2年ぶりですが今までの詳細は活動報告に載せておきます。音沙汰なしで本当にごめんなさい。
新学期である4月、桜が舞う季節であり学生にとっては始まりとも言えるそんな日。今日も昨日と同じく快晴である。晴天の青空に心地よい春風。鳥の囀りに楽しそうな人の話し声。うん、やっぱ春はいいね。桜も綺麗だし、気温も寒すぎず暑すぎない。
花粉症の人にはあまり嬉しくないかもしれないけど今日が晴れてよかったよ。新学期早々土砂降りとかあまり気分のいいものでもないからね。まぁ花粉が流れるから花粉症の人は少なからずうれしいだろうけど。
そんなことを思いながら、俺は上機嫌に歩いていたのであった。
東京都にある高度育成高等学校、そこが俺の今の目的地である。
名前から分かる通り、この学校は優秀な生徒を育成することに力を入れた学校だ。
そもそも学校というものが優秀な生徒を育成する場所なのだからこの名前は少しおかしいのでは?っと思う人もいるだろう。
俺も同じ意見を持ってたさ。
だけどこの学校は普通ではない。
この学校にはほかの高校とは決定的に違う特典がある。それはなにか?
なんとここを無事に卒業できたものは希望する進路を100%認められるという驚きの特典だ。
それだけの特典があるのならここに入学しない手はない。
勉強は得意だったし面接も特に大きな失敗もなしに終わり俺は無事、高度育成高等学校へ入学することができた___
出来たのだが・・・・実はこの高校には引っかかることが多数存在する。
まずは公開されている情報の少なさである。
自分の入学する高校だ、多少調べもするし興味もあった。時間が空いた時に調べてみようとしたのだがなんとこの高校、ほかの高校と比べてみると情報が圧倒的に少ないのである。
就職率 進学率 100%に目が行きがちだがそれ以外の情報は少ない。
修学旅行の行き先、授業方針、授業風景、歴史などといった調べれば簡単に手に入るようなものが少ない、もしくは一つとしてないのである。
学校が新しいから?
否、いくら歴史が浅くてもこの少なさはない。
加えて生徒は全員寮生活を義務付けられており敷地内を出ることは極僅かの例外を除いて皆無である。さらに外出以外にも外部との連絡はその一切を禁じられている。
敷地内といったが実はこの学校は町一つレベルの敷地を私有しており、生徒は全員その敷地内で生活することになっている。
なので言い方は悪いがこの学校に入学するものは全員この敷地内に閉じ込められるのと同義である。
外部との連絡を断っているのであればこの情報の少なさは納得がいく。
しかしだ、だとしたら別の疑問が湧く。
「何故、外部との接触を断つ必要があるのか」
こればかりはいくら考えてもこれだと言う答えは浮かばなかった。
色々な説を考えはしたがその数が多ければ考えても仕方がない。答え合わせもできないのなら探しても意味がない。考えれば余計に別の説が浮かぶだけである。
「まっ、こちらとしてはそれが逆に好都合なんだけどな。」
進学率、就職率100%?
最高じゃないか
敷地外の外出と外部との連絡を禁じる?
辛いものではあるが3年の辛抱だ。家族に絶対に会えないというわけでもない。
辛いものではある、だがそれは逆に外部もこちらに接触できないことを意味する。
籠の中の鳥?
檻に入れられた動物?
確かに見方によってはそう例えることもできるだろう
なら別の見方をしてみたらどうか?
