ストライク・ザ・ブラッド~白き焔~   作:燕尾

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どうも燕尾です

見事に風引きました。辛いです

だけど講義とバイトがある……辛いです

だがしかし、わたしは投稿します!
二十二話目ですどうぞ!!


第二十二話

「はあ、面倒臭かった」

 

船の甲板(かんぱん)に積みあがった人形を見下ろして、ポンポン、と服の(ほこり)を払い呟く劉曹。

一体の自動機械人形(オートマタ)に見つかったあと、次々と応援を呼ばれ囲まれた劉曹は、仕方なく処理する羽目になったのだ。

船はいつの間にか無人島の浜辺に停まり、上陸のスロープが降ろされていた。少し先の浜辺には自動機械人形(オートマタ)がどこかに行ったと思われる足跡があった。

 

「この様子だと残りの人形は出払ったようだな」

 

劉曹は周りを確認して船内へと入り、一つの扉の前に立った。扉の上のプレートには機関室と書かれていた。

中に入っても自動機械人形(オートマタ)は一体もいなかった。

 

「やっぱりこっちには操縦桿(そうじゅうかん)なんてないよな」

 

そう呟きつつ、どうにか動かすことができないかと色々と操作するが母艦に逆らうことができないようになっている。

ハッキングして動かすこともできないわけではないが、時間がかかる。その間に人形が戻ってこられても困る。どうしたものか、と考える劉曹。すると、いきなり現れた膨大な魔力が感じられた。

 

「この魔力……古城の眷獣か――!?」

 

嫌な予感がした劉曹は急いで甲板のほうに向かう。表に出た直後、金色の光に目が襲われる。

劉曹は光を発している正体に気づき、げっ、と悪態をついた。

戦車にも劣らない大きさの雷光をまとった獅子が、メイガスクラフト社の揚陸艇(ようりくてい)に神速のごとく迫ってきている。その距離残り十メートル――

劉曹の叫びが船の爆発と共に夜の空に溶けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして俺の名前を?」

 

自分の名前を言い当てたラ・フォリアと名乗った少女に古城は驚いて訊く。

 

「暁古城なのでしょう。日本に出現したという第四真祖の」

 

「ああ……そうだけど……」

 

「今のが最後の呪式弾でした」

 

戸惑う古城を放置して、ラ・フォリアは一方的に会話を続ける。

古城の話を聞いていない、というより、自分のペースで喋っているのだろう。

 

「あいつらは?」

 

「メイガスクラフトの自動機械人形(オートマタ)です。わたくしを追ってきたのでしょう」

 

自動機械人形(オートマタ)? そうか、それで……」

 

ラ・フォリアの言葉にようやく古城は肋骨や頚椎をへし折られたまま動いていた兵士に納得がいった。

 

「あの揚陸艇(ふね)は無人です。あなたの眷獣なら沈められますね、暁古城」

 

「あの船は使えないのか?」

 

「奪い取ったところで、母艦に遠隔操作されているあの船を動かすことはできません。それよりも、船の中に残っている自動機械人形(オートマタ)たちのほうが脅威です」

 

古城の疑問に、ラ・フォリアは悠揚(ゆうよう)と答える。

 

「先輩、来ます」

 

古城の耳元で、雪菜が警告する。新たな兵士たちの一群が船から降りてきたのだ。

 

「迷ってる暇はないか……」

 

やれやれ、と首を振りながら、古城は兵士たちの前に姿を晒した。

無防備に歩き出した古城を兵士たちの銃撃が襲う。

しかしその弾丸は届かない。漏れ出した魔力が、青白い雷光となって古城の全身を覆い、銃弾を防いでいるからだ。

 

「悪いな、そういうことだからさ――疾く在れ(きやがれ)、"獅子の黄金(レグルス・アウルム)"!」

 

古城の腕から放出された魔力の波動が巨大な雷光の獅子の姿を形成した。戦車をも凌ぐ巨体が咆哮し、黒鎧の兵士たちを薙ぎ払う。そして、雷光の獅子は紫電と化して、海岸へと移動し、停泊していた揚陸艇(ようりくてい)を跡形もなく破壊した。

