俺たちは、拘束したならず者達の前に立った。さて、こいつらをどうするか…。
「解放してしまうのですか?」
ニュアンスとして、ラフタリアは、逃がすのは反対の様だ。
「PKに加わるような奴らだからな。単に逃がすわけにはいかないだろうが…。」
「PK?」
ラフタリアが小首をかしげる。尚文が、元の世界の言葉を使った時に、良く見せる仕草だ。
「マインドアシスト!」
「マインドアシスト!」
俺は魔法を放って男達を正気付かせる。経験上、男たちは大人しくなっているはずだ。心理的に、俺に対して恐怖の感情が湧くのかもしれない。この辺は、研究が必要だろう。
ならず者たちは、辺りをきょろきょろと見回し、大男の死体を見つけた。それで、事情を察したのだろう。怯えた様に、俺たちを見る。
「状況は分かるな。それで、お前達の処遇だが…。」
話し始めた俺に、男達が懇願する。
「助けて下せえ!なんでも致しやす!」
「俺たち、金で雇われただけなんですわ!」
「金で雇われただけと言って、人殺しに手を染める奴を、許す道理はないんだがなぁ。」
俺の発言に、男達は必死に反論する。
「敵討ちって聞いていたんです。それに、金払いも良かったし、いい女抱かせてくれるって…。」
そこで、彼らがラフタリアを見るので、俺はカチンと来た。
「そんなの、非合法なものって、分からなかったんですか!?」
ラフタリアが怒る。下卑た視線に、先ほど受けた仕打ちが甦ったのだろう。
俺も、迷っていた心が、その一言で定まった。俺は、魔法を放って、男達の足を縛っていたロープを焼き切った。
「立て!」
俺は言った。
男達は、ばね仕掛けの人形のように、立ち上がった。
「お前たちは解放してやる。ただし、そのままだ。」
男達は、後ろ手に縛られたままだ。抵抗手段を持たずに、この魔物蠢く島に放置されれば、まず命はない。
「そんな!助けて下せえ!」
「せめて、縄をほどいて下せえ!」
男達が懇願する。
「お前達、魔法は使えないのか?」
俺の問いに、
「からっきしです。」
「俺たちゃシーフです。そんなもん、使えません。」
男達は答える。
「俺たちは、お前達に直接は手を下さない。そういう事だ。」
俺は、死刑宣告をした。
「さっさと、行け!」
それでも、男達は動かない。俺はサンダーブラストを、男達の目前に打ち込んだ。男達は、悲鳴を上げて、逃げて行く。
男達が叢に消えると、ラフタリアが俺の手を取って、言った。
「良かったのですか。」
「仕方ないさ。これが、最大限の譲歩だ。」
俺は答えた。
それから、俺は、ファイアーウォールVIIで、大男とスカウトの死体を焼いた。それらは程なく灰になった。
俺たちは、休み休み、海岸へ向かった。
道中、何度か魔物に襲われたが、何とか撃退する事が出来た。あの妙なドロップ品も増えた。
何度か目の休憩の時、俺は、思い切ってラフタリアに打ち明けた。ラルクとテリスの事だ。
彼らが、尚文の命を狙っていること、本来の敵ではないこと、俺の原作知識が、この点では曖昧なこと…。
ラフタリアは、黙って聞いていたが、俺の話を聞き終わると、口を開いた。
「まず、ナオフミ様に、正直に話しましょう。私には、ラルクさんとテリスさんが、敵であるとは思えません。今回は、カツヒコ様の記憶が間違いなのではないかと思います。」
そうして、俺の顔を見て、続けた。
「話しずらかったとはいえ、今回のように、隠し事を続けると、ナオフミ様の信用を無くしますよ。」
確かに、ラフタリアの言は正論だ。俺は反省をする。
しかし、ラルク達と一緒にレベル上げをするのは、敵を知る上でも必要な事と思う。尚文に話すと、中止にならないか?
