転生引きこもりは狸娘の夢を見る   作:マーカス・クラン

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遅くなりました。
なかなか文章が降りて来ず、また、余計なことをごちゃごちゃと考えていました。


第56話 リファナの変身と海中神殿

 それから俺たちは、3日ほど、いろんな島でレベル上げを続けた。

 

 俺の魔法のレベルがXIIを超えたあたりから、地形にまで影響を与えるようになって来た。早い話が、魔法の跡がクレーターになるのだ。これからは、高レベルの魔法は、使いどころを考えなくてはならないだろう。

 

 俺たちは、レベルが70を超えると、ステータスエンチャントでレベルを下げ、資質を向上させた。俺も何度かその恩恵に預かり、魔力を向上させた。

 その中でリファナは頑としてレベルを下げなかった。その訳は、彼女がレベル75を超えたあたりで明かされた。

 

 ある島の広場で休憩している時に、リファナが、もう一段階変身出来る様になったから、見て欲しいと言って来た。

 皆が注目すると、彼女は、獣人姿になり、更に変身する。体が縮み、小動物の様になった彼女は、爪を交換する。その姿は、まるで、大きな(いたち)そのものだ。首輪がやけに目立つ。

 

 皆が驚く中、リファナは俺に言った。

 「かつひこさん、勝負をしましょう。これから、距離を取るから、貴方は私を近づけないように、魔法を放って頂戴。ただし、必中魔法や壁魔法、ストームはダメよ。私の突進を防いだら、貴方の勝ち。貴方に触れたら、私の勝ち。いいかしら。」

 「だったら、雷魔法を使うが、当たると感電して、痛いぞ。」

驚いていた俺は、何とか返す。リファナは、魔法を躱すつもりなのだろう。自分の素早さのアピールをしたいのか。

 「構わないわ。じゃあ。」

彼女は答えると、姿に似合った素早さで、あっという間に距離を取った。

 

 リファナは離れたまま、じっと待っている。先ずは俺の手番と言う訳だろう。俺は魔法を放った。

 「サンダーアロー!」

小手調べで、最弱の魔法を放つ。と言っても、速度が遅い訳ではない。

 リファナは、電光の矢を軽々と躱して俺に迫る。そのスピードはフィーロに優った。

 「サンダーボールII!」

俺は、少し範囲が大きくなる雷球を放つ。だが、それもリファナは躱す。

 「サンダーブラストIII!」

俺は爆発魔法を放った。雷球がリファナを襲い、爆発する。彼女は横っ飛びに避けた。その敏捷さは、いつかのフィトリア以上だ。俺はリファナの動きを一瞬見失った。と思ったら、彼女は俺の懐に飛び込み、爪を俺の首筋に突きつけていた。

 「へへへ、私の勝ち!」

リファナが言った。俺は、リファナの爪を首から外しながら、

 「お手柔らかに、頼むよ。」

と言った。

 

 「リファナちゃん、すごいわ!」

ラフタリアが感激して言う。

 「すごいな、リファナ、フィーロより素早い!」

尚文が感嘆する。

 「ありがとうございます、なおふみ様。」

リファナが感激する。

 「フィーロ、負けないよー。」

無駄だ、鳥よ。お前の図体では、敏捷では今のリファナには勝てない。

 

 「多分、大抵の攻撃は、躱せると思います。ただ、体力が落ちるので、攻撃の威力は下がりますが…」

リファナは言った。

 「だが、幻影魔法を組み合わせると、ほぼ無敵だろう。普段はこっちの姿で戦った方が、いいんじゃないか。」

俺は言った。幻影魔法付きなら、認識することさえ困難なスピードだ。彼女と相対した敵は、ほとんど気付かずに、喉笛を爪で切り裂かれることになるだろう。

 「そう思うわ。」

そう言いながら、リファナは尚文の肩に乗った。

 「なおふみ様、この姿の私、どう思いますか?」

 「どうって…。」

 「可愛いですか?」

そう言って、リファナは体を尚文の首に擦り付ける。

 「やめろ!小動物的な愛らしさがあるのは認める。」

尚文はリファナを振り落とした。

 「なおふみ様の、いじわる。」

リファナがすねる。ラフタリアが、なんだか微妙な顔で、彼女を見ている。

 

