ストライク・ザ・ブラッド~白き焔~   作:燕尾

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前書きってどんなことを書けばいいのか
そんなことを最近悩んでいる燕尾です。

五話目、ちょっと改変してみたら前より大分長くなっている気がします。




第五話

乱心した浅葱の恐怖に屈し、午後の授業をきっちり受けた劉曹。放課後になった直後、教室から飛び出して古城と雪菜を探していた。

 

 

「あいつらの本業は学生のはずなんだがなあ。授業放り出してなにしてるんだか――探索(サーチング)

 

 

一人愚痴りながらも意識を集中させる劉曹。

 

 

「(浅葱によると古城はスヘルデ製薬の研究所に行ったらしいな。そこらへんを中心に調べてみるか…………いた、海辺の公園か)」

 

 

二人の位置を確認することができた劉曹は消えるようにその場から二人のもとへ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩……」

 

 

雪菜は傍らで寝ている少年の頭を()でていた。

 

 

古城が浅葱に調べてもらった情報を元に彼とともにスヘルデ製薬の研究所へ乗り込んだ雪菜。そこで先日会った殲教師(せんきょうし)のルードルフ・オイスタッハと人工生命体(ホムンクルズ)のアスタルテと再度対峙した。

しかし結果は敗北。そこで雪菜を庇った古城はオイスタッハの斧で無残に切り裂かれ死んでしまった。はずだったのだが……

 

 

「(まさか第四真祖がここまでなんて……)」

 

 

時間が経つにつれて周囲に飛び散った血や古城の肉片が本体に集まっていき、死んだはずの古城が息を吹き返したのだ。

信じられないことが起きたが雪菜は古城が生き返ったことに一安心していた。

しかし、雪菜は疑問が尽きなかった。

 

 

「なんで、先輩は私のことを……私は、私は……」

 

 

「魔族と戦うために獅子王機関に育てられた道具なのに……ってか?」

 

 

「!?」

 

 

自分の呟きの続きを言われるとは思わなかった雪菜はビクッとする。

ばっ、といきなり声がした方に向くとそこには見知った顔があった。中世的な顔立ちに特徴的な真紅の瞳と純白の髪。

 

 

「楠先輩!? なぜ……あぅ!」

 

 

雪菜が言い終わる前に劉曹は彼女の頭にチョップをかました。頭を抑えている雪菜に向かって劉曹はため息混じりに言う。

 

 

「なぜ、じゃないだろ。学校サボってなにしてんだお前らは。まあ予想はついているが……負けたんだろ、あいつらに」

 

 

「……はい」

 

 

落ち込んだように雪菜は俯く。そしていまも眠り続ける少年に目を移した。

雪菜を庇って一度死んだ古城。しかし、いまは死んだとは思えないほど安定した寝息を立てている。

何故わたしを庇ったのだろう。先ほど感じた疑問が雪菜の頭の中で渦巻く。

古城にとって雪菜は自分を監視する厄介者でしかないはずだ。どんな形であれいなくなるのであれば喜ばしいことだろう。それに加えて自分は親に売られ、魔族と戦うためだけに獅子王機関で育てられた一つの道具に過ぎない。

しかし古城は自分の身を挺して雪菜を助けた。そのことが雪菜は不思議でならない。

 

 

「わからないか?」

 

 

「えっ?」

 

 

突然思考の海から引き出された雪菜は素っ頓狂な声を出す。劉曹は古城を見ながら口を開く。

 

 

「古城にとって姫柊は自分の生活を監視してくる迷惑者でしかない。そして獅子王機関のほとんどの子供は自身の親に金で売られて魔族と戦うために育てられた、ただの使い捨ての道具。それなのにどうして古城は姫柊を庇ったのか」

 

 

劉曹は雪菜がいま感じていたことを間違えることなく言う。

疑問をズバリと当てられた雪菜はしばらく黙った。そして震える声で呟いた。

 

 

「売られて……道具として育ったわたしには家族も何もありません。私が死んでも悲しむ人なんていないんです。でも、先輩は違います。先輩がいなくなって、悲しむ人が大勢います。私なんかとは違うんですよ」

 

 

弱々しく語る雪菜。そこには先日オイスタッハと戦っていたような勇ましい少女の姿は微塵もなかった。

 

 

「わたしは先輩を殺すためにここに来たんです。それなのに……」

 

 

雪菜の言っていることに、はぁ、と溜息をつきながら、

 

 

「……あぅ!」

 

 

劉曹は雪菜の頭にもう一度手刀を振り下ろした。

 

 

「さっきからなにするんですか。……っ!」

 

 

涙目になりながらもキッ、と劉曹を睨みつける雪菜。その瞬間、雪菜は息を呑んだ。

雪菜を見る劉曹の目が一瞬だけどろりと濁った目になっていたのだ。様々な感情が入り混じり複雑な目をしている。だが次にはそんな目はしていなかった。

 

 

「自虐的な姫柊にお仕置きだ。後はそこで寝腐ってる駄吸血鬼に任せる。俺はそろそろ行くから」

 

