ストライク・ザ・ブラッド~白き焔~   作:燕尾

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こちらを投稿するのは七ヶ月ぶりですね。
これから、亀ではありますが、ちょくちょく更新していきます。





蒼き魔女の迷宮編
第三十話


 

 

 

十月最後の一週間、絃神島全体が波朧院フェスタの準備で騒然としていた。

彩海学園も例外でなく、祭りの準備にむけて色々な話が進められている……のだが、

 

「なんなんだ、いったい……」

 

なんだかんだで日曜日の朝に姿が男に戻り、ようやく堂々と学園に行くことができた劉曹は周りに聞かれない程度で疲れたように呟いた。

 

「なあ楠、今年はうちのところでバイトしないか? 今ならバイト代も弾むぜ」

 

「いやまて、どうせ働くならぜひ俺の所でやろうぜ」

 

いや俺と、まて俺だ、と次々と勧誘してくるクラスメイトの男子たちに劉曹はうんざりした様子で聞き流していた。

ふと視線を移すと古城のところにも同じように男子が寄ってたかって古城を誘っていた。

 

「(姫柊狙いの阿呆(あほ)どもか……古城も大変だな)」

 

「あー……いや、誘ってもらえるのはありがたいけど、やめとくわ」

 

古城がきっぱりと断る。彼の周りにいた者たちは少し驚き、なんとか自分のところに来てもらおうとさらに畳み掛けていく。だが、古城の返答は変わらなかった。

 

「今年は一緒に回る約束をしているやつがいるから、ちょっとそういうのは無理なんだ、悪ィな」

 

一緒に回るやつがいる、そんな言葉を聞いたクラスメイトたちは一気にドス黒いオーラを出した。

彼らは古城といつも一緒にいる雪菜と回るのだろうと思っていたが、古城からの返答は思いがけないものだった。

 

「いや、姫柊は関係ないぞ。別のやつだ」

 

そういう古城に劉曹も若干驚きを感じつつ話を聞いていると周りのクラスメイトは浅葱のほうへと視線を移して円を作り、

 

「転校生……じゃない?」

 

「じゃあ、もしかして藍羽か?」

 

「藍羽だな……まあ、この際、藍羽で妥協するか」

 

「うむ、やむを得ん。藍羽もありといえばありだな。というわけでやはり暁にはうちのイベントに参加してもらわなければ」

 

「あいつらひどい言いようだな……」

 

浅葱に聞こえないように言っている彼らだが浅葱より遠くにいる劉曹にははっきりと聞こえた。浅葱も何かを感じ取ったようでこめかみに青筋を立てている。

すると古城の周りにいた人達は劉曹の方に殺到した。

 

「それなら頼む楠。俺のところに来てくれ! 妹の香織さんと一緒に!」

 

「俺も頼むよ、香織さんと一緒に来てくれ!!」

 

「おい、おまえら暁のほうじゃなかったのかよ!?」

 

「ずるいぞ!」

 

香織という名前が出た瞬間、劉曹は苦い顔をする。

香織とは劉曹が女性になったとき、クラスメイトにばれないように作った仮名なのだ。当然、香織は劉曹であり、今となってはもうどこにもいない。

劉曹は興奮する彼らを見渡して、

 

「あのな、香織は帰ったんだよ。そんなすぐに絃神島(ここ)に来れるわけがないだろう」

 

呆れるように言う劉曹に周りは一歩引き下がるが、一人の男子が逆に一歩前に出てきた。

 

「それなら前に香織さんと歩いていた女の子はどうなんだ」

 

「は? なんだ?」

 

男子はとぼけても無駄だと言って続ける。

 

「俺は見たんだ。数日前に仲良さそうに歩いている香織さんともう一人の美人が歩いているところを……しかも腕を組んで!!」

 

なにィ! とクラスがざわめくなか、劉曹は冷静に返す。

 

「なんで俺が関係するんだよ。香織の友達だろ? 俺は知らないぞ」

 

「だからとぼけるなといっただろう。この話にはまだ続きがある」

 

「(なんでこいつこんな出しゃばってくるんだ……名前のないモ……ゲフンゲフン)」

 

「俺はさらに見た……昨日の夜、仲睦(なかむつ)まじそうにおまえとその美人さんが一緒に歩いているところを……これもなぜか腕を組んで!」

 

『な、なんだってええええええええ――――!?』

 

クラス中に叫び声が(とどろ)き、男子の殺気が一気に劉曹に突き刺さる。だが、劉曹は冷ややかに睨み返し、

 

「あいつが勝手にやってきたことだ。それで、それがなんだっていうんだ」

 

「開き直りやがったぞこいつ!?」

 

「なんてやつだ!!」

 

「なんでこんなやつにあんな可愛い子が……!」

 

「ちくしょう……!」

 

周りが悲壮に満ちているなか、これまた一人の男子が立ち上がった。

 

 

 

 

 

「みんな、こんなやつを許せるか……」

 

「いや、許せない」 

 

「やつには神罰を」

 

「なら立ち上がれ! 今こそ我らが正義を掲げるときだ!!」

 

『おおおおおお――――!!』

 