しかし、獅子が破壊したのは自動機械人形(オートマタ)と船だけではなかった。

森は数十メートルに及び焼き払われ、大地はえぐて、海は砂と混じり泥のようになっている。

古城は満足げに消え去る眷獣をみて疲れたように頭を抱えた。雪菜も眷獣の力に目を見開いて固まっている。ただ、ラ・フォリアだけは、

 

「見事です、暁古城。"獅子の黄金(レグルス・アウルム)"……アヴローラ・フロレスティーナの五番目の眷獣ですね」

 

満足げに微笑むラ・フォリアに古城は長い溜息をつく。すると――

 

「ほんとにな、見事だよ」

 

「だれだ!」

 

突然、聞こえてきた声に古城は臨戦体制に入る。海のほうからノロノロと自分たちのほうへと向かってくる人影。敵か見方かわからない状態に雪菜も銀色の槍を向け、ラ・フォリアは呪式銃を構えた。

 

「お前……劉曹か……?」

 

泥で汚れた白い長い髪が、顔を隠していているが時折見える紅い目と、その白い髪を見て古城は戸惑い気味に質問する。

 

「まさか、あの船に乗り込んでいたとか……?」

 

「せっかく助けに来たってのにこの仕打ちか。なぁ、古城?」

 

髪を上げて満面の笑みで問いかける劉曹。雪菜もご愁傷様といわんばかりに合掌している。

 

「いや、これはだな「正座」……」

 

劉曹は何か言おうとする古城を遮ってそう言った。

 

「まず話を「正座」……はい」

 

古城は笑みを浮べる劉曹に逆らえずその場に正座する。そして、劉曹は雪菜のほうを向き、

 

「姫柊もこっちに来て正座」

 

「わたしもで「何か文句でも?」……はい」

 

笑みを崩さず静かな声で問いかける劉曹に雪菜は顔を真っ青にして古城の隣に正座する。

 

「古城、お前はどうしていつも勝手に行動するんだ? 夏音が心配なのはわかるがなんでもう少し考えて行動しないんだ? こんなバレバレの罠に引っかかって周りに心配かけて迷惑がかかっているのがわからないのか?」

 

「はい、ごめんなさい」

 

「姫柊もそうだ。監視役としての自覚があるのか? おまえが首を突っ込むことで古城が巻き込まれることがまだわからないのか? それに古城がこういうことに関わらないようにするのがお前の役目だろ」

 

「はい、すみません」

 

息継ぎもせずに説教をする劉曹。いつもの彼からは想像できない速さで言葉をまくし立てる姿に、

 

「あの……楠先輩って怒るといつもこんな感じなんですか? なんか……とても怖いです」

 

「いや、今回はまだいい方だ。本気で怒ったこいつはその場にいるだけで気絶するレベルだ」

 

顔を近づけひそひそと話している古城と雪菜。劉曹はそんな二人の頬を引っ張る。

 

「人の話を聞かないでお喋りか、ん? だったら今度一度戦闘訓練を付けてやろう。もしもまたこういうことに巻き込まれたときのために、な。きっと楽しいものになるだろうなあ」

 

ニヤア、と効果音が出てこんばかりの笑みを浮べそういう劉曹。

 

「「本当にすみませんでした!!」」

 

二人は同じタイミングで土下座する。今二人は劉曹の顔を怖くて見ることはできなかった。

 

「あの!」

 

すると今まで黙っていたラ・フォリアが口を開く。劉曹はラ・フォリアに気づいていなかったのか顔を見た瞬間、表情を凍らせた。

 

「あなたの名前は劉曹というのですか?」

 

ああ、そうだけど、と明後日の方を向いている劉曹にラ・フォリアは期待と不安の眼差しで続ける。

 

「では、幼い頃にアルディギアに滞在したことはありませんか? 具体的には十年ほど前なんですけど」

 

「あるな」

 

答える劉曹にラ・フォリアは息を呑む。そして一拍置いて声を震わしながら、

 

「最後です。その時に同い年くらいの少女と出会った覚えはありませんか? 銀色の短い髪の少女を……」

 

「……」

 

劉曹はしばらく黙っていたが観念したように溜息を吐いて、

 

「……あるよ、久しぶりだな、ラ・フォリア。覚えていたとは思わなかった」

 

