ストライク・ザ・ブラッド~白き焔~   作:燕尾

19 / 38


前書きも何書いていいかわからなくなってきました。燕尾です。
第十九話です、どうぞ~


第十九話

 

 

「まったく……この人は……」

 

日傘をさして、横柄な態度でいう那月に劉曹は大きく溜息をつき、小さく呟く。

もちろん交際の意味で言っているのではないのはわかっているが面倒ごとになる予感しかしない劉曹。

 

「もう一度言う、暁古城。おまえ、今夜、私につき合え」

 

「……え!? いやあの、それはいったいどういう意味で……?」

 

「なにを挙動不審(キョド)ってる。私の副業(しごと)を手伝えといっているんだ」

 

「……もしかして攻魔官の?」

 

嫌そうな顔で訊き返す古城に、那月が冷たい視線を向けた。

 

「二、三日前に、西地区(ウエスト)の市街地で戦闘があったことは知っているな」

 

「……未登録魔族が暴れてたって話は、クラスのやつらに聞いたけど」

 

「暴れてたのは未登録魔族じゃない。あまり大っぴらにはできない情報だがな」

 

「魔族じゃない……? じゃあ、いったい誰が?」

 

「私は知らん。このことに関しては楠のほうが詳しい」

 

「劉曹が? ってことは、その傷ももしかして……?」

 

那月と古城の視線が劉曹に向いた。劉曹はもう一度大きく溜息をついて、口を開いた。

 

「……そういうことだ。別にそれはどうでもいい」

 

「どうでもいいって……」

 

「話を戻すぞ。暴れてたのは魔族じゃなくて、人間だ……魔術的改造を(ほどこ)されたな」

 

「なっ――」

 

古城は絶句する。だが劉曹はそれを無視して続ける。

 

「しかも一人だけじゃなくて複数人……おそらく七人くらいだ」

 

「この市街地での戦闘があったのは、昨夜が初めてというわけじゃない。規模こそ小さいが同様の騒ぎは、ここ二週間で五件確認されている」

 

「五件……!?」

 

マジか、と古城が顎を落とす。那月の話が事実なら、三日に一度くらいのハイペースで謎の市街戦がおきていることになるからだ。

 

「じゃあ、また今夜あたりに似たような事件が起きるかもしれないわけか……」

 

「察しがいいな、暁古城」

 

フリルまみれの日傘を優美に傾けて、那月は満足そうに微笑み、となりの劉曹は諦めたような顔をしていた。

 

「――というわけで、お前には私の助手として犯人確保に協力してもらおう。いくら私でも一人で複数の犯人を捕らえるのは難儀だからな」

 

「いやいやいやいや……!」

 

古城は必死で首を振る。

その古城の肩をポン、とたたく劉曹。そして宣告を出す医者のような申し訳ない口調で言う。

 

「諦めろ、古城。お前はこの人には勝てない……」

 

「ぐっ……」

 

古城は劉曹の言葉を認めざるを得なかった。この状態から那月を論破することは古城にはできない。

 

「安心しろ。俺も手伝うつもりだから、死にはしない」

 

「いや、おまえその状態で大丈夫なのか!?」

 

すると古城に対してさらに追い討ちをかけるように那月はニヤリと笑い、付け足した。

 

「おまえが協力を拒むというのなら、楠はその負傷したボロボロの身体をさらに酷使(こくし)することになるだろうな?」

 

那月の卑劣な交渉手口に劉曹は呆れたような顔をして、古城は戦慄していた。

 

「それに、ディミトリエ・ヴァトラーに忠告されてな。暁古城を今回の事件に巻き込むな、とな」

 

「忠告されたのは俺なんだが」

 

「なんだそれ!? あいつの忠告、完全にスルーかよ!? てか、劉曹が忠告されたのになんでそれを那月ちゃんが知っているんだ!?」

 

「あの男が嫌がるようなことを、私がしないはずがないだろう」

 

「那月ちゃんの目の前で俺がヴァトラーと電話していたから……」

 

堂々と胸を張って情けないことを言う那月とバツが悪そうに顔を逸らす劉曹。古城は諦めたように溜息をついた。

 

「こんや九時にテティスモール駅前で合流だ。遅刻するなよ。一秒でも遅れたら、お前と藍羽が美術室で生着替えしている写真をクラス全員の携帯に送りつけるぞ」

 

「へぇ?」

 

那月の宣告に劉曹は一変して面白そうな顔をする。

 

「――なんであんたがそんなもの持ってるんだよ!?」

 

「担任だからな」

 

悲鳴を上げる古城に、那月はふふん、と得意げに微笑む。

 

