ストライク・ザ・ブラッド~白き焔~   作:燕尾

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どうも、お久しぶりです。燕尾です。

一ヶ月以上更新が空いて申し訳ないです。






第三十七話

 

 

 

あれから攻防を繰り返した劉曹は面倒臭そうにため息をついた。そんな彼に何度目かわからない触手の襲撃が来る。それを劉曹は先ほどと同じような要領で、手を振り払った。触手は劉曹に届く前に細切れになって消滅する。

 

「満足か?」

 

つまらなさそうに言う劉曹に、魔女姉妹は憤怒の形相で劉曹を睨む。だが、劉曹はそんなことを気にも留めず愛華に問う。

 

「愛華。こいつらの"守護者"の正体はなんだ?」

 

「大元を言うと植物。この触手はアッシュダウン近郊の森の木々が怪物化したものですね」

 

「正解。そこまでわかってるなら俺が隙を作るから仕上げは任せた」

 

「わかりました」

 

愛華の透き通ってはっきりとした返事を聞いた劉曹は、空高く跳躍する。

その後を追うように触手が一気に襲い掛かる。しかし、劉曹に当たることはなかった。どこにくるのかわかっているかのように避けていく。

 

「なぜ当たらないの!?」

 

触手が劉曹に触れるどころか(かす)りもしないことに焦燥に狩られるオクタヴィア。

そんな緋色の魔女を馬鹿にするように劉曹は口を開いた。

 

「それがおまえの限界だ。オクタヴィア・メイヤー」

 

「――っ! 愚民ごときが、どれだけ私たちをコケにすれば……!」

 

怒りに満ちた声で緋色の魔女は"守護者"に魔力を注ぎ込んで触手を増強させる。

そして、触手は今までとは比べ物にならないほどのスピードで劉曹に殺到する。が、

 

「お止めなさい、オクタヴィア!」

 

姉であるマヤがオクタヴィアを止めようとするももう遅かった。劉曹の口元がニヤリと上がる。まるで狙い通りというような笑みだった。

劉曹を貫かんとする触手たちは束のように一つに纏まっており、オクタヴィアが怒りで我を忘れていることもあって、動きが一直線と単調になっているのだ。スピードが上がっているとはいえ、避けることは劉曹にとってさほど困難なものではない。

最小限の動きでかわした劉曹は伸びきった触手の根元を一振りで()()った。

 

「契約を結びし精霊よ、邪を払え。混沌としたこの世界を在るべき姿に(かえ)し、光をもたらせ!」

 

澄んだ声が力強く響く。その直後、目も開けられないような光が辺りを照らした。光源である愛華が静かに瞳を開ける。

 

「"精霊の加護"――炎精霊イフリート」

 

着ていた服が燃え、深紅の炎が纏わりつくように愛華の身体を包む。そして深紅の炎によって新たな服が精製される。

裾や袖が広がった赤色の和服。艶やかな漆黒の黒髪は真紅の髪に変わり、瞳も赤色に変化した。

 

「焼き払え」

 

愛華は自在に混じりけのない(くれない)の炎を操り、再生途中の触手を燃やす。燃え盛る触手を見て二人の魔女は驚愕の表情でただ立ち尽くしていた。

 

「精霊の力を操っているというのですか!?」

 

「ありえない……わたしたちのアッシュダウンの守護者が……」

 

守護者である触手が燃やし尽くされて、敗北を悟った魔女姉妹は魔導書を後生大事そうに抱え込み階段のほうに走り、逃走を図ろうとする。だが、そんな彼女たちの逃げ道を防ぐように劉曹が立ちはだかった。

 

「おまえたちに選択肢をやろう」

 

戦う手段を失い、後ずさる魔女二人。だが後ろには精霊の力を使う愛華が立っていた。楠兄妹に(はさ)まれ、守護者を失っているメイヤー姉妹にはもはや為すすべはなく、劉曹の死刑宣告にも等しい言葉を聞かされる。

 

「抵抗していまここで命を散らすか、牢獄で一生を終えるか――さあ、どうする?」

 

兄さんそれあまり変わりないですよ、と愛華が苦笑いしながら言うも、魔女二人は劉曹から放たれた言葉に対する恐怖でその場にへたり込んだ。

戦意喪失を確認した劉曹はふう、と一息つけて無線機を取り出す。

 

「"アッシュダウンの魔女"マヤ・メイヤー、オクタヴィア・メイヤーを無力化。拘束、連行してくれ」

 