クラスの大半の男子が拳を上げ団結を始める。いつの間にかリーダーになっていた男子生徒は声を上げる。

 

「我は問う! やつは何者だ!」

 

『この世の法則を破り、世界に害を為すもの!!』

 

「我は問う! 有罪か無罪か(ギルティオアノットギルティ)!」

 

有罪(ギルティ)!!!!』

 

「ならば、(おの)が灯火を消してでも、やつを打ち滅ぼすのだ! かかれィ!」

 

『うおおおおおおおおお――――!!!!』

 

一斉にかかってくるクラスメイトになんでこうなるんだ、と諦めたように劉曹は息を吐いて、ひとこと、

 

「――後悔するなよ」

 

そう呟いた瞬間、学園中に断末魔の叫びが響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、教室には(クラスメイト)の山が出来ていた。

 

「おいおい、いくらなんでも……」

 

「やりすぎじゃないのか?」

 

その山を見て基樹と古城は顔を引きつらせていった。

しかし、浅葱や彼女の友人である月島倫、そのほかクラスの女子たちは怯えることなく、それどころか男子の自業自得でしょ、といわんばかりに(クラスメイトたち)を見ていた。

すると屍の山(クラスメイトたち)の上に座っていた劉曹は教室の出入り口に立っていた一人の少女に気がついた。

 

「夏音!」

 

劉曹は少女の名を呼び、山から下りて、彼女の元に駆け寄る。

 

「劉さん。こんにちは」

 

「ああ、学校にこれるようになったんだな」

 

「劉さんのおかげで早く退院することができました。ありがとうございます」

 

ぺこりと頭を下げる夏音にいいって、と劉曹は返す。

 

「どうしたんだ高等部まで来て」

 

「あ、劉さんとお兄さんに用事があってきました」

 

「なら、古城呼ばないとな。おい、古城。こっちに来い」

 

今まで劉曹と夏音が話しているのを見ていた古城は自分が呼ばれたことに驚きながらも歩いてきた。

 

「久しぶりだな叶瀬、身体のほうはもう大丈夫なのか?」

 

「はい、もう問題ないといわれました」

 

同じやり取りをする古城。劉曹はそれで、と本題へと移る。

 

「俺たちに用事ってどうしたんだ?」

 

「実は、あの……」

 

夏音は少し言い淀み、古城と劉曹は彼女の言葉を待つ。いつの間にか他のクラスメイトたちも静かになり、夏音に集中している。やがて夏音は勢いよく緊張気味に古城に尋ねた。

 

「今日の夜、泊まりにいってもいいですか? お兄さんのお宅に」

 

瞬間、教室が凍りついた。今まで倒れていた死体(クラスメイト)たちも驚愕の眼差しで夏音を見ていた。

奥のほうで「なっ!?」と唯一声を上げて驚いている浅葱。

 

「それで、その……劉さんも一緒に来てほしい、でした」

 

劉曹の方をおずおず見て顔を赤らめて言う夏音に、教室内は絶対零度と化した。

 

「「ああ、別に構わないけど」」

 

そんななか、平然と答える古城と劉曹。すると後ろのほうからちょっとまったぁ、と大きな声が聞こえた。そこには浅葱の手をつかんで高く上げている基樹。

 

「あたしたちも一緒にお邪魔していいかな、暁くん」

 

そして、にっこりと笑って言う倫に古城はきょとんとしている。

 

「え?」

 

浅葱は高らかに挙げられている自分の手と倫の顔、古城の顔を見渡して、

 

「ええええぇ――っ!?」

 

どうしてこうなったのかわけがわからず叫ぶ浅葱だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「曹くん、そこにあるお皿取って」

 

「はい。あ、凪沙ちゃんそっちにある胡椒(こしょう)とってくれないか」

 

はい、と手を伸ばして渡してくる凪沙から胡椒を受け取り、フライパンのなかに振りかざす。

 

「相変わらず手際良いね。わ~おいしそう!」

 

「まあ、俺が作ってるのは手軽なものが多いけどね。時間があれば凝ったものも作れるけど」

 

そういってフライパンから皿に移したのはトマトと卵の炒め物。半熟卵にトマトを入れ、塩と胡椒で味付けした実にシンプルなものだが、トマトの酸味が卵の甘みを引き出し、あっさりと食べられるので口直しにはなかなかの一品である。

そのほか色々と作った劉曹はんーっ、と軽く背伸びをする。

 

「でも意外だな~、楠くんが料理できるなんて」

 

すると、リビングに座っていた倫からそんな声が聞こえてきた。

 

「まあ、できて損はないからな。一人暮らしだから余計に必要だったんだよ」

 

「俺も食ったことあるが、劉曹の作る飯にハズレはないぞ、誰かと違って」

 

そういいながら目を向けてくる基樹に浅葱は不機嫌そうに返した。

 

「なによ、わたしだってやれば出来るんだから」

 

「そういうのはやってからいうことだな、浅葱」

 

料理をおきながら言う劉曹にぐっと言葉に詰まる浅葱。そんな彼女を回りは苦笑いしながら見ていた。

 

「こんなものかな、みんな座って座って!」

 

