負けず嫌いな新田さん   作:弥生

7 / 8
ポーカー

「よっ……あ!」

 

 プロデューサーが手の中で噛み合わせたトランプ同士を混ぜ合わせるが、綺麗にシャッフルされずに事務所のテーブルにカードが散らばってしまう。

 

「ちょっと手の力が弱かったわね。リフルシャッフルはこんな感じにするのよ」

「おお! 流石レナだ。ディーラー経験があるのは伊達じゃない」

「これをするとお客さんが喜ぶから、自然と上手になっていったのよね」

 

 苦笑いしたレナが手早く回収したトランプを巧みに操り、まるで生きているかのように両手を行ったり来たりさせる。

 ショットガンシャッフルと言われたこともあるシャッフルをしたあと、左手に乗せたトランプに右手をかざせば、なぜかトランプの向きが表に変わっていた。

 カードの絵柄は、ジョーカー。悪魔の格好をしたちひろが、楽しそうに笑っている。

 

「うーむ。やっぱり、レナの手の動きが速すぎて、なにが起きているかわからないな」

「ふふ、そう? これは相手の視線を誘導する、ちょっとしたテクニックよ。ほら、こうしてトランプに視線を集めておけば……はい」

 

 片手でトランプを混ぜ合わせながら、レナがプロデューサーの内ポケットからカードを取り出す。

 ずっと彼女の手を注視していたはずなのに、気がつけばポケットにカードが入っていた。それも、先ほどまで見ていた、ちひろのジョーカーが。

 

 相手の意識を縫って、自分が望む展開を引き寄せる。

 流石だと言うべきなのだろう。レナはそうしたマジシャンのような動きが上手く、アイドルの仕事でも求められることが多い。

 346プロダクションには個性的なアイドルは沢山いるが、その中でも彼女は勝負師アイドルとして名を広めている。

 

 プロデューサーとしても、レナのアイドル活動はいつもハラハラドキドキだ。

 勝負師という名の通り、なにが起こるかわからない手に汗握る展開。

 しかし気がつけば、出演者がレナの手のひらで転がされていたりする。それも、やり込められた人を笑顔にするように。

 自分が楽しみつつ、最後まで観客を虜にするやり方だった。

 

「と、まあ、こんな感じ。参考になった、美波ちゃん?」

 

 笑みを浮かべたレナの視線の先には、難しい表情で唸っている美波がいた。

 プロデューサーの向かいの席で、テーブルにあるトランプを睨んでいる。

 

「むむむ……全然わからないです」

「たしかに、いきなりは難しいよな。仕事のためとはいえ、そんな根を詰めなくてもいいぞ?」

「いえ、プロデューサーさんに任された仕事なんですから、やるからには全力です!」

 

 今回、プロデューサーが美波に持ってきた仕事が、アイドル同士のカード対決という、中々な曲者内容だったのだ。

 戦う相手は別事務所のアイドルで、勝負内容は当日になるまでわからない。

 しかし、トランプを使うことは事前に知らされているため、こうしてレナにアドバイスを貰いにきたという経緯であった。

 

 現在はレナからのトランプの教授が終わり、プロデューサーとシャッフルについて話し合っていた。

 美波も話を聞いていたはずだが、どうやらまだいまいちわからないらしい。

 

「うーん、そうねぇ……実際にやってみる?」

「え?」

「私の動きを見てるだけじゃよくわからないでしょ? だから、実際にトランプに触れてみれば、なにかを掴むかもしれないし。どう、プロデューサーさん? ディーラーなら私がやるわよ?」

「いいかもしれない。やるトランプゲームはなにがいいかな? 無難にババ抜きとか?」

「なに言ってるのよ。ディーラーがいるんだし、ここはポーカーとかにしましょう」

「ポーカーかあ。俺ってあんまりポーカーはしたことないんだよな」

「私もポーカーは……」

 

 二人にそう告げられたレナは、肩をすくめてトランプを混ぜはじめる。

 

「まあ、そんな堅苦しく考えなくていいわ。ポーカーの役はわかるかしら?」

「それぐらいなら、一応。たしか、ロイヤルストレートフラッシュが一番強いんだっけ?」

「あ、それなら私も知ってます。同じ柄で10からJ、Q、K、Aの順番に並ぶ役ですよね」

「そうよー。そこから下にストレートフラッシュ、フォーカード、フルハウス、フラッシュ……って続いていく感じね」

「ま、習うより慣れろって感じで、試しに一回練習してみようか」

「じゃあ、カードを渡すわね」

 

 美波の隣で座っていたレナは、プロデューサーと美波の間に移動してから、混ぜ合わせたカードを五枚ずつ配っていく。

 

「今回は練習だから、チップはなしってことで。それに、人数も少ないから順序を端折るからね」

「了解っと。もうこのカードは見ていいのか?」

「いいわよ。カードを見て、変えたかったから裏のまま前に置いて。私がその分を渡すから」

「わかりました。えーっと……」

 

 美波がカードを取ったのを確認したプロデューサーも、配られた五枚のカードに目を通す。

 内容は柄も数字もバラバラの、俗に言う“ブタ”だった。

 

「うーむ」

「レナさん、私は三枚交換します」

「ふふ、はいどうぞ」

「ありがとうございます。プロデューサーさんはどうしますか?」

 

 手元にある中で、一番強いのは“スペードのA”。他は“ダイヤの2”など、数自体がそこまで強くないものばかり。

 五枚全部交換するか、強いカードだけ残して交換を試すか。

 前に座る美波の顔を窺ってみても、ニコニコとしているだけで、彼女の手を予想できない。

 

