ダンジョンから戻った後、団長室で一人書類と向き合い遠征の準備を進める。
「……新種のモンスターについては収穫はなしか」
ダンジョンで現れた芋虫型のモンスターと、地上で現れた植物型のモンスター。
前者は実際に遭遇したが、後者はティオネ達が討伐した報告以外に情報が無い。
「フィン〜、入るで〜」
返事をする前に入って来る主神。しかし待ち侘びていた来訪者だ。
「待ってたよロキ」
「すまんな、レフィーヤとベルのステータス更新をしよってな」
僕達がダンジョンに潜っている間にロキに地上で新種のモンスターについて探ってもらうように頼んでいた。
「早速だけど、何かわかった事はあるかい?」
尋ねると両手を上にあげて首を振る。
「臭いとこはあらかた調べたんやけど収穫は全くの零や」
「全くかい?」
「不自然なほど何もなかった、本当にそんなモンスターが地上で出たんかって疑うほどや」
「なるほど。ありがとう、ロキ」
「フィンの頼みならいくらでも任せてぇな」
「それは心強いな、じゃあ引き続き調査を頼んでもいいかい?」
「ええで任しとき、時間がある時に調べといたる」
「助かるよ」
「所でリヴェリアとガレスはどこにおるん?」
「ガレスは館のどこかにいると思うよ、リヴェリアはまだダンジョンでアイズといるよ」
「リヴェリアは今日は帰ってこんか」
「帰りは明日の朝ぐらいになるんじゃないかな?」
ロキは「まぁええか」と言いポケットから一枚の用紙を取り出す。
「じゃーん、これなんやと思う」
「レフィーヤかベルのステータスかな?」
「正解や、まぁ見てみ」
用紙を開いて内容をみる。
「……ベルのステータスか、上がり方は相変わらずだけど」
魔法が発現している、それも詠唱はなし。
「これは出来過ぎやろ」
スキルの発現に凄まじい成長速度、さらには詠唱のない魔法の発現。
「誰かがベルに何かをしていると考えてるのかい?」
「ありえん話ではないやろ」
「心当たりがあるのかい?」
「……色ボケ女神が、多分ベルに目をつけとる」
恐らくロキが言う色ボケ女神とは神フレイヤの事だろう。
オラリオの二大派閥と言われている僕達ロキ・ファミリア、それともう一つのファミリアがフレイヤ・ファミリアの主神。
現オラリオで唯一のLv7の冒険者がいるファミリア。
「なぜベルを?」
「わからん。たまたま目に入っただけか、スキルの事を勘付かれたんか。気に入った奴が居ればお構いなしや」
神フレイヤに目をつけるほどなのか、ベル・クラネルという人間は。
「まだ目をつけとるかもぐらいやからな、まだ確証はないで」
「わかった。とりあえず気にはしておくよ」
「頼むで、こっちも何かわかったらまた伝えるわ」
そう言ってロキは部屋から出て行く。
「……ふぅ、やっぱり君は本物なのかい」
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最近アイズが少し変わった。
ほんの少し前まで強くなるために無茶をしていたが…
いや、無茶は今もしているが焦りがなくなった様に見える。
やはりベルとの出会いが大きいのだろうか。
あれだけ私達が諭しても聞かなかったお転婆娘が、ベルと出会ってから良い方向に変わった。
何かしらの心境の変化があったのか。
ベルといえばレフィーヤも変わった。
特にレフィーヤは目に見えて変わった。
私達の期待の応えられないと、悩んでいた事は気づいていた。
私の後釜だと囁かれ、周りの期待に押しつぶされそうになっていた事も。
思う様に結果が出ず、苦しい時に励ます事が出来ればよかったが、私からの言葉ではプレッシャーになるだろうと思いアイズやティオナやティオネに任せた。
少しづつではあるが成長していたが、あと一歩踏み出す事が出来ず。
次第に少しづつ自信がなくなっていくのを見守る事しか出来ない自分に辟易した。
しかし最近あの娘から並行詠唱を教えてほしいと頼まれた。
もちろん私は了承した。
私に教えれる事は全て教えると。
指導になると厳しくなってしまうが、レフィーヤは挫けずに訓練に励んだ。
日常の生活でも笑顔が増えた気がする。
何よりも俯く事がなくなった。
ベルが来る前までは一人で俯いている所をたまに見かけたが、ベルが来てからは見ることがなくなった。
一回だけ三人の早朝に行なっている訓練を見に行ったが、私が見たのは三人が横になって並んで寝ている所だったな。
幸せそうに寝ている三人に見て安心したのを覚えている。
今思い出しても微笑ましい絵だった。
正直今のアイズに駆け出し冒険者の指導をさせるのは不安だったのだが、良い方向に向かってよかったと本当に思う。
「リヴェリア、どうしたの?」
横にいたアイズに声をかけられる。
「何がだ?」
「笑っていたよ」
表情に出ていたか。
「……帰ったら皆驚くぞ、たった一人で階層主を倒すとは」
そう言って私は誤魔化した。
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「一応彼には渡しましたよ」
「ありがとう!」
「直接渡せばよかったのに、どうして会わないんですか?」
「だって彼女も我慢しているからね、私も我慢しなきゃ」
「変な所で真面目と言うか強情なのか」
「それに次あったら食べてしまうかも」
「それはやめなさい」
「じゃあ私は戻るからそっちも頑張ってね」
「はい、殺さないように気をつけてください」
「わかってる」