ストライク・ザ・ブラッド~白き焔~   作:燕尾

3 / 38

どうも燕尾です。
今回もお付き合いの程よろしくお願いします。

バイトつらい……



第三話

 

 

「……………」

 

 

夏休み最終日。ここ最近、ずっと古城の追試の勉強を手伝っていた劉曹は今日こそゴロゴロと堕落(だらく)した生活を送ろうと心に誓っていた……のだが。

 

 

「どうした楠。げんなりした顔して」

 

 

「どうしたもクソもありませんよ。なんだって夏休み最後に学校に来なきゃいけないんですか」

 

 

劉曹は今、彩海学園の教職員棟最上階に来ている。

劉曹の恨み言を意にも介さないで、呼び出した本人は涼しげな表情で紅茶を飲んでいた。

 

 

「おまえのことだから今日はダラダラ過ごすと思ったからだ」

 

 

彩海学園高等部英語教師兼国家攻魔官、南宮那月は言う。

 

 

「そうですよ。ダラダラゴロゴロ過ごそうと思ってましたよ。わかっているならなんで呼ぶんですか」

 

 

ため息をついて愚痴をこぼす劉曹に那月はふふん、と得意げな顔で返す。

 

 

「お前が喜ばないことを私がしないわけがないだろう」

 

 

「なんつー理由だ。そんな格好でそんな子供じみたこと考えてるからちゃん付けで――」

 

 

「ほう、いい度胸だな楠。今度の課題は五十倍にして出してやろう」

 

 

「すいませんでした、勘弁してください」

 

 

地獄の閻魔様も逃げ出すぐらいの殺気を当てられた劉曹はすぐさま土下座した。

自称二十六歳の那月は真夏の気温にもかかわらず何故かゴスロリ服を着ている。しかも体格的に那月が着ていると中学生ぐらいに見えてしまうのは仕方ないことだろう。

そんな考えが読まれたのか那月にもう一度睨まれる。ごほん、と気を取り直して劉曹は尋ねた。

 

 

「で、俺を呼び出した理由はなんですか」

 

 

「最近魔族が襲われる事件が多発していてな。私は夜に見回りをしている。その手伝いだ」

 

 

「俺、一介の高校生なんだけど」

 

 

「ほう、十年前と二年前、時期は違えどあんなことをした子供が今更一介の高校生と言い張るか、なかなか面白いな、楠」

 

 

「う゛っ、那月ちゃ――那月先生? そのことは……」

 

 

劉曹が控えめに那月に言うと、彼女はふっ、鼻で笑い、

 

 

「安心しろ。誰にも言うつもりはない」

 

 

からかわれたことに気づいた劉曹は溜息をつきながら那月の手伝いを引き受けることにした。断ったところで強制連行は目に見えているのだ。

 

 

「で、俺はなにをすれば?」

 

 

「私と一緒に見回りをすればいい。なにか起きたらその対処。それだけだ」

 

 

それなら那月だけで事足りるのでは、と思う劉曹だったが口にはしない。口にしたところで目の前の担任に対しては無意味なのだ。

ここでふと思いついたように劉曹は那月に問いかける。

 

 

「そういえば姫柊の事気づいているのか?」

 

 

「当たり前だ。暁はごまかしたと思っているがな。ちなみにお前が魔族どもに力を使ったのもわかっている」

 

 

「あっはっはー…」

 

 

「ふん、あまり大きな力を使って正体がばれるようなことないようにしろ」

 

 

那月はぶっきらぼうに言っているがちゃんと劉曹のことを心配している。

実際のところ劉曹も那月の協力で自分の正体を隠せている事が大きいのだ。故に劉曹は古城と同様に那月にはあまり頭が上がらない。

 

 

「集合は夜十時、場所は学校校門前だ。いいな」

 

 

「了解」

 

 

必要事項を確認して劉曹は学園をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー夜だってのに暑いな」

 

 

時が経つのは早く、約束の時間になった。

学園を後にした劉曹は帰りの途中古城と雪菜、浅葱に出会った。

古城と雪菜はホームセンターケイユーでの買い物帰りで、何でも雪菜が古城の隣に引っ越してきて足りない生活用品を買いにいっていたという。

浅葱は古城に世界史のレポートを渡そうとしていたのだが、古城のデリカシーがないせいで静かに怒りながら帰っていった。もちろん世界史のレポートは貰えなかったみたいだ。

不思議がっている古城に劉曹と雪菜は呆れるように深々と息を吐くだけだった。

 

