転生引きこもりは狸娘の夢を見る   作:マーカス・クラン

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書く内容は決まっていても、表現方法で悩むことしきりです。霊亀討伐まで話は一本道なのですが、なかなか進みません。




第66話 二日坊主と霊亀の目覚め

 そして翌日。

 いつものように皆で朝食を取り、変幻自在流の訓練に向かう。

 

 そこで、いつもとは違う事があった。

 剣のパーティーが居ないのだ。それこそ、三日坊主ならぬ、二日坊主である。

 

 瞑想、壁突きと、訓練自体はいつもの通りで、希望者には、いろいろな武器の扱いの指南も行われた。

 だが、槍のパーティー(と言っても、元康君一人だけの出席だが)、弓のパーティーは、気もそぞろで、訓練に身が入っていないようだった。

 

 そうして、昼食の後、弓のパーティーが消えた。

 

 その事に気づいたのは、午後の剣技訓練の出席が、槍と盾パーティーのみだったからである。

 

 「ん、少ないな。」

と、嘆くエクレールだったが、いつものように素振りが行われた。

 

 そんな最中、

 「ちょっと、トイレだ。」

と言って、槍のパーティーが中座した。そうして、戻ってこなかった。

 

 さすがにおかしいため、俺たちは、訓練後、女王に謁見を申し出た。

 そうして、明らかになったのは、以下の事である。

 

 剣のパーティーは、置手紙を残していた。曰く、

 「強くなって、戻って来る。」

とのことだった。

 

 弓のパーティーは、女王に謁見を申し出、今よりももっと自分たちを強化できる方法があると言い捨てて、出て行ってしまった。

 

 槍のパーティーは、剣、弓のパーティーの動向に心当たりがあると言い、彼らを連れ戻して来るために、彼らを追うと言って、行ってしまった。

 その際、その心当たりと言うのは頑として明かさなかった。

 

 「と言う事だそうだ。勝彦、お前、心当たりはないのか。」

と尚文が訊いて来た。

 

 「何で俺が。」

ぼやく俺に、

 「ここは、お前のアニメ知識の出番だろう。」

と尚文は言う。

 

 俺は、頭痛に顔をしかめながら、

 「ちょっと、思い出せないが、見当はつく。」

と言った。

 

 「見当なら俺もついている。」

尚文が言う。

 「どうせ、奴らのゲーム知識で、エクストラモンスターやら、ダンジョンやらがあり、それを攻略する事で強い武器が手に入ったり、大量の経験値が貰えるんだろう。」

 

 女王が言う。

 「彼らは馬を駆り、北へ向かったそうなのですが、何か心当たりはありませんか。」

 

 「四霊、いや、四神か…。」

俺は、頭に浮かんだワードをぽつりと漏らした。

 

 「四神と言うと、朱雀とか玄武とか…。四霊と言うと、麒麟、鳳凰、霊亀、竜か…。」

尚文が言う。

 

 「尚文、詳しいな。」

俺の言に、

 「召喚前にゲームでちょっとな。というより、これぐらい、常識だろう。」

と答える。

 「俺は、四神を怪獣映画で聞いた事がある程度だが…。」

 

 女王が言う。

 「方角からすると、四神で言う玄武、四霊なら霊亀ですか。彼らが、霊亀を復活させ、討伐しようとしているとでも言うのですか。」

 

 「確証はないが、可能性はあるだろう。」

と尚文。

 

 「あの山のような四霊獣を、人がどうにか出来るとは思えないのですが…。」

女王は言う。

 「しかしながら、霊亀国へ警告は出しておきましょう。」

 

 「国?怪物が眠る地に、人が住んでいるのか?」

 「はい、勇者が霊亀を封印した跡地は、国になっております。」

 

 「そうか。で、俺たちもそこへ出かけた方がいいのか?」

尚文が言う。

 「いいえ。確証が薄いですし、波も近い今、イワタニ様にはメルロマルクに留まっておられた方が、心強いです。」

と女王は返した。

 

 

 夕食後、俺は魔法学の講座を休み、部屋に籠って頭痛と戦いながら、三勇者の行方に関することを思い出そうと脂汗を流した。が、思い出せたのは、やや的外れな、霊亀の倒し方だった。

 すなわち、首を落とすと同時に、霊亀の体内に侵入し、心臓を破壊すること。

 その事を、魔法学を終えた尚文に報告すると、彼は渋い顔をした。

 

