転生引きこもりは狸娘の夢を見る   作:マーカス・クラン

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ストックはこの話までだったのですが、投稿している間に一話書けたので、明日も更新します。



第42話 勝彦VSフィトリア

 「どういうことだ。もう、終わったんじゃ、無かったのか。」

尚文が半ば叫ぶ。

 「ううん、従者の試験は、続いている。断れば、フィーロ以外の全員に、死んでもらう。」

フィトリアは、俺を見つめて、言う。全身にみなぎらせているのは、殺気だ。フィーロの時とは、明らかに違う。

 

 「分かった。」

俺は言った。

 「おい、勝彦。」

尚文が、慌てたように、言う。

 「どのみち、フィトリアからは、実力からして、逃げられない。精一杯、あがくしか、無いだろう。」

俺は、フィトリアからの殺気を感じながら、言った。

 

 「じゃあ、こっち。」

フィトリアは、促すように歩いていく。俺は、後に従った。

 「今回は、結界は張らないけど、邪魔は、しないこと。」

フィトリアは、尚文達に向かって、言った。

 

 フィトリアは、俺に向かって、言った。

 「貴方、転生者、だよね。どうやって、盾の勇者に、取り入った?」

俺は、戸惑った、なぜこいつは知っている?昨晩、尚文から、聞いたのか?

 「ああ、そうだ。だが、取り入ったんじゃない。仲間にしてもらったんだ。」

俺は答えた。

 

 「それは、同じこと!転生者は、敵!」

言いながら、フィトリアは、突っ込んで来た。俺は、早口で魔法を連発する。

 「サイコアタックIX!」

 「サイコアタックIX!」

 「サイコアタックIX!」

 

 フィトリアの突進が止まる。俺は、さらに魔法を放つ。

 「サンダーアタックIX!」

 雷がフィトリアを襲い、彼女は悲鳴を上げる。

 

 俺は、魔力水を飲んで、魔力を補充した。フィトリアは、まだうずくまっている。

 ここで、レーザーで畳みかけようか。いや、それでは、大怪我を負わせてしまう。彼女の意図がどうあれ、俺は、殺し合いをしたい訳ではない。

 俺は魔法を放つ。

 「サンダーブラストIX!」

 

 光球がフィトリアを襲う。そして、爆発する。が、彼女は横っ飛びに飛んで、それを避けた。そうして、俺との距離を、一気に詰める。

 「!」

 俺は、咄嗟に、防御の魔法で全身を包んだ。

 「ロックウォールIX!」

 

 次の瞬間、俺は、衝突の衝撃と共に、腹に引き裂かれるような痛みを感じた。喉の奥から生暖かい液体がせり上がって来て、口から噴き出る。俺は、血の味を感じた。岩壁の防御を抜かれて、腹を破られたのだ。

 フィトリアから次の攻撃が来る前に、俺は魔法を放った。

 「ウィンドブラストIX!」

風の爆発を、俺とフィトリアの間で起こす。俺とフィトリアは、それぞれ吹き飛ばされた。

 

 「勝彦!」

 「カツヒコ様!」

 「かっちゃん!」

 「かつひこさん!」

 「カツヒコ!」

みんなの声が聞こえる。俺は起き上がると、血をげえと吐いた。目が霞む。これは、少しヤバいかも、知れない。

 

 俺は、起き上がったフィトリアに、魔法を放つ。

 「サンダーアタックIX!」

フィトリアが、悲鳴を上げて、うずくまる。

 俺は魔力水を飲もうとして、瓶を取りとした。手が震える。限界なのか。耳がぼうっとして来た。もしかしたら、さっきの腹の傷は、致命傷だったのかもしれない。

 

 フィトリアは起き上がって、俺に突進して来た。俺は二つの魔法を放つ。

 「ウィンドブラストIX!」

 「ロックウォールIX!」

旋風がフィトリアにぶつかり、彼女が吹き飛ぶのが見えた。自分の身体に、岩壁が纏わりつくのが分かる。が、俺に出来たのはそこまでだった。

 

 魔力枯渇によるマインドダウンなのか、体に限界が来たのか、俺はゆっくりと倒れた。皆が駆け寄ってくる気配がする。

 『ひょっとして、死ぬのかな…。』

俺は不吉な思いを抱きながら、そのまま、気を失った。

 

 

夢の中で、フィーロがしゃべっている。

 『かっちゃんを、殺しちゃ、ダメ!』

尚文が、何か言ってる。

 『勝彦、死ぬな!』

 

 『カツヒコ様は、一生懸命です。』

今度は、ラフタリアだ。

 『私の、命の恩人…。』

これは、リファナか?

