ストライク・ザ・ブラッド~白き焔~   作:燕尾

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どもです。燕尾です

酔っ払っての投稿なので文がおかしいところがあるかもです

二十一話ご覧ください。


第二十一話

 

 

「……眠れねえ」

 

椰子(やし)の枝を()き詰めただけの硬い寝床の上で、古城はぼんやりと暗い天井を見上げていた。

正確な時刻は知らないが、おそらくまだ午後八時前。今どきの高校生が眠る時間帯ではない。ましてや夜行性の吸血鬼では尚更(なおさら)だ。

そして今、雪菜の姿はない。

昼間の探索で見つけたトーチカ(鉄筋コンクリート製の軍用防御陣地のこと)を拠点にしつつ、交代で近くを通りかかる船を見逃さないように見張りをしているのだ。

 

「……つか、昼間、あんだけ眺めてて、船なんか一隻も通らなかったのに、今さらだよな」

 

古城の言う通りこの島に残されて、探索してトーチカを見つけた後、船が通りかからないかずっと海を見ていた。

しかし、この無人島はメイガスクラフト所有とされているのだ。漁業の船などが通りかかるはずもなく、もし、通りかかったとしてもメイガスクラフトの船だけだろう、そう古城は思った。

気怠く息を吐き出しながら、古城はむくりと上体を起こす。

喉の渇きも覚えたことだし、雪菜の様子見かてら水でも汲んでこよう、と思ったのだ。

 

「おーい……姫柊ー……起きてるかー?」

 

声をかけるも雪菜からの返事はなかった。ただ古城の声が、暗がりの中にむなしく反響するだけだ。

 

「姫柊ー……? おーい」

 

トーチカから出て浜辺を歩きながら呼びかけるも、やはり姿も返事もない。

古城は雪菜を探しつつ、水を汲んでこようと、森の中へと向かった。

 

 

 

 

 

 

月齢の若い月の光は頼りなく、森の中は闇が濃い。だが古城の目は、陽光の下よりも鮮明に景色を知覚する。

勘だけ頼りに、古城は島の中心部へと進むと不意に視界が開けた。

そこは森の木々と霧に包まれた泉――

カルデラ状の岩の(くぼ)みに湧き水がたまっているらしい。透明度の高い澄んだ水面(みなも)からは、美しい満月が浮かび、無数の石柱が突き出して、なんともいえない不思議な感じを(かも)し出している。

すると、遠くで水音が聞こえた。

反射的に向けた古城の視線の先には、女がいた。

妖精じみたほっそりとした体つきに銀色の髪と碧い瞳。日本人離れした端整な容姿。

 

「叶瀬……?」

 

古城は無意識に呟いた。

自分の言ったことに気づいた古城はすぐさまそれを否定する。昨日の今日で、しかもこんな場所のこんな時間に叶瀬がいるはずがない、と。

しかし、泉の中にいる少女は古城がそういってしまうほどに叶瀬夏音によく似ていたのだ。

古城の存在を感じ取ったのか、少女がこちらを向いた。

そして、目が合った瞬間――

 

「――っ! やばっ――!」

 

古城は口元を覆って顔を伏せる。

 

「こんなときに吸血衝動かよ! くそっ……勘弁してくれ!」

 

低くうめき、衝動からくる血への渇望と性欲の(たか)ぶりを必死に抑える古城。だが、衝動はすぐに止んだ。

吸血衝動は長くは続かない。要は血が恋しくなっただけなのだから、それを味わえば嘘のように消滅する。たとえそれが自分の流した鼻血であってもだ。

無くなったことに多少の安堵を覚え、古城は顔を上げる。しかし、少女の姿はすでに消えていた。

 

「――動かないでください」

 

「ひ……姫柊!?」

 

背後から聞こえた雪菜の声に古城は反応して後ろを向こうとすると、いきなり銀色の槍の穂先が突き出された。

 