「那月ちゃん、あとでその写真、古城の遅れとか関係なしに俺に送ってくれ」

 

「いいだろう」

 

二人のやり取りに古城はやめてくれ、と大きく叫ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になり、劉曹と古城は指定されていた場所であるテティスモール、商業地区である絃神島西地区(アイランド・ウエスト)のほぼ中枢の繁華街の象徴であるショッピングビルの前に来ていた。

そこへ、アスタルテを連れて那月が現れたのだが、

 

「なあ、攻魔官の仕事を手伝えって話じゃなかったか? 俺に遅れるなとまで言って」

 

「そうだが?」

 

不満そうに那月を睨む古城を意にも介さず、何か問題があったかとでも言いたげに訊き返す那月。

 

「――遅ェよ! ていうか、なんだよ、その格好!? 人を二時間も待たせておいて!」

 

「この近くの商店街で祭りをやっていてな。アスタルテに夜店を堪能させてやろうと思っただけだ」

 

「それならそれで連絡ぐらいしろよ!」

 

「その辺にしておけ、古城。この人だからしょうがない。アスタルテは初めての夜店は楽しめたか?」

 

古城を(なだ)めて、アスタルテに向く劉曹。アスタルテは肯定、とだけ告げて嬉しそうにタコ焼きを頬張る。

人工生命体である彼女がいろいろな表情をするようになってきたことに劉曹は少し嬉しく思った。

 

「おまえが約束すっぽかさなくて何よりだ。それよりも――」

 

那月はそういって古城の背後を迷惑そうに一瞥する。

 

「どうしてお前がここにいるんだ、転校生」

 

「私は第四真祖の監視役ですから」

 

ギターケースを背負って立っていた雪菜が、無感情な声で言い返した。だが那月は目を細め、雪菜の姿をじっくり見る。

 

「監視には浴衣が必要なのか?」

 

「こ、これは、お祭りの話を聞いた凪沙ちゃんが無理やり……」

 

痛いところを突かれた雪菜は言い訳っぽく言った。今の雪菜は藍色ベースに水玉模様という浴衣姿なのだ。

 

「浴衣姿にギターケースって合ってるような合っていないような……そのせいか、余計に周りから注目されてたな」

 

「楠先輩は黙っていてください!」

 

「まあ、なんにせよ、人手は多くて困ることはないからな。おまえたち、楠がメールで送った資料は読んだか?」

 

「まあ、いちおう。"仮面憑き"だっけ? そいつを捕まえればいいんだろ」

 

「正確には"仮面憑き"を二体とも、だ」

 

答え合わせをするように、那月が勝手なことを言う。

 

「簡単に言うけど、そいつら空を飛ぶんだろ? どうやって捕まえればいいんだ?」

 

古城が疑問に思ったことをそのまま口にすると那月は得意そうに、

 

「撃ち落せ、楠はともかくおまえが空に向かって眷獣をぶっ放すぶんには、市街地には影響は出ないからな」

 

「無茶言うぜ、まったく……」

 

古城は疲れたようにうめく。

 

「変ですね……」

 

すると雪菜は突然呟いた。

どうした、と訊く劉曹たちに雪菜が指を差す。その方向には上半分をごっそり抉られたオフィスビルだった。

 

「あれって"仮面憑き"のせいですよね? あのぐらいの被害が魔術や召喚術によって引き起こされたものだとしたら私も気づくはずなんですけど」

 

「やはり獅子王機関(ししおうきかん)剣巫(けんなぎ)であるおまえにも、連中の攻撃は感知できなかったのか……」

 

「それはそうだ、"仮面憑き"が使っているのは呪術や召喚術なんかじゃないからな。そもそもあんな大きな事しておきながら誰一人として気づかないのがおかしいだろ。実際に奴らは今どんぱちやってるぞ?」

 

「「「……は?」」」

 

那月の呟きに劉曹がいきなり説明する。()も当たり前のように言う劉曹に全員が驚いた顔をする。

 

「ちなみに、奴らはどんな魔術や眷獣などは効かないだろうな。第四真祖の古城の眷獣でも足止めがせいぜいで、傷つけることは無理だろう」

 

「楠――お前なにを知っている?」

 

那月は劉曹を睨みつつ問いただす。しかし、劉曹は何も答えることなく

 

「百聞は一見にしかず、俺は先に行って相手をしてくる――空歩!」

 

「は? おい劉曹、おまえその傷で無理するな!」

 

「待て、楠――」

 