 『油断しないように…』

フィトリアの声がする…。

 

 

 俺は、柔らかな感覚に包まれながら、ゆっくりと目を開いた。何か、温かい匂いがする。顔を上げると、ラフタリアの泣き笑いの顔があった。俺は、彼女に膝枕されているのに気付いた。

 

 「勝彦、大丈夫か?」

尚文を始め、皆が口々に大丈夫?と聞いて来る。俺は笑顔で答えて、体を起こそうとして、やめた。出血は止まって、表面的には傷口は塞がっているが、中はまだぐちゃぐちゃな感覚がある。多分、尚文がヒールで治療してくれたのだろうが、彼の魔法では完治出来ないレベルの傷なのであろう。

 

 「フィトリア、もう、俺を殺さないのか?」

俺は聞いた。フィトリアからは、殺気が消えている。

 「貴方も、盾の勇者も、執行猶予。盾の勇者が他の勇者と仲良くしなかったり、貴方が盾の勇者の仲間じゃなくなったら、また殺しに来る。仲間に、感謝なさい。」

フィトリアは答えた。多分、尚文たちが、とりなしてくれたんだろう。

 

 「もう、従者の試験は終わり。これからはお祭りをやる。」

 「お祭り?」

フィトリアの言に、フィーロが訊く。

 「フィロリアルの次期女王の誕生のお祭り。眷属もその気になっている。」

 「女王って、フィーロのこと?」

フィーロは戸惑いつつ、少し嫌そうな顔をしている。

 「フィーロちゃん、おめでとう。」

メルティがはしゃいで、言う。

 

 「まだ今日は始まったばかり。ゆっくり休んで行って。」

フィトリアは言った。

 「それなら、お言葉に甘えようか。」

尚文が言った。

 「入江勝彦。私の魔力が回復したら、傷を治す。それまで、安静にして。」

さすがに、フィーロとの連戦で、かつ、サイコアタックIXの三連発を食らっては、フィトリアも魔力が尽きているのだろう。

 小一時間経ってから、フィトリアは、約束通り、俺の傷を癒してくれ、俺は立てるようになった。

 

 それからは、確かに祭りと言えるにぎやかな一日になった。

 メルティが、巨大化したフィトリアに乗って森を散策したり、フィトリアの眷属が、俺たちを乗せて、辺りを爆走したり、またもや尚文が、巨大鍋で料理を作ったり、フィーロとメルティが、歌と踊りを披露したり、フィロリアルに懐かれた尚文が、もみくちゃにされたり…。

 

 俺は本調子ではないので、早めに横になっていた。と、そこに、ラフタリアとリファナがやって来た。

 「大丈夫ですか、カツヒコ様。」

 「ああ、大丈夫だ。念のため、横になっているだけだ。」

と答えると、リファナが、

 「お薬をもらって来たわ。これを飲んで。」

と粉薬を渡し、それを飲むと、水を飲ませてくれた。

 

 「そういえば、尚文は?」

 「フィトリアさんと、お話があるようです。」

そう言えば、アニメでも、二日連続で話をしていたようだが、その内容はあまり思い出せない。確か、四聖が一人でも欠けると、波を乗り越えるのがつらくなるんだっけか。

 

 「今日は、ありがとう。」

リファナが言った。

 「私たちのために、フィトリアと戦ってくれたんでしょう?」

 「半分は、自分のためだけどな。」

俺は答える。

 

 「だから、ご褒美。今日は私たちと、一緒に寝ましょう。」

 「え?」

 「え?」

リファナの発言に、俺とラフタリアが、同時に戸惑う。

 「別に、いいじゃない。何か問題ある?ラフタリアちゃん。」

 「い、いえ。」

ちょっと問題はあるような気もするが、そのままリファナに引っ張られ、寝床に連れていかれた。

 

 そこには、十数羽のフィロリアルが眠っており、先に、フィーロとメルティが仲良く眠りこけていた。

 「フィロリアルの羽の中で眠ると、あったかくて、気持ちいいのよ。」

リファナに言われるまでもなく、フィロリアルの羽の催眠効果は、魔物姿のフィーロで実証済みだ。

 

 素直に、リファナの隣で横になる。ラフタリアも、俺の隣で横になった。

 「なんか、懐かしいな。」

 「そうですね。」

ラフタリアがまだ小さい姿だった頃、宿屋では、尚文と3人、川の字になって寝ていたものだ。

 

 なんか、ソワソワする感覚はあったが、フィロリアルの高い体温が俺を包み、疲れもあって、俺は夢の中に引き込まれていった。

 

 翌朝は、目覚めこそさわやかだった。が、朝立ちしていた俺を、メルティが汚物を見るような目で見たり、女性陣と寝ていたことで、尚文から、あきれるようなジト目で見られて、俺の精神はがりがりと削られてしまった。

 




勝彦が気絶している間の話を半話分書いているのですが、ネタバレがあるので、あのように端折りました。
後に公開するかどうかは思案中です。

定番の夢精イベントですが、勝彦君が再起不能になるので、止めにして、朝立ちにとどめました。もう若くないですし…。
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