 「なおふみ様、私もステータスエンチャントで、資質を向上させてもらえませんか。」

リファナが言う。

 「レベルを下げてしまうと、今みたいな変身が出来なくなるんじゃないのか?」

心配する尚文に、リファナは、

 「大丈夫みたいです。一度得た変身能力は、レベルが下がっても失われない様ですから。」

と答える。

 「それなら、敏捷を上げるんだな。」

 「はい。」

これでますます彼女は無敵になる。フィーロが何だか悔しがっているが、無駄なあがきと言うものだろう。

 

 

 「明日は休みにしよう。」

一日のレベル上げが終わり、カルミラ本島に戻って来た時、尚文は言った。

 仲間たちの反応は、三者三様だった。

 「わーい!お休みー!」

とフィーロは飛び跳ね、

 「なおふみ様と、お休みデート…。」

とリファナは妄想し、

 「私はまだ頑張れるんですけど、ナオフミ様がそう言うんなら…。」

とラフタリアは言いながら、いつものように尻尾が嬉しさを表して揺れている。

 俺も賛成だ。ここらで気分転換してリフレッシュするのは、効率を考えても効果的だろう。

 

 そんな訳で、俺たちは明日のバカンスのため、閉まる間際の市場に買い物に出かけた。水着を買うのである。

 俺と尚文はすぐに決まったが、ラフタリアたちは、これがいいとか、あーだのこーだのと、まさに女三人寄れば姦しいとはこの事だ。俺たち男二人は、女の買い物に付き合う煩わしさを、改めて味わった。

 

 翌日。

 カルミラ本島を5人でぐるりと回った後、ビーチへ繰り出した。

 泳ぎに目覚めているフィーロはあっという間に沖まで泳いで見えなくなってしまった。

 残った4人でビーチフラッグ競争-リファナには勝てないのですぐやめてしまったが、何事かと真似をした地元民には好評のようだった-をしたり、ビーチバレー-これも見ていた地元民が真似をしていた-をしたりして楽しんだ。ちなみに、ビーチバレーは俺と組んだ組が必ず負け、俺の運痴が改めて目立つ結果になった。

 

 今は、尚文と俺は、木陰で休んでおり、ラフタリアとリファナは波打ち際で二人戯れていた。

 そこへ、フィーロが波間から上がって来る。泳ぎ疲れたのだろうか?

 尚文の元へ寄って来たフィーロは、意外な事を言った。

 「ごしゅじんさま、海の底に、赤く光ってる島があったの。」

 「海の底に、だと。」

 「あのね、なんか、おっきな石の建物があった。」

 「どの辺にあったんだ、フィーロ。」

俺は訊く。

 「うん、ずーっと向こう。」

やはり、鳥の表現は大雑把だ。

 「深さは、どの位だ?」

今度は尚文が訊く。

 「あの旗までの、半分位かな。」

フィーロは、ビーチフラッグ競争に使っていた粗末な旗を指さして言う。4、50メートルと言ったところか。

 

 困った。生身では行き着くのは困難だぞ。そうか、便利なものがあった。尚文も思い当たったらしい。彼は、リファナを呼ぶ。

 「リファナ、悪いが、ホテルに戻って、‘ペックル着ぐるみ’を取って来てくれ。」

 「どうしたんですか。」

 「フィーロが海中で何か見つけたらしい。面白そうだから、調べに行く。」

 「分かりました。4着全部ですね。」

 「ああ。」

リファナがホテルに向かって駆け出して行く。

 リファナが到着する間に、俺たちは、舟渡を手配した。

 

 リファナが戻って来ると、早速舟に乗り込み、フィーロの先導で、海中の島とやらへ向かう。

 「この下だよ。」

しばらくすると、フィーロが告げた。

 舟渡に舟を止めるように言う。舟渡は碇を下ろした。

 

 舟渡に別口の料金を渡し、口止めをしてから、4人、舟の上でペックル着ぐるみに着替える。珍妙な姿に、舟渡が口をぽかんと開け、驚いている。それから、徐に海に飛び込み、潜水を始めたフィーロについて行く。

 それにしても、この着ぐるみの潜水能力は大したものだ。運痴の俺でも、フィーロの速度について行けている。

 

