「はあっ!!」
「ぐぁっ!!」
何もない荒野のような場所で2人の男が戦っている。
1人は愛と平和のために戦う、天才物理学者。
もう1人は数多の星を破壊し尽くしてきた地球外生命体。
2人の目的は違う。
一方は地球外生命体を倒して新世界を作るために、もう一方は自分の障害を消すために。
《鋼のMoon Salt!!》
《Rabbit Tank》
《Yeah!!!!》
「とうとう初期フォームか。勝負は決まったな」
地球外生命体がにやりと笑うように言い放つ。
地球外生命体はまだ余力があるのに対し、天才物理学者の方はあと少しでもダメージを負えば消滅する程の状態だ。
どう見ても絶望的な状況。
だが天才物理学者は諦めていなかった。
「さぁ…それはどうかな」
彼は懐から2本のボトルを取り出した。
一つは銀色の龍、もう一つは金色の兎の形をしている。
天才物理学者はボトルを振りそしてベルトに装填する。
《Rabbit》
《Dragon》
天才物理学者はベルトのレバーを回す。
《Are You Ready?》
世界の為に、人類の為に、そして愛と平和のために戦う決意を持って天才物理学者は叫んだ。
「ビルドアップ!」
《ベストマッチ!》
天才物理学者の装甲が青と赤から銀色と金色のものへと変わる。
それは自身の力と相棒の力の2つを組み合わせたものだ。
そして天才物理学者は大剣を取り出して地球外生命体に斬りかかる。
瀕死の状態だったとは思えない程の力強い斬撃は地球外生命体の防御を突き破りダメージを与える。
「何故だっ!!ラビットボトルとドラゴンボトルはベストマッチじゃないはず!!!?」
「俺と万丈はな…最強のコンビなんだよ!!」
そう叫びつつ、天才物理学者は大剣を大きく振り地球外生命体を吹っ飛ばした。
そして大剣を銃に変形させてベルトにさしている2本のボトルをセットする。
《Rabbit》
《Dragon》
《Just Muchでーす!》
「はあっ!!」
《Just Much Break!!》
「うぐぁっ!!」
放たれた弾丸に大ダメージを与えられる地球外生命体。
天才物理学者は銃をしまい、ここぞとばかりに言う。
「勝利の法則は決まった!!」
天才物理学者はベルトのレバーを勢いよく回す。
《Ready Go!!》
《Bortec Finish!!》
彼は空中高くに跳び右足に力を収束させて地球外生命体に放物線を描くように向かった。
「させてたまるかあああ!!」
地球外生命体も力を振り絞りベルトのレバーを回す。
《Ready Go!!》
《Fever Flow!!》
天才物理学者を返り討ちにするべく上に向かう。
2つの力がぶつかり合う。
互いの力が競合い、両者ともに最後の力を振り絞る。
「うおおおおおおお!!!」
「はあああああああ!!!」
永遠に続くかと思われた競合い。
しかし地球外生命体の力を押し返して天才物理学者の蹴りが炸裂する。
「うおおおおおおおおおお!!!」
「うぐあああああああっっっ!!!」
天才物理学者の蹴りは止まらない。
いつのまにか青色と赤色の装甲に変わっていたが、地面に向かって勢いは増していく。
「これで最後だああああぁぁぁぁ!!!」
地面に向かい加速していく両者。
地球外生命体は自身に活路がないことを感じ、叫んだ。
「この俺が…この俺が人間なんぞにいいいいいい!!!」
そして地面についた瞬間、大爆発が起こり地球外生命体は完全に消滅した。
「はぁ…はぁ……!!」
天才物理学者は着地後に乱れた呼吸を落ち着かせる。
そして辺りを見渡し吸収された相棒がいないかを確認する。
「いたっ!!」
自身の後ろを振り向いた先に倒れている相棒の姿を見つけてかけよる天才物理学者。
しかしその瞬間、空間が歪み突如として大竜巻が起こる。
「まずい、空間の崩壊か!」
竜巻は天才物理学者とその相棒を巻き込み規模を大きくしていく。
天才物理学者は成すすべもなく竜巻内で回され続ける。
