なかなか文章が降りて来ず、また、余計なことをごちゃごちゃと考えていました。
それから俺たちは、3日ほど、いろんな島でレベル上げを続けた。
俺の魔法のレベルがXIIを超えたあたりから、地形にまで影響を与えるようになって来た。早い話が、魔法の跡がクレーターになるのだ。これからは、高レベルの魔法は、使いどころを考えなくてはならないだろう。
俺たちは、レベルが70を超えると、ステータスエンチャントでレベルを下げ、資質を向上させた。俺も何度かその恩恵に預かり、魔力を向上させた。
その中でリファナは頑としてレベルを下げなかった。その訳は、彼女がレベル75を超えたあたりで明かされた。
ある島の広場で休憩している時に、リファナが、もう一段階変身出来る様になったから、見て欲しいと言って来た。
皆が注目すると、彼女は、獣人姿になり、更に変身する。体が縮み、小動物の様になった彼女は、爪を交換する。その姿は、まるで、大きな
皆が驚く中、リファナは俺に言った。
「かつひこさん、勝負をしましょう。これから、距離を取るから、貴方は私を近づけないように、魔法を放って頂戴。ただし、必中魔法や壁魔法、ストームはダメよ。私の突進を防いだら、貴方の勝ち。貴方に触れたら、私の勝ち。いいかしら。」
「だったら、雷魔法を使うが、当たると感電して、痛いぞ。」
驚いていた俺は、何とか返す。リファナは、魔法を躱すつもりなのだろう。自分の素早さのアピールをしたいのか。
「構わないわ。じゃあ。」
彼女は答えると、姿に似合った素早さで、あっという間に距離を取った。
リファナは離れたまま、じっと待っている。先ずは俺の手番と言う訳だろう。俺は魔法を放った。
「サンダーアロー!」
小手調べで、最弱の魔法を放つ。と言っても、速度が遅い訳ではない。
リファナは、電光の矢を軽々と躱して俺に迫る。そのスピードはフィーロに優った。
「サンダーボールII!」
俺は、少し範囲が大きくなる雷球を放つ。だが、それもリファナは躱す。
「サンダーブラストIII!」
俺は爆発魔法を放った。雷球がリファナを襲い、爆発する。彼女は横っ飛びに避けた。その敏捷さは、いつかのフィトリア以上だ。俺はリファナの動きを一瞬見失った。と思ったら、彼女は俺の懐に飛び込み、爪を俺の首筋に突きつけていた。
「へへへ、私の勝ち!」
リファナが言った。俺は、リファナの爪を首から外しながら、
「お手柔らかに、頼むよ。」
と言った。
「リファナちゃん、すごいわ!」
ラフタリアが感激して言う。
「すごいな、リファナ、フィーロより素早い!」
尚文が感嘆する。
「ありがとうございます、なおふみ様。」
リファナが感激する。
「フィーロ、負けないよー。」
無駄だ、鳥よ。お前の図体では、敏捷では今のリファナには勝てない。
「多分、大抵の攻撃は、躱せると思います。ただ、体力が落ちるので、攻撃の威力は下がりますが…」
リファナは言った。
「だが、幻影魔法を組み合わせると、ほぼ無敵だろう。普段はこっちの姿で戦った方が、いいんじゃないか。」
俺は言った。幻影魔法付きなら、認識することさえ困難なスピードだ。彼女と相対した敵は、ほとんど気付かずに、喉笛を爪で切り裂かれることになるだろう。
「そう思うわ。」
そう言いながら、リファナは尚文の肩に乗った。
「なおふみ様、この姿の私、どう思いますか?」
「どうって…。」
「可愛いですか?」
そう言って、リファナは体を尚文の首に擦り付ける。
「やめろ!小動物的な愛らしさがあるのは認める。」
尚文はリファナを振り落とした。
「なおふみ様の、いじわる。」
リファナがすねる。ラフタリアが、なんだか微妙な顔で、彼女を見ている。
「なおふみ様、私もステータスエンチャントで、資質を向上させてもらえませんか。」
