〜ダンジョン五階層〜
はぁ…はぁ…はぁ…
僕は走る
はぁ…はっはぁ…
脇目も振らず、全力で走る
はぁ…はぁ…はぁ…
あの怪物に殺されないために
「ヴヴォオオオオオオオオオオオッ!!」
ダンジョンに響く怪物の声
はっはぁ…はぁ…はぁ…
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか?
〜七日前〜
僕とロキ様は黄昏の館に戻りロキ様の部屋で向かい合って座っている
「さて、冒険者登録も終わったし挨拶回りも済んだところで」
ロキ様はわざとらしく一回咳をする
「ベルにはこれからうちのルールを覚えてもらうで!本来なら団長か副団長から教えてもらうんやけどな、今うちの眷属たちはダンジョンの遠征に行っとるからな、主神であるうちが直々に教えたる」
僕は唾を飲み込み気を引き締め聞く体制を整える
「まずひとつ、ロキ・ファミリアであれ」
ロキ様は人差し指を立てて言う
「ベルはロキ・ファミリアの一員になったんや、オラリオでの全ての行動がロキ・ファミリアのベルとして見られる、もちろんベル個人を見る者もおるやろうけどな、けどなんかやらかしたらベルの問題やなくてロキ・ファミリアの問題になるって覚えといてな」
僕はもうロキ・ファミリアの眷属で、ロキ様の名前を背負う一人であると自覚する
「次にふたつ、家族であれ」
人差し指に続いて中指を立てる
「うちらは種族は違えどファミリアであり家族なんや、家族は助け合い、支え合う、時に喧嘩をしたり、すれ違いもあるやろうけどな、それでもこの繋がりやは絶対に切れへん、うちらが家族であることを忘れへんように」
おじいちゃんがいなくなり、家族と呼べる人がいなかった僕は目頭が熱くなる
「そして最後にみっつめ!」
薬指を立て計三本の指を立てる
「必ず生きて帰ってくる事」
ロキ様はまっすぐ僕を見つめ口を開く
「うちら神にとってな眷属達が死んでもちょっとの別れやねん、眷属達はまた新たな命を授かり生まれてくるからな」
地上に降りてきた神々から伝えられていて、この地上で死んだ人の魂は天界へと行き、また新たな命として地上へと授け、繰り返し巡回しているらしい
「これからベルはダンジョンに潜りたくさん危険な目にあうと思う、ダンジョンでは何が起こってもおかしくないし、いつ死んでもおかしくない程危険なところや」
ロキ様は目を閉じる
「けどそんな中でな、冒険者は偉業を成し遂げるため、未知の冒険をするため、自分を磨き上げるためだったり、いろんな冒険をするんや、うちはそれを応援したいし手伝いたい」
ロキ様の声にだんだんと熱が入っていく
「せやからな頑張ったら褒めてやりたいし、落ち込んでたら慰めてあげたい、一緒に笑って酒飲んで馬鹿やって落ち込んでまた笑いたい」
想像するこれからこのファミリアでの冒険の日々や日常を
「それにな『行ってらっしゃい』って言ったのに『おかえり』って言えんのは悲しいやろ」
少し前の事を思い出す
突然おじいちゃんがいなくなったあの日の事を
「だからなベル、必ずうちに『おかえり』って言わせてな」
ロキ様はいつもの笑顔に戻る
「約束やで!」
〜現在〜
はぁ…はぁ…はぁ…
「ヴヴォオオオオオオオオオオオッ!!」
神様ありがとうございます
こんな僕を家族にしてくれて
「はぁ…絶対に、はっ…はぁ、絶対に諦めない!」
僕は絶対に生きて帰る!
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…!?」
そんな僕を神様があざ笑うかのようにに 行き止まりに追い込まれ、後ろからは足音が近づいてくる
「はぁ…はぁ…はっ、………ふぅ〜っよし!」
息を整え覚悟を決める
安物のポーションを飲み短刀を手に取る
ベルの右手には短刀、回復アイテムも潤沢である、防具は動きやすいよう軽いものではあるがベルの体に合ったそこそこ良い物を装備している
怪物との距離は十メートル程
『ダンジョンでは何が起こってもおかしくない』
ロキ様に言われてないなかったらきっとなんの準備もしないままダンジョンに潜り、何もできずに殺されていたんだと思う
相手はミノタウルス、Lv.2の怪物の中でも特に強力な怪物である
それでも僕は諦めない約束を守るため
あの悲しみをロキ様に味合わせないため
「…っ生きて帰るんだ!」
ミノタウルスが目の前まで来る
ベルは武器を構える
「っうぉおおおおおおお!!!」
しかし冒険者になって七日のベルに何かできるわけでもなくミノタウルスが放った一振りでベルは吹き飛ばされる
「ぐっ!……がはっ」
ただの一振りでベルは壁に叩きつけられ、頭から血が流れ、立ち上がる事が出来なくなる
「ぁ……ぁあ、………ロキ様ぁ…」
ベルの視界がぼやけていく中ミノタウルスは無情にも止めを刺さんとベルに近づく
「ヴヴォオオオオオオオオオオオッ!!」
僕は殺されるのだろうか、ごめんなさいロキ様約束守れなかったです、ごめんなさい
ベルはミノタウルスを見ながら謝る
僕は何もできなかった、何もできずここで僕は終わるんだ
そんな後悔をしながら朦朧とする意識の中ベルは誰かの声が聞こえ
「………ぉぃ…アイズ!」
目の前に金色の髪の精霊が現れた