十年ぶりにあった成長した少女をまっすぐ見据える。

 

「やっと……やっと会えました……劉曹。ずっと、ずっとあなたを探していました」

 

銀髪の少女は目に涙を浮かべ嬉しそうにはっきりとそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

劉曹とラ・フォリアが知り合いだったことに古城と雪菜は驚いていた。

 

「劉曹、おまえ知り合いだったのか!?」

 

「とはいっても、十年前に会った程度の話なんだけどな。それに俺は名乗ってなかったしな。顔でバレるとは思ってなかった」

 

「そうなのか、それで彼女は一体何者なんだ?」

 

古城は改めて劉曹に訊いた。状況が状況だったので古城はラ・フォリアの正体を正確に把握できないでいたのだ。

 

「王女だ」

 

は? と訊き返す古城。劉曹は面倒くさそうにラ・フォリアに説明を促す。

 

「劉曹の言った通りです、古城。北欧アルディギア王国ルーカス・リハヴァインが長女ラ・フォリア――アルディギア王国で王女の立場にあるものです」

 

あらためてよろしくお願いします、と短いスカートの裾をつまみながら優雅に一礼する少女に今度こそ古城と雪菜は絶句する。

 

「とりあえずこちらへ、わたくしの救命ポッドがあるのでそちらに行きましょう」

 

ラ・フォリアが拠点にしていたのは古城たちがいたトーチカのちょうど反対側だった。

 

「あんた、本当に王女様だったんだな……」

 

砂浜に残された救命ポッドを見て、古城がしみじみと感想を呟いた。

 

「俺たちが嘘ついて何の得がある」

 

劉曹は、混乱している古城を呆れながら見て溜息をつく。

 

「あんたのことは、なんて呼べばいいんだ。殿下でいいのか?」

 

王女からもらった非常食を(かじ)りながら、古城が聞く。と、彼女は少しムッとして、

 

「ラ・フォリアです、古城。殿下も姫様も王女も聞き飽きました。せめて異国の友人には、そのような堅苦しい言葉で呼んでほしくありません。あなたもですよ、雪菜」

 

「え? いえ、ですか、しかし……」

 

「大丈夫だ、姫柊。むしろそうしないと変なあだ名を呼ばされることになるぞ」

 

劉曹がそういっても、政府の機関の人間である雪菜にはやはり抵抗があるみたいでまだ迷っている。

渋っている雪菜を見てラ・フォリアはなにか思いついたように、

 

「では、愛称というのはどうでしょう? たとえば、そう和風に、フォリりんと、こう見えてわたくし日本文化に詳しいのですよ」

 

それ和風じゃねえよ、と劉曹は思ったが口には出さない。

 

「……僭越(せんえつ)ながらご尊名で呼ばせていただきます、ラ・フォリア」

 

雪菜は諦めたような口調で言った。このままでは劉曹の言う通りふざけたあだ名で呼ばされかねない、と危機感を覚えたのだろう。

 

「で、あんたはなんでこんなところにいるんだ?」

 

「大方、絃神島に来る最中襲撃されてこの島に逃れてきたってところか。襲ってきたのはメイガスクラフトの魔族と例の天使(アレ)か。でなければ安々と()とされることはないだろう」

 

古城の問いの答え合わせをするように劉曹は口を開く。ラ・フォリアは静かに頷いて、

 

「そうです。おそらく、わたくしを拉致するためでしょう」

 

「拉致ね……そういうことか」

 

劉曹はようやく納得がいったように頷く。

 

「なにかわかったのか?」

 

「ああ、詳しい動機とかはわからんが、大体説明はつく」

 

古城が劉曹に訊くと雪菜も教えてください、と説明を促す。

 

「夏音をあの姿に変えたのは叶瀬賢生という男だ」

 

「叶瀬賢生って……叶瀬夏音の父親のことか?」

 

思いかけず訊かされた名前に古城が息を呑む。だが劉曹は知らん、と一蹴した。

 

「叶瀬賢生は昔アルディギアの王宮に使えていた宮廷魔導技師だ。あいつの扱う魔術奥義はおそらく霊媒に王族の力が必要だった」

 

ここまではいいな、と訊く劉曹に三人は頷く。

 