 やがて、確かに赤黒く光る島と言えるようなものが、海底に見えて来た。その上に、遺跡と思しき石の建物-神殿の様に見える-がのっている。

 俺たちは、近づいて、手分けして入り口を探した。それは、すぐ見つかったが、固く閉ざされている。

 しかし、尚文が近づくと、彼の盾が淡く光り、扉が開いた。中から気泡が出てくる。空気があるらしい。俺たちは中に侵入した。

 

 程なく、水中から空気のある所へ上がる。だが、暗くて何も見えない。

 「ラフタリア。」

尚文の指示に、彼女が魔法を唱える。

 「ファスト・ライト!」

光球が現れ、辺りを照らす。

 俺たちは驚いた。眼前に、巨大な砂時計-おそらく、城下街の教会にあるのと同じもの-が鎮座していたからだ。

 

 「龍刻の砂時計が、なぜこんなところに…。」

呟く尚文の盾が光り、龍刻の砂時計と繋がった。尚文が息を飲む気配がする。

 「どうしたんだ。」

俺の問いに、

 「あと二日半で波が起こると表示が出た。」

尚文は答えた。

 「何だって!?」

 「ここで、波が起こるんですか!?」

叫ぶラフタリアに、

 「どうやら、そうらしい。」

尚文は答える。

 

 「急いで、戻ろう。戻って、三勇者に、集合を掛ける。」

尚文は言った。三勇者にも、ここの砂時計に登録してもらわなければ、共同して波に当たる事が出来ない。

 「その後メルロマルクに戻って、女王に報告しよう。」

 

 俺たちは急いでカルミラ本島へ戻り、‘影’を呼び出して事情を話した。‘影’は三勇者についている‘影’に連絡を取ってくれると言う。

 それだけでは心もとないので、俺たちは三勇者を手分けして迎えに行くことにした。槍の勇者にはラフタリアとリファナのコンビ。剣の勇者には尚文と‘影’。弓の勇者には俺とフィーロが迎えに行くことになった。

 

 影から勇者の居場所を聞き、早速迎えに行く。舟渡を手配するまでもなく、俺は魔物姿のフィーロに乗った。

 「フィーロ、頼むぞ。」

フィーロは心得たとばかり、かなりの速度で目的の島へ向かって泳いで行く。

 

 島へ上陸すると、弓の勇者についていた影と合流する。影の案内で島の内地に分け入ると、丁度弓のパーティーがボスと戦っているところだった。

 鎧がタンク役を務め、弓の勇者樹君を始めとする後衛陣が攻撃を仕掛けている。徹底的な間接攻撃型パーティーだ。尤も、それにしてはタンク役の鎧が脆すぎる。しょっちゅう回復役のお世話になり、それでもダメージを負っているようだ。いつも無傷の尚文とは大違いだ。

 

 また、弓の勇者の攻撃力が、思いのほか低い。散発的に、ボスや雑魚敵に攻撃を放っているが、何だか押され気味になっている。そう思って見ていると、フィーロが俺をつついて来た。フィーロ曰く、

 「弓の人、何だか力を抜いているよー。」

フィーロ、お前もそう思うか。教皇戦で見た時に比べ、力の出し惜しみをしている感がある。

 

 しばらく傍観していると、次第に弓のパーティーの雲行きが怪しくなって来た。鎧は傷だらけだし、他の前衛も徐々に下がって来ている。このままでは防衛線が崩壊すると思い、助けに入ろうと思った時に、それは起こった。

 「ファルコン・ストライク!」

樹君の叫びと共に、彼の必殺技が発動し、ボスと群がっていた雑魚を一瞬で消滅させた。弓のパーティーは勝鬨を上げるとともに、樹君への称賛の声で満たされた。

 「さすが樹様だ。」

 「勇者の中で、樹さんが一番です。」

 「樹様、素敵です。」

等々…。樹君も照れ臭そうな笑顔を浮かべ、まんざらでもなさそうだ。だがこれって…わざとらしくないか。パーティーの危機を演出する自作自演。そんな感じがする。

 