 「それが本当だとして、三勇者共が霊亀討伐を試みているなら、失敗する可能性が高いな。」

 「なぜです?」

尚文の言に、ラフタリアが問う。

 「心臓討伐班と、首落とし班の二手に分かれる必要があるが、奴らのパーティーにそんな事が出来るとは思えないし、勇者同士の共闘も望めないだろう。」

尚文の顔は相変わらず渋い。いつかの幽霊船で、仲違いをしていた三勇者たちを思い出しているのだろう。

 

 「なんか、役に立てなくて済まん。」

俺は、有益な情報を渡せない事に謝罪した。

 「それは、仕方ないさ。しかし、勝彦が霊亀の事を思い出したのには、意味があるのかもしれない。勝彦のアニメ知識では、これから霊亀が活躍していただろうと言う事だ。」

 「と言う事は、三勇者は、霊亀討伐に向かった可能性が高いと?」

リファナが発言する。

 「そうだな。」

尚文は思案顔だ。

 

 「取り敢えず、霊亀国とやらへ出発する準備はしておこう。明日一番に武器屋へ寄って、ラフタリアとフィーロの装備を受け取っておくとしよう。」

尚文は言った。

 

 

 翌日。

 朝食後、ババアには訓練に遅れる事を告げ、俺たちは武器屋へと向かった。

 

 「らっしゃい、早いな、アンちゃん。」

エルハルトは威勢よく迎えてくれる。

 「この前預けた剣と爪の改良、出来ているか?」

尚文が訊くと、

 「ラフタリアの嬢ちゃんと、鳥の嬢ちゃんのだな。出来てるぜ。」

とにこやかに返す。さすが、仕事が早い。

 

 エルハルトが、剣と爪を出して来たが、黒かったそれらが、白っぽく変わっていた。

 早速ラフタリアとフィーロが素振りをする。

 「ナオフミ様、癖が無くなって、手にしっくり来ます。」

とラフタリア。

 「うん。前より扱いやすいよ。」

爪をブンブン振り回しながら、フィーロが言う。狭い店の中で、危ないっちゅーに。

 

 それから、小物を仕入れ、武器屋を後にした。それから、薬屋と魔法屋へ寄り、ポーション類などを補充する。おかげで、ほぼ素寒貧だ。

 

 日がすっかり高くなった後、ババアの訓練に合流した。

 

 午後はエクレールの指導の下、剣技訓練だ。

 

 そうして夜は、俺だけ部屋に籠り、原作知識を取り戻そうと脂汗を流す。

 しかし、思い出せたのは、断片的なもので、しかも、今回の件とは関係が無いと思えるものばかりだった。

 

 

 それから、三日ほど経った。

 

 訓練中に、俺のレベルが80になり、新しい魔法の習得が可能になった。選択肢は、‘ライト’、‘スティール’、‘エイリアス’の三つだ。それぞれ、光、盗み、別名定義と言ったところだろう。

 それにしても、使えないものばかりだ。ライトはラフタリア、リファナと重なるし、スティールはパンツを盗んでも…。

 結局、俺はエイリアスを選択した。魔法名を、少しでも短い名前に再定義すれば、連続攻撃の際便利になると思っての事だった。

 

 しかし、実際に使ってみると、エイリアスは想定していたものとは少し違っていた。

 複数の魔法をまるッと一纏めにして呼べるのだ。

 例えば、最近よく使う、サイコアタックを3回連続詠唱する時など、‘サイコトリプルアタック’などと定義出来るのだ。詠唱が短くなると同時に、精神集中も楽になる事が分かった。結構使える。

 

 俺たちは、午前中は変幻自在流の訓練をし、午後は剣技訓練、夕食後は魔法学講座と、戦闘訓練に勤しんでいた。

 

 そして、それは、午前中に起こった。

 俺は瞑想をし、尚文はババアと格闘の模擬戦をしていた。ラフタリアはババアの息子に剣の扱いを教わり、後の3人は壁突きをしていた。

 

 突如として、空気がビリ付いた。それは、何かの咆哮にも聞こえた。錯覚なのかもしれなかった。俺は目を開けて、辺りを見回した。何も起こっていなかった。しかし、何かが起こったのは、間違いなかった。証拠に、その場に居たすべての者が、辺りをきょろきょろと見回していた。

 

 訓練場である中庭は、いつも通りのたたずまいだった。何も変わっていなかった。

 「何が、起こったんです…?」

ラフタリアが呟いた。

 

 その時、尚文が、ステータス画面を開いて、信じられないと言ったふうに呟いた。

 「波のカウントダウンが止まっている…!」

 「何だって!?」

 「そうして、青い砂時計が現れて、‘7’という数字が書かれている。…どういうことだ?」

 

