ストライク・ザ・ブラッド~白き焔~   作:燕尾

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はい、どうも燕尾でございます!
二話目です。どうぞ!



第二話

 

 

ショッピングモールでの一件のあと劉曹と古城は明日詳しく話すことを条件に雪菜と別れ、古城の家で追試の勉強をしていた。

 

 

「そういえば劉曹、よかったのか?」

 

 

問題を解いている途中、古城が尋ねてくる。なにが? と劉曹が聞き返すと古城は心配そうに、

 

 

「いや、あの姫柊って攻魔師なんだろ? そんな奴の前で力使っただろ。お前の素性がばれるんじゃないのか?」

 

 

付き合いが始まってから数年経つが、古城自身、劉曹が何者なのかを知らない。が、人間でありながら素手で、しかも片手一本で吸血鬼の眷獣を消し去ることが出来るほどの力を持っているのは知っているのだ。もし、街中で起こったことを姫柊という少女が上司に報告なんてしたら、劉曹にも監視が来るなんてことになりかねないのではないか。

不可抗力とはいえ巻き込んでしまう可能性が高いことに古城は不安を覚えていた。だが、劉曹は呆気からんとして返す。

 

 

「ああ、それに関しては俺の情報を記録しているところにハッキングかけてあらかた消去している。まず並みの人じゃ探し当てることすら無理だ。ほとんど残ってないからな。もし仮に見つけたとしてもソレが俺の情報なのかどうかすらわからないだろ」

 

 

「なんだそれ、そこまでする必要があるのか? ていうかそれ普通に犯罪だろ」

 

 

「向こうはすトーキングだのして得た個人情報を本人の了承無しに勝手に記録してんだ。そんなこといわれる筋合いはない。ハッキングかけたのが俺だって誰もわからんだろうし」

 

 

「おまえ、コンピュータ関係も強いんだな」

 

 

「ある程度はな。ただまあ、浅葱なんかに調べられたらアウトだな。あいつのこういうものに関するスペックは神レベルだからな。でもあいつは人の情報を(あさ)ることはしないだろから大丈夫だろ。……そこエックスの二乗だ」

 

 

「は? ああ…」

 

 

「それに、"触らぬ神に祟りなし"だ、古城」

 

 

悪戯っぽい笑みを浮かべそういう劉曹に「おまえなにしたんだよ……」と古城はジト目で言うが劉曹は内緒だ、と逸らす。

 

 

「とりあえず、お前は明日の追試のことだけを考えろ。その後のことは……まぁ何とかなんだろ」

 

 

「ちょっ、おまえ適当すぎるだろ!?」

 

 

俺のプライバシーがかかっているんだぞ! とギャーギャー喚く古城を劉曹は無視して数学の問題を解いている。

実際のところどれだけ拒否しようが相手は勝手に任務を実行するだけ。派遣された監視役と接触した時点で劉曹と古城にできることなんてなにもなくおとなしく受けるしかないのだ。

 

 

(確か姫柊は獅子王機関の剣巫って言っていたな。ということは"あいつ"の差し金か。こうなった以上は仕方ないがちょっと釘刺しといた方がよさそうだ)

 

 

そう考えつつ、劉曹は未だにうるさい古城を物理的に黙らせて追試の勉強を進めさせたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

次の日朝、時刻は七時くらい。劉曹は古城の家のインターフォンを押した。

古城の自宅はアイランド・サウスこと、絃神島南地区の九階建てマンションの七階。人工島(ギガフロート)内では、比較的背が高く、見晴らしのいい建物だ。

その一室の扉の奥からはいはーい、と可愛らしい声が聞こえてくる。

 

 

「はーい。あ、曹君おはよう。古城君だよね、ちょっと待ってて! 叩き起こしてくるから。そうだ、朝ごはん食べていく? これから作るところだったんだ」

 

 

朝から元気に話す大きな瞳が印象的で表情豊かなこの少女は暁凪沙、古城のひとつ年下の妹である。

 

 

「おはよう凪沙ちゃん、朝から元気だな。朝は食べてきたから大丈夫だ。古城は俺が叩き起こしてくるから凪沙ちゃんは朝ごはんを作ってきな」

 

 

「ありがと曹君。それじゃ、古城君をよろしくね」

 

 

そう言って凪沙はパタパタとキッチンへ戻っていき、劉曹は古城の部屋に入り寝ている古城に向かって思い切り腕を振りかぶる。

 

 

「顔面パンチ発射五秒前! 四……」

 

 

「ん、なんだ……?」

 

 

大きな声がして起きた古城は焦点の合っていない目で目の前を見る。完全に意識がはっきりしていなかった古城だったが、束の間、一気に覚醒する。

 

 

「三……二一ゼロ発射ドーン」

 

 

「どあああああああああ!!」

 

 

悲鳴をあげながら顔を横にずらす古城。さっき自分の顔があった場所には劉曹の拳が突き刺さっていた。

 

 

「おはよう古城! いやー気持ちのいい朝だな! さぁ、今日も一日ガンバロー!」

 

