英雄達   作:人類最強の請負人

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43話 妖精落下

 

 

落ちながら、謳い終えた私は放つ。

 

「【ウィン・フィンブルヴェトル】!」

 

五十六階層から五十七階層の縦穴にある、横穴を全て塞ぐように氷の層を作る。

 

これで横穴から竜種のモンスターが出てくるまでほんの少し時間が稼げる。

 

ティオナさん達は、既に出て来ていた飛竜の群れと戦闘を繰り広げている。

 

「ナイス、レフィーヤ!だぁーっ⁉︎速い竜がいるっ⁉︎うぐっっ⁉︎」

 

「ちっ『強化種』か……⁉︎」

 

降下を続けるティオナさん達は氷壁を蹴っては跳びかかり、ステイタスにものを言わせた出鱈目な戦法で飛竜を撃墜していくが、翼のない彼女達には限界があった。

 

両翼で高速飛行する飛竜、その中でも速度が飛び抜けた個体にティオナさんもベートさんも悪戦している。

 

同胞を襲い多くの『魔石』を取り込んだ『強化種』。

 

より獰猛により精強となった飛竜達の王は、飛ぶことのできない獲物を、惨殺せんと風を切った。

 

「ティオネさんっ、私を‼︎」

 

「!」

 

ベートさん達が飛竜に集られる眼下の光景に、私は叫ぶ。

 

ティオネさんの手を掴み、私は壁の方角へ投げつけられる。

 

体制を崩しながら何とか着壁して、第一級冒険者達の見よう見まねで下方へと走りした。

 

「ーーー【解き放つ一条の光、聖木の弓幹。汝、弓の名手なり】」

 

全身を打つ風圧に負けないように謳う。

 

守られるだけではいけない、守られるだけは嫌だ。

 

己の『魔法』で、彼等を救わなければ。

 

心身に『大木の心』を課し、移動を続けながら『平行詠唱』を敢行する。

 

「【狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】!」

 

詠唱に気付いた飛竜達が私を狙い放つ火炎の飛礫。

 

壁を蹴ってぎりぎりのところで火球の雨を回避そ、『魔力』の手綱を決して手放さない。

 

リヴェリア様やフィルヴィスさんとの特訓を思い出しながら、走り続ける。

 

移動と回避を繰り返しながら『平行詠唱』を行う。

 

意思を!

 

強い意思を!

 

臆するな‼︎

 

「【アルクス・レイ】‼︎」

 

放たれる光の矢。

 

最大出力の大閃光。

 

照準は『強化種』。

 

巨大な翼を羽ばたかせ、飛竜の王は迫りくる光矢から逃れる。

 

「曲がれぇええええええええええ‼︎」

 

直進から湾曲へ。

 

自動追尾の属性を持つ魔法が驚倒する竜の真後ろにつく。

 

大飛竜と光の矢が繰り広げる熾烈な高速空中戦。

 

大閃光は飛竜の王に食らいつく。

 

そして着弾。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオッ⁉︎』

 

眩い閃光とともに絶叫を放った飛竜が、『魔石』を失い灰になる。

 

ティオナさんが私に向かって拳を突き出す。

 

気のせいかもしれないが、ベートさんも一瞬だけ笑みを浮かべ、残る飛竜達に攻めかかった。

 

胸が熱くなる。

 

だが、まだ戦闘は終わっておらず、降下先にも竜の怪物が待ち構えている。

 

次の詠唱を謳う。

 

「ーーー負けてらんないわね」

 

氷壁を走りながら投げナイフを投擲していたティオネさんも唇を舐めた。

 

そして、この苦境でなお猛々しい笑みを浮かべた。

 

私達に飛竜達が火を吹いた。

 

火炎弾の嵐にティオネさんは斧槍を振り抜いては回転させ、全弾を防ぐ。

 

「便利ね、不壊武器」

 

無数の火球を霧散させた不壊属性の得物に一笑を漏らし、続けて、振り下ろす。

 

長大の射程を誇る斧槍を持って周囲のモンスター達をいっぺんに斬り払った。

 

「でもやっぱり、威力が足りないわ」

 

