「どういうことだ。もう、終わったんじゃ、無かったのか。」
尚文が半ば叫ぶ。
「ううん、従者の試験は、続いている。断れば、フィーロ以外の全員に、死んでもらう。」
フィトリアは、俺を見つめて、言う。全身にみなぎらせているのは、殺気だ。フィーロの時とは、明らかに違う。
「分かった。」
俺は言った。
「おい、勝彦。」
尚文が、慌てたように、言う。
「どのみち、フィトリアからは、実力からして、逃げられない。精一杯、あがくしか、無いだろう。」
俺は、フィトリアからの殺気を感じながら、言った。
「じゃあ、こっち。」
フィトリアは、促すように歩いていく。俺は、後に従った。
「今回は、結界は張らないけど、邪魔は、しないこと。」
フィトリアは、尚文達に向かって、言った。
フィトリアは、俺に向かって、言った。
「貴方、転生者、だよね。どうやって、盾の勇者に、取り入った?」
俺は、戸惑った、なぜこいつは知っている?昨晩、尚文から、聞いたのか?
「ああ、そうだ。だが、取り入ったんじゃない。仲間にしてもらったんだ。」
俺は答えた。
「それは、同じこと!転生者は、敵!」
言いながら、フィトリアは、突っ込んで来た。俺は、早口で魔法を連発する。
「サイコアタックIX!」
「サイコアタックIX!」
「サイコアタックIX!」
フィトリアの突進が止まる。俺は、さらに魔法を放つ。
「サンダーアタックIX!」
雷がフィトリアを襲い、彼女は悲鳴を上げる。
俺は、魔力水を飲んで、魔力を補充した。フィトリアは、まだうずくまっている。
ここで、レーザーで畳みかけようか。いや、それでは、大怪我を負わせてしまう。彼女の意図がどうあれ、俺は、殺し合いをしたい訳ではない。
俺は魔法を放つ。
「サンダーブラストIX!」
光球がフィトリアを襲う。そして、爆発する。が、彼女は横っ飛びに飛んで、それを避けた。そうして、俺との距離を、一気に詰める。
「!」
俺は、咄嗟に、防御の魔法で全身を包んだ。
「ロックウォールIX!」
次の瞬間、俺は、衝突の衝撃と共に、腹に引き裂かれるような痛みを感じた。喉の奥から生暖かい液体がせり上がって来て、口から噴き出る。俺は、血の味を感じた。岩壁の防御を抜かれて、腹を破られたのだ。
フィトリアから次の攻撃が来る前に、俺は魔法を放った。
「ウィンドブラストIX!」
風の爆発を、俺とフィトリアの間で起こす。俺とフィトリアは、それぞれ吹き飛ばされた。
「勝彦!」
「カツヒコ様!」
「かっちゃん!」
「かつひこさん!」
「カツヒコ!」
みんなの声が聞こえる。俺は起き上がると、血をげえと吐いた。目が霞む。これは、少しヤバいかも、知れない。
俺は、起き上がったフィトリアに、魔法を放つ。
「サンダーアタックIX!」
フィトリアが、悲鳴を上げて、うずくまる。
俺は魔力水を飲もうとして、瓶を取りとした。手が震える。限界なのか。耳がぼうっとして来た。もしかしたら、さっきの腹の傷は、致命傷だったのかもしれない。
フィトリアは起き上がって、俺に突進して来た。俺は二つの魔法を放つ。
「ウィンドブラストIX!」
「ロックウォールIX!」
旋風がフィトリアにぶつかり、彼女が吹き飛ぶのが見えた。自分の身体に、岩壁が纏わりつくのが分かる。が、俺に出来たのはそこまでだった。
魔力枯渇によるマインドダウンなのか、体に限界が来たのか、俺はゆっくりと倒れた。皆が駆け寄ってくる気配がする。
『ひょっとして、死ぬのかな…。』
俺は不吉な思いを抱きながら、そのまま、気を失った。
夢の中で、フィーロがしゃべっている。
『かっちゃんを、殺しちゃ、ダメ!』
尚文が、何か言ってる。
『勝彦、死ぬな!』
『カツヒコ様は、一生懸命です。』
今度は、ラフタリアだ。
『私の、命の恩人…。』
これは、リファナか?