「動かないでください、振り向いたら刺します。生き返ることはわかってますから」

 

そういって、雪菜は槍の穂先を古城の首の動脈にぴたりと当てる。

 

「えーと、姫柊さん……? こんなところでなにを?」

 

少しでも状況を確認しようと古城は頭を動かす。その瞬間、首に当たる鉄の冷たい温度がさらに伝わってきた。

 

「い、今振り返ったら、本気で怒りますからね!」

 

「って……あの、もしかして姫柊さんも、水浴び中だったとか? それならそうと言ってくれれば――」

 

「そしたら先輩はのぞきに来るじゃないですか、現にこうして――!」

 

確信に満ちた口調で声を上げる雪菜に、さすがの古城もムッとして、

 

「なんでそうなる、俺は外にいなかったのを心配して、探しに来ていただけだ! べつに姫柊のことなんかをのぞきに来たわけじゃないっ!」

 

「……わたしのことなんか……ですか。そうですか」

 

雪菜が冷え冷えとした声を出す。それから拗ねるように、もう、と溜息をついて、そこで血に染まった古城の手が目に入った。雪菜はさらに一層声を冷やかにして、

 

「……なら先輩は一体誰をのぞいていたんですか?」

 

「だからのぞきから離れろって……今さっき、そこに叶瀬みたいな子がいたんだ。」

 

「叶瀬さん、ですか?」

 

「ああ。とはいっても叶瀬を大人にしたような感じで身長も少し高かったし、髪も長かった。とりあえず叶瀬本人ではないのは確かだった」

 

「大人にした叶瀬さん、ですか……そうですか。先輩、よく見ていましたね。やっぱりどうしようもない変態ですね」

 

槍をぐりぐりと押し付けながら、責めるような口調で言う雪菜。だからなんでそうなる、と反論する古城にもう一度溜息をする。

 

「先輩のパーカーをお借りできますか?」

 

「ああ、べつに構わないけど――」

 

そう言って古城は、羽織っていたパーカーを背後の雪菜に渡す。かすかな衣擦(きぬず)れの音とファスナーを上げる気配がして、

 

「もうこっちを向いてもいいですよ」

 

ようやく首元から刃をどかされて解放感に脱力しながら古城は振り返る。

あんまり見ないでください、と雪菜は足をもじもじさせている。どうやらパーカーの下には、本当になにも身につけてないらしい。そして気を取り直した様子で、

 

「とりあえず、その大人の叶瀬さんを探しましょう。この先にも人が通れそうな道がありますし」

 

そう言って裸足のままで森の中を進みだした雪菜のあとを古城は追うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「予定より早く動けるようになったな」

 

薄暗い闇が弦神島を覆い隠し、月光が島を照らし始めたころ、劉曹はゆっくりと上体を起こした。

ベッドから下り、の力を入れたり抜いたりして感覚を確認して、そのあと精神を集中させる。

 

再生(リサシテーション)

 

病室を埋めるほどの緑色の淡い光の玉が無数に出現する。その光の玉がすごいスピードで劉曹の体の中に入っていった。

光に包まれた劉曹はずっと精神を乱さないように瞳を閉じている。そして、光が止むと同時に劉曹も目を開けた。

 

「やっぱり、今回ばかりは俺だけじゃどうしようもないか……」

 

んー、と身体を伸ばし呟く劉曹。すると、病室に一人の少女が入ってきた。

 

「劉曹」

 

「アスタルテか……ってまだメイド服なんだな……どうした?」

 

夜も本格的になる時間でもアスタルテは那月の言いつけを守ってメイド服でいるアスタルテ。その姿で街の中をを歩いたなら相当周りから注目されただろう、と劉曹は言ったがアスタルテは気にもしない様子だった。

 

「マスターからの伝言です」

 

伝言? と聞き返す劉曹にアスタルテはコクリと頷いた。

 

「はい。『出した課題の来週火曜日まで。期限厳守だ』 とのことです」

 