 

「どうやら時間通りに来たようだな」

 

 

いきなり背後から声を掛けられる。声の主はもちろん南宮那月だ。

 

 

「そりゃ来るだろ。引き受けたからには。で、どこから行くんだ? 那月ちゃん」

 

 

「私をちゃん付けで呼ぶなと言っているだろう! まぁいい、まずはアイランド・サウスの駅前からだ」

 

 

「わかった」

 

 

そうして二人は並んで歩き出す。

そして駅前近くを見回っていると二人はゲームセンターの入り口前に置かれているクレーンゲームをプレイしている見覚えのある二人組みを見つけた。

 

 

「あれって……」

 

 

灰色のパーカを着てフードをかぶっている男子とギターケースを持った彩海学園中等部の制服を来た女子。あの組み合わせは一つしかない。古城と雪菜である。

ニヤリと悪い顔になった那月は先に二人の元に行く。あーあ、と劉曹は二人に同情しつつ様子を伺う。

 

 

「そこの二人。彩海学園の生徒だな。こんな時間になにをしている」

 

 

声を掛けられて二人は固まる。古城はガラスに映る彼女が見えたのか息を呑んでいた。

 

 

「そこの男。どっかで見たような後姿だがフードを脱いでこっちを向いてもらおうか」

 

 

どこか楽しそうな那月。二人をじわじわと追い詰めようとしているみたいだった。

さすがにこれ以上はかわいそうだと思った劉曹は助け舟を出すように優しく言う。

 

 

「観念してこっち向いたら? これ以上那月ちゃんにいじめられたくないでしょ」

 

 

「「なっ――」」

 

 

古城と雪菜はいるとは思わなかった予想外の人物に驚きながらもまだ劉曹たちのほうを向かない。

 

 

「どうしたんだ? 意地でも振り向かないというのなら、私にも考えがあるぞ――」

 

 

那月がそう言った瞬間――ドンッと人工島が大きく揺れた。一瞬遅れて爆発音が響く

 

 

「なんだ!?」

 

 

那月が異様な気配に反応して振り返った。那月の注意が完全に()れたのを見て古城は雪菜の手を引いて駆け出した。

 

 

「あ、待て、お前ら!」

 

 

那月は咄嗟(とっさ)に結界を張り、後を追うがそこには破られた気配だけがあり、二人の姿は見えなかった。

 

 

「覚えていろ、暁古城!」

 

 

「なに悪役の捨て台詞を言ってんだよ。で、どうする」

 

 

呆れたように言う劉曹にあからさまに不機嫌そうに那月は返した。

 

 

「私は好き勝手には動けん。そのためのお前だ」

 

 

了解、といって劉曹はその場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

探索(サーチング)

 

 

那月と別れた後、人気のないところで劉曹は意識を集中させていた。周りの喧騒を消し、目的のものだけに感覚を機敏にさせる。

 

 

「さっきの爆発音は絃神島東地区(アイランド・イースト)の倉庫街。関係ない奴は避難済みだな。爆発の中心地にいるのは三人。モノレールで接近している者が一人。そのはるか後方から接近する者が一人か」

 

 

モノレールにいるのは雪菜でその後ろにいるのは古城だ。

 

 

「さて、どうしたものか」

 

 

めんどくさいが自分が行ってすぐに場を収めるか、それとも雪菜と古城にやらせるか。

 

 

「もう、事態は動き出している……か。とりあえず"あいつ"の予定どうりってのは(しゃく)だが二人に任せてみるか。姫柊の実力も確認しないといけないしな」

 

 

考えがまとまった劉曹は現場へと急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、雪菜はロタリンギアの殲教師(せんきょうし)、ルードルフ・オイスタッハと対峙していた。

 

 

「なぜ西欧教会の祓魔師(ふつまし)が、吸血狩りをしているんですか!?」

 

 

「我に答える義務はなし!」

 

 

振り下ろされる戦斧(せんぷ)が雪菜を襲う。

 

 

雪霞狼(せっかろう)!!」

 

 

雪菜は紙一重でそれをすり抜け、攻撃を終えた直後のオイスタッハの右腕へと槍が伸びる。オイスタッハは回避不能のその攻撃を鎧に覆われた左腕で受け止めた。だが、そのせいで彼の腕を守っていた鎧が粉々に砕ける。

 

 

