転生引きこもりは狸娘の夢を見る   作:マーカス・クラン

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第53話 ラフタリアといっしょ その3

 俺たちは、拘束したならず者達の前に立った。さて、こいつらをどうするか…。

 「解放してしまうのですか?」

ニュアンスとして、ラフタリアは、逃がすのは反対の様だ。

 「PKに加わるような奴らだからな。単に逃がすわけにはいかないだろうが…。」

 「PK?」

ラフタリアが小首をかしげる。尚文が、元の世界の言葉を使った時に、良く見せる仕草だ。

 

 「マインドアシスト!」

 「マインドアシスト!」

俺は魔法を放って男達を正気付かせる。経験上、男たちは大人しくなっているはずだ。心理的に、俺に対して恐怖の感情が湧くのかもしれない。この辺は、研究が必要だろう。

 

 ならず者たちは、辺りをきょろきょろと見回し、大男の死体を見つけた。それで、事情を察したのだろう。怯えた様に、俺たちを見る。

 「状況は分かるな。それで、お前達の処遇だが…。」

話し始めた俺に、男達が懇願する。

 「助けて下せえ!なんでも致しやす!」

 「俺たち、金で雇われただけなんですわ!」

 

 「金で雇われただけと言って、人殺しに手を染める奴を、許す道理はないんだがなぁ。」

俺の発言に、男達は必死に反論する。

 「敵討ちって聞いていたんです。それに、金払いも良かったし、いい女抱かせてくれるって…。」

そこで、彼らがラフタリアを見るので、俺はカチンと来た。

 

 「そんなの、非合法なものって、分からなかったんですか!?」

ラフタリアが怒る。下卑た視線に、先ほど受けた仕打ちが甦ったのだろう。

 俺も、迷っていた心が、その一言で定まった。俺は、魔法を放って、男達の足を縛っていたロープを焼き切った。

 

 「立て!」

俺は言った。

 男達は、ばね仕掛けの人形のように、立ち上がった。

 「お前たちは解放してやる。ただし、そのままだ。」

男達は、後ろ手に縛られたままだ。抵抗手段を持たずに、この魔物蠢く島に放置されれば、まず命はない。

 

 「そんな!助けて下せえ!」

 「せめて、縄をほどいて下せえ!」

男達が懇願する。

 「お前達、魔法は使えないのか?」

俺の問いに、

 「からっきしです。」

 「俺たちゃシーフです。そんなもん、使えません。」

男達は答える。

 

 「俺たちは、お前達に直接は手を下さない。そういう事だ。」

俺は、死刑宣告をした。

 「さっさと、行け!」

それでも、男達は動かない。俺はサンダーブラストを、男達の目前に打ち込んだ。男達は、悲鳴を上げて、逃げて行く。

 

 男達が叢に消えると、ラフタリアが俺の手を取って、言った。

 「良かったのですか。」

 「仕方ないさ。これが、最大限の譲歩だ。」

俺は答えた。

 

 それから、俺は、ファイアーウォールVIIで、大男とスカウトの死体を焼いた。それらは程なく灰になった。

 

 

 俺たちは、休み休み、海岸へ向かった。

 道中、何度か魔物に襲われたが、何とか撃退する事が出来た。あの妙なドロップ品も増えた。

 

 何度か目の休憩の時、俺は、思い切ってラフタリアに打ち明けた。ラルクとテリスの事だ。

 彼らが、尚文の命を狙っていること、本来の敵ではないこと、俺の原作知識が、この点では曖昧なこと…。

 

 ラフタリアは、黙って聞いていたが、俺の話を聞き終わると、口を開いた。

 「まず、ナオフミ様に、正直に話しましょう。私には、ラルクさんとテリスさんが、敵であるとは思えません。今回は、カツヒコ様の記憶が間違いなのではないかと思います。」

そうして、俺の顔を見て、続けた。

 「話しずらかったとはいえ、今回のように、隠し事を続けると、ナオフミ様の信用を無くしますよ。」

 

 確かに、ラフタリアの言は正論だ。俺は反省をする。

 しかし、ラルク達と一緒にレベル上げをするのは、敵を知る上でも必要な事と思う。尚文に話すと、中止にならないか?