凪沙の一声でみんなが席に着く。そしていつの間にか持っていたクラッカーの紐を引っ張った。

 

「それじゃあ――夏音(カノ)ちゃん、退院おめでとう!」

 

爆ぜる音と共に凪沙の声が響く。夏音はいきなりなった音に縮こまりながらも柔和に微笑み、

 

「あ、ありがとうございます、皆さん……私なんかのために」

 

「なに言ってんの。今日は夏音ちゃんが主役なんだから。ほら食べて食べて。このサラダとかコロッケ、曹くんと作ったんだ。ソースやドレッシングも自家製だよ!」

 

「劉さんと……?」

 

夏音はちらりと劉曹の方を見る。劉曹は夏音に気づいたのか、優しい笑みを浮べる。

 

「うまく出来てると思う、遠慮せずに食べてくれ」

 

「はい……いただきます」

 

夏音は箸を伸ばし、料理を口へと運ぶ。その直後、頬に手を当て幸せそうに微笑んだ。

なにも言わなかった夏音だったが表情と仕草でわかった劉曹や凪沙は嬉しそうに笑う。

 

「おー、さすが凪沙ちゃんと劉曹だ。いつもながら美味い」

 

「ほんとね。古城の妹にしとくのがもったいないわ」

 

「おまえらな……」

 

「まあ、いいじゃないか古城。こういうときぐらい」

 

堂々と居座って料理を口に運び、勝手なこと言っている二人を呆れたように咎める古城を劉曹は(なだ)める。みんながおいしそうに食べているのを見ていた劉曹はいつの間にか一人、この場からいなくなっていることに気がついた。

 

「へえ、ここが暁くんの部屋かぁ。意外に普通だね。うーん。興味深いな」

 

「他人の部屋に入って早々、ベッドの下を物色するのもどうかと思うぞ、築島」

 

床に(かが)みこんで弄っている倫に劉曹は呆れたように言う。古城もなにやってんだよ、と上擦(うわず)った声で倫を止めていた。それでも倫は止まらず、部屋を探索する。

 

「あ、アルバム発見。見てもいい?」

 

「いいけど、そこにあるのは小学生のときのやつだから、別に面白くないと思うぞ」

 

「いやいや、小学生の頃だからこそ興味がそそられるのだよ」

 

そういって倫はアルバムを開く。古城の警告とは裏腹に興味を持った雪菜や浅葱も倫の周りに集まっていく。

 

「小さい頃の暁くんだ。今とあんまり変わらないね」

 

「小学生の時代の先輩……かわい……い?」

 

「なんで疑問系なんだよ!? そこは素直に褒めるところだろ!」

 

憤然と文句をたれる古城。そのやり取りを聞いていた夏音がクスクスと笑う。

 

「これって、古城が絃神市に引っ越してくる直前くらいよね」

 

「大体そんな感じだな。このあたりの写真は小六のときに撮ったやつだからな」

 

「こいつ、誰だ? よく一緒に写っているみたいだけど」

 

基樹がアルバムを持ち上げて訊く。劉曹も覗き込んだ。そこには古城と同じバスケ部のユニフォームを着たチームメイトの姿が映っていた。なかなか凛々しい顔立ちの小学生だ。

しかし、劉曹はその顔を見た瞬間、目を見開いた。まるでありえないようなものを見ているように。

そんな劉曹の反応は知らず、古城は端的に答えた。

 

「ああ、ユウマか」

 

「ユウマ?」

 

「ガキの頃から一緒につるんでた遊び仲間だよ。幼なじみっていうかバスケ友達っていうか、とにかく、腐れ縁の親友みたいなもんだな」

 

へえ、と倫が感心したように目を細める。

 

「男前だねー。暁くんの友達にしとくのがもったいないくらい」

 

倫の言葉に浅葱も頷く。そんな二人に古城は傷ついたように、

 

「おまえらさっきから好き勝手なこといいやがって、べつにいいだろ、俺の友達の顔がよくても!」

 

がーっ、と喚く古城に劉曹は教室での出来事を思い出し、質問する。

 

「今年の波朧院フェスタを一緒に回るってやつはこいつなのか」

 

「ああ、親戚のツテで、フェスタの招待チケットをもらったらしい。まあ、フェスタだけじゃなくて島の案内も頼まれたけどな」

 

二人の会話を聞いていた倫は含みのある表情で、浅葱の肩に手を置いた。

 

「お友達の案内じゃ仕方ないわね。ね、浅葱」

 

「いいわよ。どうせそんなことだと思ってたから」

 

そういって浅葱はテーブルの前に戻って隣にいる雪菜に「ねえ」と問いかけた。

 

「あなたは知ってたの? 古城の友達が来るってこと……」

 

「いえ」

 

雪菜が残念そうに首を振った。

 

「今、初めてお祭りの間の予定を聞きました」

 

ほんのわずか視線を交わして、二人は同時に溜息をついた。

 

「そういうやつよね」

 

「……ですね」

 

そろって慰める二人に劉曹は心の中で頑張れ、と応援しておくのだった。

 

 





いかがでしたでしょうか。
幕間の話は残しておきますが忘れてください。

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