劉曹からの連絡を受け、階下で待機していた特区警備隊の隊員たちが入ってきて、震えながら抱き合う魔女姉妹を捕らえる。

 

「お疲れ様でした。劉曹」

 

眼前の事態が収束したことを確認したラ・フォリアは劉曹に()()(ねぎら)うように微笑み言った。が、

 

「――それで、その方はどちら様ですか?」

 

労いの微笑みから一変、ドス黒いオーラを(まと)った笑みへと変わり、ラ・フォリアは愛華のほうを向いて劉曹に訊いた。

言い表せれないラ・フォリアの謎の威圧感に劉曹は言葉を出すことが出来なかった。すると、愛華が一歩前に出て、

 

「挨拶が遅れて申し訳ありません、ラ・フォリア王女。わたしは"義妹(いもうと)"の愛華と申します。以後お見知りおきを」

 

"義妹(いもうと)"という部分を強調するも礼儀正しく挨拶する愛華。笑顔で手を差し出す愛華だが、ラ・フォリア同様ドス黒いオーラを(まと)い、謎の威圧感があった。

 

「そうでしたか。これからよろしくお願いしますね、愛華。わたくしのことはラ・フォリアで構いません」

 

笑顔のまま、差し出された手をしっかりとラ・フォリア。

 

「わかりました。こちらこそよろしくお願いします、ラ・フォリア」

 

そういいながら握り返す愛華。彼女も顔を崩すことなく笑顔だった。二人はふふふ、と互いの顔を見て笑いあっていた。

 

「……ねえ、楠劉曹」

 

いつの間にか劉曹の隣に立っていた紗矢華が問いかけてくる。

 

「……なんだ」

 

「あの二人は初対面なのよね?」

 

「そうだけど……」

 

「それにしては、なんか、こう……もの凄いものを二人から感じるのだけれど。例えて言うならとある道端で出会った犬と猿のような、それか決して混じることのない、龍か虎?」

 

「俺の義妹と一国の第一王女を動物に例えるのはどうかと思うが煌坂、おまえの言いたいことはわかっている」

 

劉曹と紗矢華はギリギリと音を立てている二人の手を見て溜息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユウマ!」

 

出現している監獄結界の近くに転移した古城は錆びたコンテナの上に立ち、監獄結界へと架かる蜃気楼のような橋を見つめている少女の名を呼ぶ。

 

「もうボクに追いついたのか。あそこからは距離があるはずだけど」

 

優麻は不思議そうに問いかける。

今の古城は、なんの力ももたない普通の人間だ。空間を跳び越えて移動した優麻に追いつくことは出来ない。

しかしそれは彼一人の力の話である。優麻の顔は次第に納得したようなものになる。

 

「いい友達に恵まれたんだな、古城」

 

「――他人事(ひとごと)みたいに言ってんじゃねえよ。おまえだってその中の一人だろうが」

 

古城が苦々しく(くちびる)(ゆが)めて答えてくる。優麻は、面喰(めんくら)ったように目を(またた)いて彼を見返した。

 

(うれ)しいな。まだ僕のことを友達だと思ってくれているのかい?」

 

「言っとくけどこっちは魔女なんか見慣れてるし、その程度じゃなんとも思わねーよ。こいつが島に来たあたりから、おかしな知り合いばかり増えてるからな」

 

古城はそう言って、隣にいる雪菜を指さした。

銀色の槍を構えていた少女が、心外だ、と言わんばかりに目を大きくして古城を(にら)む。世界最強の吸血鬼から、おかしな知り合い呼ばわりされたら、文句を言いたくなるのも無理はない。しかし彼女は、あえて古城の言葉を否定しようとはしなかった。

 

「どうしておまえが刑務所破りの手伝いなんかやってるんだ」

 

古城が真剣な表情で優麻に訊く。優麻の返答は簡潔だった。

 

「ボクはそのために作られたからだよ」

 

「……作られた?」

 

「ボクの母親は仙都木阿夜(とこよぎあや)――LCOという犯罪組織の元締めなんだ。十年前、お母様は魔女を(さげす)む人間に復讐するため"闇誓書"をつかって世界を書き換えようとしたんだ。だけどお母様は失敗して監獄結界に投獄された。とある一人の"人間"によってね。古城、君もよく知っている"人間"だよ」

 

人間、という言葉を強調する優麻。

 

「その人間って、まさか……」

 

一人の人間と訊いた古城はすぐその人物が誰なのかが思いついた。LCOという巨大犯罪組織の、ましてやそのトップを破り牢獄へと叩き込めるの"人間"は彼ぐらいしかいないだろう。