 

そう言って去ろうとする劉曹。しかし、一度立ち止まりまた雪菜のほうに振り返る。

 

 

「これだけは言っておく……いなくなってもいい人間なんていやしない、よほどの犯罪者じゃなければな。もう一度考えてみろ。獅子王機関(あの場所)には大切なやつらが本当にいなかったのか?」

 

 

「それは……」

 

 

言い淀む雪菜。それが答えといわんばかりに劉曹は優しく微笑む。

 

 

「姫柊、おまえは道具なんかじゃない……そんなものは俺で十分だ」

 

 

「――っ!?」

 

 

最後に小さく言い放たれた言葉はかすかにだが確かに雪菜の耳に入った。言葉を失っている彼女を置いて言いたいことを言った劉曹は踵を返す。

 

 

「待ってください! まだ……」

 

 

はっ、となり雪菜は慌てて引き止めようとするも言い終わらないうちに劉曹はその場からいなくなっていた。その直後強い潮風が吹き荒れる。

脳裏に浮かぶ自分を見てきたときの濁った目と最後の言葉。

 

 

「楠先輩、一体あなたになにがあったんですか……?」

 

 

雪菜の呟きは風に流され、誰にも聞こえることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪菜と別れてから劉曹は一人ぶらつきながら考えていた。

オイスタッハの目的がわからない以上、手を打つことはできない。すべてが後手へ後手へとまわってしまう。

 

 

「さて、どうしたものか……ん?」

 

 

すると、携帯電話がなった。画面を見てみるとディスプレイには那月ちゃんと表示されていた。

 

 

「那月ちゃんからか」

 

 

通話ボタンを押してスピーカー部分を耳に当てる。

 

 

「もしもし」

 

 

「楠、キーストーンゲートに向かえ。今すぐだ」

 

 

唐突に、若干焦ったような口調で那月が指示を出してきた。

 

 

「キーストーンゲート? どうしてそんなところに――ってまさか」

 

 

「ああ、そのまさかだ。今キーストーンゲートが襲撃されている。おそらく例の西欧教会の僧侶(ボウズ)人工生命体(ホムンクルズ)だ」

 

 

劉曹の予感は見事に的中した。だがわからないことはまだある。

 

 

「どうしてキーストーンゲートなんだ? 理由はわからないのか?」

 

 

「聖遺物だ。聖人の遺体の一部がキーストーンゲート最深部にある。ここまで言えばお前もわかっただろう。わたしもやらねばならないことがあるのでな。切るぞ」

 

 

そう言って那月は一方的に電話を切った。ようやく全てがつながった劉曹は納得したように頷いた。

 

 

「とにかくキーストンゲートに行くか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

通路を塞いでいる瓦礫(がれき)を吹き飛ばし最深部へと向かおうとした劉曹の眼に映ったのは悲惨だった。

数十人もの警備員が重傷を負って周囲に倒れ、流れ出した血のにおいが大気に充満しており、自力で動けるものはほとんどいない。通路も所々が瓦礫(がれき)でふさがっている。

そんな凄惨(せいさん)な中、一人無傷で半ば放心状態の少女を見つけた。

 

 

「浅葱! 大丈夫か!?」

 

 

「劉曹!? なんであんたがここにいるのよ!? それにちっとも大丈夫じゃないわよ! ここが襲われて人がいっぱい怪我して、火の手が上がって閉じ込められて……」

 

 

怒鳴るように愚痴っているが、劉曹の姿を見て少し安心した様子の浅葱。

 

 

「とりあえず、こいつらの手当てが先だな。浅葱、怪我人を並べるのを手伝ってくれ」

 

 

「……わかったわ」

 

 

色々と納得いかない浅葱だったがやるべきことはわかってるので、とりあえず劉曹に協力する。

 

 

「動ける連中は手伝え! 俺は南宮那月に頼まれてここに来た!」

 

 

状況が状況であり、それに加え那月の名前は伊達ではなく彼女の名前を出した瞬間、警備員たちは劉曹の指示に従ってくれた。

そうして重傷の警備員たちを何列かに並べる。

 

 

「浅葱、下がってろ」

 

 

「なにをするの」

 

 

「悪いが説明をしてる暇はない、とりあえず大人しくしといてくれ……――治癒(ヒーリング)

 

 

床に手を置き眼を閉じる劉曹。すると、怪我人と劉曹が光りだした。浅葱は突然のことに、そしてそれを起こしたのが自分の友人ということに戸惑う。しかし、いま頼れるのは目の前にいる友人だけ。言われた通り、浅葱は行く末を見守っている。

彼から発せられているその光はなんともいえない暖かさで溢れていた。まるで劉曹の感情そのもののように感じた。

横になっている警備員たちを見るとみるみる傷が癒えていた。だがその反面、劉曹は苦悶の表情をして辛そうだ。

大方治ったのを確認した劉曹は意識を集中させるのを止める。同時に包み込んでいた光が消える。

 

 

「あんた、一体……」

 