リファナが言う。
「レベルを下げてしまうと、今みたいな変身が出来なくなるんじゃないのか?」
心配する尚文に、リファナは、
「大丈夫みたいです。一度得た変身能力は、レベルが下がっても失われない様ですから。」
と答える。
「それなら、敏捷を上げるんだな。」
「はい。」
これでますます彼女は無敵になる。フィーロが何だか悔しがっているが、無駄なあがきと言うものだろう。
「明日は休みにしよう。」
一日のレベル上げが終わり、カルミラ本島に戻って来た時、尚文は言った。
仲間たちの反応は、三者三様だった。
「わーい!お休みー!」
とフィーロは飛び跳ね、
「なおふみ様と、お休みデート…。」
とリファナは妄想し、
「私はまだ頑張れるんですけど、ナオフミ様がそう言うんなら…。」
とラフタリアは言いながら、いつものように尻尾が嬉しさを表して揺れている。
俺も賛成だ。ここらで気分転換してリフレッシュするのは、効率を考えても効果的だろう。
そんな訳で、俺たちは明日のバカンスのため、閉まる間際の市場に買い物に出かけた。水着を買うのである。
俺と尚文はすぐに決まったが、ラフタリアたちは、これがいいとか、あーだのこーだのと、まさに女三人寄れば姦しいとはこの事だ。俺たち男二人は、女の買い物に付き合う煩わしさを、改めて味わった。
翌日。
カルミラ本島を5人でぐるりと回った後、ビーチへ繰り出した。
泳ぎに目覚めているフィーロはあっという間に沖まで泳いで見えなくなってしまった。
残った4人でビーチフラッグ競争-リファナには勝てないのですぐやめてしまったが、何事かと真似をした地元民には好評のようだった-をしたり、ビーチバレー-これも見ていた地元民が真似をしていた-をしたりして楽しんだ。ちなみに、ビーチバレーは俺と組んだ組が必ず負け、俺の運痴が改めて目立つ結果になった。
今は、尚文と俺は、木陰で休んでおり、ラフタリアとリファナは波打ち際で二人戯れていた。
そこへ、フィーロが波間から上がって来る。泳ぎ疲れたのだろうか?
尚文の元へ寄って来たフィーロは、意外な事を言った。
「ごしゅじんさま、海の底に、赤く光ってる島があったの。」
「海の底に、だと。」
「あのね、なんか、おっきな石の建物があった。」
「どの辺にあったんだ、フィーロ。」
俺は訊く。
「うん、ずーっと向こう。」
やはり、鳥の表現は大雑把だ。
「深さは、どの位だ?」
今度は尚文が訊く。
「あの旗までの、半分位かな。」
フィーロは、ビーチフラッグ競争に使っていた粗末な旗を指さして言う。4、50メートルと言ったところか。
困った。生身では行き着くのは困難だぞ。そうか、便利なものがあった。尚文も思い当たったらしい。彼は、リファナを呼ぶ。
「リファナ、悪いが、ホテルに戻って、‘ペックル着ぐるみ’を取って来てくれ。」
「どうしたんですか。」
「フィーロが海中で何か見つけたらしい。面白そうだから、調べに行く。」
「分かりました。4着全部ですね。」
「ああ。」
リファナがホテルに向かって駆け出して行く。
リファナが到着する間に、俺たちは、舟渡を手配した。
リファナが戻って来ると、早速舟に乗り込み、フィーロの先導で、海中の島とやらへ向かう。
「この下だよ。」
しばらくすると、フィーロが告げた。
舟渡に舟を止めるように言う。舟渡は碇を下ろした。
舟渡に別口の料金を渡し、口止めをしてから、4人、舟の上でペックル着ぐるみに着替える。珍妙な姿に、舟渡が口をぽかんと開け、驚いている。それから、徐に海に飛び込み、潜水を始めたフィーロについて行く。
それにしても、この着ぐるみの潜水能力は大したものだ。運痴の俺でも、フィーロの速度について行けている。