 そんな中、フィーロが前に出て、樹君に向かって言った。

 「ねえねえ弓の人、なんで力を抜いていたの?」

 「いきなり何なんですか、この子は。尚文さんのパーティーメンバーですね!」

俺はフィーロの手を掴んで引き戻した。

 「済まない、樹君。実は、話が有って参上したんだ。」

フィーロはめげずにさらに樹君にまとわりつく。

 「ねえ弓の人、魔物に手加減していたのはどうして?」

 「貴様、樹様に対して失礼であろう!」

鎧がフィーロを止めようとするが、デコピン一発で吹っ飛ばされる。

 

 うん、困ったぞ。樹のマッチポンプが、フィーロの好奇心に火を付けたのだろう。フィーロを止めるには…。

 俺は、弓のパーティーメンバーに対して言った。

 「何か、フィーロの気を引くような食べ物を持っていないか?」

その間にも、フィーロは樹君にまとわりつき、樹君は辟易している。

リーシアが、

 「昼食用の食糧しかありませんが…。」

と言いながら、バックパックを開く。俺はその中に、肉の塊を見つけ、樹君に夢中のフィーロに差し出す。

 「ああ、俺の肉!」

と騒ぐ鎧は無視だ。

 

 「フィーロ、肉があるぞ、こっちだ。」

俺は肉をフィーロに差し出す。

 「わーい、お肉!」

フィーロは樹君を構うのを止めて、肉にかぶりついた。

 

 その隙に樹君と話をする。

 「一体何ですか、この子も、貴方も…。」

ご機嫌斜めの樹君に、龍刻の砂時計が見つかった顛末を話す。

 「どうか、波に対処する勇者の務めとして、一緒に来て欲しい。」

樹君は少し考えて、言った。

 「それを言われると仕方ありませんね、同行しましょう。」

 

 その時、フィーロが肉を食べ終え、再び樹君にまとわりつこうとするのを、首根っこを捕まえて押さえる。

 「かっちゃん、放して。」

 「駄目だ。そもそも、弓の勇者はお前の質問には答えない。」

 「どうして。」

 「どうしてもだ。後で、その理由を説明してやる。今は、カルミラ島へ大人しく戻るんだ。また食い物を買ってやるから。」

俺は、フィーロの目を見て言う。

 「ぶー。」

フィーロはぶー垂れながらも、従ってくれた。

 

 俺たちは、弓のパーティーを引き連れてカルミラ島へ戻った。

 すると、そこには既に、ラフタリアたちと槍のパーティーがいた。ラフタリアとリファナは、何だかげんなりている。槍のハーレムパーティーっぷりに、当てられたか。俺はフィーロのおやつを、屋台で買った。

 

 程なく、尚文が剣のパーティーを引き連れて戻って来た。尚文も、なんだか微妙な表情だ。剣の勇者の孤高っぷりにあきれているのか。

 

 早速、フィーロの案内で海中神殿に向かおうとすると、一悶着あった。剣の勇者が、激しく拒否をしたのだ。理由は見ていてすぐに分かった。恐らく、錬君はかなづちなのだろう。しかも、そのことを隠している。

 結局、自分のプライドのために引っ込みがつかなくなった錬君が折れ、フィーロの案内で四聖勇者が海中神殿に向かった。

 

 その間に、俺たちは島を統括する伯爵の元へ赴き、波があと二日半で起きる事を告げた。伯爵は、島民、観光客への周知と、波に対抗する冒険者の募集をすると言う。

 

 その後、海中神殿で、龍刻の砂時計とリンクして来た四聖勇者と合流し、転送スキルでメルロマルクに向かった。

 

 女王に謁見すると、そこからは話がトントン拍子に進んだ。

 槍の勇者が港町で得ていたポータルを勇者全員で共有し、城下街から波のために編成された軍団を港町にピストン輸送、港町で稼働し得る8隻の軍艦を準備し、各勇者の分隊に編成したのち、出航させた。掛かった時間は一日半。後はカルミラ島へ赴き、波に備えるだけである。

 

 カルミラ島への道すがら、俺はフィーロに、弓の勇者の自作自演について説明したが、ついに理解を得る事は叶わなかった。

 




リファナの二度目の変身ですが、‘槍の勇者のやり直し’のリファナ生存ルートには、レベルが明示されていなかったようなので、勝手に設定しました。ちょっと高すぎたかもしれません。
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