実は、某シミュレーションゲームの7弾目が出たという知らせに触発されて、持っている初代(!)を引っ張り出して久々にプレイしたところ、見事にはまってしまい、仕事と介護以外の生活リソースをすべてゲームにぶっこむという中毒に近い状態になっていました。
ゲーム中毒には禁ゲームというのは解っているのですが、復帰するまでに約一月ほどかかりました。
更新が遅れたのはそんなしょーもない理由です。ご心配をおかけしました。
やる事は斥候の時とほぼ同じである。鼬姿になったリファナを懐に抱え、フライトの魔法を発動させる。ジャンプの魔法を唱え、地面を蹴って飛び上がった。
尚文を抱えなくていい分、速度と機動性は上がっている。俺は速度を重視して、低空で地面を何度も蹴って高速で移動した。
やがて、小山のような霊亀が見えて来る。その首が、ゆっくりともたげられ、徐に口を開いた。
俺は咄嗟に高くジャンプし、更にフライトで上昇する。刹那、足の下を雷撃が通り過ぎて行った。
霊亀本体の攻撃はうまく躱したが、代わりに蝙蝠型の使い魔が寄って来る。俺はファイアーストームXを身に纏わせる。使い魔共は、次々に消し炭になって行く。
俺は、降下して、地面を蹴って加速し、上昇する事を繰り返しつつ、霊亀の首を注視した。霊亀の首はこちらを向いていたが、その口が開かれる事は無かった。攻撃は躱される事が分かっているのだろうか。
俺は、霊亀の側面から回り込むと、霊亀の甲羅を蹴って、上へと上がる。そうして、霊亀の首の後ろに駆け上がった。
早速、雪男型の使い魔が襲ってくる。俺はファイアーストームXで迎え撃った。それでも寄って来る奴らには、懐から飛び出したリファナが対抗する。
安心したのも束の間、いつの間にか、上空に蝙蝠型の使い魔が群れて来て、俺に向かって熱線を放って来た。
アイスウォールVで防御し、ファイアーブラストVIIで迎撃する。
リファナは、地上の敵で手いっぱいで、上空の蝙蝠型には手が回らないようだ。
これでは、首落としに着手出来ない。
少し考えた末、上空に、ファイアークラウドVを展開した。これで、リファナは、雪男型と、低空に侵入してくる蝙蝠型を相手どれば良くなる。
敵に対処が出来たので、霊亀の歩みで揺れる中、首落としに着手する。
首の端に向かって魔法を放つ。
「シールドファイアーレーザーXVII!」
そのまま、20秒ほど掃射する。
俺は、魔法を止める。うん、手ごたえが良くない。霊亀の首の肉は焼き切れてはいるが、地面を相手にした時のような切れ味が無いのだ。
俺は相性かと思い、属性を変えてみる。
「サンダーレーザーXVII!」
やはり20秒ほど掃射してみるが、ダメだ。ファイアーレーザーより成績が悪い。よく考えれば、霊亀は雷撃を吐くので、雷耐性があるのも当然か。
ふと思いついて、水属性を試してみる。
「ウォーターレーザーXVII!」
今度は良い感触だ…と思ったら、やはりダメだ。既にある傷口の部分では、面白い様に肉が崩れるが、固い表皮や新たな肉の部分では、効果が出ない。
困った。八方塞がりだ。などと悩んでいられない。切るのがだめなら、穴を空ければ良い。そうして、穴同士を繋ぐのだ。
金属板を切る際に、金ばさみが無い時、ドリルで沢山穴を空け、ニッパーで穴を繋ぐ、あの要領である。
俺は魔法を放った。
「ファイアードリルXVII!」
ファイアードリルとは、今まで使って来た必殺技と言える、ファイアーレーザーとロックレーザーの連続技を、エイリアスで定義したものである。ダサい名前だが、適当なのが思い付かなかったのでしょうがない。
火柱の次に岩柱が撃ち込まれた穴からは、一瞬血が噴き出した。俺はその穴を覗いてみた。うん、行ける。きちんと貫通している。
俺は、背中に背負ったバックパックから魔力水を取り出し、飲んだ。
「調子はどう?」
使い魔退治に忙しいリファナが、声を掛けて来た。
「予定が少し狂ったが、なんとか行けそうだ。」
俺は答える。
「そう、頑張りなさいよ!」
リファナは言って、低空に侵入してきた蝙蝠型をかち割る。
