英雄達   作:人類最強の請負人

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31話白巫女

 

 

アイズさんがLv.6になったと聞いたのは、ティオナさんとティオネさんの二人と、一緒に朝食を食べているときだった。

 

「アイズさんランクアップしたんですか?」

 

「そーなんだよ、昨日の夜一緒にご飯食べてたらさー、いきなり言うんだもん」

 

「先を越されちゃったわね」

 

二人は少し悔しそうで、けどとても嬉しそうに話します。

 

「アイズ、ベルと一緒に訓練するようになってから、なんていうか少し変わった感じがするのよね、落ち着いた感じがする」

 

「そうなんですか?けど朝の訓練は楽しそうにしてますけど」

 

「あぁ兎狩り?」

 

「ぶふぅ!!」

 

ティオネさんの言葉に思わず、口に含んでいた食事を吹き出してしまう。

 

「兎狩りって、なんですか⁉︎」

 

「知らないの?あんた達の訓練を見て誰かが言ったのよ。兎を狩っているみたいって」

 

確かに、ベルに容赦の無いアイズさんですが。まさかそんな風に言われているなんて……

 

「アイズもだけどレフィーヤもちょっと変わったよね」

 

「っえ、そうですか?」

 

「そうね、怪物祭から自分に自信が戻ってきてる感じがするわ」

 

「……そうですね」

 

口の周りを拭きながら、あの日の事を思い出す。

 

ベルが私を必要としてくれたから、私も前に進まなきゃと思った。

 

「アイズがもしベルとの訓練で強くなれたのなら、今度私も兎狩りに参加させてね」

 

「私も私も、兎くんと闘ってみたかったんだよね」

 

「是非、お待ちしています」

 

 

 

-------

 

 

 

お昼が過ぎ、リヴェリア様との訓練も終わって、私はある場所に向かっていた。

 

『レフィーヤ、すまないがこの後、遠征用の薬を取りに行ってもらえないか』

 

私はリヴェリア様に頼まれ、用事も特には無かったのでお使いに出向いている。

 

店に着き扉を開け中に入ると、一人のお客と店主がカウンターで座っているのが見えた。

 

「いらっしゃい、おや次は【千の妖精】かい」

 

「ナァーザさんそっちの名前で呼ばないでください……。次?私の前に誰か来たんですか?」

 

「君のペットの兎くんが来ていたよ」

 

私のペットって……

 

「今日は、ファミリアの頼んでいたものを取りにきました」

 

「あぁ、少し待っててくれ、持ってこよう」

 

そう言ってナァーザさんは奥の部屋に入っていった。

 

ナァーザさんが戻って来るまで、展示している商品でも見ようと思っていたが、私は商品を見る事は出来なかった。

 

「レフィーヤさん……でよかったかな?」

 

私は先程ナァーザさんと一緒にカウンターに座っていた、彼女が話しかけてきたから。

 

「私はフィルヴィス・シャリア、初めまして。貴方と話をしたいと思っていたんだ」

 

フィルヴィスと名乗った彼女は綺麗で真っ直ぐに伸びた黒い髪に、汚れのない白い肌で、心から美しいエルフの女性だと私は思った。

 

「どうした……?」

 

はっ!

 

見惚れ少しぼーっとしていた。

 

「すみません、私はレフィーヤ・ウィリディスです」

 

 

 

-------

 

 

 

フィルヴィスさんと少し会話をし、彼女はどうやら先日の怪物祭の時、アイズさん達と花のモンスターと闘う私を見ていたと。

 

その後、この店でナァーザさんが私がたまに来る事を聞いて、私に会う為に暇な時は店に来るようにしていたと。

 

「こんなに早く会えるとは思っていなかったが」

 

「私に感謝してね」

 

話の途中で戻ってきたナァーザさんも会話に混ざっていた。

 

「傷つきながらも闘う貴方に私は目を離せなくなり、同じエルフとして話がしたかった」

 

「いえ、あの時は必死で」

 

「正直あの傷で動けるとは思わなかった、闘っていた三人でも負ける事は無かったと思うが……、どうして貴方は立ち上がった」

 

どうしてか……

 

私は少し考えてから、言葉を出す。

 

「みんなを守りたかったから」

 

だれかのペットの白兎のおかげで、私もそう思えるようになったんでしょうね。

 

「そうか」

 

フィルヴィスさんはそう一言口にして、満足そうな顔で笑った。

 

 

 

 

少しの沈黙の後、ナァーザさんが外の様子を伺ってから私に質問をする。

 

「ところでレフィーヤさん、今日は一人で来たのかい」

 

「……?えぇ、そうですが」

 

「あー、頼まれてたもの全部用意してるんだけどさ……」

 

煮え切らない様子で言葉を繋ぐナァーザさん。

 

「どうかしましたか?」

 

何か不都合でもあるのだろうか?

 

少し不安になる。

 

「一人で運ぶの多分無理だよ」

 

 

 

-------

 

 

 

「すみません、運ぶのを手伝ってもらって」

 

ナァーザさんが用意した薬の量は、私が思っていた二倍はあり、無理をすれば一人でも運ぶ事は出来そうだが、転んだりして薬を落としてしまった時には大変な事になる。

 

なので一度ホームに帰り助っ人を連れてこようとしたら、フィルヴィスさんが「私でよければ手伝おう」と申し出てくれて、一緒に運んでいる途中だ。

 

「尊敬する同胞が困っているんだ、手伝わせてくれ」

 

「尊敬だなんて」

 

そんな事を言われたのは、初めてでとても嬉しかった。

 

その後も色々な事を話しながら、ロキ・ファミリアのホームに帰り、門番の方と一緒に荷物を中に入れた。

 

「フィルヴィスさん、本当にありがとうございました。このお礼は必ずさせていただきます」

 

私は深々と頭下げてお礼言う。

 

「気にするな、私がしたかった事だ」

 

「……でも」

 

「そんな顔をしないでくれ。わかった、では私のダンジョン探索に付き合ってくれないか?」

 

「っえ?私がですか?」

 

「そうだ、貴方と一緒にダンジョンを潜ってみたい」

 

 


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