剣を振るう、弾かれる。
距離を詰める、蹴りを喰らう。
距離を取る、詰められる。
ガードする、吹き飛ばされる。
剣を振るう、カウンターをくらう。
何度気絶しては貴方に立ち向かっただろう。
意識が覚醒するたび僕はあなたに吠える。
「もう一度!」
エルフの少女に見守られながらまたあなたに向かっていく。
時刻は日が出る前の早朝、黄昏の館中庭である。
僕がなぜこのような事になっているかは少し前に遡る。
「おはようベル」
朝食をすませてから食器を片し自室に戻ろうとしたところを、後ろからフィンさんに声をかけられ振り返る。
「待たせたね、君の今後について話がある。今から一緒に来てくれるかい」
この一週間ほど死にかけたということでダンジョンに潜るのを禁止され、家族にダンジョンについて学んだり、一人トレーニングをずっとしていたがついにダンジョンに潜れるかと思い心が弾む。
「おや、ずいぶん嬉しそうな顔だね。この一週間は退屈だったかい?」
顔に出ていたのか、フィンさんが揶揄うように僕に言う。
「ずいぶん待たせたしまったね、君の休養もそうだが遠征の報告や物資の調達などがあって、なかなか手がまわらなったんだが。すまなかった」
「いえそんなことは、僕もこの一週間でダンジョンの事を学ぶ事が出来ましたし、他の家族と話す事ができたので楽しかったです。」
「そうか、ここではうまくやれそうかい」
「はい!」
そんな会話をしながら団長室に到着してフィンさんが扉を上け中に入る。
中に入るとロキ様もリヴェリアさんアイズさんがいた。
「お〜ベルおはようさん、ここに座り」
ロキ様の横に座る。
対面にフィンさんとアイズさんが座った所でフィンさんが話し出す。
「さて早速だが本題から話すよ。さっきも言ったが君の今後についての方針が決まった。先に言っておくが強制ではなく提案だ、第一は君がダンジョンで生き残れるようになるためにする事だ、君が嫌だと思えば断っても構わない」
僕が頷くとフィンさんが続けて話す。
「まずダンジョンに潜る前に君に戦い方とダンジョンの知識を叩き込むもうと思う。戦い方に関してはアイズ、知識についてはリヴェリアに見てもらうとする」
僕の教育の為に幹部のアイズさんと副団長リヴェリアさんがわざわざ見てくれると言うフィンさんに驚く。
「どうして僕のため二人が⁉︎」
驚いた僕を宥めるようロキ様が背中を優しく叩きながら言う。
「それにはちゃんと理由があるから最後まで聞き」
深呼吸をするようロキ様に言われる。
そして落ち着いたところで再びフィンさんが話し出す。
「落ち着いたかな?うんそれじゃあ続きを話していくよ。君のスキルについて現状何もわかっていないから二人をつけようと考えたんだ」
窓際に立っていたリヴェリアさんが少し近づき話し出す。
「私なりにそのスキルについて調べて見たんだが、予想はできるがはっきりとした事はわからくてな、スキルがはっきりわからないうちは何があっても対応できるように戦闘訓練はアイズが適任だと判断した」
「それに座学についてはリヴェリアがつきっきりで教えるわけでなく基本は書庫で自習だ、立場上リヴェリアも多忙だからね、ただたまに僕も顔を出させてもらうよ」
なるほどそう言うことか。
【英雄願望】
・能動的行動に対するチャージ実行権
確かに僕はこのスキルについて自分自身でもわかっていない、
「英雄願望……」
「あぁ、君の思いがスキルに現れたんだろう」
僕の思い。
僕の目指すべきもの。
【 英雄 】
今はまだ全然果てしなく遠いけど
憧れの貴方に教えてもらえるなんて是非もなく
「で、どうやベル。最初も言うたが強制ではないで」
「よろしくおねがいします!」
「今日はここまでだね」
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
日が顔を出し、ちらほらと家族のみんなが食堂へ向かいだす時間に訓練が終わる。
満身創痍の僕は返事もできないまま前に倒れこむ。体力など一切残っておらず自分の足で立つのもままならない状態まで追い込まれる。これがここ数日アイズさんとの訓練の内容である。
アイズさん曰く口で教えるより闘う方がいいと。
毎回訓練が終わるとポーションを浴びせられ体の傷は癒えるが、体力までは戻らない。いつのまにか僕を介抱する様になったレフィーヤさんが僕を支えながら食堂へ向かう。
「またこっぴどくやられましたねベル」
こんな調子がここ数日続き、朝食は僕、アイズさん、レフィーヤさんでとる事が自然となった。
僕は昼からの座学の為体力を回復するため、およそ朝食とは言えないほどの量の朝食を取る。