「ファイアードリルXVII!」
「ファイアードリルXVII!」
「ファイアードリルXVII!」
「ファイアードリルXVII!」
「ファイアードリルXVII!」
俺は、場所を変えては、魔法を撃ち込むと言う事を繰り返していた。そうして、バックパックの魔力水を飲む。
俺は少し急いでいた。と言うのも、攻城部隊が接近してくるのが見えたからだ。早く首を始末しないと、雷撃で彼らが全滅してしまう。
また、少しずつだが、霊亀の傷口が、徐々に再生して来ている。大した回復力である。あまり時間を掛けると、折角空けた穴が塞がってしまう事も考えられる。
30カ所ほど穴を空け、霊亀の首がぐらぐらして来た時に、それは起こった。
霊亀が突然、足に攻撃を始めていた攻城部隊に向かって、雷撃を吐いたのだ。当然、直撃を喰らった攻城部隊は黒焦げだが、首の穴からも雷撃が盛大に漏れ出して来た。俺は驚いて飛び上がる。
霊亀の捨て身の攻撃だ。雷撃を終わった首の穴からは煙が立ち、肉の焼ける臭いが漂っている。この機を逃す事は無いだろう。俺は仕上げに移った。
「ウォータレーザーXVII!」
水流で、焼けた肉を押し流していく。穴を繋げるニッパーの役目だ。表皮が残っている部分ではファイアーレーザーXVIIを併用しながら、魔法水を飲みつつ、霊亀の首を切り落としていく。
首を半分ほど切り落としたところで、霊亀は沈黙した。が、念のため、首落としの作業を続けて行く。
3分の2ほど切り落としたところで、嫌な音がして、霊亀の首が崩れ出した。自重に耐え切れなくなったのだろう。程なく、大音声と共に、霊亀の首は下に落ちた。
「かつひこさん、やったわね!」
リファナが弾んだ声で言う。生き残った攻城部隊からも、歓声が上がっている。
「ああ、ありがとう。」
俺は答えた。
まだ余裕はあるが、精神集中を続けたため、精神的疲労が大きい。だが、まだやる事は残っている。
俺はリファナを抱え、上陸部隊を支援すべく、霊亀から飛び降りた。
以下は、勝彦君が頑張っていた時の、尚文君視点の出来事です。
69.5話 フィトリア再び
盾の勇者岩谷尚文は、入江勝彦が霊亀の首根っこで奮闘しているのを、固唾を飲んで見守っていた。傍らにはラフタリアが、もう片方の隣には、フィーロが控えている。
「かっちゃん、がんばれー!」
フィーロが無邪気に勝彦を応援する。
「ふえぇぇぇ…!」
勝彦の魔法が火柱を上げるたび、後ろにいるリーシアが彼女独特の驚きの声を上げる。
「リファナちゃん、頑張って!」
ラフタリアが魔物を蹴散らしているリファナに声援を送る。
そんな時、フィーロの様子が変わった。ぶつぶつと独り言を言い出したのだ。
「うん、ええと、あのね…、おっきな亀さんが…。」
尚文は彼女を見る。彼は、フィーロのアホ毛がせわしなく、ぴょこぴょこと動いていることに気付いた。
エア電話の様に、フィーロは話し続ける。まるで、誰かと話している体である。
「うん、わかった。ごしゅじんさまに伝えるねー。」
その言葉で、フィーロは‘通話’を終えたらしかった。見ると、アホ毛の動きも止まっている。
尚文は訊いた。
「フィーロ、一体誰と話していたんだ?」
フィーロは答える。
「えっとねー、フィトリア!」
「何だって!?」
意外な答えに、尚文は驚く。フィトリアからもらったアホ毛に、通信機能まであるとは…。
「それで、フィトリアは何と?」
「あのおっきな亀さんをたいじするのを、手伝ってくれるんだって。」
尚文の問いに、フィーロは答える。
「もうそこまで来ているんだって。」
そうフィーロは付け加えた。
その時だった。一人の伝令兵が、女王の許に走って来た。
「報告します。馬車を曳いた巨大なフィロリアルが、我が軍に接近しています。」
「それって…。」
「フィトリアさんよ!」
言いかけた尚文に、女王の傍らにいたメルティの感激の叫びが被る。
「何ですって!伝説の、フィロリアルの女王が…!」
女王は一瞬喜色を見せるが、すぐに咳払いをして、伝令兵に伝えた。