 

爽やかな顔で言ってそそくさと部屋を出ようとする劉曹。

 

 

「ちょっと待てェ! 何で朝からこんなアグレッシブなことしやがる! しかも二からカウントダウン早すぎだろ!」

 

 

「うるさい、お前が毎日毎日起きるのが遅くて凪沙ちゃんが困っているからこうやって俺が優しく起こしてやっているんだろうが」

 

 

「お前の起こし方のどこに優しさがあるのかぜひとも教えてほしいもんだな」

 

 

「ま、それはいいとして」

 

 

「よくねぇよ!」

 

 

「うるさい。さっさと顔洗って朝飯食いに行け。凪沙ちゃんが準備してるんだから」

 

 

古城は納得できんという感じだったが、しぶしぶと洗面所へ向かっていった。

 

 

「まったく、あんなんじゃ凪沙ちゃんも苦労するよな」

 

 

やれやれ、とため息をつきながら劉曹も部屋をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古城が追試を受けている間、劉曹は別教室で待機していた。このあと昨日出会った姫柊雪菜と話をするために。だったのだが……

 

 

「おい姫柊、何しているんだ。そんなところで」

 

 

「なっ――」

 

 

雪菜はばれるとは思っていなかったようで声を掛けられて驚いていた。

 

 

「古城は気づいていなかったがバレバレだったからな? 朝からご苦労なことだが尾行するならもっと気配を消せ」

 

 

「昨日から思っていたんですけど。楠先輩。あなたは一体何者なんですか?」

 

 

「普通の人間だよ」

 

 

「普通の人間に眷獣を消し去ることなんてできません」

 

 

はぐらかそうとしたのがわかったのか雪菜は少しムッとして問い詰める。

 

 

「何で政府機関の人間は個人のプライバシーを侵害するのだろうか」

 

 

「それが任務ですから」

 

 

「その一言ですべて収めようとするな。第一、姫柊の任務は俺じゃなくて古城だろ」

 

 

「うっ……」

 

 

そういわれて言葉に詰まる雪菜。案外言葉を返されるのに弱いのだなと劉曹は感じる。

これ以上何を言っても教えてはくれないだろうと判断した雪菜は話を変えた。

 

 

「では、暁先輩がここで何をするつもりなのか教えていただけませんか」

 

 

「そういう話をするのは古城の追試が終わった後って言ったよな? まぁ今の言葉で姫柊が勘違いしていることはわかった」

 

 

「勘違い? どういうことですか?」

 

 

「だから、話はあいつが来てからだって。俺は古城が来るまで俺は寝るから」

 

 

「えっ、ちょっと――」

 

 

雪菜が話しかける前にもう劉曹はすぅすぅと寝息を立て始めていた。

 

 

「寝るの早すぎじゃないですか!? まったくもう……」

 

 

これから先のことを考えると溜息しか出ない雪菜であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古城の追試が終わり、昼時だったため三人は彩海学園の近くにある大手チェーンのハンバーガーショップで昼食をとることにした。一息ついたあと劉曹が口を切る。

 

 

「それじゃ、話をしようか。古城」

 

 

「言い出してすぐ放棄するなよ… まぁいい、姫柊。改めて聞くけどお前は一体何者なんだ?」

 

 

「私は獅子王機関の剣巫です。獅子王機関は知っていますよね?」

 

 

「いや知らんが」

 

 

即答する古城に雪菜は目を(またた)いた。

 

 

「どうして知らないんですか!?」

 

 

「そんな知ってて当然みたいに言われても困るんだが……初めて聞いたぞ。そんな名前」

 

 

古城の反応に困った表情の雪菜。そこに劉曹が助け舟を入れる。

 

 

「古城。獅子王機関ってのは、国家公安委員会に設置されている特務機関のことで、大規模な魔導災害や魔導テロを阻止するための情報収集や謀略(ぼうりゃく)工作をやったりしている」

 

 

「楠先輩の言うとおりです。もともとは平安時代に宮中を怨霊や妖の類から護っていた滝口武者が源流(ルーツ)なので、今の日本政府より古い組織なんです」

 

 

源流(ルーツ)とかはよくわからないけど……要するに公安警察みたいなものか」

 

 

古城は一応理解はできたようだ。

 

 

「で、何で俺たちを尾けてきたんだ? 魔導災害やテロの対策なら俺とは関係ないだろ」

 

 

「あの、暁……先輩? ひょっとしてご存じないんですか?」

 

 

「なにをだ?」

 

 

「えっと……あの……」

 

 

「お前は戦争やテロ、災害と同じ扱いを受けているって話だ。真祖は一国の軍隊と同格、それ以上なんだよ。当然お前も当てはまることになる」

 

 

言うのをためらっている雪菜に代わって劉曹がストレートに言った。唐突に災害扱いされた古城は、はぁ!? と声を上げる。

 

 

「何だよそれ、生物ですらないのかよ。第一そんな扱いされる覚えはねーぞ。俺はなにもしてねーし、支配する帝国(ドミニオン)なんざどこにもねーし」

 

