英雄達   作:人類最強の請負人

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39話休息2

〜ダンジョン 五十階層〜

 

野営地の準備を完了させた私たちは食事に移った。

 

キャンプの中心で大きな輪になる団員達に、これまでの遠征でもそうであったようにごちそうが振る舞われる。

 

五十階層まで踏破した団員達への労いと士気の維持を兼ねた豪勢な内容で、肉果実をはじめとした迷宮産の果実と干し肉、大鍋で作られたスープが配られた。

 

しかし今回の遠征に限っては、特定の冒険者の士気は衰える様子はない。

 

ヘファイストス・ファミリアの上級鍛治師達も輪に交ざり、賑やかな飲み食いが始まる。

 

「ここに来るまで様子がおかしかったが、どうした?」

 

干し肉をくわえスープの皿を持つ椿さんが私たちのもとにどっかりと腰を下ろす。

 

彼女はヘファイストス・ファミリア団長の椿さん。

 

Lv.5のオラリオ最高の鍛治師である最上級鍛治師で冒険者としても一流の方だと聞いた。

 

束ねた黒髪を揺らし物怖じせず尋ねてきた椿に、がつがつと食事。口にしていたティオナが口を開く。

 

「十八階層に行く途中、すごい闘いを見てさー。居ても立ってもいられなくなっちゃって」

 

「ほう、誰の闘いだ?」

 

「うちの子だよ。まだLv.1の駆け出しなんだけどさ、凄かったんだから!」

 

「名前は?」

 

「ベル・クラネルだよ」

 

椿さんとティオナさんのやり取りを聞きながら、隣で私とアイズさんは黙然と栄養補給を進める。

 

先程のお叱りやピリピリとした空気の中で話す気にもならずに私は静かに食事を終えた。

 

「最後の打ち合わせを始めよう」

 

食事を終えた私達は、団長を中心に今後の最終確認を始めた。

 

調理器具を片付け、輪になったまま団員達が耳を傾ける。

 

「事前に伝えてある通り五十一回層からは選抜した一隊で進攻を仕掛ける。残りの者はキャンプの防衛だ」

 

五十一階層からはサポーターと言えど最低限の能力を持った者でなければ連れて行けない。

 

パーティの身軽さを重視するためにも未到達領域を目指すのはファミリアの精鋭になる。

 

残る者達は補給地点である根拠地を防衛するのが役目である。

 

「パーティには僕、リヴェリア、ガレス、アイズ、ベート、ティオネ、ティオナ」

 

進攻開始は十分や休息を挟んだ明日。

 

第一休冒険者である首脳陣と幹部、七名の名がフィンの口から告げられた後、支援役の団員達が呼ばれる。

 

「サポーターにはラウル、ナルビィ、アリシア、クルス、レフィーヤ…」

 

覚悟が出来ていた私は落ち着いている。

 

サポーターに選ばれた皆はLv.4であるが、ただ一人わたしだけがLv.3である。

 

しかし道中Lv差などそんな常識を覆すような冒険者を見た。

 

私も立ち止まっていられない。

 

「キャンプに残る者達は、例の新種のモンスターが出現した場合、魔剣及び魔法で遠距離から対応するんだ。接近を許さないよう見張りは気を抜くな。指揮はアキ、君に任せる」

 

「はい」

 

防衛する上での注意事項、腐食液を放出する芋虫型への対抗策、そして野営地の指揮者を団長は伝えていく。

 

「椿も武器の整備士として、僕達に同行してもらう」

 

「うむ、任された」

 

それから団長から通達事項が全て終わると、胡座をかいていた椿が勢いよく立ち上がった。

 

「では、渡すものを渡しておくぞ!」

 

そう言うと、上級鍛治師達は荷物の中から白布に包まれた武具を運び出した。

 

第一級冒険者達の前に並べられる武具。

 

「注文されていた品……【不壊属性】だ」

 

私やリヴェリア様は魔法での攻撃が主な為特別な武具の用意は必要ないが、第一級冒険者達は前回芋虫型のモンスターに辛酸を舐めさせられた。

 

その対抗策。

 

それぞれの武器を手に取る冒険者達は様々な反応を示しているが、皆感触を確かめる中、不満を漏らす者はおらず皆笑みを浮かべていた。

 

新しい第一級冒険者達の武器に他団員の興奮が醒めない中、団長が口を開く。

 

「では、明日に備え解散だ。見張りは四時間交替てわ行うように」

 

その指示を皮切りに、団員達は周囲にばらけ始め、私も寝床へと向かった。

 

天幕の中へ入り明日への緊張か、眠れずに一人正座をする。

 

「アイズさん達の足を引っ張らない……」

 

未到達階層へ進攻するメンバーに選抜された。

 

まだ目にしたことのない苛烈な迷宮の奥底で、アイズさん達を援護しなければならない。

 

両の瞼を閉じて瞑想する、明日十全の力を発揮できるようにと、言葉を己へ言い聞かせていく。

 

「……みんなを信じる……私を信じる」

 

以前までの私とは違う。

 

怪物に震え護ってもらうだけの自分はもういない、私がみんなを護る。

 

だいぶ落ち着き緊張もほぐれてくる。

 

「やっぱり大丈夫そうね」

 

「……ティオネさん」

 

テントに一人入ってきたティオネさんは私の隣に座る。

 

「ティオネさんはどうしてここに?」

 

「んー、体の熱が治んないから、あの妹みたいに武器でも振ってようと思ったんだけど……団長に頼まれちゃあ、ね」

 

黒の長髪を指で撫で付ける彼女に私が首を傾げていると、ティオネさんはくるっと顔を向けて覗き込んでくる。

 

「今のレフィーヤは大丈夫ですって、言ったんだけどね。今だって落ち着いてるでしょ」

 

どうやら団長から様子を見てくるように言われたのだろうか、ティオネさんは私を見に来たのだ。

 

「はい。明日は私がみんなを護ってみせます」

 

「うん、期待してるわよ」

 

外からまだ起きている団員達の騒音が聞こえ、天幕の中で私とティオネさんは寄り添って座っていた。

 

「ごめんねレフィーヤ」

 

突然ティオネさんからの謝罪に驚く。

 

「レフィーヤがね、ずっと思い詰めていた事は知っていたの。私だけじゃなくってあの子やアイズも」

 

「えっ……」

 

「もちろんリヴァリアもよ。でも私たちはレフィーヤに何もしてあげられなかった」

 

ティオネさんは申し訳なさそうに言葉を続けた。

 

驚いた。

 

ティオネさんがそんなふうに思っていてくれていたなんて。

 

何もしてあげられなかったと言ったが、きっとティオナさん達は私をずっと支えてくれていたんだろう。

 

私は気づけなかった。

 

「けどあの子が来てから変わっていくレフィーヤを見て安心したわ、ちょっと悔しいけどね」

 

「ティオネさん」

 

「ねぇ、レフィーヤにとってあの子はどう見えるの?」

 

私にとって彼はどう見えるか。

 

「今はまだ駆け出し兎ですけど……私だけの英雄です」

 

 

 

 

 

 

 

 

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