__閉じ込められると同時に俺たちは外部からも守られることになる。
籠や檻かもしれないが見方を変えればそれは防壁にもなりうる。
俺がここに入学することを選んだのはそれが最大の理由だったりする。
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駅から時間もあるし天気もいいからバスではなく景色でも見ながら徒歩で学校へ向かおうと思ったがこれは失敗だったかなと30分ほど歩いてから思う。
「景色をみるのも飽きたしまだ目的地まではそこそこあるな。」
まだ朝も早いし時間にもまだまだ余裕はあるがこのまま歩き続けるのも飽きてきた。これだったらバスにでも乗って本でも読んでいたほうが良かったかもしれない。
「まぁ、それも今更だけどね。」
とりあえず歩きながら本を読むのはあまり好むことでもないのでヘッドフォンでもつけて音楽でも聴くかなとカバンからヘッドフォンを取り出していると道の先に今にも泣きだしそうな少女が一人視界に映った。
つけようとしたヘッドフォンを首にかけ、ゆっくりと少女に向かって足を進める。
向こうもこちらに気づいたのだろう、少しだけ怯えながらもこちらに視線を向ける。
(子供にとっては高校生だって大人みたいに映るからな、知らない大人が近づいてきてると思えばそりゃ怖くもなるか)
だから、これ以上怖がらせないようにゆっくりと顔に笑みを浮かべながら目線を合わせるように俺は膝をついた。
怖がらせないことに成功したようで少女は涙目のままだが逃げることはせずに目線を合わせてくれた。
「おはよう。もしかしてだけど、君は誰かとはぐれちゃったりしたのかな?」
こんな時間に少女が一人、道のど真ん中で涙目で周囲をキョロキョロとしていればそれは迷子になった可能性が高い。というのも子供が迷子になってする行動は基本的にいづれかである。その場所を動かずにただひたすらに周りを見るか、真っ先に動き回り知り合いを探すか、誰かに聞くかである。
迷子でない可能性もあるが下を見ていたわけでもないから何かを失くしたという線もなし。ケガをしたにしても外傷はなし、喧嘩をしたとしても相手もいないしそもそも周りをキョロキョロと見る必要もない。
よって考えられる中でもっとも可能性が高いのが迷子である。
大方母親か誰かと朝の散歩や買い物にでも付き合っていたのであろう。
即答はしなかったが少女の目を見つめているとその子はゆっくりとだが頷いてくれた。
「そっか、それは大変だね。はぐれたのは・・・お母さんかな?」
今度は先ほどよりも早く頷いてくれた。
「オーケー、じゃぁお兄ちゃんが一緒に探してあげようか。っとその前に・・・・お嬢ちゃん、桃は好きかい?」
不安を与えないように笑顔と共に言うと少女は嬉しそうに涙を引っ込め、そのあとの問いに首を傾げはしたが頷いてくれた。
俺はよしっと一度膝を叩き少女が見やすいように目の前に右の掌を向ける。その一連の行動にまたしても首を傾げる少女であったが俺はそのまま広げた手をヒラヒラと揺らし残った左手の指をパチンっと鳴らす。
ビクッと音に反応した少女であったが俺の右手を見た少女は一瞬だけ唖然とし次の瞬間には綺麗な笑顔を浮かべていた。
「わぁ~!すごいすごい!!」
パチパチと小さな手で拍手をしてくれる少女。
そんな行動に俺も小さな笑みを浮かべ指を鳴らしたと同時に現れた桃味の飴玉を少女に渡した。
「女の子をずっと泣かせるわけにはいかないからね。ほら、これは君にあげよう」
そういうと先ほどまでの涙はどこへやら、お礼をいいながら飴玉を口に放り込んだ。そんな純粋な笑顔とお礼に気をよくした俺はパンっと両手を合わせてゆっくりと両手を開くとその中から今度は小さな花柄の髪飾りが出てきた。
少女はさらに目を輝かせ、どうしてどうして?といいながら俺の両手を調べるようにニギニギしてきた。
「あはは、期待通りの反応をありがとう。はい、これも君にプレゼントしよう。つけたら君のお母さんを探しに行こうな。」
