ストライク・ザ・ブラッド~白き焔~   作:燕尾

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お久しぶりでございます! 燕尾です。
遅くなりまして申し訳ないです。改編版十五話どうぞ!

ちなみに原作の古城と紗矢華が地下水路に転落して吸血するシーンはすっ飛ばしてます。
け、決して面倒だったわけじゃないんだからね!!


第十五話

紗矢華の血を吸って手に入れた新しい眷獣の力で地下のメンテナンス通路から地上へと出られた古城と紗矢華。しかし……

 

「まったく……あなたは本当に無茶苦茶ね」

 

増設人工島(サブフロート)の表面を覆っていた鋼板製の大地が同心円状に陥没しているのを見て、紗矢華は心底呆れ果てたという表情で嘆息する。

 

「確かに地上には出られたけど、だからってこんなクレーターを造ることないじゃない。煌華麟の障壁がなかったら今ごろ生き埋めよ」

 

「文句は眷獣に言ってくれ、俺は通路を塞いでる瓦礫をどうにかしてもらえればそれでよかったんだよ」

 

古城が精神的疲労の(にじ)んだ声で反論する。

古城としては通路の瓦礫を吹き飛ばすだけでよかったのだが、緋色の双角獣(バイコーン)は『終わりよければすべて良し』といわんばかりに、徹底的な破壊を敢行し、増設人工島の天井を陥没させてしまったのだ。その結果、出られることになったのだが、あまりにもな方法に古城も溜息しか出なかった。

 

「"獅子の黄金(レグルス・アウルム)"もそうだけどこいつも大概傍迷惑(はためいわく)な眷獣だな……というか、こいつの方が輪をかけて凶暴だと思うのは気のせいか?」

 

「あなたの眷獣はみんな凶暴よ。やっぱりあなたなんかの近くにいたら、雪菜が危険だわ。だから――」

 

紗矢華は古城を見上げて笑みを浮かべてみせる。

 

「今回だけは、私があなたの面倒を見てあげる。さっさとあいつらを片付けましょう」

 

紗矢華が視線を向けた先には、地下から這い上がってきた古代兵器(ナラクヴェーラ)の姿があった。だが、最初に交戦したときより明らかに動きに変化があった。はじめは敵対するものをただ排除しようとするだけだったが、今は操縦者の意思を反映したような知的な動きだった。陥没した地表をたてのように使って、副腕から真紅の閃光を放つ。

紗矢華は瞬時に古城の前に立ち、光速の一撃を剣で受け止める。

 

疾く在れ(きやがれ)、九番目の眷獣"双角の深緋(アルナスル・ミニウム)"――!」

 

現れた緋色の双角獣(バイコーン)が咆哮する。

"獅子の黄金"が雷の塊なら、陽炎のような姿のこの眷獣は、振動の塊といえるだろう。

頭部に突き出した二本の角が、音叉のように共鳴して高周波振動を撒き散らし、双角獣(バイコーン)の咆哮が衝撃波の弾丸となってナラクヴェーラを襲う。

 

「これ……中の操縦者は大丈夫か? 死んでないよな?」

 

双角獣(バイコーン)の攻撃で原型を留めないほど破壊されたナラクヴェーラ。その中に黒死皇派のテロリストが乗り込んでいることを思い出した古城は軽く焦る。

 

「あの程度じゃ獣人は死なないわ。それより、残りの四機を潰して!」

 

「わかった――"双角の深緋(アルナスル・ミニウム)"!」

 

緋色の眷獣が古城の指示に従って古代兵器の群れに襲いかかろうとしたそのとき、その巨体を、横殴りの巨大な爆発が襲った。

 

「なんだ!?」

 

飛んできた方を向くとそこには一機のナラクヴェーラ。しかし、ほかのものとは違い、桁違いにでかかった。八本の足と三つの頭。そして女王アリのように膨らんだ胴体。さきほど双角獣(バイコーン)を襲ったのはこの機体から放たれた戦輪(チャクラム)によるものだった。

そして古城たちは異様な光景を目の当たりにする。

 

「どういうことだ……!?」

 

「ナラクヴェーラがこんなに……!?」

 

先ほど戦輪を放った女王のようなナラクヴェーラ。その一機を中心に複数のナラクヴェーラが輪を作って守るように並んでいた。

 

「ふゥん……これが本来のナラクヴェーラの姿、ということか」

 

すると突然、どこか浮かれたような男の声が聞こえてくる。どこからともなく現れたのはヴァトラーだ。

 

「一体の指揮官機に無人の子機が付き従い真の力を発揮する。やってくれるじゃないか、ガルドシュ。まさかこんな切り札を隠し持っていたとはね。どうする、古城? やっぱり僕がかわりにやろうか?」

