ただ春の夜の夢の如し   作:優鶴

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お茶会。


紅い風が吹く前に3

「ねえ、珠翠・・・いえ、珠翠様。」

「誰も見ていませんし大丈夫ですよ?」

「ええ、確かにそれはそうなんだけど。後宮は誰の目が、耳があるから、わからないし。さっきは珠翠に会えて少し気が緩んでしまったの。これからは、ちゃんと珠翠様って呼んで敬語使うからね?」

「・・・二人の時もですか?」

心なしかムッとした声音の珠翠に燈姫が笑う。

「ええ。」

「誰かいれば気配くらい察せますわ。燈姫様もそうでございましょう?」

「あら、そうかしら?手練れならそうともいかないわよ。・・・私の素性がバレても、厄介だし。」

「・・・わかりましたよ。では燈姫。」

「はい、珠翠様。お菓子も出来上がりましたし、邵可殿のところに向かいましょう!」

「そうですね。」

やっぱり様付けはとれても敬語は抜けないか、と燈姫は軽くため息を吐いた。

 

「失礼いたします、邵可様。」

「お久しぶりです、邵可殿。お変わりないようで。」

「これは、ら・・・。」

何かを言いかけた邵可に、燈姫は人差し指を口に当てて片目を瞑って見せる。

「わたくしは唯燈姫ですわ。」

「・・・そうでしたね、燈姫殿。」

「気をつけてくださいませ、邵可殿。ところで・・・珠翠と一緒にお菓子を作ってきたのです。ご一緒にお茶でもいかがです?」

「それはいいですね。では、お茶を淹れてきます。」

「ありがとうございます、邵可殿。」

「あ・・・あの、邵可さ・・・。」

珠翠が引き止めるまもなく邵可はお茶を淹れにいってしまう。沈黙する珠翠を見て、燈姫は首を傾げた。

「あら、どうされましたか?珠翠様。」

「・あの…知っていらっしゃるはずですよね・・・?」

「知っているって、何がでしょう?」

「え・・・あの・・・その。」

「邵可殿にお茶を淹れてもらうだけですよ?」

「そ、そうですが…。」

「何か問題でもあるのですか?」

「え・・・だって邵可様のお茶は・・・。」

「私のお茶は何だい?」

「しょっ、邵可様っ!いっ、いえ、何でもありませんっ!」

飛び上がる珠翠を尻目に燈姫は微笑む。

「邵可殿、相変わらず健康に良さそうなお茶ですね!」

「けんこうっ・・・!」

「燈姫殿もそう思いますか?」

「はい。では、いただかせてもらいますわね。」

何食わぬ顔でお茶を飲み干した燈姫に、珠翠がしんじられないという顔をしたがすぐに我に返り、持ってきたお菓子を邵可に渡す。

「邵可様、あのこちらを・・・」

「ああ、珠翠と燈姫殿で作ってくれたお菓子があったね。・・・うん、美味しい。」

「それならよかったです・・・。」

(・・・珠翠、やっぱり貴女可愛いわよ。初々しいんだから。)

視線に気づくことなく楽しげに話す二人に、燈姫は黙って嘆息した。

 

「よかったですわね、珠翠様。とても楽しそうでしたよ?」

「そうでしたか?」

「敬語はお法度よ。筆頭女官様?」

「・・・ええ、そうね。そう見えていたかしら?」

「とっても楽しそうでしたわよ。恋する乙女の顔をしていらして。」

「・・・っ///!」

「まあ、珠翠様ってば頬が紅いですわよ?可愛らしいこと。」

「・・・。」




女官ごっこ編。
主人公は笑って父茶を飲めるつわものです。
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