住んでいるアパートが老朽化のため立ち退きと相成ったので、絶賛引っ越しの準備中です。
相変わらずプライベートがバタバタしていて、執筆が遅れました。
夕食の後、細かい班分けが行われた。
まず、ラフタリアとリファナの選考を潜り抜けた調理班が3名。少ないようだが、皆が留守の間専属で作るのだから、何とかなるだろう。
魔物班が4名。ちと多いが、今は様子見である。魔物が育つにつれ、増減はあるだろう。
農耕班が、予想通り、脱走組の女子2名に決まった。あの小生意気なレノは、農耕班を免れたようだ。やや少ないが、主な仕事はバイオプラントの実の収穫である。育ちすぎたバイオプラントの処分には、魔物班の力を借りることになるだろう。
残りは戦闘班で、今のところ9名である。こうしてみると、人手不足を感じる。
キールと何やら話していた尚文が、皆に告げる。
「本人の希望もあって、明日の午前中は、キールのレベルリセットに行ってくる。その際、女王と会って、いろいろと話をしてこようと思う。そこでだ、明日は皆で、魔物たちのレベルアップをしておいてもらいたい。勝彦、後はよろしく頼む。」
強さを渇望しているキールが、覚悟を決めたようだ。
俺は、尚文、ラフタリアやリファナ、リーシアと相談して、明日の班分けを考えた。結果、戦闘班を3人、3人、2人に分け(キールが居ない分一人減る)、それぞれフィロリアル、デューン、キャタピランドを引き連れ、近場でパワーレベリングをすることにした。女性陣はそれぞれの監督、俺は村で待機である。
翌朝。
尚文と調理班が作った極上の朝食を食べた後、皆、それぞれの行動を始めた。
尚文、キールは城下街へ、戦闘班、魔物班はレベリングに出かけた。俺は、調理班を見守りながら、農耕班の作業を手伝った。
昼。
昼食を取りに皆帰って来たが、尚文たちは戻らなかった。女王との話がはずんでいるのだろうか。よって、午後もパワーレベリングを続けさせる。
夕方になって、尚文たちが帰って来た。遅れた理由を訊くと、例の聖武器の模造品のために、盾のスキルを伝授していたらしい。
「それでも、感覚的なものだけに、教えるのは難しく、‘エアストシールド’さえも再現出来なかった。いろんな盾に変化させる事までは教えられたが…。」
尚文は悔しげに言う。
キールはというと、レベルリセットの後、城の兵士に稽古をつけてもらい、レベルが3まで回復したらしい。
その後、魔物を引き連れた皆が帰って来た。魔物たちは、心なしか皆逞しくなって来た様だ。特に、フィロリアルは、首も長く足もスラっとして、今にも馬車を引きそうだ。実際、メルティたちが置いて行った馬車を、物欲しげに見つめている。
キャタピランドは、今まではひょろっとしていたが、今は丸々とした立派な芋虫となっている。
デューンは、なんだかワームみたいになってしまった。少し気持ち悪いかもしれない。
ん、キャタピランドが、一匹多いぞ。俺が指摘するまでもなく、尚文が気付く。
「この子はいないわ、多くなんかないわ。」
犬耳を生やした亜人の子が、背中にキャタピランドを隠そうとしているが、さすがに無理があるだろう。
尚文の追及に、奴隷たちはからくりを白状した。
レベル上げの際に、魔物の巣を見つけ、そこにあった卵を持ち帰って来たらしい。ただ、持ち帰ったはいいが、そのまま孵化させるのは危険だと認識しているので、どうしようと思っていたところに訪れたのが奴隷商、もとい魔物商、彼は言葉巧みに尚文の管理下で孵化させるなら安心と、魔物紋を卵に施したという。
それが孵ったのが件のキャタピランドという訳である。
尚文は頭を搔きながら唸るように言う。
「もともと魔物は増やすつもりでいたが…。まあ、孵ってしまったものは仕方ない。いいか、お前たち。今後、勝手に卵を拾ってくるな。今後破った者には罰を与えるぞ。心しろ。全く、魔物商も余計なことをしやがって…。」
愚痴りながらも、現状を受け入れるらしい。奴隷たちは、ほっと胸をなでおろす。
夕食後、明日の方針を話し合った。結果、魔物たちのパワーレベリングを続けることになった。尚文は、キャタピランドを、馬車が引ける様になるまで育てたい様だ。
翌日、朝食後に、エクレールがやって来た。村の視察がてら、奴隷達に稽古をつけてくれるという。
予定を変更して、戦闘班はエクレールのもと、村で剣技訓練をすることになった。
パワーレベリングは、魔物班の連中が魔物を引き連れ、俺とフィーロが護衛につく事になった。
今日はフィーロの引く馬車に魔物たちを乗せ、やや遠出をすることにした。しばらくフィーロが走り、山へと分け入る。魔物たちと魔物班を馬車から降ろすと、俺は魔力を辺りに広げ、魔物の気配を探った。見つけると、片端からサンダーアタックで倒していく。獲物の死体は、魔物班の連中に集めさせる。
しばらくしてフィーロがぶー垂れた。
「かっちゃん、フィーロの獲物まで、取らないでー。」
俺はフィーロの頭を撫で、フィーロの取り分を残すように魔法を加減した。
それから昼まで、俺とフィーロで魔物を倒し、パワーレベリングを続けた。
昼食に戻ると、エクレールの訓練は終わっていた。
昼食後、エクレールは帰って行ったので、午後は戦闘班と、ラフタリア、リファナ、リーシアを加えて、魔物たちのパワーレベリングを続けることになった。