やがて、確かに赤黒く光る島と言えるようなものが、海底に見えて来た。その上に、遺跡と思しき石の建物-神殿の様に見える-がのっている。
俺たちは、近づいて、手分けして入り口を探した。それは、すぐ見つかったが、固く閉ざされている。
しかし、尚文が近づくと、彼の盾が淡く光り、扉が開いた。中から気泡が出てくる。空気があるらしい。俺たちは中に侵入した。
程なく、水中から空気のある所へ上がる。だが、暗くて何も見えない。
「ラフタリア。」
尚文の指示に、彼女が魔法を唱える。
「ファスト・ライト!」
光球が現れ、辺りを照らす。
俺たちは驚いた。眼前に、巨大な砂時計-おそらく、城下街の教会にあるのと同じもの-が鎮座していたからだ。
「龍刻の砂時計が、なぜこんなところに…。」
呟く尚文の盾が光り、龍刻の砂時計と繋がった。尚文が息を飲む気配がする。
「どうしたんだ。」
俺の問いに、
「あと二日半で波が起こると表示が出た。」
尚文は答えた。
「何だって!?」
「ここで、波が起こるんですか!?」
叫ぶラフタリアに、
「どうやら、そうらしい。」
尚文は答える。
「急いで、戻ろう。戻って、三勇者に、集合を掛ける。」
尚文は言った。三勇者にも、ここの砂時計に登録してもらわなければ、共同して波に当たる事が出来ない。
「その後メルロマルクに戻って、女王に報告しよう。」
俺たちは急いでカルミラ本島へ戻り、‘影’を呼び出して事情を話した。‘影’は三勇者についている‘影’に連絡を取ってくれると言う。
それだけでは心もとないので、俺たちは三勇者を手分けして迎えに行くことにした。槍の勇者にはラフタリアとリファナのコンビ。剣の勇者には尚文と‘影’。弓の勇者には俺とフィーロが迎えに行くことになった。
影から勇者の居場所を聞き、早速迎えに行く。舟渡を手配するまでもなく、俺は魔物姿のフィーロに乗った。
「フィーロ、頼むぞ。」
フィーロは心得たとばかり、かなりの速度で目的の島へ向かって泳いで行く。
島へ上陸すると、弓の勇者についていた影と合流する。影の案内で島の内地に分け入ると、丁度弓のパーティーがボスと戦っているところだった。
鎧がタンク役を務め、弓の勇者樹君を始めとする後衛陣が攻撃を仕掛けている。徹底的な間接攻撃型パーティーだ。尤も、それにしてはタンク役の鎧が脆すぎる。しょっちゅう回復役のお世話になり、それでもダメージを負っているようだ。いつも無傷の尚文とは大違いだ。
また、弓の勇者の攻撃力が、思いのほか低い。散発的に、ボスや雑魚敵に攻撃を放っているが、何だか押され気味になっている。そう思って見ていると、フィーロが俺をつついて来た。フィーロ曰く、
「弓の人、何だか力を抜いているよー。」
フィーロ、お前もそう思うか。教皇戦で見た時に比べ、力の出し惜しみをしている感がある。
しばらく傍観していると、次第に弓のパーティーの雲行きが怪しくなって来た。鎧は傷だらけだし、他の前衛も徐々に下がって来ている。このままでは防衛線が崩壊すると思い、助けに入ろうと思った時に、それは起こった。
「ファルコン・ストライク!」
樹君の叫びと共に、彼の必殺技が発動し、ボスと群がっていた雑魚を一瞬で消滅させた。弓のパーティーは勝鬨を上げるとともに、樹君への称賛の声で満たされた。
「さすが樹様だ。」
「勇者の中で、樹さんが一番です。」
「樹様、素敵です。」
等々…。樹君も照れ臭そうな笑顔を浮かべ、まんざらでもなさそうだ。だがこれって…わざとらしくないか。パーティーの危機を演出する自作自演。そんな感じがする。
そんな中、フィーロが前に出て、樹君に向かって言った。
「ねえねえ弓の人、なんで力を抜いていたの?」
「いきなり何なんですか、この子は。尚文さんのパーティーメンバーですね!」