ラフタリアは答える。
「ナオフミ様は、一度した約束を、簡単に違える人ではありません。その心配は無用だと思います。」
彼女は、少し考えて、続ける。
「ただ、こんな話を聞かされると、ナオフミ様も、思うところがあるかもしれませんが…。それでも、この事を黙って、ナオフミ様を騙す様にして、レベル上げをするのは、反対です。」
「分かった。尚文と合流したら、正直に話そう。しかし、今回のキイチロウとの遭遇を含めて、怒られることが多そうだ。」
俺が言うと、
「あの大男との戦闘で、カツヒコ様に落ち度はありません。私が、ナオフミ様に説明します。」
とラフタリアが言ってくれた。
「いや、俺の油断から、呪いの矢を打ち込まれたんだからな。落ち度は大いにある。怒られても、仕方ないな。お前に、危険が及ぶところだったんだから。」
俺は、反省をする。あの時、周囲の警戒を怠っていたのは、事実だ。
「私も油断して、食人植物に捕まったりしましたから…。その辺はお相子です。一緒に怒られましょう。」
ラフタリアが笑顔で言ってくれたので、心が幾分軽くなった。
その後、俺たちは舟渡と合流し、カルミラ本島へ戻った。
カルミラ本島に着くと、既に夕方を過ぎていた。
まずは治療院に寄り、薬では治し切れなかった俺の傷を、回復魔法で治してもらった。そして、ホテルに急ぐ。
ホテルでは、既に尚文たちが待っていた。
夕食を取りながら、情報交換をすることになり、皆で食堂へ行った。
そこで、今回の顛末を話す。
食人植物にラフタリアが捕らわれたことを聞いた時点で、尚文の顔色が変わる。リファナも心配そうだ。
キイチロウとの戦闘のくだりでは、尚文が目をむいた。沸騰しそうになるところを、俺とラフタリアで平謝りに謝った。
「今回は無事だったから良かったが、二人とも、油断が過ぎるぞ。」
尚文が説教をするが、二人して先手を打って謝っているので、勢いがない。
「まあ、大した怪我で無かったので、ほっとしたが。」
尚文の言に、俺とラフタリアは安堵する。
続けて、ラルクとテリスの事を話した。尚文は、予想通りの反応をする。
「二人が敵だって?信じられないな。」
彼は、俺の顔を見ながら続ける。
「しかし、勝彦のアニメ知識が、今まで当たって来たのも事実だ。どう考えたらいいんだろうな。」
ラフタリアが言う。
「今回は、カツヒコ様が間違っていると、私は思います。あの二人が悪い人とは、思えません。」
「ラフタリアちゃんに、賛成よ。あの人たちが、なおふみ様の命を狙っているなんて、考え難いわ。なおふみ様を盾の勇者と思わないくらいのお人好しなんですもの。」
リファナが言った。
「でも、かっちゃんも、うそをいってないよー。」
とフィーロ。
「勝彦、お前はどうしたらいいんだと思うんだ?」
尚文が訊いて来た。俺は答える。
「俺は、彼らと交流を続けて、出来れば仲良くなって、その時になって彼らを説得できるような関係が築けると、一番いいと思う。一方で、彼らの戦い方を観察し、こちらの命を狙って来た時に、彼らを退けられるようにするんだ。その為、明日は、こちらの手の内は、隠しておいた方がいいだろう。」
「具体的には?」
「戦い方を変えるのは、リスクが大きい。ラフタリアとリファナの幻影魔法、それと、俺の必中魔法は隠しておくのがいいのではないかと思う。」
「そうだな。魔物相手に幻影魔法は必須ではないし、勝彦の魔法形態は多彩だ。使わなくとも、問題はないだろう。だが…、」
尚文の顔が曇る。
「グラスだな。」
俺は言った。
「あの人が、出てくるのですか!?」
ラフタリアが驚く。
「あくまで、可能性の問題だが、覚悟しておいた方が、いいだろう。」
尚文は言う。
「そうなった場合、また俺が相手をするさ。」
俺は言った。彼女には、精神魔法が良く効く。尤も、ラルクとテリスに邪魔されなければ、の話だが。
「とにかく、明日は、ラルクとテリスとレベル上げをして、様子を見てみよう。皆も、一応気を付けておいてくれ。」
尚文が言った。
食事の後、俺と一緒に男部屋に引っ込んだ尚文は、彫金を始めた。
「何をしているんだ?」
俺は訊いた。
「船の上で、テリスからアクセサリー制作を頼まれた。約束したからな。明日までに仕上げておこうと思う。」
尚文は答えた。
俺は先に風呂へ入った。俺が上がった後も、尚文はアクセサリーと格闘していた。
俺はベッドに横になった。今日はいろいろあった。疲れていたのだろう。尚文の振るう槌の音を子守唄に、俺は眠りに引き込まれていった。
尚文君のセリフがおかしかったので、修正しました