 

好戦的な笑みを浮べて言うヴァトラー。古城はもう一度溜息をついてから攻撃的な視線を送る。

 

「引っ込んでいろって言ったはずだぜ。……ったく、どいつもこいつも好き勝手しやがっていい加減こっちも頭に来てるんだよ! 相手がテロリストだろうが古代兵器だろうが関係ねえ、ここから先は第四真祖(オレ)戦争(ケンカ)だ!」

 

啖呵を切る古城。そしてそんな彼に寄り添うように銀色の槍を持った少女が歩み寄る。

 

「――いいえ、先輩。わたしたちの、です」

 

姫柊雪菜がムスッと不機嫌そうな顔をして古城を睨みながら槍を構えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

劉曹とアスタルテは今もまだ"オシアナス・グレイヴ"で一機のナラクヴェーラを相手取っていた。

放たれる真紅の閃光をすべて跳ね返し、ナラクヴェーラにぶつける。しかしすでに一度自分の攻撃を受けて"学習"しているためナラクヴェーラが傷つくことはない。戦いは平行線をたどっていた。

 

「ま、このままじゃ埒が明かないよな……アスタルテ、少しの間足止めを頼む!」

 

命令受諾(アクセプト)執行せよ(イクスキュート)"薔薇の指先(ロドダク・テュロス)"」

 

アスタルテは虹色の眷獣を駆使し真紅の閃光を防ぎ、古代兵器を殴り飛ばす。

呪力の砲撃のようなその一撃はナラクヴェーラの装甲を粉砕する。自己修復する暇を与えないほどの連撃にナラクヴェーラは原型を保てなくなっている。

しかし、次第に受けている間にナラクヴェーラは自己修復を行ってアスタルテの攻撃を分析し、対応してきている。いつまでもこのまま押し切られるわけではないのだ。

アスタルテが奮闘して時間を稼いでくれている間に、劉曹は言葉を紡ぐ。

 

「我、汝と契約を結びし力を解放する者」

 

劉曹の周囲の空気がうねり、巨大な旋風が巻き起こる。

 

召喚(サモン)――顕現せよ、黒竜王オルタリア」

 

出現するのは黒焔を纏った黒竜――

巨大な身体は決して傷つくことのない鋼の塊。広げた漆黒の翼は刃のように鋭く、一度羽ばたくだけで衝撃波を巻き起こす。

 

「よくやった、アスタルテ。後ろに下がれ!」

 

劉曹の声を聞いたアスタルテはナラクヴェーラから大きく距離をとる。

 

「頼むぞ、オルタリア」

 

劉曹の命令を受けた黒竜はアスタルテがいた場所に降り立ち、黒焔のブレスをナラクヴェーラに放つ。

闇のように暗い炎に包まれるナラクヴェーラ。端からボロボロと崩れ去っていくソレを尻目に劉曹は言う。

 

「その黒焔は対象を燃やし尽くすまで消えることはない。それに、おまえ程度の機械(・・・・・・・・)に理解できるものじゃない。そのまま消えろ」

 

そう言い放った後、古代兵器は塵となって風に吹かれていった。

その様子を眺めていた劉曹はアスタルテのほうに振り向いてアスタルテの頭に手を置き、

 

「ひとまずお疲れさん、アスタルテが足止めしてくれて助かった」

 

「いえ、私が足止めしなくてもあなたなら破壊できたと思います」

 

頭を撫でてくる劉曹にアスタルテは顔を赤らめて気持ちよさそうに答えた。

ようやく人間らしい感情の一つを見せたアスタルテに劉曹はふっと、笑みをこぼす。

 

「さて、古城たちと合流してこの件に片を付けるか」

 

劉曹は跳躍し、黒竜の背中に飛び乗った。そして、アスタルテに手を差し伸べる。

 

「最後の一仕事だ。アスタルテ」

 

命令受諾(アクセプト)

 

アスタルテは劉曹の手をとり黒竜に乗り込む。

 

「劉曹、これは……」

 

「ん? なんか問題あったか」

 

アスタルテは少し戸惑い気味に呟いた。

黒竜の背に乗ったのだがアスタルテが前、劉曹が後ろにいるせいでアスタルテは劉曹に抱かれている状態なのだ。

そのことにまったく気づかない劉曹にアスタルテは少し自信を失った表情で、何でもありません、とどこか拗ねたようにそっぽを向いた。

劉曹は不思議そうな顔をして古城たちのもとへと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリストフ・ガルドシュ率いる古代兵器の軍団と対峙している古城たちだったが、ナラクヴェーラの攻撃に対する耐性と自己修復能力で次第に追い詰められていた。

 

「暁古城。このままじゃジリ貧だわ!」

 