その中で彼は同じく巻き込まれた相棒を助けようと手を伸ばす。
「万丈ぉぉぉぉ!!!」
しかし天才物理学者の努力は虚しく、相棒との距離はどんどん引き離されていく。
そして彼自身も体力の限界を迎えたのか、段々と意識を失っていく。
「(すまない…。紗羽さん…美空…一海…幻さん……万丈)」
帰りを待つ仲間、ここまで来るのに犠牲になった仲間に心の中で謝りながら、天才物理学者は意識を完全に失った。
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【ゴルドルフside】
「…ああ……、あああ、誰か、誰か…!!!」
「誰かいないのか!誰でもいい、誰か、誰か───!」
叫びをあげる。
だが助けは来ない。
持っている魔術礼装は尽きかけ、目の前は大量の化け物。
逃げ場はない、たとえ逃げてもこいつらはどこまでも追いかけてくる。
「ひいい、来る、来る……!!」
奴らは私が逃げられない事を感じたのか、ジリジリと距離を詰めてくる。
「ああ……あああ………あああああああ!」
怖い怖い怖い怖い。
「誰か、誰かいないのかぁ!なんだって私がこんな目にあう!?」
今日この日の為に血の滲むような苦労をしてきたんだ。
その結末がこれなんて酷すぎる。
「くそう、私を誰だと思っているんだ!」
「私はゴルドルフ・ムジークだ!ムジーク家の長男なんだぞ!?」
「今日という日からカルデアを栄光に導く男!栄光、そう、栄光!そのはずだったのに……!」
命乞いのように口から言葉が出る。
この放送を聴いている誰でもいい。誰か助けてくれ…!
だが奴らにはそんな時間を与えないとばかりに私に攻撃してきた。
私の体に鈍器がぶつかる。
「ひぃぃ、いたい、いたいぃぃい!ああ…ああ…ひっぐ、うう、ううううう……!!」
今の一撃はなんとか耐えたが、それもあと一回が限度だろう。
つまり、あと二回攻撃されたら、私は死ぬ。
「…なぜだ。なぜなんだ。なんでいつも、最後になって裏切られるんだ!」
「ああ、いつもこうだ!私はこうだった……!!」
心の叫びが漏れる。
そんなことはどうでもいい。
絶対的な死の前から逃れられないのだから。
だから、最期くらい吐き出してもいいじゃないか。
「何処に行っても私はのけ者だった。敗者だった。つまはじき者だった。」
「知っているさ、私が嫌われ者だってコトぐらい!でも、だからってどうしろと言う!」
目から涙が溢れ出てくる。
こんなはずじゃ、こんなはずじゃなかった。
「嫌われる理由が分からない!人に好かれる方法なんて分からない!」
「私だって、努力はしたんだ!私なりに最善を尽くしてきたんだよ!」
「何も一番なんて望んではいなかったんだよ?二番でも三番でも満足だった!」
「だが、はは、結果はどうだ。三番どころか成果すら出せなかった!」
奴らの攻撃が当たる。
これで防御礼装は切れた。
次は、死ぬ。
「やめろ、やめてくれ───ぃ!」
「くそう、今まで何もいい事がなかったのに!やっと、やっとここで成功できると思ったのに…!」
「どこまでいっても私の人生はどん詰まりなのか、チクショウ、チクショウ…………っっっ!」
「死にたくない、まだ死にたくない!」
「だってそうだろう、私はまだ、一度も、一度も──────」
「一度も、他人に認められていないんだ!まだ誰にも、誰にも愛されていないんだよ……!」
奴らが手に持っている手鎌を振りかぶる。
痛そうだなぁ…痛かったなぁ……あの手鎌……一瞬では殺してくれないんだろうなぁ……
古い資料で見たことがある。
こいつらは
人間を苦しめる為に編成された部隊。人の皮を被った悪鬼。
それがどうしてこんな場所に蘇ったのかは知らないが…あぁ、痛そうだなぁ、最期まで、私はついて───
《Ready Go!!》
《Bortec Break!!》
突然、目の前のオプリチニキがまとめて吹っ飛んでいく。
今のは…銃弾か?