 

 ラフタリアは答える。

 「ナオフミ様は、一度した約束を、簡単に違える人ではありません。その心配は無用だと思います。」

彼女は、少し考えて、続ける。

 「ただ、こんな話を聞かされると、ナオフミ様も、思うところがあるかもしれませんが…。それでも、この事を黙って、ナオフミ様を騙す様にして、レベル上げをするのは、反対です。」

 

 「分かった。尚文と合流したら、正直に話そう。しかし、今回のキイチロウとの遭遇を含めて、怒られることが多そうだ。」

俺が言うと、

 「あの大男との戦闘で、カツヒコ様に落ち度はありません。私が、ナオフミ様に説明します。」

とラフタリアが言ってくれた。

 「いや、俺の油断から、呪いの矢を打ち込まれたんだからな。落ち度は大いにある。怒られても、仕方ないな。お前に、危険が及ぶところだったんだから。」

俺は、反省をする。あの時、周囲の警戒を怠っていたのは、事実だ。

 

 「私も油断して、食人植物に捕まったりしましたから…。その辺はお相子です。一緒に怒られましょう。」

ラフタリアが笑顔で言ってくれたので、心が幾分軽くなった。

 

 その後、俺たちは舟渡と合流し、カルミラ本島へ戻った。

 

 

 カルミラ本島に着くと、既に夕方を過ぎていた。

 まずは治療院に寄り、薬では治し切れなかった俺の傷を、回復魔法で治してもらった。そして、ホテルに急ぐ。

 ホテルでは、既に尚文たちが待っていた。

 

 夕食を取りながら、情報交換をすることになり、皆で食堂へ行った。

 そこで、今回の顛末を話す。

 食人植物にラフタリアが捕らわれたことを聞いた時点で、尚文の顔色が変わる。リファナも心配そうだ。

 キイチロウとの戦闘のくだりでは、尚文が目をむいた。沸騰しそうになるところを、俺とラフタリアで平謝りに謝った。

 「今回は無事だったから良かったが、二人とも、油断が過ぎるぞ。」

尚文が説教をするが、二人して先手を打って謝っているので、勢いがない。

 「まあ、大した怪我で無かったので、ほっとしたが。」

尚文の言に、俺とラフタリアは安堵する。

 

 続けて、ラルクとテリスの事を話した。尚文は、予想通りの反応をする。

 「二人が敵だって?信じられないな。」

彼は、俺の顔を見ながら続ける。

 「しかし、勝彦のアニメ知識が、今まで当たって来たのも事実だ。どう考えたらいいんだろうな。」

 

 ラフタリアが言う。

 「今回は、カツヒコ様が間違っていると、私は思います。あの二人が悪い人とは、思えません。」

 「ラフタリアちゃんに、賛成よ。あの人たちが、なおふみ様の命を狙っているなんて、考え難いわ。なおふみ様を盾の勇者と思わないくらいのお人好しなんですもの。」

リファナが言った。

 「でも、かっちゃんも、うそをいってないよー。」

とフィーロ。

 

 「勝彦、お前はどうしたらいいんだと思うんだ?」

尚文が訊いて来た。俺は答える。

 「俺は、彼らと交流を続けて、出来れば仲良くなって、その時になって彼らを説得できるような関係が築けると、一番いいと思う。一方で、彼らの戦い方を観察し、こちらの命を狙って来た時に、彼らを退けられるようにするんだ。その為、明日は、こちらの手の内は、隠しておいた方がいいだろう。」

 「具体的には?」

 「戦い方を変えるのは、リスクが大きい。ラフタリアとリファナの幻影魔法、それと、俺の必中魔法は隠しておくのがいいのではないかと思う。」

 

 「そうだな。魔物相手に幻影魔法は必須ではないし、勝彦の魔法形態は多彩だ。使わなくとも、問題はないだろう。だが…、」

尚文の顔が曇る。

 「グラスだな。」

俺は言った。

 「あの人が、出てくるのですか!?」

ラフタリアが驚く。

 「あくまで、可能性の問題だが、覚悟しておいた方が、いいだろう。」

尚文は言う。

 「そうなった場合、また俺が相手をするさ。」

俺は言った。彼女には、精神魔法が良く効く。尤も、ラルクとテリスに邪魔されなければ、の話だが。

 

 「とにかく、明日は、ラルクとテリスとレベル上げをして、様子を見てみよう。皆も、一応気を付けておいてくれ。」

尚文が言った。

 

 食事の後、俺と一緒に男部屋に引っ込んだ尚文は、彫金を始めた。

 「何をしているんだ?」

俺は訊いた。

 「船の上で、テリスからアクセサリー制作を頼まれた。約束したからな。明日までに仕上げておこうと思う。」

尚文は答えた。

 

 俺は先に風呂へ入った。俺が上がった後も、尚文はアクセサリーと格闘していた。

 俺はベッドに横になった。今日はいろいろあった。疲れていたのだろう。尚文の振るう槌の音を子守唄に、俺は眠りに引き込まれていった。

 




尚文君のセリフがおかしかったので、修正しました
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