「わかってる! ――疾く在れ(きやがれ)、"獅子の黄金(レグルス・アウルム)"!」

 

古城が右腕を高らかに掲げて、もう一体の眷獣を喚び出した。

雷光の獅子が、稲妻を撒き散らしながら子機のナラクヴェーラを一掃する。

そして続けざまに指揮官機へと突撃。女王ナラクヴェーラの巨体を海へと突き落とし、さらに追撃を加えようとする。

 

「だめです、先輩! あんな電力の塊を海水にぶつけたら――」

 

雪菜が慌てて古城を制止するが時すでに遅し。雷光の獅子は海面へ激突していた。その瞬間、大きな水蒸気爆発が起きる。

 

「ぐわっ……」

 

予期せぬ衝撃に古城がたじろぐ。巨大な水柱が上空数百メートルまで立ち上がり、大きな振動を生み出したのを見て古城は、今後水中で"獅子の黄金(レグルス・アウルム)"を喚ぶのは絶対によそう、そう心に誓う。

 

「馬鹿野郎! 俺たちを殺すつもりか!!」

 

その直後、大きな怒号が空から聞こえる。古城と雪菜と紗矢華は空を見上げると共に驚愕する。見えるのは巨大な黒い影。

漆黒の鱗をまとった鋼の身体に、刃のように鋭く大きな翼。俗に言う黒竜の背に乗った劉曹がアスタルテとともに現れたのだ。

古城たちはあんぐりと開いた口がふさがらない。

やがて正気に戻った古城は劉曹に向かって大声で叫んだ。

 

「劉曹! なんだその巨大なドラゴンは!?」

 

「死にたくなかったら伏せていろ!!」

 

問いかけに待ったく別の返答をした劉曹に古城は、は? と呆ける。すると黒竜は大きく息を吸い込み、黒焔のブレスを吐き出した。

 

「おいおい、マジかよ!?」

 

「「先輩(暁古城)、伏せてっ!」」

 

雪菜と紗矢華はそれぞれ槍と剣を振って防御障壁を造り出す。しかし黒焔は障壁に守られた古城たちを大きく避けて、ナラクヴェーラに襲い掛かった。

黒焔に包まれたナラクヴェーラは次々と塵となっていく。

 

「ちっ、半分残したか。面倒くせえな」

 

「残したか、じゃねーよ! おまえも俺たちを殺す気か!?」

 

地上に降りてきた劉曹に古城は思い切り叫ぶ。雪菜と紗矢華もどこか恨みがましい目で劉曹を睨んでいる。

しかし非難を浴びている本人は鬱陶しそうに返した。

 

「ギャーギャー喚くな、お前らに当てる気なんてあるわけないだろ。それより……まだ片付いてなかったのか」

 

劉曹の言葉に古城は渋い顔をする。

 

「あいつら、いくら攻撃してもすぐに自己修復するからきりがないんだよ。しかもこっちの攻撃に耐性つけてきてるから倒せねーんだ」

 

「姫柊、まだこいつらに話してなかったのか?」

 

「話をしようとしたんですけど、楠先輩に邪魔されました」

 

「そうか、悪かったな」

 

雪菜の嫌味を劉曹は軽く流す。

古城と紗矢華はなんの話をしているのか分からず、お互いに顔を見合わせていた。

 

「なあ、なんの話だ?」

 

「浅葱が造ったナラクヴェーラの制御コマンドだ。指揮官機のなかにこの音声を流せば他の子機含めて止めることができる」

 

「女王の中に入れるって……どうやってだ? せめてあいつらの動きを止めないと集中砲火にやられるだけだぞ」

 

半分まで減らしたとはいえ、指揮官機を含めてナラクヴェーラは残り三機。古城の二体の眷獣は古城たちの防御に回って手一杯の状態だ。そんな中、無鉄砲に突撃するのは愚作だろう。しかし、こうして手を(こまね)く間にも被害は広がる一方だ。一刻も早く決着をつけなければならない。

 

「ナラクヴェーラの動きは私が止めるわ」

 

そこで前に出たのは、紗矢華だった。

 

「煌坂?」

 

突然自分がやると言い出した紗矢華に古城は怪訝そうな顔をして、劉曹はほう、と面白そうに見る。

 

「わかってるわね、暁古城、楠劉曹。敵がこちらの攻撃を解析して進化するというのなら、チャンスは一度きりよ。私と雪菜の足を引っ張ったら、灰にするからね」

 

「そこまで言うのならしっかりナラクヴェーラを止めて見せろ。舞威媛」

 

誰に言っているのよ、と反発しつつ、紗矢華は剣の姿を弓へと変える。

 

