剣を振るう、弾く。
距離を詰める、蹴りで止める。
距離を取る、詰める。
ガードする、そのまま吹き飛ばす。
剣を振るう、カウンター。
何度立ち向かう君を気絶させてしまっただろう。
目を覚ますたび君は向かってくる。
「もう一度!」
今日もレフィーヤが見守る中、君が向かってくる。
時刻は日が出る前の早朝、黄昏の館中庭。
ベルの剣を捌きながら少しづつベルの余裕を奪っていく。
ベルは一撃一撃は軽いがスピードがあるため、ヒット&アウェイのスタイルを教えた。
敵を翻弄し弱らせてからとどめを刺す。
ベル自身戦闘は全くの素人だった。
私の拙い言葉を素直に聞き入れてくれた。
訓練はひたすらベルに攻撃をさせ、たまに反撃したりとベルと戦闘を行う。
ただそれだけ。
私はフィンやリヴェリアのように口で説明ができない。
ひたすら戦うこれが私なりの教え方。
余裕がなくなってくるとベルの攻撃はだんだんと雑になってくる、私は剣を弾きベルの体制を崩す。
ベルは体制を崩すと、必ず距離を空けようとする癖がある、それに合わせて距離を詰めようとしたがそこで私は驚いた。
ベルは崩れた体制を即座に立て直して、剣を持っていない方の左手で拳を握ると、距離を詰めようとした私の顔に合わせて反撃をする。
「っ、甘いよ」
身を翻しその勢いで回し蹴りを放つと、ベルが吹き飛んでいく。
倒れたまま動かない様子を見ると気絶してしまったようだ。
しかし今の蹴りは咄嗟に出た為、思いの外いいのが決まってしまった、なんとか手加減はできたが心配になりベルのもとへ歩く。
「ベル!!」
レフィーヤも今のはまずいと察したのだろうか慌てた様子でベルのもとへ駆け寄る。
ベルのそばにレフィーヤは座り、慣れた手付きでベルを介抱する。
レフィーヤは今日はもうダメそうですねと言いながら、ベルの頭を自分の膝に乗せて少しづつポーションをベルの口に流し込む。
「ごめんねレフィーヤ」
「いいですよアイズさん、私が好きでやっている事なので」
いつからかレフィーヤは私たちの訓練に顔を出すようになりベルの手伝いをしてくれる。
私とベルの訓練はこの時間だけだが、レフィーヤはリヴェリアの座学の時間もベルと一緒に受けているらしい。
「それにしても、今のはずいぶんいい蹴りが決まりましたね」
レフィーヤがジト目で私の方を見ながら言う、たまらず私は目を逸らす。
「そんな目で見ないでレフィーヤ」
「ふふ、ごめんなさい。ですけど今のは絶対にベルは反応できないと思いますよ、私でも反応できるか」
「うん、ついやっちゃった…」
まさかあそこでベルが反撃してくるとは思わなかった。
今までベルは剣での攻撃しかしてこなかったので意表を突かれ驚いたのと、私は反撃ができるほど弱く剣を弾いたつもりはなかった。
凄い速さ成長している。
もしかしたら私以外の誰かとも訓練をしているのだろうか?少し前までは痛みに耐える事でいっぱいだったのに…
ベルの成長を感じる事ができ嬉しくもあるが…
どうして君はそんなに早く強くなれるの?
『英雄になりたいです』
思いの強さ。
自分の目指す場所がはっきりしている君が少し羨ましいと感じてしまう。
私はいったいどこに向かっているんだろう。
強さだけを求めた私と目指すものがあって強くなりたい君の違いはなんだろう。
君はいったい…
「どうしたんですかアイズさん」
レフィーヤが心配そうな顔で私の方を見ている。
「ごめんレフィーヤ」
「いえ、ただ少し表情が暗かったので」
レフィーヤを安心させるように大丈夫と言ってレフィーヤに一つ提案をする。
「ねぇレフィーヤあっちの木の下に行かない?」
「もちろんかまいませんがどうしたんですか?」
「少し眠くなってきたからちょっとだけ寝よう」
木の下はなだらかな傾斜で芝生になっていて為寝るには快適な場所になっている。
「ふふっ、もちろんです。このうさぎさんも起きる気配がありませんし移動しましょうか」
レフィーヤの膝で寝ているベルをお姫様抱っこ?(ロキが言ってた)で運び3人で川の字になって寝る。
ベルが真ん中で私が左側、レフィーヤは右側で朝日が出る前の少しの時間私たちは眠った。
あれから朝日が昇りベルの驚く声に起こされた私とレフィーヤは、ベルと一緒に食堂へ向かう。
レフィーヤは水とパンとサラダ。ベルはとにかくたくさん。私はサンドイッチとジャガ丸君をテーブルに置き3人で朝食をとる。
「ベル、私の動き少しづつついてこれるようになってきたね」
「本当ですか?」
「えぇ、最初に比べるとずいぶん反応できるようなっているのが見ててわかりますよ」
「うん。あと思ったんだけど、他の武器も使ってみない?」
「他の武器ですか?」
「うん」
戦闘の基礎を教える為に剣を使わせていたが、今日の訓練で反撃ができる程度には戦闘に慣れてきたのでそろそろベルに合った武器を見つけてみようと提案する。
「そうですね。何の武器が自分に合っているかは使ってみないとわからないですからね。ちなみに私は杖と短剣を使います」
「なるほど自分に合った武器ですか。全然考えてなかったです」
「なら明日何種類か武器を持ってくるから、それで戦ってみよう」
「わかりました」
そんな話をしながら朝食を食べ終わる。
二人と別れてから明日の為にどんな武器を持っていこうかと考えながらファミリアの倉庫に向かう。
君はどんな武器を気にいるかな?