「我が聖別装甲の防護結界を一撃で破りますか! さすがは七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツアー)――実に興味深い術式です。素晴らしい!」

 

 

オイスタッハの禍々しい気配を感じ、この男はここで止めなければならないと雪菜は決心する。

 

 

「獅子の神子(みこ)たる高神(たかがみ)剣巫(けんなぎ)が願い奉る。破魔破魔(はま)曙光(しょこう)雪霞(せっか)神狼(しんろう)、鋼の神威(しんい)をもちて我に悪神百鬼(あくじんひゃっき)を討たせ給え!」

 

 

祝詞(のりと)を唱え七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツアー)で呪力を増幅させた雪菜は一気にたたみかける。

 

 

「ぬお……!」

 

 

嵐のような連撃にジリジリと後退していくオイスタッハ。一瞬の隙を突いて雪菜から大きく距離をとることができたが、防具に続き、オイスタッハの戦斧(せんぷ)は雪菜の攻撃で粉々に砕けた。

 

 

「これが獅子王機関の剣巫(けんなぎ)ですか、見事です。ですが獅子王機関の秘呪(ひじゅ)、確かに見させてもらいました――やりなさい、アスタルテ!」

 

 

命令受諾(アクセプト)執行せよ(エクスキュート)、"薔薇の指先(ロドダクテュロス)"」

 

 

オイスタッハの背後から飛び出してきたのは藍色の髪の少女。少女のコートを破って出てきた虹色に輝く巨大な腕が雪菜を襲う。雪菜は雪霞狼(せっかろう)で迎撃し彼女の眷獣を切り裂いていく。だが……

 

 

「あああああああああ――っ!」

 

 

彼女の背中から現れたもう一本の腕が雪菜の頭上から襲いかかる。

雪霞狼(せっかろう)は眷獣の右腕に刺さったままで雪菜はよける(すべ)がない。

雪菜は一瞬だけ、見知った少年の姿が脳裏をよぎる。ほんの数日前に出会ったばかりのいつも気怠(けだる)そうな顔をした少年の面影――

 

 

(私が死んだら先輩は悲しむのだろうか…?)

 

 

そう思った瞬間、

 

 

「姫柊ィ――――!」

 

 

その少年は雪菜の名を叫びながら思い切り眷獣を殴り飛ばした。

 

 

「先……輩…?」

 

 

「なんだかよくわからねーけど、助けに来たぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、こいつらは一体なんなんだ?」

 

 

「わかりません。あの男はロタリンギアの殲教師(せんきょうし)だそうですが……」

 

 

雪菜の言葉に古城は混乱し、問いかける。

 

 

「何でヨーロッパからわざわざやってきて暴れてるんだ、あいつは?」

 

 

「先ほどアスタルテを殴り飛ばしたときの魔力……ただの吸血鬼ではありませんね……もしや第四真祖のうわさは真実ですか?」

 

 

破壊された戦斧を投げ捨てて、オイスタッハが言う。

 

 

その殲教師(せんきょうし)を庇うように、藍色の髪の少女が前に出て静かに言葉を紡ぐ。

 

 

再起動(リスタート)完了(レディ)命令を続行せよ(リエクスキュート)、"薔薇の指先(ロドダクテュロス)"」

 

 

「待ちなさい、アスタルテ。今はまだ真祖と闘う時期ではありません!」

 

 

オイスタッハが叫び、少女止めようとするがすでに命令を受けた眷獣は止まらない。

先ほどの巨大な腕が古城を狙って降下する。すると…

 

 

「悪いがそこまでだ」

 

 

空からどことなく声がして、その声とともに眷獣は跡形もなく消え去った。声の主は地上に着地して二人のほうへ向く。

 

 

「大丈夫か? 古城、姫柊」

 

 

「劉曹!」

 

 

「楠先輩!?」

 

 

楠劉曹はよっ、と軽い挨拶をする。いきなりの友人の登場に古城は戸惑う。

 

 

「なんでお前がこんなところに――」

 

 

「それはこっちの台詞だアホ古城。なに面倒ごとに首つっこんでんだ。姫柊も後で覚悟して置けよ。かんかんだぞ、我らが担任は。明日なにされるかわからんほどに」

 

 

震える二人にため息をつきながら劉曹は殲教師(せんきょうし)と少女の方を振り向く。

 

 

「次から次へと……貴方はいったい――」

 

 

と、苛立たしげに殲教師(せんきょうし)は呟くも劉曹の姿を見て言葉を切り、目を見開いた。

 

