英雄達   作:人類最強の請負人

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27話ファイアボルト

 

 

「魔法を使う上で必ず気をつける事があります、それが精神疲弊です」

 

「精神疲弊?」

 

「簡単に言うと精神力を使いすぎると気絶します」

 

夜遅くに僕とレフィはステータス更新が終わった後、魔法の試し打ちをする為ダンジョンに向かっていた。

 

「魔法は強力な物です。一つの魔法で多くのモンスターを倒せたり、絶望的な状況をひっくり返したり出来るような事ができるものもあります」

 

道中レフィが改めて僕に魔法について改めて説明をしてくれている。

 

「ですが強力な魔法は詠唱が長かったり、精神力を沢山使うデメリットもあります」

 

一度リヴェリアさんの魔法の詠唱を聞かせてもらったが戦闘中に唱えると考えると確かに長い。

 

「ですから、今私が訓練しているように並行詠唱ができるようになれば移動しながらでも唄うことができるようになります」

 

「でも僕の魔法には詠唱がないんだよね?」

 

「そうです、だからこそ使い方を知るべきです」

 

ギルドにつき僕たちはダンジョンに潜る。

 

一階層の端っこの方へ移動して、一体のゴブリンを見つける。

 

「ベル、あのゴブリンに魔法を放ってください」

 

僕はイメージする。

 

ついに憧れていた魔法を放つ。

 

なぜだろう、初めて打つはずなのに打ち方がわかるような気がする。

 

僕はゴブリンのいる方へ右手を突き出す。

 

右手に意識を集中して僕は唱える。

 

「ファイアボルト!」

 

唱えた瞬間右手から炎のような魔法が、雷のような速度でゴブリンに真っ直ぐ進む。

 

魔法はゴブリンに命中して、ゴブリンは灰となり消えていく。

 

「やっぱり思った通り魔法名だけで放てましたね」

 

右手がじんじんする。

 

気分が高揚していくのがわかる。

 

呼吸が荒くなる。

 

「レフィ見ましたか⁉︎僕の魔法です!」

 

高揚した気持ちを抑えきれず、初めて買って貰ったおもちゃを見せびらかすように僕はレフィに話しかける。

 

「えぇ見てましたよ、ベルの魔法を」

 

その後レフィに指示された通りに僕は魔法を放つ。

 

モンスターに放ち続け、次第に疲れを感じる。すると先程までモンスターに放つように言われていたが、次はダンジョンの壁を魔法を壊してと指示される。

 

僕は壁を数箇所壊すと、目の前が真っ暗になった。

 

……………

 

…………

 

………

 

 

 

><><><><

 

 

 

………

 

…………

 

……………

 

後頭部にやわらかい感触を感じる。

 

最近は朝の訓練もなく、気絶する事も少なくなっていたので久しく感じる。

 

頭を撫でられているのが気持ちいい。

 

「………目は覚めましたか、ベル?」

 

僕はレフィに膝枕をしてもらっている。

 

「少し気だるいかな」

 

アイズさんとの訓練の時、僕は何度か気絶してしまう事があった。

 

目が覚めると必ずレフィかアイズさんのどちらかが膝枕をしてくれている。

 

最初は恥ずかしかったんだけど、二人が『甘えていいんだよ?』と言ってくれてからは文字通り甘えさせてもらっている。

 

「精神疲弊の後遺症みたいなものですね、時間が経つと自然に治ります」

 

なるほど、これが精神疲弊か。

 

「一人でダンジョンに潜って精神疲弊したらそのままモンスターに襲われて死んでしまいます」

 

レフィが僕の頭を撫でながら、冷たい口調で続ける。

 

「魔法が使える事はダンジョンの攻略に大変役に立つ事です。けど頼りすぎてしまうと精神疲弊を起こしやすくなります」

 

「じゃあなるべく使わないようにした方がいいかな?」

 

「頼りすぎなければいいんですよ。ベルの魔法は正直威力はそんなに強くはないですが、精神疲弊するまで結構な数放つ事ができましたね」

 

「そうなんですか?」

 

「はい。私やリヴェリア様は威力が高い魔法ですが、詠唱が長く精神力を使います。けどベルの魔法は詠唱がなく精神力はそこまで使わないのでしょう」

 

「…………」

 

考えたくない事をどうしても考えてしまう。

 

「どうしたんですか?」

 

「……僕の魔法は強くないのかな?」

 

先程魔法を放った時は確かに嬉しかった。

 

けど魔法とは必殺技のようなもっと派手な物を想像していた。

 

一度放てば戦況が変わるような。

 

「…………はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

レフィにものすごい長いため息をさせてしまった。

 

「そんなくだらない事を考えてたから元気がなかったんですか?」

 

「だって」

 

「そもそも魔法が発現しただけでも十分すぎるぐらいなのに、さらに詠唱なしの超速攻魔法なんてかなりのレア魔法なのに」

 

レフィが恐らく怒っているのだろう、先ほどまで僕の頭を撫でていた右手は拳を握り震えていた。

 

そのまま無言で拳を目の前まで近づけられ僕はデコピンをされた。

 

ボコッ!

 

「……っ痛ぅ〜⁉︎」

 

およそ人の額からしてはいけない音がし激痛が走る。

 

「これでもLv.3ですから」

 

激痛に悶えながら額を抑え痛みが治るを待つ。

 

「いいですかベル、良く聞いてください。魔法に憧れを抱いてたのはわかります、英雄のようなカッコイイ派手な魔法を使いたかったのもわかります。けど魔法は貴方の想いが形になった物なんです」

 

僕の想い……

 

僕は魔法にどんな気持ちを想い描いていた?

 

「思い出してください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベルにとっての魔法は?」

 

炎だ。

 

真っ先に思い浮かぶのは炎。

 

「魔法に何を求めるんですか?」

 

より強く、あの人のもとへ。

 

より速く、あの人のもとへ。

 

「それだけですか?」

 

叶うなら。叶うなら。叶うなら。

 

英雄になりたい。

 

「僕は守りたいと思う全てのものを守りたい、絶対に失いたくないから。だから僕は全てを守って、みんなが笑っていられるようなそんな英雄になりたい!」

 

「子供みたいですね」

 

「……ごめん」

 

「けど、それがベルです」

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