古城と那月の制止も聞かずに劉曹は空へと飛び出していって、もの凄いスピードで繁華街の外れに立つ巨大な電波塔へと向かっていった。

その直後、劉曹が向かった先、電波塔の付近で禍々(まがまが)しい光に包まれたなにかが、暗い夜空を舞っているのが見えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空中を走ること数分。電波塔に到着した劉曹は作り出した炎の球を戦闘中の"仮面憑き"たちに向けて投げ飛ばした。

 

炎弾(フレイム・バレット)

 

隙を突かれた二人の"仮面憑き"はかわすことなく炎に包まれる。しかし、

 

「……やっぱりそうか」

 

二人の"仮面憑き"は炎を意にも介さず、そのまま邪魔してきた劉曹に光の刃を放つ。劉曹はそれを次々とかわしつつ、苦虫を噛み潰したような表情で納得するように呟いた。

そんな劉曹に一体の"仮面憑き"が猛スピードで接近し、襲い掛かる。

劉曹の胴体を貫かんとばかりに放たれた鉤爪の腕を劉曹は身体を捻ってかわし、仙術の力をこめた裏拳を放つ――が、

 

「くっ――!」

 

激突の瞬間、"仮面憑き"を(おお)禍々(まがまが)しい光の輝きが増し、劉曹の攻撃を当てさせない。

競り合っている二人をまとめて始末するつもりか、もう一体の"仮面憑き"が光の刃を大量に放った。

劉曹は拳を振り切って相手との反動を利用し、その場から離れる。

 

「間違いないな……こいつらは天使だ」

 

劉曹は今のやりとりで"仮面憑き"の正体を確信した。

そして、"仮面憑き"に目をやる。二体の"仮面憑き"はともに小柄な女性の姿をしていた。

そのうちの一体の姿には見覚えがあった。

輝いているような銀色のショートヘアに仮面から覗かせる透き通るような淡い碧眼(へきがん)。仮面で顔が隠れているが、劉曹に判断させるには十分なものだった。

 

「これはおまえが望んだことなのか……? 夏音!!」

 

劉曹の叫びにも反応せず"仮面憑き"と化した夏音ともう一体の"仮面憑き"が同時に光の刃を放つ。もはや邪魔するものを排除することしか頭にないようだった。

 

「空歩――!」

 

劉曹は空を蹴り、光の刃をかわす。だが、いつの間にか劉曹の後ろに回りこんでた"仮面憑き"が鉤爪で劉曹を引き裂こうとする。

 

「甘い」

 

劉曹は自分の服を(かす)らせる程度に身体を反らし、顔面に拳を叩き込もうとする。

だが、やはり、当たる寸前で禍々(まがまが)しい光に阻まれ、直撃させることができない。

 

「ちっ、面倒臭いな。」

 

焦ったように呟きながら劉曹は仮面憑き二体の攻撃を捌いていく。。

"仮面憑き"を退けることは劉曹にとってはあまり難しくない。しかし、そのための時間が必要なのだ。

すると、いきなり劉曹の背後でドン、と爆音が鳴った。色とりどりの火花が、夜空に大輪の花模様を描く。

そして、どこからか矢のように放たれた銀色の鎖が夏音と"仮面憑き"の一体を搦め捕った。

電波塔のほうを見るとそこには古城、雪菜、那月、アスタルテの四人がいた。

 

「ようやく、来たか……って、おい!」

 

劉曹は一瞬安堵の表情を浮かべたが、張り巡らされた鎖を伝って、一気に"仮面憑き"へと向かっていく雪菜を見て叫ぶ。

 

「――"雪霞狼(せっかろう)"!」

 

「待て、姫柊!」

 

"仮面憑き"に銀の槍を突きたてようとする雪菜を制止しようとした劉曹だったが遅かった。

 

「えっ!?」

 

劉曹のときと同じように光に阻まれる。そのことに動揺を覚える雪菜。

 

「姫柊、そこから離れろ! 那月ちゃんの鎖も砕かれるぞ!!」

 

「は、はい!」

 

咄嗟に聞こえてきた劉曹の声に反応して雪菜は跳躍し、電波塔に着地する。

その直後、不揃(ふぞろ)いな黒い翼を広げて、"仮面憑き"が咆哮する。彼女たちを縛っていた鎖が弾け飛んだ。

 

「"戒めの鎖(レージング)"を断ち切っただと……!?」

 

「だから言っただろ、あいつらは魔術や眷獣の(たぐい)は効かないって」

 

驚愕する那月に対して、電波塔に着地した劉曹は冷静に言い放つ。

 

「劉曹、どういうことだ」

 

古城は劉曹、雪菜のところに駆け寄り、問いかける。

 

