><><><><
今日まで学んだ事を思い出せ
アイズさんから
「ベルは痛みに弱いからダメージを受けない戦い方を教えるね」
「ダメージを?」
「そう、攻撃して引くそれを繰り返す。重要なのは絶対にダメージを受けずに攻撃する事」
「どうすればいいんですか?」
「ベルは敏捷のステータスが他より高いからそれを生かして攻撃をする」
「?」
「とにかく動いて攻撃をダメージを受けないようにする」
「………」
「そして敵の隙をついて攻撃をしたらすぐに引く」
「………!」
「わかったみたいだね」
「はい!」
「じゃあ今日の訓練は私の攻撃を避けてね」
「えっ⁉︎」
「大丈夫少しだけ手加減するから頑張って」
リヴェリアさんから
「ダンジョン攻略において先人達の知識とは偉大である」
「はい」
「無知のままにダンジョンに入るのと知識があるのでは生存率はまるで違う」
「なるほど」
「覚えるべきは正規ルートとモンスターについて等沢山あるぞ」
「正規ルート?」
「あぁしかしまだ正規ルートを覚えるのは後の事だ、まずはモンスターについて知るべきだ」
「モンスターについて?」
「そう、階層ごとの出現モンスターや危険な攻撃立ち回りなど覚える事は沢山あるぞ」
「はい!」
「まずはその本の中身を全て覚えてもらう」
「………これですか?」
「そうだ」
「千ページぐらいありそうなんですが?」
「いや八百ページほどだ」
「全部ですか?」
「そうだ」
「………」
色々あったけど全てが僕の力になる
状況把握
前方にシルバーバック
後方に守るべき女の子
右手に短剣
ポーションはもうない
地形は良好
足は問題なく動く
恐怖はない
「グルォォォォオオオオ!!!」
「かかってこい!」
シルバーバックが攻撃体制に入り腕を上げる
隙を見逃さない
最初に切り付けた足にもう一度切り付けそのまま背後に回る
ダメージを受けずにダメージを与える
シルバーバックに遠距離での攻撃はない
一撃の威力は高いが躱せる
アイズさんとの特訓を思い出せ
リヴェリアさんの座学を思い出せ
戦闘の基本を敵の攻撃を弱点を
見える
確実に回避を取りダメージを与える
あの人より全然遅い
避ける
剣を振るう
繰り返す
足を止めるな
翻弄する
再び同じ場所を切り付ける
すぐに離れる
繰り返す
油断はしない
一撃を積み重ねる
「グルォォォォオオオオ!!!!」
シルバーバックが叫び攻撃をしてくるが難なく躱せる
隙を見つけさらに一撃
何度もシルバーバックの足を切り付けシルバーバックが膝をつく
この好機を逃さない
シルバーバックが腕を振り回し攻撃をしようとするが機動力がなくなった状態で避けるのは容易い
そのまま一気に後ろに下がり距離を取る
狙うは一点
助走距離は十分
全力で走り出し加速する
走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!
剣を前に突き出し自身を槍に見立て全身を使った渾身の一撃
剣が敵の弱点である魔石にあたる
「ガァッッ!!」
勢いは止まらず魔石を砕きそのままシルバーバックを貫通する
振り替えるとシルバーバックの胸部にはポッカリと穴が空いた状態で固まっている
やがてシルバーバックは倒れ込み灰になり崩れや形がなくなっていく
「………」
辺りが静寂に包まれるが胸の高鳴りを抑えることができない
「ーーぉぉおおおおおおおッッ!!!!」
僕は空に向かい声を上げていた
これが僕の一歩目
英雄への一歩
そして僕の声に合わせてか行く末を見守っていたダイダロス通りの住民達が一斉に僕の元へ駆けてくる
「やるじゃねぇか!」「すごいな君!」「怪我はないかい?」「ロキ・ファミリアって言ってたよなありがとう!」「すごかったよ!」
賞賛や心配の声をかけられる
「あんたの名前をもう一度聞かせてくれよ!」
ベル・クラネル
><><><><
〜ギルド医療室〜
「そんなことがあったんですね」
ベットで横たわったままベルの話を聞き終えた私はベルの方へ顔を向け目を合わせる。
「はい、レフィーヤさんのお陰で女の子だけじゃなくダイダロス通りの多くの人達を助ける事が出来ました」
「その人達を助けたのはベルですよ」
そう私は貴方にただ剣を渡しただけ。
「自信を持ってください、ベルが走らなかったらもっと沢山の被害が出ていたかもしれなかったんですよ」
今回の事件で一番の重傷人は私らしく怪我人はほとんど出ておらず数人が軽傷を負ったぐらいらしい。
ここまで被害が少なく済んだのはアイズさんがたまたま近くにいて直ぐにモンスターの対処が出来たことが大きかったそうです。
その中でもベルと戦ったシルバーバックと私たちが倒した新種のモンスターが特に危険なモンスターだったらしい。
「はい、けど僕はレフィーヤさんに助けて貰いました。レフィーヤさんがあの時剣とポーションをくれなければ僕はシルバーバックに勝てなかった」
「けど剣やポーションが無くてもベルは逃げることができましたよね」
「僕一人が逃げれて助かったとしても、僕はきっと英雄を目指す事なんて一生できなかったです」
「…どうして?」
「もし僕一人助かって女の子を守れなかったら僕は一生後悔します、それに例え女の子を守れたとしても僕が死んでたかもしれません」
「………」
「レフィーヤさんが僕と僕の夢を守ってくれたんです」
「………っう、っぐす」
「ありがとうございました。レフィーヤさんが助けてくれたから今ここに僕がいます」
気づけば私は泣いていた。
「ベルごめんなさい!」
胸が苦しい
「私は貴方を利用しようとしてたんです、私は憧れを追いかけるのを諦めていました!」
辛かった
「けど私はレアスキルを持っているから、魔力が高いから、みんなが私に期待していて、けどみんなの期待に答えられない自分が嫌だった!」
誰にも言えなかった
「けど貴方が来てからは貴方に注目が集まったから」
私の苦悩
「だから貴方を利用して私は逃げようとしたんです」
助けて
「でもレフィーヤさんは逃げなかった」
ベルが私の手を握って優しく微笑む。
「貴方が逃げずに戦ったからティオネさんやティオナさんやアイズさんが助かった」
貴方はどうして私が欲しい言葉をくれるのか。
「貴方が僕を支えてくれたから僕は助かった」
貴方の言葉を聞いていると胸の苦しみが和らいでいく。
「レフィーヤさんが辛い時は僕が支えれるようになります」
「ベル………」
「だからこれからも僕を支えてください、僕はレフィーヤさんがいないと英雄になれないんです」
気づけば涙は止まっていた。
貴方の為に私ができる事、私の中の予感が確信が変わる
「………嫌です」
「っぇえ!」
貴方がいつか英雄になると確信する。
「っふふ、そんな悲しそうな顔をしないでください。これからはベルを支えるんじゃなくベルを引っ張って行けるようになります」
けどきっと困難に立ち向かう中で貴方一人では厳しい道のりになるでしょう。
だから私が貴方の前で道を作ります。
「あらためてベルこれからよろしくお願いします」
貴方が英雄になる為に。