最後の飛竜だけ最後まで切り裂けず、斧槍の刃が体躯に食い込んだ。

 

詠唱を謳いながら、目の前で怪物を一蹴した第一級冒険者の独り言に冷や汗を流す。

 

ティオネさんは食い込んだ斧槍ごと飛竜をぐいっと引き寄せ、片手で腰から引き抜いた湾短刀を見舞い、長い竜の首を切断する。

 

『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ‼︎』

 

「あーもうっ⁉︎ティオナ全部なんとかしなさいよね⁉︎」

 

五十八階層の大紅竜の咆哮、そして砲撃された大火球にティオネさんは悪態を叫んだ。

 

私達より下にいるティオナさんが「体一つで足りるか!」と全身を焦がしながら何発も火砲を相殺している中、ティオネさんは舌打ちとともに斧槍を振り上げる。

 

ティオネ・ヒリュテ──二つ名は【怒蛇】。  

 

比抜きで怒れば怒るほど力が増すその姿に、神々も恐れた第一級冒険者。  

 

迫りくる大火球に体を突っ込ませる。

 

「さっきからッ、うぜえんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!?」  

 

怒り狂う女戦士が、紅蓮の大火球を粉砕した。

 

っ⁉︎え〜………。

 

さっきからティオナさんもティオネさんも、私が直撃すれば間違いなく致命傷になるだろう、大火球に突っ込んでいる光景を見て冷や汗が止まらない。

 

なんとか魔力暴発をしないように詠唱を続ける。

 

視界内に確認できる砲竜は四匹、58階層まで高度は二〇〇Mを切った。  

 

「おい、一発でいい! あの火の玉を何とかしろ!」

 

「言っとくけどっ、あれ防ぐのすっごい痛いんだからねー!?」  

 

私とティオネさんより下の高度で落下しているベートさんがティオナさんに声を飛ばし、ベートさんの意図に気づく。

 

砲撃を何度も相殺しているティオナさんの体と衣装はところどころが焼け焦げ、こんがりとした褐色の肌は多くの火傷も負っていた。

 

ブスブスと煙を上げている少女に、「うるせえ、やれ」とベートは他人事のように告げる。

 

ここで先程から謳っていた詠唱が終えることをティオネさんにアイコンタクトを送ると、ティオネさんは私の意思を汲み取ってくれた。

 

「行くぞ!!」

 

「後で覚えてろーっ!」  

 

「あんた達!避けなさい!」

 

ベートさんとティオナさんこちらを一瞥すると、一瞬で状況を理解し私の射線上から避ける。

 

「ヒュゼレイド・ファラーリカ‼︎」

 

ありったけの魔力込めて放ち、炎矢の豪雨を降らせる。

 

降り注ぐ矢は、まず放たれた四つの火球の一番高い位置の火球を相殺していく。

 

その中でベートさんは一つの炎矢を自身のメタルブーツに吸収させてから着壁。

 

白銀のメタルブーツに凄まじい炎を纏った。

 

二発目の火球が爆音と共に相殺された瞬間、一気に加速する。

 

炎矢と火球の隙を抜け、見えなくなり残りの火球が相殺された。

 

急いでバックパックのマインドポーションを呷る。

 

正直ここまで連続で魔法を使うのはきついが…

 

数日前【英雄】の資格を得た少年を思い出す。

 

まだ負けてあげないんだから!

 

ありったけの魔力を込め、再度詠唱を謳い始める。

 

未だに落ち続ける中、魔力暴発をしないよう高速詠唱を行う。

 

爆炎を抜け視界が開けた先では、直下にベートさんが大紅竜を仕留めているのが確認できた。

 

大穴の中を飛んでいる竜はわずかで、ティオナさんとティオネさんが処理してくれている。

 

集中する。

 

先ほどまでの並行詠唱ではなく、回避も壁面を走る事すらせず、身体を自由落下に任せる。

 

目を瞑り、謳うことだけに集中する。

 

…

 

……

 

………

 

 

「ベート避けなさい!」「ベート逃げろ!」

 

二人の声に気がつくと大穴を抜ける直前まで落下しており、詠唱も完成する。

 

そのまま杖を地面へと向けて解き放つ。

 

「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!!」

 

 

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