髪飾りを少女の髪につけてあげると俺は立ち上がる。約束通り、この子の母親を探しに行かなければならない。
最悪遅刻するかもしれないと思うかもしれないがそんなことはないしさせない。
俺が少女に手を差し伸べると少女は今だに目を輝かせながら俺の手を取ってくれた。
「うん!早く迷子になったママを見つけてあげよう!」
気分がいいからなのか初めからそう思っていたのかは知らないがどうやらこの子の中では母親のほうが迷子になっていたらしい。
「そっそうだね。じゃぁまずは・・・・ふむ、いいこと思いついた。お嬢ちゃんこのトランプの中から好きなカードを2枚引いてごらん。」
パッと空いた手をスナップさせると俺の指に6枚のトランプが現れた。いきなり現れたそのトランプにさらに目を輝かせた少女はピョンピョン跳ねた後、俺の手から2枚のトランプを引き抜いた。
トランプを抜いたことを確認した俺は手をもう一度スナップさせることで余ったトランプを消失させる。
少女を見てみるとそれはもう輝きすぎて目からビームでも出そうなほどだった。こういう反応はやはり何度見ても良いものだ。
俺はニヤリと笑うと少女に引き抜いたカードを見せるように言う。
少女が抜いたカードはダイヤの3とダイヤの5であった。
「ふむ、どうやら君のママはここから35歩先にある宝石店の近くにいるみたいだね」
「本当に!すごいすごい!なんでわかったの!?」
どうやらすでに俺はこの子の信用を獲得してしまったらしい。俺の言葉に疑いもせずにその仕組みを聞いてきた。先ほどまでの見世物はこの子を信用させるには十分のものだったらしい。今も俺の腕を引っ張りながらも、なんでなんで?と聞いてきている。あっちょっ待って、爪を立てないで地味に痛いから。
「なんで分かったかって?それはね__」
__俺が魔法使いだからさ!
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その後は二人で手を繋ぎながら35歩、声に出しながら数えて歩いていると母親は宣言通りに宝石店の近くをキョロキョロとうろついていた。その光景に少女は母親との再会よりも俺の言葉が当たっていたことにまたもすごいすごい!と大はしゃぎ。目の前で腕を広げながら固まっていた母親がすこし可哀そうだった。
その後は母親と少女にお礼を言われ、少女は母親と手を繋ぎながら俺が見せたマジックがすごいと母親に言い続けていた。ただ少女のはしゃぎように母親はすこし押され気味に『そっそうなの、よかったわねぇ』などと言っていた。髪飾りの事を話していたときはこちらに済まなそうな顔をしていて。『そんな。探していただいただけでなく物まで貰うなんてできません』と言われ返そうとしてきたが『気にしてません』の一点張りでなんとかごり押した。
その後もなんとかお礼をしようとしてきたがこれも『気にしてません』でごり押した。すいませんねお母さん、そっちとしてはお礼をしたいかもしれないけど、お礼はもう貰ってるからさ。
さて、学校へ行くかと思い足を進めようとしたら少女が服の袖を掴み最後にもう一度なにかやって欲しいとお願いされてしまった。
その言葉に母親はギョッとし、やめなさいと叱るも少女はやだやだと腕にしがみついてきた。
すいませんと謝れるも別段俺は迷惑と思っていない。
むしろここまで気に入ってもらって嬉しいまである。
なので俺は少女の前に膝をつき、顔の前で指を鳴らす。
するとどうか、俺の手には綺麗なハナミズキが小さな枝ごと握られていた。
いきなり現れた花に二人とも驚く、とりわけ母親は初見だからか余計に驚いていた。すごいすごいと言われてても実際に目にするまではそのすごさが分からなかったのだろう。その驚いた顔を見るとちょっと気分が良い。
少女に花を手渡し俺は今度こそ別れを告げる。
「その花はハナミズキっていうんだ。君の名前と一緒さ、それじゃぁねミズキちゃん。今度からは迷子に・・・・・いや、今度からはお母さんとはぐれないようにね」