尚文から、薬草を集めるように言付かったので、皆に留意させる。
フィーロの馬車に荷車をつないで、午後のレベル上げに出発する。
戦闘班は、レベルリセットをしたキールを除いて、危なげなく魔物との戦闘をこなすようになっているので、監督をしている俺たちは、やや手持無沙汰だ。よって、薬草採取に専念した。
日が落ちた頃戻ると、尚文監修の極上の食事が迎えてくれる。
夕食後、俺は尚文に、薬草から薬を作るように言われた。
「分かったが、作った大量の薬はどうするんだ。」
俺が訊くと、尚文は、
「そろそろ行商を再開しようと思う。その大事な商品だ。」
と言った。
確かに、皆村の生活にも慣れ、役目も分化して来たので、いい頃合いかもしれない。だんだんと資金繰りも怪しくなって来ているし。資金調達は大事である。ついでに、馬車もメルティが置いて行ったものが余っている。
尚文は、容姿に優れた子を4人ばかり各班から引き抜き、行商に連れていくことを決定した。行商のメンバーは、他は、尚文とラフタリア、フィーロだ。新しい子たちを行商に慣れさせ、自分たちで行商に回れる様にするのが狙いなのだろう。
翌日から、行商は始まった。
残った俺たちは、各班を再編して、再び戦闘班のレベリングを行った。今日は、海で、海中戦闘である。リファナを先頭に、リーシアがペックル着ぐるみを着て引率する。
俺は居残りで、農耕班を時たま手伝いながら、せっせと薬草から薬を生成する。
と、昼近くになって、魔法屋がやって来た。村の子たちに、魔法を教えてくれるのだという。尚文の勧誘が成功して、隣町に支店を開いたのだそうだ。話を聞くと、裁縫屋も店を構えたらしい。そのうちに、やって来ると言っていたそうだ。
皆で昼食を食べた後、午後はちょっとした魔法教室になった。せっかくだから、レベリングは休みである。
夕食までに、魔法適性のある子は、最低でも魔力の扱いが出来るようになり、秀でた子は、初級魔法が使えるようになった。魔法屋は、教師としても優秀らしい。
皆で夕食を作り、行商に出ていた尚文たちを出迎える。奴隷たちの魔法の上達具合に、尚文は喜び、魔法屋にお礼を言った。
翌日からの行商は、ラフタリアが付き、その次の日は奴隷たち4人とフィーロで町や村を回り、その次の日からは育ったフィロリアルと奴隷たちだけで行商を回させた。
一方、戦闘班はレベリングを続け、3日に一遍ぐらいに訪れるエクレールから、剣技の稽古を受けた。
調理班も腕前が上達し、尚文がいなくても、仲間たちからおいしいという賛辞を受ける事が多くなった。
魔物班も農耕班もそれぞれの仕事をし、村の運営は、ガタピシ言いながらも潤滑に回るようになって来た。
この前は、裁縫屋が来て、奴隷たちを採寸、それぞれの新しい服を仕立ててくれることになった。魔法屋も、半月おきぐらいに村を訪れて、奴隷たちに魔法を伝授してくれる。
戦闘班が、概ねレベルアップ限界に達したので、城下街へレベルアップに向かった。引率は、尚文とフィーロ、やはりレベルアップするリーシアである。人手不足が顕著になって来たので(尚文は、行商班を増やしたいらしい)、新たな奴隷も仕入れる予定の様だ。
戦闘班が帰ってくるまで-と言っても、フィーロの俊足をもってしても、夕飯まではかかるが-魔物のパワーレベリングを女性陣の引率で行った。奴隷たちの拾って来た卵が孵って、魔物たちは種類が増えていた。ウサピルなど、役に立たないと思われる魔物も若干いたが、一応、尚文の指示で育てることにしている。
俺は、農耕班の手伝いと、薬の調合を行った。
戦闘班の帰村は夜になったが、皆無事に戻って来た。新しい奴隷も9人ほど購入して来た。うち、ルロロナ村出身者が一人。奴隷商曰く、もう、メルロマルク国内にはいないかもしれないとの事だ。
他には、手先が器用とされている半獣人が若干名。やたら長い名前のモグラの亜人が目立っていた。後は、幼い亜人の子供たちである。
また、尚文が、不穏なうわさを女王から聞き込んで来ていた。
なんでも、フォーブレイで騒ぎを起こした女錬金術師が、メルロマルクに入国したらしいとの事。メルロマルクに研究拠点を持つため、地方貴族と接触する可能性が高く、注意するようにと、フォーブレイからお達しが来たそうだ。
彼女がかの国で何をやらかしたのか、詳しくは分からないので、どう対処すればよいのか、判断に悩む話である。
それからしばらくして、キールがクラスアップ限界に達したので、尚文がポータルでメルロマルクに連れて行った。
帰って来た尚文は、新しい奴隷を二人連れていたが、それよりも、厄介ごとを抱えて戻って来た。
それは、槍の勇者の消息である。槍のパーティーの一人が見つかったので、彼女の話を聞いて、槍の勇者を追跡・捕縛するよう、女王からの要請があったのである。
確かに村の運営には余裕が出て来たし、主要メンバーを追跡に出しても問題はないだろう。だが、厄介な依頼であることも事実だ。しかし、
「確かに面倒な依頼だが、女王には世話になっている。また、勇者の尻拭いは俺がやらなくちゃならないだろう。報奨金も出ることだしな。」
との尚文の一声で、槍の勇者捕縛作戦は遂行されることになった。