「ならメイガスクラフトはどう関係があるのか――古城、会社が最優先に位置づけて求めるものはなんだ?」

 

うーん、と唸る古城。そして少し考えてから、

 

「利益……か?」

 

そう答えた古城に劉曹が頷き肯定した。

 

「そうだ。そもそも叶瀬賢生がやっていることには莫大な金も必要になってくる。そこで出資者になったのがメイガスクラフトだ。奴らは夏音を商品として売り出そうと考えたんだろう。だが、一体だけじゃ商品にはならない。だからラ・フォリアを拉致しようとした。王族のクローンを作るために。これは賢生も知らないだろう。たぶんメイガスクラフトの連中は独自で数体造ってるだろうな」

 

「ちょっと待ってください。それは根本的におかしいです。どうして叶瀬さんなんですか? 先輩の話が本当なら叶瀬賢生が一番最初に狙うのはラ・フォリアなのでは……」

 

雪菜が腑に落ちない様子で訊いてくる。しかし、劉曹は慌てることもなく冷静に返した。

 

「言っただろ? 霊媒には王族の力が必要だったって」

 

「だからおかしいだろ。叶瀬は王族じゃ――」

 

古城は不意に言葉を切る。そしてなにかに気づいて驚いた様子で劉曹を見る。雪菜も古城と同じ考えに至ったらしく言葉を失っていた。

 

「まさか、叶瀬は……」

 

「俺も最初は違うと思ってたよ。でも間違いじゃない、叶瀬夏音はアルディギアの王族だ。そうだろ、ラ・フォリア」

 

ラ・フォリアは劉曹を見つめたまま沈黙した。だが、これ以上隠し通せると思えなかったのかゆっくりと口を開いた。

 

「叶瀬夏音の父親はわたくしの祖父です」

 

「……そふ? お祖父さん?」

 

言葉の意味がよく理解できないまま、古城はオウム返しに訊き返す。劉曹も祖父と言われるとは思わなかったらしく目を見開いている。

 

「十五年前、祖父がアルディギアに住んでいた日本人女性との間に作った娘が、叶瀬夏音です」

 

「てことは夏音はラ・フォリアの叔母ってなるのか、さすがにそれは読めないわ……それより今更になってバレたってのも不思議な話だな、どうしてだ?」

 

「先日、祖父の腹心だった重臣が他界しまして、彼の遺言で叶瀬夏音の存在が発覚しました。祖父が逃亡して祖母は怒り狂っ……いえ、王宮内は今、少々混乱しています。ですが、彼女を放っておくわけにもいきませんし」

 

王女がめずらしく弱気な溜息をつく。

 

「まあ、人によっては怒り狂う人もいるからな」

 

「怒り狂ってません、少し混乱しているだけです!」

 

自分に同情の目を向ける劉曹にラ・フォリアは勢いよく否定する。

 

「それで、絃神市に来る最中にメイガスクラフトの連中に襲われたのか」

 

「はい。祖父の名代として、わたくしが叶瀬夏音を迎えに行く予定でした」

 

劉曹の問いにラ・フォリアは淡々と首肯する。すると古城はなにか思い出したように、

 

「そう言えば煌坂が言ってたな。護衛するはずだったアルディギアの要人にトラブルがあった、って。あれはあんたのことだったのか」

 

「獅子王機関の煌坂紗矢華ですね。あなたの情婦の」

 

ラ・フォリアが、好奇心の(にじ)悪戯(いたずら)っぽい表情で古城を見た。

 

「……情婦?」

 

「彼女は第四真祖の愛人の一人だと聞きました。愛欲にまみれた淫猥(いんわい)な関係だと」

 

ぶはっ、と古城は激しく咳き込んだ。隣にいる雪菜の冷ややかな視線が肌に刺さる。

それがあいつらの目的だからなあ、と劉曹は三人に聞こえないように呟き古城を同情の目で見た。

 

「――そんなわけあるかっ! 誰がそんな無責任な噂をあんたに吹き込んだ!?」

 

「ディミトリエ・ヴァトラーです。戦王領域の貴族の」

 

ラ・フォリアはあっさりと白状する。劉曹は名を訊いた瞬間頭を抱えた。

 