 「波とは違う、新しい災厄の印なのでしょうか?」

ラフタリアが問う。

 「分からない。勝彦、心当たりは?」

 「無い。霊亀に関係ある気もするが…。」

断片的な負のイメージが、青い砂時計と霊亀を繋げているような気がするが、はっきりしない。

 

 尚文が言う。

 「ババアには悪いが、訓練をやっている場合じゃないな。女王に報告に行く。」

 「心得た。」

ババアが答える。俺たちは訓練を中断し、女王に謁見を求めた。

 

 しばらく待たされた後、俺たちは応接間に通された。

 女王は話を聞くと、表情を険しくした。

 「波のカウントダウンが止まった代わりに、新たな災厄が現れたと見ていいでしょう。しかし、私には、心当たりがありません。イワタニ様は、何かお考えはありませんか?」

 「俺にも分からない。勝彦が、霊亀に関係あるような事を言っているが、あやふやな記憶で、心もとない。余りあてには出来ないだろう。」

尚文が答える。

 「それでも、霊亀国に問い合わせてみましょう。何か分かるかも知れません。」

と女王は言う。

 

 その時、血相を変えた兵士が、部屋へと入って来た。

 「何事です。今、勇者様との謁見中です。」

女王が兵士を咎める。

 「しかし、緊急の報告があります!」

 「分かりました。続けなさい。」

兵士の様子に、女王が先を促す。

 

 「霊亀国にて、四霊獣の霊亀が、復活いたしました!」

兵士の言葉に、部屋の空気が一瞬で冷える。

 「間違いないのですか?」

 「間違いありません。しかも、…」

兵士が言い難そうに言い淀む。

 「どうしたのです。続けなさい。」

女王の言に、兵士が口を開く。

 「霊亀国からの情報では、霊亀を復活させたのは、我が国を出立した勇者様方であるとのことです。」

 

 「詳しく話しなさい。」

 「勇者様方は、霊亀を封印してある祠の守備隊を蹴散らすと、怪しげな儀式を始めたとの事です。その後、霊亀が復活しました。」

兵士が報告する。

 「で、勇者様方はどうなったのですか?」

女王が問う。

 「霊亀に立ち向かったという情報もあるのですが、その後の混乱で、行方知れずになったとの事です。」

 

 「霊亀は健在なのですね?」

 「霊亀国の首都を蹂躙した後、南西方面へ進行中とのことです。」

女王は思案する。霊亀の進行方向には、このメルロマルクがある。

 「将軍たちを集めなさい。そして、諸外国にも協力の要請を。状況から見て、事態の収拾は、このメルロマルクを中心に行わなくてはなりません。」

女王は凛として命令した。そうして、こちらへ向き直る。

 

 「イワタニ様。まことに心苦しいのですが、霊亀討伐にご協力をお願いします。心ならずも、勇者様方を召喚したのは我が国です。その動向に責任があります。霊亀は、我が国が中心になって鎮めねばなりません。どうかお力添えをお願いします。」

女王は頭を下げた。

 

 尚文は、渋い顔をしながら答える。

 「また奴らの尻拭いと言うのは癪だが、無関係でも居られないだろう。協力はする。ただ、報酬はもらうぞ。そちらも財政的に苦しいのは分かるが。」

 「ありがとうございます。」

女王は安堵の表情を見せた。

 「盾の勇者様が戦ってくれることで、軍の士気も大いに上がる事でしょう。」

 

 「ああ、そうだ。霊亀討伐に関して、勝彦が言っているんだが…。」

尚文は、俺が思い出した霊亀討伐の方法を話した。すなわち、心臓を破壊すると同時に首を落とす必要がある事を。

 女王は難しい顔になった。

 「それが本当なら、霊亀討伐は困難かも知れません。心臓を破壊するには、霊亀の体内に侵入する必要があるのでしょう。どうやって行えばいいのか…。」

 

 「その辺は、これから考えよう。何なら、心臓の破壊は俺たちがやってもいい。とにかく、霊亀に関する情報は欲しい。」

尚文が言う。

 「もちろんです。明日までに情報は整理しておきましょう。明日には、軍議を行いたいと思います。参加していただけますか?」

 「分かった。それまで、俺たちは体を休めておこう。」

 

 女王との会見は終わった。

 

 行方知れずになった弓の勇者を案じて、リーシアが取り乱しそうになったが、ラフタリアとリファナに励まされて、自分を取り戻したようだった。

 

 俺たちは不安を隠したまま、明日に備えて休んだ。

 

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