 

「混じりけのない白い髪に真紅の目。そして眷獣を消し去ったときのその異様な力……貴方はあの"白焔の神魔"ですか!?」

 

 

「"白焔の神魔"!?」

 

 

その言葉を聞いた雪菜は驚きを隠せないでいる。

 

 

「知っているのか?」

 

 

「はい」

 

 

劉曹の背中を見つめ雪菜は語り口調のように口を開く。

 

 

「――二年前、たった一人の中学生とおぼしき少年が戦王領域、滅びの王朝、混沌界域…三つの夜の帝国夜の帝国(ドミニオン)を巻き込んだ事件を起こしたんです」

 

 

雪菜の話にはっ、と古城も思い出す。

 

 

「その事件知ってる。確かそれぞれの夜の帝国(ドミニオン)で魔族を無差別に襲われた事件だったな。短期間なのにそれぞれの場所での被害件数が多すぎてニュースでも大々的に取り上げていた」

 

 

「ええ。最初は各夜の帝国(ドミニオン)が対処しようとしていたんですが、被害がなくなることはありませんでした。そこで今まで手を取り合わなかった第一、第二、第三真祖はこのとき初めて手を組んで、その少年を迎え撃ったんです」

 

 

雪菜は劉曹を見つつ説明を続ける。

 

 

「三日三晩、終わることなく三人の真祖と互角以上に戦っていたんですが、ある時少年は途中で戦うのをやめてどこかに消えていったんです」

 

 

「真祖三人を相手に互角以上って…」

 

 

「戦う少年の神々(こうごう)しくも時に悪魔のような姿から"白焔の神魔"といわれ世界中で消えたその少年を追っていたんですけど誰にも見つかるはことなかったんです。まさか楠先輩だったなんて…」

 

 

雪菜の説明を聞いていた劉曹はめんどくさいような顔をして、ため息をついた。

 

 

「その厨二っぽい二つ名はどうにかならないのか? まぁいい。おいそこの殲教師(せんきょうし)、どうする?」

 

 

「今の私たちでは"白焔の神魔"には勝てません、逃げますよ。アスタルテ」

 

 

命令受諾(アクセプト)

 

 

オイスタッハが呼びかけると少女は巨大な手を出現させ、地面を叩いて土煙を起こした。煙が晴れるとそこに二人の姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オイスタッハたちが立ち去ったあと劉曹たちは特区警備隊(アイランド・ガード)に見つからない様にその場を離れ、古城と雪菜のマンションへと歩く。

 

 

「古城、前からそうだったがなんでお前はこう面倒ごとに首つっこむんだ?」

 

 

「不可抗力なんだからしょうがないだろ! てか、おまえもおまえで首つっこんでるだろ」

 

 

「俺は那月ちゃんに頼まれただけだ。断ると後が怖いからだ」

 

 

「あの!!」

 

 

ギャーギャーと言い合いしている劉曹と古城を雪菜が一喝する。

 

 

「ん? ああ、古城なんかより俺的に面倒ごとはこっちか」

 

 

雪菜の存在を忘れていた劉曹は、どうしたもんかと考える。

彼女が所属している獅子王機関の一部には顔を知られているのでいまさら報告されたとて大した問題はないのだが、下手なことになれば、よくわかってない人間が劉曹にも監視をと寄越しかねない。

 

 

「このことは出来るだけ内緒にしてほしいんだがな……」

 

 

そんな劉曹の呟きが聞こえたのか雪菜は、

 

 

「わかりました。このことは内密にしておきます」

 

 

と、以外にもあっさりと了承してくれたのだ。

 

 

「いいのか?」

 

 

「はい、今回楠先輩の正体を知られたのは元をただせばわたしのせいですし、先輩が内緒にしてほしいというのならそうします」

 

 

それでいいですか、と訊いてくる雪菜にぜひお願いします、と即答で劉曹は答えた。

一番厄介な事態を回避できたようで劉曹は安堵の息を洩らす。

 

 

「とりあえず、今日のところは家に戻るぞ。古城、姫柊これからはこの時間帯に出歩くのはやめろよ――那月ちゃんにいじめられたくなければ」

 

 

最後のひとことで思い出したのか古城と雪菜は顔を青ざめさせながら頷くのだった。

 

 





はい、次の更新はいつになるのやら……

気長に待ってくださると嬉しい所存でーありますm(_ _)m
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。