 

なんなの? と、訊こうとしたが、その前に突如として劉曹が倒れた。

 

 

「がはっ……!」

 

 

「!? どうしたの!?」

 

 

いきなり吐血して倒れこんだ劉曹を抱き起こす浅葱。だが、吐血だけではなかった。よく見てみると劉曹の腹部からどんどん血が(にじ)み出ているのだ。

 

 

「ちょっと! 大丈夫なの!? ねぇ、劉曹ってば!!」

 

 

「ああ……大丈夫……――回復(リカバリー)

 

 

息絶え絶えに返事をして劉曹は再び意識を集中させ呼吸を整える。すると腹部の傷がどんどん塞がっていった。ふう、と一息つく劉曹を浅葱は唖然として見ている。

 

 

「久しぶりだとキツイな」

 

 

「きつかったじゃないわよ! バカ!!」

 

 

あっさり言う劉曹の頬に我に返った浅葱は思い切りビンタを入れる。

 

 

「痛てぇな、無事だったからいいじゃねーか」

 

 

「よくないわよ! 血が止まらなくて……死ぬかと思ったんだから!!」

 

 

涙目で訴えてくる浅葱に劉曹は視線を逸らしながら悪い、と一言謝る。

 

 

「それでさっきのはなんだったの!? なんで公社が襲われてるの? あんたはなにを知ってるの!」

 

 

それでも、混乱は収まらないらしく、浅葱は次々と()くし立てた。

 

 

「ああもう、一回落ち着け! ちゃんと順を追って説明するっ!」

 

 

怒鳴ったのが効いたのか浅葱は次第に落ち着きを取り戻す。

劉曹ははぁ、とため息をつき今回のあらましを語り始める。

 

「まず、俺は那月ちゃんの依頼で、最近起きていた魔族襲撃事件を追っていた」

 

 

「なんであんたがそんなことするわけ?」

 

 

「さっきも見ただろ。ちょっとした力があるからだ。このことに関してはあまり話したくはないから勘弁してくれ。それでだ、襲撃事件の犯人はいまここを襲った奴らだ」

 

 

浅葱は劉曹の説明に納得がいかないという風に口を挟む。

 

 

「ちょっと待って、どうしてここを襲うのよ。ここに魔族なんてそんなにいないのよ?」

 

 

「単純だ。魔族の襲撃は副次的なものでしかないからだ。本当の目的は――」

 

 

劉曹が説明の続きを喋ろうとした瞬間、下のフロアから爆発音が響く。

 

 

「っ!!」

 

 

「ちっ……浅葱、時間がない。俺が来た道を通って警備隊員と避難しろ。事の顛末はニュースでも見てくれ」

 

 

そういって、劉曹は駆け出した。

 

 

「ちょっと待ちなさいよ――!」

 

 

浅葱は叫び引きとどめようとするも、その場に劉曹の姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーストーンゲート最下層。海面下二百メートルにあるその場所は四基の人工島(ギガフロート)から伸びる連結用のワイヤーを調律することで、島全体の振動を制御し、無害化している。

その最下層を隔てている気密隔壁が悲鳴のような軋み音を上げて、こじ開けれ荒れていく。

 

 

命令完了(ミッションコンプリート)。目標を目視にて確認しました」

 

 

「お……おお……」

 

 

オイスタッハは悲嘆と歓喜の声を漏らしながら、中央を見上げている。そこにあるのは黒曜石に似た質感の半透明の石柱----要石(キーストーン)である。

 

 

「ようやく……ようやく見つけたぞ!」

 

 

全身を激しく震わせ、目に涙を浮かべて、その場に(ひざまず)きながら叫ぶ。

 

 

「ロタリンギアの聖堂より簒奪(さんだつ)されし不朽体……我ら信徒の手に取り戻す日を待ちわびたぞ! アスタルテ! もはや我らの行く手を阻むものなし。あの忌まわしき(くさび)を引き抜き、退廃の島に裁きを下しなさい!」

 

 

高らかな笑い声を上げながら、オイスタッハが従者たる人工生命体(ホムンクルズ)に命じた。しかし……

 

 

命令認識(リシーブド)。ただし前提条件に誤謬(ごびゅう)があります。ゆえに命令の再選択を要求します」

 

 

「なに?」

 

 

戦斧(せんぷ)を握り締めて立ち上がるオイスタッハ。アスタルテの命令拒否の理由に、彼も気づいたのだ。要石(かなめいし)によって固定されたところの上に誰かがいる。

破れかけた制服を着た少年と銀色の槍を持った少女。

 

 

「悪いな。さっきの命令は取り消ししてもらうぜ、オッサン」

 

 

第四真祖――暁古城が、気怠げな表情で笑っていた。

 

 





後書きって何を書けばいいのか
そんなことを最近悩んでいる燕尾です。

というわけで五話目でした。
約五千字。
改変前は確か四千にも満たなかったような気が……
まぁ気にしません!

感想、評価、批評酷評何でも受けてやらぁ!!!
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