『油断しないように…』
フィトリアの声がする…。
俺は、柔らかな感覚に包まれながら、ゆっくりと目を開いた。何か、温かい匂いがする。顔を上げると、ラフタリアの泣き笑いの顔があった。俺は、彼女に膝枕されているのに気付いた。
「勝彦、大丈夫か?」
尚文を始め、皆が口々に大丈夫?と聞いて来る。俺は笑顔で答えて、体を起こそうとして、やめた。出血は止まって、表面的には傷口は塞がっているが、中はまだぐちゃぐちゃな感覚がある。多分、尚文がヒールで治療してくれたのだろうが、彼の魔法では完治出来ないレベルの傷なのであろう。
「フィトリア、もう、俺を殺さないのか?」
俺は聞いた。フィトリアからは、殺気が消えている。
「貴方も、盾の勇者も、執行猶予。盾の勇者が他の勇者と仲良くしなかったり、貴方が盾の勇者の仲間じゃなくなったら、また殺しに来る。仲間に、感謝なさい。」
フィトリアは答えた。多分、尚文たちが、とりなしてくれたんだろう。
「もう、従者の試験は終わり。これからはお祭りをやる。」
「お祭り?」
フィトリアの言に、フィーロが訊く。
「フィロリアルの次期女王の誕生のお祭り。眷属もその気になっている。」
「女王って、フィーロのこと?」
フィーロは戸惑いつつ、少し嫌そうな顔をしている。
「フィーロちゃん、おめでとう。」
メルティがはしゃいで、言う。
「まだ今日は始まったばかり。ゆっくり休んで行って。」
フィトリアは言った。
「それなら、お言葉に甘えようか。」
尚文が言った。
「入江勝彦。私の魔力が回復したら、傷を治す。それまで、安静にして。」
さすがに、フィーロとの連戦で、かつ、サイコアタックIXの三連発を食らっては、フィトリアも魔力が尽きているのだろう。
小一時間経ってから、フィトリアは、約束通り、俺の傷を癒してくれ、俺は立てるようになった。
それからは、確かに祭りと言えるにぎやかな一日になった。
メルティが、巨大化したフィトリアに乗って森を散策したり、フィトリアの眷属が、俺たちを乗せて、辺りを爆走したり、またもや尚文が、巨大鍋で料理を作ったり、フィーロとメルティが、歌と踊りを披露したり、フィロリアルに懐かれた尚文が、もみくちゃにされたり…。
俺は本調子ではないので、早めに横になっていた。と、そこに、ラフタリアとリファナがやって来た。
「大丈夫ですか、カツヒコ様。」
「ああ、大丈夫だ。念のため、横になっているだけだ。」
と答えると、リファナが、
「お薬をもらって来たわ。これを飲んで。」
と粉薬を渡し、それを飲むと、水を飲ませてくれた。
「そういえば、尚文は?」
「フィトリアさんと、お話があるようです。」
そう言えば、アニメでも、二日連続で話をしていたようだが、その内容はあまり思い出せない。確か、四聖が一人でも欠けると、波を乗り越えるのがつらくなるんだっけか。
「今日は、ありがとう。」
リファナが言った。
「私たちのために、フィトリアと戦ってくれたんでしょう?」
「半分は、自分のためだけどな。」
俺は答える。
「だから、ご褒美。今日は私たちと、一緒に寝ましょう。」
「え?」
「え?」
リファナの発言に、俺とラフタリアが、同時に戸惑う。
「別に、いいじゃない。何か問題ある?ラフタリアちゃん。」
「い、いえ。」
ちょっと問題はあるような気もするが、そのままリファナに引っ張られ、寝床に連れていかれた。
そこには、十数羽のフィロリアルが眠っており、先に、フィーロとメルティが仲良く眠りこけていた。
「フィロリアルの羽の中で眠ると、あったかくて、気持ちいいのよ。」
リファナに言われるまでもなく、フィロリアルの羽の催眠効果は、魔物姿のフィーロで実証済みだ。
素直に、リファナの隣で横になる。ラフタリアも、俺の隣で横になった。
「なんか、懐かしいな。」
「そうですね。」
ラフタリアがまだ小さい姿だった頃、宿屋では、尚文と3人、川の字になって寝ていたものだ。
なんか、ソワソワする感覚はあったが、フィロリアルの高い体温が俺を包み、疲れもあって、俺は夢の中に引き込まれていった。
翌朝は、目覚めこそさわやかだった。が、朝立ちしていた俺を、メルティが汚物を見るような目で見たり、女性陣と寝ていたことで、尚文から、あきれるようなジト目で見られて、俺の精神はがりがりと削られてしまった。
勝彦が気絶している間の話を半話分書いているのですが、ネタバレがあるので、あのように端折りました。
後に公開するかどうかは思案中です。
定番の夢精イベントですが、勝彦君が再起不能になるので、止めにして、朝立ちにとどめました。もう若くないですし…。