アスタルテから那月からの伝言を訊いた劉曹は口角を上げて、ふっとその場から消えていった。

 

「楠さん、調子のほうは……って、いない!? あ、そこのあなた! 楠さんがどこに言ったか知りませんか!?」

 

様子を見に来た看護婦は焦ったようにその場にいたアスタルテに訊く。

 

「否定、わたしが来たときにはいませんでした」

 

アスタルテは劉曹が飛び出していった窓のほうを向き空を見上げる。無事に劉曹が帰ってくるように祈りながら――

 

 

 

 

 

 

「モグワイ、浅葱が調べた島はここからどこだ?」

 

空を移動しつつ、スマートフォンの電話口に声をかける。浅葱の相棒である人工知能モグワイはケケケ、と笑い、

 

『珍しいな、浅葱嬢ちゃん並みのハッキング能力を持つ劉坊が俺を頼るなんて』

 

「今は時間がないんでな。それに俺と浅葱じゃ比べ物にならねーよ。ハッキング戦でやっても一時間が関の山だ」

 

そういう喋る劉曹にモグワイは呆れたようにため息をつく。

 

『よく言うぜ。劉坊が本気を出したら浅葱嬢ちゃんだって負ける。たとえ――』

 

「俺だからいいが、それ以上言うなよモグワイ。お前でもただじゃすまないぞ」

 

声を低くして言葉を遮る劉曹におっと、とわざとらしく言うモグワイ。

 

「そんなことより、さっさと教えてくれ。島はどこだ?」

 

『いま劉坊がいる位置から南方二十キロだ。そこにメイガスクラフト社所有の無人島がある。第四真祖と転校生ちゃんはそこにいる』

 

わかった、と劉曹は電話を切って、モグワイから得た情報どおりに進路を南に変え、スピードを上げる。

 

「ん、あれは……」

 

目的の島がうっすらと見えてきた頃、劉曹と同じ方向に向かっている一隻の船が見えた。

 

「中に人の気配は……無し。遠隔操作で動いているのか。それに、あの島に向かっているということはメイガスクラフト社の船で中に入っているのは自動機械人形(オートマタ)か」

 

劉曹は気づかれないように船に着地し、船内を探る。劉曹の予想通り、目に入るのはメイガスクラフト製の自動機械人形(オートマタ)ばかりだった。

 

「さて、どうしようか。そうだ、空を飛ぶのも疲れたし連れてってもらおうか。ついでに船内を調べないとな」

 

そういって振り返ったとき、ジャキン、と劉曹の頭に向けられた何かがあった。目の前には一体の自動機械人形(オートマタ)

 

「……どうも、こんばんは。きれいな月が出ている夜は風情(ふぜい)があっていいですね」

 

『……』

 

劉曹は咄嗟(とっさ)に言葉をしぼりだすが当然ながら相手は反応しない。

その直後、(かす)れた破裂音が夜の空に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森の中をしばらく歩いていた古城と雪菜は浜辺へ出かかる頃、ふと足を止めた。沖合いから聞こえてくる騒音に気がついたのだ。

 

「船!? 助けに来てくれたのか――!?」

 

「待ってください先輩! あれは――」

 

船に駆け寄ろうとする古城を雪菜が制止する。古城も船をよく見るとその理由がわかった。

沖合いから向かってくる船の姿を古城は見覚えがあった。戦争映画でよくある海軍の兵士が敵国への上陸に使う、エアクッション型揚陸艇だ。積荷のコンテナにも"メイガスクラフト"と企業ロゴが描かれていた。

すると甲板に設置されていた数基のサーチライトが一斉に点灯し、獲物を探すように夜の無人島を照らしていく。

突然のことで反応が遅れて、古城と雪菜は光に晒されてしまう。慌てて茂みの中に身を伏せるが新たに点灯したサーチライトが古城たちがいた場所の近くを照らしている。

 