 

「名前は楠劉曹。後に"白焔の神魔"と呼ばれる少年だよ。彼は当時七歳にしてお母様を監獄結界へ収監させたんだ。年端もいかない子供に"闇誓書事件"を片付けられたなんていえなかった政府は仙都木阿夜を止めたのは国家攻魔官の南宮那月だと報道したらしいけどね。彼女は行動を起こす前、自分が失敗して収監されたときのことを考えて脱獄の道具を準備した。それがボク――仙都木優麻さ」

 

優麻はそう言った後、自嘲(じちょう)したように笑って、古城に操られている自分自身の身体を指した。

 

「ボクは急速成長させられた試験管ベビーだ。十年前に、六歳の姿で産まれた。古城、君と出会うほんの少し前のことだよ。ボクが魔女になることも、絃神島の監獄結界を破ることも、最初からお母様が設計(プログラム)したことさ」

 

「……俺と知り合ったのも、おまえの母さんの計画通りだったてのか?」

 

頭の整理が追いつかない古城だったが、これだけは訊かなければならないと優麻に返す。すると彼女は、迷いなく首を振った。

 

「違うよ、古城。それだけはボクが選んだことだ。言っただろ、ぼくにはキミしかいないんだ。ボク自身の持ち物と呼べるようなものは、キミに出会えたこと以外なにもない」

 

「そんなことはないだろっ! おまえには俺だけじゃない、凪沙や姫柊、劉曹、浅葱や愛華さんや叶瀬に矢瀬……ここで出会ったやつらだっているだろう。これからだって――」

 

優麻は一瞬驚いたような顔すると最後まで古城の言葉を聞かずに彼に背を向ける。

 

「劉曹とまったく同じことを言うとは思わなかったよ」

 

「えっ?」

 

「本当はね、監獄結界の封印を(やぶ)るために、絃神島(ここ)の住民を十万人ばかり()(にえ)に使う予定だった。だけど古城、キミが第四真祖の力を手に入れたことでそれをする必要がなくなったんだ……ありがとう」

 

優麻がそう言い終えた直後、彼女の背後に浮かんでいた顔のない青騎士が両手を掲げる。

"守護者"の両手の隙間(すきま)に生まれたのは、黄金の輝き。轟音(ごうおん)をともなう(まばゆ)雷光(らいこう)

その光の正体に気づいた古城と雪菜の表情が凍りついた。

 

「"獅子の黄金(レグルス・アウルム)"……!?」

 

「第四真祖の眷獣!? そんな……!?」

 

「眷獣の支配権を奪い取ったわけじゃない。時空を(ゆが)めて、古城が過去に使った眷獣の一部を呼び出したんだ。ほんの一瞬、このときのために――」

 

実体を持つ膨大な魔力の(かたまり)()りかかり、(はかり)り知れない(いかずち)が監獄結界を襲う。

それによっていままで蜃気楼のように不安定だった島が完全に実体化する。

 

「くっ――!!」

 

彼女はほんの数百分の一秒にも満たないという(ごく)短い時間、古城が過去に眷獣を使った瞬間と現在の時空を連結したのだ。

どのような者がいかなる手段をもってしても第四真祖の眷獣を召喚、使用するということはそれ相応の危険(リスク)がある。逆流してきた魔力の反動が優麻を(おそ)い、弾き飛ばされたように彼女は倒れた。

 

「さすが第四真祖の眷獣……ボクの"(ル・ブルー)"でも制御しきれないか……だけど、犠牲(ぎせい)(はら)った甲斐(かい)はあったね」

 

優麻は弱々しく(つぶや)いて実体化した橋を渡り聖堂内へと向かう。古城たちも優麻を追いかける。

聖堂内部はなにもなくただがらんとしていた。優麻は最初から中を知っているかのように進んでいく。そして一つの巨大な空間に出たところで立ち止まった。

優麻の視線の先には一つの椅子(いす)。その椅子には眠るように目を閉じたままの一人の女性がいた。

追いついた古城たちは彼女の姿を見て息を呑んだ。

 

馬鹿(ばか)な……なんであんたがこんなところに……」

 

呆然としている古城たちを尻目に優麻は恭しく一礼をする。

 

 

 

 

 

「お目にかかれて光栄です、監獄結界の(かぎ)"空隙の魔女"――南宮那月」

 

 

 

 

 







いかがでしたでしょうか?
次は第一クウォーターが終わる頃に更新できればいいなぁ……


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