その言葉にミズキちゃんは気持ちのいいくらいの返事と共に『今度はお母さんが迷子にならないように手を繋いどく』っと言っていた。
その後の母親の『えっ?』っとした表情には失礼だが笑ってしまった。
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手品師とも言われるそれは実現不可能とされる事象を様々なタネや目の錯覚を用いてあたかも現実に反映されたように見せる一つのエンターテイナーである。
それは魔法ではない、タネも仕掛けもあり。ちゃんとした裏付けがある。
その全ては実際に見えているものとは別物である。
消えたものは実際に消えておらず、そう見えるようになっているだけ
増えたものは実際には増えておらず、そう見えるようになっているだけ
一瞬で現れたものも実際に虚空から現れておらず、そう見えるようになっているだけ。
全ては嘘であり、現実ではない。
奇跡を演じているだけで奇跡ではない。
先ほど少女に見せた飴玉も、トランプも、花も全てちゃんとしたタネがある。
それを少女に説明すればガッカリしてしまうのかもしれない。あの笑顔も少しは薄れるかもしれない。
__確かに俺は魔法使いではないし、飴玉もトランプも花も全て魔法ではない。あれは誰にでもできるような初歩的なマジックさ。
だが、すべてが嘘だと言うわけでもないのさ。
視線の先に木から落ちた子猫が見えた。俺との距離は10メートル以上、子猫と地面の距離はもう1メートルもない。どんなに速いやつでも間に合わない。
猫は空中でも体制を変えてきれいに着地できる生き物ではあるが今落下しているのはまだ未熟な子猫である。何故高い木に登ったのかは分からないがあの高さから子猫が落下すれば最悪の場合もありえる。
地面と激突するその瞬間、コンクリートに叩きつけられるコンマ数秒の一瞬__子猫は消えた。
まるで世界からはじき出されたように、その子猫は空中でその姿を消していた。
そんなありえない現象が目の前で起きたのにも関わらず、俺はいたって冷静に立っていた。
肩にかけられたカバンに首にかけられたヘッドフォン。
子猫が落ちる前と何も変わっていない。
しかし、俺の腕には先ほどと違って僅かな温もりと確かな重みが感じられる。
聞こえてくる小さなかわいらしい鳴き声。
目を向けてみると腕の中には消えたはずの子猫が抱かれていた。
正真正銘の奇跡が今、世界に起こった。
トリックとは言いようのない。確かな奇跡が起こった。
その奇跡は今、俺の目の前で起こり、俺の腕の中にいる。
「駄目じゃないかあんな高い所に登っちゃ。ほら、行きな。ああいうのはもうちょっと大人になってからにしな。」
別に驚く必要はない。
奇跡が起こるのは当り前さ、何故なら__
俺が起こしたのだから。
両手から現れた髪飾り?あれはただの物体転移と錬金さ
母親の位置?あれはただの生命探知と気配察知
子猫が消えた?あれはただの置換魔術さ
あぁ、俺は魔法使いなんかじゃないさ。
嘘じゃない
奇跡は起こしちゃいるがこれは似ているようで違う。
なにも知らない人には同じように見えるけど実際には別物。
俺が使う奇跡は魔法ではなく魔術。
ちゃんとした魔術式を基に奇跡を起こすものだ。
魔法と違ってちゃんとトリックがあるんだぜ。
そういう点で言えば手品と似ているな。
そう、実は俺__魔術師なんだぜ
「あのお兄ちゃんすごかったわねぇ」
「うん!すごかったしかっこよかった!」
「あらあら、フフ」
「かっこよくて綺麗なおめめだった」
「そういえば印象に残りそうな綺麗な色だったわね」
「うん、宝石みたいだった!」
「また会えるといいなぁ。もっといろんな魔法がみたい!」
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「子供の笑顔が、俺にとってはなによりのお礼なのさ」
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「あれ?でも・・・・・・名前教えたっけ?」