「見つかった……か?」

 

「先輩、こっちです!」

 

雪菜に(うなが)されて古城は森の奥に行き、光から逃れるように走る。

岸に乗り上げた揚陸艇のゲートが開く。

そこから降りてくるのは、全身を黒い鎧に包んだ兵士たちだ。彼らの手には大型軍用アサルトライフルだった。

見つからないように必死に走る二人だが、存在に気がついた兵士たちは銃口を定め発砲してきた。

 

「伏せて!」

 

雪菜が古城を突き飛ばして、そのまま覆い被さってくる。

もつれ合うように転倒した古城たちの頭上を機銃弾の一連射が通り過ぎていった。

 

「問答無用か!? いきなり発砲してきやがったぞ――!」

 

「実弾ですね……先輩、絶対ここを動かないでください!」

 

古城にそう言い残すと、突然、地面を蹴ってうす闇の中へと飛び出していった。

 

「姫柊!? うお!?」

 

雪菜が飛び出したことで位置捕らえられたのか、古城がいる付近に銃弾が集中する。

 

「――――鳴雷(なるいかずち)!」

 

雪菜は黒の鎧を(まと)った兵士の後頭部を素足で蹴り飛ばす。屈強な獣人すら一撃で昏倒させる彼女の蹴りをまともに受けて、兵士はひとたまりもなく吹き飛んだ。そして、槍を一閃して、アサルトライフルを両断して兵士の腹部を石突きで殴り倒す。

 

「姫柊、無事かっ!?」

 

集中砲火から解放された古城は、兵士を倒した雪菜のほうへと走り寄る。

 

「っ! 動くなってお願いしたじゃないですか!!」

 

古城に気づいた雪菜は慌ててパーカーの裾を押さえる。

すると、雪菜の背後に倒れていた兵士がゆっくり立ち上がり、銃を構えた。

 

「!? 姫柊っ!」

 

気がついた古城は雪菜の肩をぐっと力をこめ雪菜を押しのけて、

 

「だらあああ――!」

 

古城は吸血鬼の腕力を全開にして、力任せに殴り飛ばす。兵士はたまらず吹き飛ぶ。が、

 

「嘘だろ……手加減しなかったぞ!?」

 

岩場に激突して動きを止めたと思った兵士は平然とまた立ち上がる。古城は今度こそ顔色を変えた。

 

「すみません、先輩……囲まれました」

 

雪菜は周りを見渡してそう呟いた。

先ほどまで倒れていた兵士たちと新たに船から来た援軍たちが古城たちを中心に円を描いていた。

それほど数はいない。しかし、二人で捌き切れるかどうかは微妙なところだ。

古城は考える。眷獣を放てば、武装した兵士なぞどれだけいようと一瞬で排除することができる。しかし、それはこの世からという意味だ。古城にはそんなことする覚悟はなかった。

どうすればいい、と古城が呟く。その直後、

 

「――!?」

 

古城たちの眼前にいた黒鎧の兵士たちが、轟音とともに飛来した二つの閃光に貫かれた。

 

「二人とも無事ですか」

 

緊張感のないおっとりした声が、近くの岩壁の上から聞こえてくる。

そこに悠然と立っていたのは、美しい銀髪の女だった。古城が泉で見かけた、叶瀬夏音に似た顔立ちの少女である。

 

「今のうちにこちらへ。早く」

 

銀髪の少女は優雅に微笑んで、古城たちを手招きした。

古城と雪菜は互いに頷き、銀髪の少女へと近づいた。

 

「あなたは――?」

 

「ラ・フォリア・リハヴァインです。また会えましたね、暁古城」

 

問いかける雪菜に、銀髪の少女は先ほどの優雅な笑みを浮かべそういうのだった。

 

 





いかがでしたでしょうか?

絶賛、読者様方の意見を募集中でーす☆ キャルン☆

ごめんなさい、酔っ払って変なテンションなんです……
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