「あああ、あの男は……っ! って、なんであんたが、あんなやつと知り合いなんだ!?」

 

「そりゃ、国交があるからだろう。よく考えればヴァトラーの領地とアルディギアは一部接しているからな。姫柊、ヴァトラーが言ったことなんだからその冷たい視線をやめてやれ」

 

ぐうの音も出ないといった様子の古城。雪菜はなんのことですか、と知らん振りしている。劉曹は疲れたように溜息をついた。

 

「話が大分逸れたな。ラ・フォリアは今回のことについてどれくらい知っている?」

 

「……あなた達は知っているのですか? 賢生の魔術儀式がどのようなものか」

 

劉曹たちに問いかけるラ・フォリアの声には、これまでにない深刻な響きがあった。

 

「色々調べたからな、俺は大体予測を立てている。古城と姫柊は夏音が化け物のような姿に変えられて、同類と殺しあっていたぐらいの認識だ」

 

「そうですか……叶瀬賢生が行っているのは模造天使(エンジェル・フォウ)という魔術儀式です」

 

模造天使(エンジェル・フォウ)?」

 

聞き慣れない言葉に古城は眉を潜める。

 

「人為的に霊的進化を引き起こして、人間を高次の存在へと生まれ変わらせる。要は人を進化させて天使にするってこと」

 

「叶瀬のあの姿が、霊的に進化した存在だってのかよ……」

 

「姿かたちがどうあれ、あれが霊的に進化しているんだ。完全にではないがな」

 

弱々しく首を振って呟く古城に劉曹は厳しい言葉をかける。

 

「魔術なんてなにかの犠牲の上に成り立ってるようなものだ。人・生物・時間……挙げればきりがない。それを否定しなかったから今がある」

 

「……わたしはそうは思いません」

 

「まあ今は前より規制が厳しくなったからな。昔、公的機関以上に裏であれこれやってたところはいなかった」

 

劉曹の話を聞いて複雑そうな顔をして、口を閉ざす雪菜。

もしもそのなかに自分の所属する機関の名があったら、と思うとそこから一歩が踏み出せない。

そんな雪菜の思いを感じ取った劉曹は、はあ、と息を吐く。

 

「姫柊。世界は複雑だ。だからこそ姫柊が信じるものだけを貫いていけ。お前自身が考えて答えを出していくんだ」

 

雪菜の頭に手を乗せクシャクシャと撫でる劉曹。

 

「――っ、子ども扱いしないでください!」

 

大人しかったのも一瞬、雪菜は慌てるように劉曹から離れた。

そして頬を紅く染め、微笑ましく眺めていた古城の方をチラリと見て、

 

「ち、違いますからねっ!!」

 

「なにがだよ!?」

 

「ちょっと気持ちいいとは思いましたけど……ふ、深い意味はありませんから!!」

 

「わかった、わかったから落ち着いてくれ姫柊!」

 

いきなり怒鳴り散らす雪菜に、まったく話の脈絡が分らなかった古城は混乱するだけだった。

 

「おーい、二人とも。イチャつくのは終わりだ」

 

「イチャついてなんていない!!」

「イチャついてなんていません!!」

 

古城と雪菜は同時に叫ぶ。

 

「というか楠先輩が最初に私の頭をんんっ!?」

 

詰め寄って抗議しようとする雪菜の口を塞ぐ。いきなりの行動に雪菜は驚くも劉曹の顔を見てすぐに落ち着いた。

 

「そこまでだ、もう話してる暇はない――来たぞ」

 

そう言う劉曹の視線の先には古城が破壊したのより少し大きめの軍用揚陸艇があった。

 

「あの船……また自動機械人形(オートマタ)か?」

 

うんざりした様に古城がうめく。

 

「いや、人と魔族、それと――かすかに天使の気配がする」

 

覚悟しておけ、という劉曹に古城と雪菜は息を呑む。しかし、

 

「ん? ちょっと待て。あれは――」

 

古城がなにかを見つけたように言う。

島へと向かってくる揚陸艇(ようりくてい)から自分達に向けてなにかを振り回しているのに古城は気づいた。

 

「白旗……ですね」

 

それは停戦を示す白い旗だった。

 

 








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