「彼女に対して、一切敵対行為はしないよう、命令します。可能なら、こちらへ来るよう、誘導しなさい。」
「分かりました!」
伝令兵は、命令を伝達するべく、下がる。
女王は望遠鏡を取り出し、後ろの方を見た。
尚文も望遠鏡を取り出し、同じ方を見る。そこには、砂埃から浮き上がって、眩く光った巨大なフィロリアルの姿が見えていた。彼が取り出したのは、いつか勝彦が襲撃者から奪った、魔力を見る遠眼鏡である。
突如、巨大なフィロリアルの姿が消えた。女王は、驚いて、消えた砂埃の方角を見つめている。
尚文の視界には、下の方に、眩く光る姿が見えていた。フィトリアが、巨大化を解き、幼女の姿になったのであろう。彼は、その事を、女王に説明した。
尚文が、そのまま光を追っていると、こちらへと近づいて来る。
「フィトリアが、こっちに来るぞ!」
彼は叫んだ。
程なく、肉眼でも、幼女がこちらへ近づいて来るのが見えて来た。すごいスピードである。一部、制止しようとする兵たちを投げ飛ばしているように見える。
「彼女の邪魔をするのではありません。」
女王が、拡声魔法で兵たちに命令し、道を開かせた。
フィトリアは、あっという間に尚文たちの前に来た。そして、口を開く。
「久しぶり、盾の勇者。霊亀への対応が決まったようだから、手伝いに来た。」
そうして、メルティの方を見ると、
「メルたんも、元気そうで、何より。」
と言って、感激している母娘を見る。
「私は、霊亀討伐軍を率いている、メルロマルク女王、ミレリア=メルロマルクです。女王フィトリアよ、お見知り置き下さい。」
女王が挨拶する。
「分かった、よろしく。」
フィトリアの返事はそっけない。
その時、霊亀の方で、眩い光芒が発生した。ついで、雷のような重低音が伝わって来た。霊亀が雷撃を吐いたのだ。攻撃中だった攻城部隊がそれに呑まれ、大部分が焼け焦げた骸になった。
「ああ…。」
女王が自軍の被害に動揺する。
「ところで、霊亀への対応とは、何のことだ。」
尚文がフィトリアに問う。
「霊亀を討伐しようとするのは、世界の為ではなく、人々の為に、茨の道を選んだと言う事になる。」
フィトリアは、尚文を見る。
「このまま霊亀の意思に任せれば、犠牲になった魂は、世界を救う礎になる。それを妨害するのは、世界を救う礎に、勇者たちがなると言う事。」
「具体的には、どういう事なんだ?」
「忘れた。フィロリアルは忘れっぽい。」
尚文の問いをフィトリアははぐらかすが、案外、本当に忘れているのかもしれない。そんなところが、フィロリアルにはある。
「とにかく、成り行きにせよ、霊亀を討伐するならば、フィトリアは協力する。それで、事態はどうなっている?あの転生者が、首を落とそうとしているようだけれど。」
フィトリアが訊いて来た。尚文は答える。
「首を落として、霊亀の動きを止めた後、上陸部隊を送り込んで、霊亀の心臓を止めるつもりだ。」
「確か、心臓を封印するだけでは、霊亀は止まらないはず。」
フィトリアは返す。
「だから、心臓を止めると同時に、勝彦が再度首を落とす手はずになっている。」
尚文は言った。
「そうだ、フィトリア。お前、フィーロと通信出来るんだよな。」
「冠羽を介して、意思疎通は出来る。」
尚文の問いに、フィトリアは答える。
「だったら、今度首落としをする時に、勝彦について、奴を守ってくれないだろうか。」
怪訝な顔をするフィトリアに、尚文は続ける。
「心臓を止めると同時に、首を落とすために、心臓討伐班と勝彦で通信が出来ると好都合なんだ。お前が居てくれると、助かる。」
「私を伝書鳩代わりに使おうと言うのね。分かったわ。あの転生者はまだ信用できないけれど、貴方の事は信じてあげる。」
フィトリアは言った。
「それでは、よろしく頼む。」
尚文は、フィトリアに向かって手を差し出した。彼女はその手を握る。と同時に、何かが崩れ落ちる大音声が聞こえた。兵たちの歓声も聞こえて来る。
見ると、丁度、霊亀の首が斬り落とされた、と言うより、その自重で崩れ落ちたところだった。