「なるほど、六式重装降魔弓(デア・フライシュッツ)か。古城、"獅子の黄金(レグルス・アウルム)"と"双角の深緋(アルナスル・ミニウム)"で同時に攻撃。俺が煌坂の影響をなくしてやるから、姫柊は女王に集中しろ。アスタルテは俺の援護を頼む」

 

「おう」

 

「わかりました」

 

「命令受諾」

 

「さあ終わらせようか、この戦争(ケンカ)――」

 

いくぞ! と劉曹の声と共に女王ナラクヴェーラに向かって駆け出した。

 

「――獅子(しし)舞女(ぶじょ)たる高神(たかがみ)舞姫(まいひめ)(たた)(たてまつ)る」

 

その直後、紗矢華の唇から、澄んだ祝詞が流れ出す。太腿辺りに備えていた呪の矢を取り出し、ピンとした姿勢で弓を引く。

 

極光(きょっこう)炎駒(えんく)煌華(こうか)麒麟(きりん)()天樂(てんがく)轟雷(ごうらい)()べ、憤焔(ふんえん)をまといて妖霊冥鬼(ようれいめいき)射貫(いつらぬ)く者なり――!」

 

弓から射放たれる銀色の矢。大気を引き裂く甲高い飛翔音が鳴り響き、空に半径数キロメートルにも達する巨大な魔方陣を描き出した。

そこから生み出された膨大な"瘴気"が古代兵器に降りそそぎ、彼らの機能を阻害する。

 

「"反射(リフレクト)"」

 

劉曹は四人を守るように結界を張る。

神々の古代兵器が耐えきれないほどの膨大な瘴気。そんなもの浴びれば人間である劉曹は確実に死ぬ。世界最強の吸血鬼の第四真祖ですら耐えれるかわからない。

 

「(もうほとんど俺とアスタルテがすることはないんだよなあ……)」

 

劉曹は心の中で呟く。

実際のところ、魔方陣から降りそそぐ瘴気は雪菜のもつ"雪霞狼"が無効化してくれるのだ。劉曹がこのような役を買って出たのはなにもすることがないからだ。それでも万が一紗矢華の鏑矢が効かない場合の保険でもある。その保険が必要だったかどうかはいうまでもない。

雨のように降っていた瘴気が止むとそれまで耐えていたナラクヴェーラが一斉に動き出そうと立ち上がる。

 

「いまだ古城、思い切りやれ!」

 

結界を解いて劉曹が叫んだ。

 

疾く在れ(きやがれ)――"獅子の黄金(レグルス・アウルム)"! "双角の深緋(アルナスル・ミニウム)"!」

 

雷光の獅子と緋色の双角獣(バイコーン)が女王ナラクヴェーラを襲った。

同時攻撃から生み出された凄まじい爆圧で大型古代兵器の装甲を破砕し、骨格をバキバキと押し潰す。

女王が一時機能停止したことによって、周りの小型古代兵器も次々と動きを止めた。

 

「――はははっ、戦争は楽しいな、剣巫!」

 

血まみれの状態で破壊された女王ナラクヴェーラのコクピットを開けて出てきたガルドシュはナイフを引き抜く。

 

「守るべき国も、守るべき民も持たないあなたに、戦争を語る資格なんてありません!」

 

雪菜の叫びに、憤怒の雄叫びを上げてガルドシュが雪菜へと突進する。

雪菜は槍を構えることもなく、身体をずらしただけだった。

すると雪菜に迫るナイフは風を裂いて飛来してきた矢によってガルドシュの手から離れた。遠くのほうでは紗矢華が微笑んでいる。雪菜は唖然としているガルドシュを飛び越えそのまま女王ナラクヴェーラへと向った。

 

「――終わりだ、オッサンっ!」

気をとられて隙ができたガルドシュの脇腹を、古城が力任せに殴りつけた。

ひるんでいる隙にさらに殴る。浅葱と凪沙、そして雪菜の分といわんばかりに殴りつける。そして最後に下から突き上げるように彼の顎を殴った。

強靭で重たいガルドシュの身体が空を飛び地面に叩きつけられる。そして彼は意識を失った。

 

「ぶち壊れてください、ナラクヴェーラ!」

 

古城の攻撃を修復し再び動き出そうとした女王ナラクヴェーラの操縦席に雪菜は音声ファイルを再生した浅葱の携帯を投げ込み離脱する。

音声を認識したナラクヴェーラは風化した木のようにガラガラと崩れ去っていき、他の子機も同様に崩れ去る。

それは黒死皇派の野望が終わったことを意味していた。

 





いかがでしたでしょうか。

感想、評価をもらえると助かります。批評でも褒め言葉でもなんでもいいです。意見をください。

あと、面白いラノベがあったら紹介してください。
ではまた十六話でノシ
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