俺はフィーロの手を掴んで引き戻した。
「済まない、樹君。実は、話が有って参上したんだ。」
フィーロはめげずにさらに樹君にまとわりつく。
「ねえ弓の人、魔物に手加減していたのはどうして?」
「貴様、樹様に対して失礼であろう!」
鎧がフィーロを止めようとするが、デコピン一発で吹っ飛ばされる。
うん、困ったぞ。樹のマッチポンプが、フィーロの好奇心に火を付けたのだろう。フィーロを止めるには…。
俺は、弓のパーティーメンバーに対して言った。
「何か、フィーロの気を引くような食べ物を持っていないか?」
その間にも、フィーロは樹君にまとわりつき、樹君は辟易している。
リーシアが、
「昼食用の食糧しかありませんが…。」
と言いながら、バックパックを開く。俺はその中に、肉の塊を見つけ、樹君に夢中のフィーロに差し出す。
「ああ、俺の肉!」
と騒ぐ鎧は無視だ。
「フィーロ、肉があるぞ、こっちだ。」
俺は肉をフィーロに差し出す。
「わーい、お肉!」
フィーロは樹君を構うのを止めて、肉にかぶりついた。
その隙に樹君と話をする。
「一体何ですか、この子も、貴方も…。」
ご機嫌斜めの樹君に、龍刻の砂時計が見つかった顛末を話す。
「どうか、波に対処する勇者の務めとして、一緒に来て欲しい。」
樹君は少し考えて、言った。
「それを言われると仕方ありませんね、同行しましょう。」
その時、フィーロが肉を食べ終え、再び樹君にまとわりつこうとするのを、首根っこを捕まえて押さえる。
「かっちゃん、放して。」
「駄目だ。そもそも、弓の勇者はお前の質問には答えない。」
「どうして。」
「どうしてもだ。後で、その理由を説明してやる。今は、カルミラ島へ大人しく戻るんだ。また食い物を買ってやるから。」
俺は、フィーロの目を見て言う。
「ぶー。」
フィーロはぶー垂れながらも、従ってくれた。
俺たちは、弓のパーティーを引き連れてカルミラ島へ戻った。
すると、そこには既に、ラフタリアたちと槍のパーティーがいた。ラフタリアとリファナは、何だかげんなりている。槍のハーレムパーティーっぷりに、当てられたか。俺はフィーロのおやつを、屋台で買った。
程なく、尚文が剣のパーティーを引き連れて戻って来た。尚文も、なんだか微妙な表情だ。剣の勇者の孤高っぷりにあきれているのか。
早速、フィーロの案内で海中神殿に向かおうとすると、一悶着あった。剣の勇者が、激しく拒否をしたのだ。理由は見ていてすぐに分かった。恐らく、錬君はかなづちなのだろう。しかも、そのことを隠している。
結局、自分のプライドのために引っ込みがつかなくなった錬君が折れ、フィーロの案内で四聖勇者が海中神殿に向かった。
その間に、俺たちは島を統括する伯爵の元へ赴き、波があと二日半で起きる事を告げた。伯爵は、島民、観光客への周知と、波に対抗する冒険者の募集をすると言う。
その後、海中神殿で、龍刻の砂時計とリンクして来た四聖勇者と合流し、転送スキルでメルロマルクに向かった。
女王に謁見すると、そこからは話がトントン拍子に進んだ。
槍の勇者が港町で得ていたポータルを勇者全員で共有し、城下街から波のために編成された軍団を港町にピストン輸送、港町で稼働し得る8隻の軍艦を準備し、各勇者の分隊に編成したのち、出航させた。掛かった時間は一日半。後はカルミラ島へ赴き、波に備えるだけである。
カルミラ島への道すがら、俺はフィーロに、弓の勇者の自作自演について説明したが、ついに理解を得る事は叶わなかった。
リファナの二度目の変身ですが、‘槍の勇者のやり直し’のリファナ生存ルートには、レベルが明示されていなかったようなので、勝手に設定しました。ちょっと高すぎたかもしれません。