!。どこですかー!。」
リファナがしびれを切らして叫ぶ。俺はやめさせようとしたが、なんと、その声に答えるように、奥から、尚文が姿を現した。
「なおふみ様!」
リファナが尚文の首に抱き付く。
「ナオフミ様!ご無事で。」
ラフタリアが感極まったように言う。
「ごしゅじんさまー。おかえりー。」
とフィーロ。
「ガス攻めなどと、ふざけたことをして来たから、脱出して来た。そっちはどうだった、尚文?」
と俺は訊いた。
「どうもこうもない、話にならない。お前には話す義務があるから話せ、などと、上から目線で言ってきた。挙句の果ては、お前たちを人質に取るとぬかしやがった。」
と、リファナを引き離しながら、尚文は答える。
「そんなことをしたら殺すと、脅しをかけて出て来た。お前たちが無事で良かった。」
そうして、苦笑いに似た、彼独特の笑みを浮かべる。
「さあ、城を出よう!」
それから、やや迷いはしたが、城から出る事が出来た。その間、邪魔立てした兵士を、さらに十二、三人蹴散らした。
荷車は、エイク達が確保してくれていたようだ。これだけ騒ぎを起こしたのに、義理堅い奴らだ。
俺たちは、礼を言って、城を後にした。
今回はいわゆる尚文目線(尚文が一人で行動している間の一人称)の話も書いたので、以下に掲載します。
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皆と別れて、騎士団長について行く。
やがて、通路が明るくなっていき、開けた場所に出た。いつかの決闘を行った中庭だ。そこを過ぎ、やや明るい通路をしばらく歩く。すると、とある部屋の前で騎士団長が言った。
「ここで待っていてもらおう。」
「王と謁見するんじゃないのか?」
と俺は訊く。
「今頃は、三勇者から事情を聴いているはずだ。盾の勇者は、その後と言う事になる。」
そうして、部屋を開け、入るように促す。覗いてみると、明るい小部屋で、椅子とテーブル以外、目立った家具は無かった。俺が入ると、
「では、しばし待たれよ。」
と言って、騎士団長は扉を閉めた。
俺は、ざっとおかしな仕掛けがないか探ってから、椅子に腰かけた。
これから、あのクズ王と会うのかと思うと、気分が悪くなって来る。エイクの頼みがなければ、即刻帰っているところだ。
波の戦闘の報告は、ここに来るまでに馬車の中でたっぷりとしたし、他に付け加える事もない。本来なら、あのクズと対面するのは避けたいところだ。精神衛生的に。
ラフタリアたちは、今頃どうしているのだろう。まあ、勝彦がいるから、さほど問題ないだろう。多少胡散臭さがある奴だが、俺たちの仲間として流したあの涙は本当だろうし、その点では信頼に値するだろう。何より、精神年齢10歳前後の俺のパーティーの中で、俺以外の大人だ。多少の罠が仕掛けられていても、切り抜けてくれるはずだ。
しばらく目を閉じて椅子にもたれていると、扉がノックされた。返事をすると、扉が開けられ、兵士が顔を出し、
「盾の勇者よ、おいでください。」
と言う。
俺は、やれやれと思いながら、そいつについて行った。
玉間では、苦虫を噛み潰したような顔のクズ王が、俺を迎えた。曰く、
「よくぞ波を鎮めてくれた。非常に遺憾だがな。」
それが人に礼をいう態度か。
勝彦によると、三勇教に踊らされているだけの、ただの間抜けとのことだが、それでも性に合わない。
部屋には、水晶球から、俺のスキル‘アイアンメイデン’の映像が映し出されていた。一体、いつ撮ったのだろうか。
映像が終わると、クズ王は唸り、俺に訊いてきた。
「お前は、どのようにして、この強さを手に入れたのか。お前は、盾の勇者にあるまじき攻撃方法を持っている。そのスキルはどうやって手にしたのだ。お前には、その秘密を話す義務がある。さあ、話せ。」
と上から目線で迫るクズ王。なんの資格があって、この俺にそんな態度を取る。
俺は腹が立ちすぎて、かえって頭の中が冷静に冷えて行った。俺は言った。
「知りたければ、土下座をしろ。」
俺は床を指さす。
「俺がいた世界では、人に教えを乞うときは、地面に頭をこすり付けるんだ。無知なわたくしめに、どうぞ教えて下さいってな。」
周りの者はどよめき、クズ王は屈辱に顔を歪める。
「貴様ー!」
王の咆哮と共に、抜刀した兵士が俺を取り囲む。
俺は静かに言った。
「今の俺なら、お前らを皆殺しにして、正面からこの城を出て行く事も出来るだろう。」
「はったりを!」
王が憤慨して言う。
俺は、盾を戦闘用のものに変えた。
「どうだ、波の化け物を倒した俺と、やりあいたい奴はいるか。」
俺の言葉に、包囲をしている兵たちが怯む。
「波が終わって、元の世界に帰れるまでは、最低限協力してやる。だから、俺の邪魔をするな。」
俺は言い捨てて、踵を返した。後ろからは、王の歯ぎしりするような憤怒が伝わってくる。王が口を開いた。
「そうだ、お前の不敬の罪は、お前の忌々しい奴隷共に償ってもらおう。」
俺はゆっくりと振り向いた。怒りに顔が歪んでいるのが分かる。
「お前がいくら汚い手段を講じようとも、俺はあいつらを守り抜く。指一本触れさせない。」
「いいか、あいつらに手出しをしてみろ、地の果てまでも追い詰めて、生まれたことを後悔させてやる!」
俺の言葉に、その場にいたものがすべて動揺する。
その時、一人の指揮官らしき男が部屋に入って来て、遠慮がちに王に近づくと、何事かを耳打ちした。王は驚き、当てが外れたとでも言うように、渋い顔になる。そして、口を開いた。
「お前の奴隷共が、部屋から逃げ出し、城内で暴れているそうだ、主人のみならず、部下も礼儀知らずなことよ。」
俺は、心の中で喝采を叫んだ。そうか、あいつら、やったか。どうせ、王がよからぬ仕掛けをたくらんでいたのだろう。
「俺の仲間は弱くはないし、お前の計略に引っかかるほど、間抜けでもない。」
俺はそう言うと、王に向かって捨て台詞を放った。
「俺もそろそろお暇させてもらう。邪魔立てするなら、相応の覚悟をするといい。」
俺はそのままでかい扉を開け、謁見の間から出た。
耳を澄ますと、なるほど、遠くで戦闘の音がする。俺は騒ぎの方へ向かった。
いくつかの通路を曲がると、俺を呼ぶリファナの声が聞こえた。そのまま進むと、いた!兵士をのしているラフタリアたちが見えた。いち早く気付いたリファナが、俺に抱き付いて来る。