「それは、"仮面憑き"の正体に関係するものだ。いま、悠長に話している時間はない。古城、少しだけ時間を稼いでくれ」

 

「時間を稼ぐって言われても、俺の眷獣は効かないんだろ? どうやってやるんだ?」

 

「お前の眷獣だったら軽い足止めにはなる――ってまずいぞ!」

 

劉曹たちが話し合っている間に一体の"仮面憑き"は電波塔のほうに突っ込んできた。

仮面の下の唇を張り裂けんばかりに開いて咆哮し、その全身が紅い光を放つ。

その光が電波塔の根元部分を、ごっそりと抉り取った。

自重を支えきれなくなった電波塔が傾き、ゆっくりと倒れていく。

 

「那月ちゃん! 電波塔を頼む!」

 

「わかっている、やつらは任せたぞ!」

 

「というわけだ古城、五分……いや一分だけ頑張ってくれ――空歩!」

 

そう言い残し、那月は空間転移で姿を消し、劉曹は空へと飛び出していった。

 

「え!? ちょっ……」

 

古城は唖然としていた。任せると言われても、古城は倒れていく鉄塔から投げ出されないようにするだけで精一杯だ。

だが、途中で鉄塔の落下が停まった。周りを見ると地面から伸びてきた無数の鎖が、鉄塔の倒壊を防いだのだ。

 

「この鎖は……」

 

「那月ちゃんか……」

 

体勢を立て直し、向かってくる"仮面憑き"を見据える。

 

疾く在れ(きやがれ)、九番目の眷獣"双角の深緋(アルナスル・ミニウム)"――!」

 

膨大な魔力を撒き散らしながら実体化した緋色の双角獣(バイコーン)は迫り来る"仮面憑き"に咆哮した。

その咆哮は衝撃波の砲弾と化して、"仮面憑き"を襲った。だが――

 

「マジか!?」

 

「本当に真祖の眷獣の攻撃に耐えるなんて……!?」

 

古城と雪菜は唖然(あぜん)としていた。劉曹から訊いてはいたが、まさかここまで通用しないものだとは思っていなかったのだ。

 

疾く在れ(きやがれ)、五番目の眷獣"獅子の黄金(レグルス・アウルム)"――!」

 

古城は自分が従えられるもう一体の眷獣を呼び出し、双角獣(バイコーン)と同時に攻撃させる。しかし結果は同じだった。少し相手の動きを止めるだけで、まったく"仮面憑き"が(こた)えた様子がない。

 

「やばい――! 劉曹はまだなのか!?」

 

"仮面憑き"が生み出した巨大な光剣に気づいて、古城は全身を凍らせた。そして、"仮面憑き"が光剣を古城に投擲しようとした瞬間、

 

「よくやった、古城」

 

そんな声と共に上から白い光をまとって降りてきた劉曹が落下のスピードを利用して"仮面憑き"を蹴り落とした。

 

「「なっ――!?」」

 

古城と、雪菜は驚愕していた。

獅子王機関(ししおうきかん)の秘奥兵器"雪霞狼(せっかろう)"や世界最強といわれている第四真祖の眷獣さえまったく通用しなかったのにただの蹴りが通用したのだから、当然といえば当然である。

蹴り落とされた"仮面憑き"は電波塔の中腹に激突し、動きを止めた。

すると、鎖から脱出してからなにもしなかったもう一体の"仮面憑き"――夏音が、斃れた同類の元へと向かおうとする。

 

「夏音、なにをするつもりだ」

 

その前に立ちはだかる問いただす劉曹。しかし、なんの反応もなく鉤爪で劉曹の身体を抉ろうとする。

それをあえて避けず、貫かれる劉曹。顔が歪み、口から大きな血だまりを吐く。

引き抜こうとする腕をつかみ、真正面から彼女を見据える劉曹。

 

「もう一度訊くぞ、これはおまえが望んだことなのか? どうなんだ、夏音!」

 

劉曹の言葉に夏音は一瞬ピクリと反応したが、すぐに足で劉曹の顔を狙う。仮面から覗かせる目からは涙が流れていた。劉曹は戦闘など忘れさせるような優しい笑みを浮かべ、

 

「その涙で十分だ。待ってろよ、必ず……助けてやる」

 

光の輝きを失い、力を入れられなくなった身体はそのまま真っ逆さまに落ちていった。

 

 





どうでしたか?

誤字脱字、文章のおかしいところなどがあったら指摘してください。
あと小説書く上でこうしたほうがいいんじゃないかなぁ、などのアドバイスがあればぜひご教授をm(_ _)m
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。