いやいや、ただの銃ごときであいつらの装甲は破れない。
あの装甲破るには魔銃ぐらいじゃないと無理なはずだ。
「大丈夫ですか!」
1人の日本人らしい青年が走ってくる。
その男は何やらメガホンのような形をした物を持っている。
周りには誰もいないから、恐らくこの男がオプリチニキを倒したのだろう。
「あー、えっと…日本語分かります?」
「あ、あぁ。日本語は喋れるとも」
「怪我はないですか?」
「まあ怪我はしているが…動けないことはない」
ダメージを負ったのは脇腹と右腕だ。
とてつもなく痛いが、動けないわけじゃない。
「よかった…」
安堵の表情をする青年。
私が今まで出会った中でもこんな奴は初めてだ。
私の醜い命乞いを聴いても助けにきてくれたのは。
「…ありがとう」
「ん?今何か言いました?」
「な、なんでもない!それよりよくやったぞ青年、このゴルドルフ・ムジークが褒めてやろう!」
「は、はぁ…それはどうも」
青年を困惑させてしまった。
だが仕方がないんだ。
私は素直に気持ちを伝えるのが苦手なんだよ。
言い訳はとりあえず置いておくとする。
今は一刻も争う状況なのだ。
だが、気になる点がある。
それはこの青年の存在だ。
オプリチニキを倒せる程の魔術師がカルデアにいるのか?
現在カルデアに残っているのはサーヴァントとカルデア職員、あと人理を救ったとかいう小僧しかいないはず。
戦闘能力を持った者なぞ殆どいないだろう。
その辺りついて問い詰めなければいけない。
「ごっほん。それで、君は何故私服なのかね?カルデアは全職員制服着用だと聞いていたのだが」
「カルデア…?それがここの名前なんですか?」
「とぼけるのは止めたまえ。ここは人理継続保障機関、フィニス・カルデア。ここにいるという事は、君はここの従業員のはずだぞ」
「人理継続保障機関…」
まるで聞いたことのない単語を聞いたかのような反応を示す青年。
確かに魔術師以外の人間にはあまり知られていない機関だがここにいる以上知らないはずはない。
「あの…少し質問してもいいですか?」
「あぁ、時間がないから早くしたまえ」
ここでジッとしていたらまたオプリチニキがやってくるかもしれない。
それ以前にこの場所から一刻も早く離れたい。
「スカイウォールという言葉に聞き覚えは?」
「空の壁?何だそれは?」
「東都、西都、北都を知っていますか?」
「何だそれは。どこか地方の話でもしているのかね?」
「なるほど…ありがとうございます」
訳が分からない質問をすると青年は考えこみ始めるようにぶつぶつと呟いた。
「やっぱりここは新世界ということになるのか?いや、だとしてもこの建物にいる理由はどうなる?それにテロみたいなのに会ってる感じだし…結局、さっきの奴らは一体何なんだ?」
通路を右往左往する青年。
そんな時、通路の左からこちらに向かってくる足跡が聞こえてくる。
遠目に見てみると、向かってくるのは予想通りオプリチニキ。
しかも先程の倍はいる、ちょっとオーバーキルすぎやしないかね!?
「お、おい!奴らがまた来た!逃げるぞ!」
いくらなんでもあの数じゃ青年にも太刀打ちできないだろう。
さっきのだって、不意打ちだったし。
これ以上の応援がない以上、するべき事は撤退のみだ。
私の呼びかけに青年は我に返る。
「うおっ!なんかいっぱい来てる!?」
「あれはオプリチニキといって──あああ、とにかく逃げるぞ!」
しかし青年は逃げるどころかむしろオプリチニキの方に体を向けた。
「ここは俺が食い止めます。早く逃げて!」
「な、何しているんだ!生身の相手が勝てる相手じゃない!逃げる事が最善策なんだよ!」
生身の人間が立ち向かおうともあの数相手に食い止められるのはせいぜい数秒。
なのに何故立ち向かおうとするんだ。
すると青年がベルトらしき物を取り出して腰に巻きつけた。
「さぁ、実験を始めようか」
そして懐から赤色と青色のボトルを取りだして振り始める。
一体、彼は何をしようとしているんだ?
《Rabbit》
《Tank》
《Best Much!!》
ベルトらしきものが刺したボトルに反応して喋った。
何なんだこれは、今はふざけている場合じゃないというのに!
私の気などおかまい無しに青年はレバーをグルグルと回す。
するとパイプみたいな物がベルトらしきものから赤色と青色の装甲が抽出されて飛び出し彼の前後に展開される。
《Are You Ready?》
「変身!」
彼の前後に展開されている装甲が彼の身を包む。
そこには全くみた事がない姿をしていた青年がいた。
《鋼のMoon Salt》
《Rabbit Tank!!》
《Yeah!!!!》
「お、お前は一体…何者なんだ?」
「ただの自意識過剰な正義のヒーローさ」
感想等よろしくお願いします