 

「そうですね、わたしもそれを訊きたいと思ってました。先輩方はここで何をするつもりですか?」

 

 

「おいちょっと待て、なんで俺も入れている!?」

 

 

自分も入れられて驚く劉曹。そんな劉曹のツッコミも虚しく雪菜は続ける。

 

 

「正体を隠して魔族特区に潜伏しているのは目的があるんじゃないですか? 暁先輩の正体を知っている楠先輩と絃神島(いとがみじま)を影から支配して登録魔族を自分たちの軍隊に加えようとしているとか。あるいは自分の快楽のために彼らを虐殺しようとしているとか……なんて恐ろしい!」

 

 

それ途中から俺は関係ないんじゃないのか。俺人間だし、と思っていたがここは口に出さずこらえる劉曹。古城はなんでそうなる、と低く(うな)り、

 

 

「まてまて、姫柊は何か誤解しているぞ」

 

 

「誤解?」

 

 

「潜伏もなにも、俺は吸血鬼になる前にこの街に住んでいたんだ。この体質になったのは今年の春だ」

 

 

古城の話に雪菜は信じられない、というふうに首を振る。

 

 

「そんなはずありません。第四真祖が人間だったなんて!」

 

 

「そんなこといわれても事実そうなんだよ。俺は先代の第四真祖にこの厄介な体質を押し付けられただけだ」

 

 

「先代の!? 本物の"焔光の夜伯(カレイドブラッド)"にですか!? どうして第四真祖が暁先輩に……そもそもなぜあの"焔光の夜伯(カレイドブラッド)"に遭遇したりしたんです?」

 

 

「それは……」

 

 

「まて古城! それ以上は考えるな!」

 

 

雪菜の質問になにかを思い出そうとする古城。その様子を見て声を上げて止めようとした劉曹だったが一歩遅かった。突然として古城は激しい苦痛に襲われてたように顔を歪ませた。

 

 

「あ、暁先輩!? 楠先輩、これはどういう……」

 

 

雪菜は突然のことにおろおろして劉曹に問う。

 

 

「こいつの記憶の一部が欠落しているんだよ。無理に思い出そうすれば激しい頭痛に見舞われる」

 

 

古城は痛みが引いてきたのか息を整えて落ち着かせている。

 

 

「なぜ記憶がないんですか? 楠先輩はなにかご存じないんですか?」

 

 

「知ってる」

 

 

「「は!?」」

 

 

古城と雪菜は同時に声を上げる。

 

 

「なぜこいつが第四真祖になったのか、その日に何が起こったのか、俺は全部知ってる。今となっては世界中でも俺しか知らないだろうな」

 

 

「なんでお前が……」

 

 

「おまえは覚えていないかもしれないが俺もいたんだよ、あのとき」

 

 

「教えてください。なにがあったのか」

 

 

雪菜に詰め寄られるが劉曹は首を横に振った。

 

 

「すべてを教えることはできない。古城のためにも。ただひとつ、記憶がないのは固有堆積時間(パーソナルヒストリー)を奪われたせいだ」

 

 

固有堆積時間(パーソナルヒストリー)ですか」

 

 

「なんだそれ」

 

 

「ある存在が生み出されてから現在まで過ごした時間の総和、人の歴史だ。簡単に言えば記憶と経験。第四真祖とかかわった人間は全員第四真祖に関する時間、記憶、経験をすべて奪われたということだ。だからこそ第四真祖は架空の、伝説の存在として扱われているんだ」

 

 

「なら、なんでお前の記憶は残っているんだ?」

 

 

「そうですね、楠先輩も例外ではないと思います」

 

 

劉曹はそう説明するが古城と雪菜はある意味当然の質問を投げかけた。

 

 

「色々やった」

 

 

「いや、そうなんだろうけどさ」

 

 

「もっとこう、具体的なことは言えないんですか?」

 

 

「コジンジョーホー プライバシー タイセツ」

 

 

「「あ、もういいです」」

 

 

古城と雪菜はこれ以上問い詰めるのをやめた。二人ともこれ以上聞けることはないと悟ったのだ。

 

 

「ま、とりあえず。これからどうするんだ姫柊?」

 

 

劉曹はこれからどうするかを姫柊に問う。とはいっても答えはもちろん……

 

 

「もちろん暁先輩の監視任務につきます」

 

 

「マジか……ちなみに俺に拒否権は?」

 

 

「ありません」

 

 

きっぱり言われた古城は最後の砦というふうに劉曹に助けを求めた。

劉曹は満面の笑みを浮かべ古城の肩に手を置き、そして……

 

 

「古城、あきらめろ。言っただろ、政府機関は勝手だって」

 

 

唯一の希望にも見捨てられた古城は天を仰いで嘆息(たんそく)するのだった。

 

 

「勘弁してくれ」

 

 





ちょっと台詞が多い二話目です
こんな感じで前に投稿したものを少し改変して更新していきます。


バイト超だるい(泣)
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