「……俺は四枚交換する」

「あら? 随分と勝負に出たわね」

「もしかして、手が悪かったんですか?」

 

 意地悪く微笑んだ美波から目をそらしながら、プロデューサーは配られたカードを見る。

 新しく追加されたのは、“2のワンペア”だった。

 

「げ、マジかよ」

「本来はこの段階で降りたりする場合もあるけど、まあ練習だしそのまま見せましょうか」

「わかりました。私は“4と6のツーペア”でした」

「俺は“2のワンペア”だ」

「となると、今回は美波ちゃんの勝ちね」

「やったぁ!」

 

 あの時、“ダイヤの2”を残しておけば、“2のスリーカード”になって、美波に勝つことができた。

 所詮はもしもに過ぎないのだが、だからこそ後悔はプロデューサーの心にやってくる。

 思わず肩を落としていると、そんなプロデューサーを見て、レナが苦笑い。

 

「まあ、交換ミスはよくあることよ。仕方ないわ」

「そうですよ。私だって、交換したカードを残しておけばフルハウスになったんですから」

「わ、わかってるって」

 

 流石に駄々をこねたりはしない。そんな大人気ない真似はできるわけがないし、そもそもその理論ならフルハウスを狙えた美波の方が強い。

 結局、プロデューサーは勝てる要素が元々なかったというわけだ。

 

「ま、まあ? 今回は練習だし、次の本番で勝てれば問題ないよな?」

「次も私が勝ちますので、残念ですがプロデューサーさんは連敗しますね」

「いやいや、俺はここであえて負けて運を使ったから、次はその分の運が揺り戻しされるから」

「なにを言ってるんですか? 勢いに乗った私の方がツキがあるに決まってるじゃないですか」

 

 笑顔でいつも通り牽制しあう二人。

 そんなプロデューサー達の様子を見て、レナは面白そうに目を細めながら、回収したカードをシャッフルしていく。

 

「仲が良いのねー、二人とも」

「そ、そんなことはないですよ! 普通ですよ、普通」

「そうそう。別に美波とは普通の仲だ」

「ふーん。プロデューサーさんはそう思っていても、美波ちゃんは違うみたいだけど?」

「えっ?」

 

 レナの言葉を聞き、プロデューサーは美波の方を見やる。

 彼女は微妙に納得がいかない面立ちで、不服そうにこちらを睨んでいた。

 

「なんかムカつきますね」

「なんでだよ!?」

「別にー、普通の仲であるプロデューサーさんには教えませーん」

「あらら、拗ねちゃった。ダメよー、プロデューサーさん。しっかりとアイドルのことは見てあげなきゃ」

「拗ねていません!」

 

 そっぽを向いた美波をよそに、レナは楽しげに二人にカードを配る。

 

「というか今更なんだけど、レナも一緒にやらなくていいのか?」

「今回は二人の勝負でしょう? だから、私はディーラーに徹することにするわ。それに、私がいると勝っちゃうしね」

「……へぇ。レナさんは自信があるんですか」

 

 先ほどまでの表情はなりを潜め、鋭い目線でレナを見つめる美波。

 その顔からは一端の勝負師の雰囲気があり、レナは面白そうに微笑む。

 

「じゃあ、私も参加してみる?」

「いいですよ。レナさんに勝って、私は気持ちよくこのお仕事に望みたいと思います!」

「あのー、俺の意思は?」

 

 プロデューサーが手を挙げて尋ねるが、どうやら二人は眼中にないようだ。

 レナも五枚のカードを引き、不敵な笑みを浮かべながら説明を再開する。

 

「ルールとしては、まずは親……つまり、私ね。私の左隣からチップを賭けるか決めるんだけど。そうねえ……あ、これなんてどうかしら?」

「これは、かな子ちゃんが持ってきたクッキー?」

「そう。このチョコチップクッキーは、ちょうど十二枚あるわ。一人四枚をチップとして、三回勝負。最後に一番クッキーを持っていた人が勝ちよ」

「乗りました! 私がかな子ちゃんのクッキーを独り占めします!」

 

 プロデューサーは蚊帳の外で、レナと美波が盛り上がっていた。

 こちらの分のチップも数えているから、一応自分のことを忘れてはいないようだが。

 どちらも極度の負けず嫌いだからか、勝負事で張り合ってしまうのだろう。

 

 一回目は全員勝負は降りず、ギャンブルの舞台に上がることを決めた。

 それを確認したレナは、美波に顔を向ける。

 

「次は賭けるチップの枚数を決めるんだけど、美波ちゃんからね」

「うーん、そうですね。レナさんはチップをどれぐらい賭けますか?」

「ふふ、さてどうかしらね」

 

 早速心理戦を仕掛けている二人を置いて、プロデューサーは自分の手を見る。

 五枚のカードはそれぞれ、“ハートの4”、“ハートの8”、“ハートの9”、“クローバーの10”、“ダイヤのJ”。

 ペアは一つもないが、“ストレート”か“フラッシュ”のチャンスがありそうだ。

 

 数が順番に揃っているストレートと、マークが揃っているフラッシュ。

 ストレートにするなら、この場合だと7からJか、8からQの二択。

 フラッシュならば、ハートで揃えるのが無難だ。

 

「私はチップは一枚です。プロデューサーさんは?」

「ん、俺も一枚だ」

「となると、三人ともコール……同じチップね。次は手札を変えるかどうか。どうするの、美波ちゃん?」

「そうですねー……私は二枚変えます」

「俺は一枚」

「へー、二人は変えるのね。私はカードを変えないわ」

 

 ストレート狙いをしていたプロデューサーは、レナの言葉に目を丸くした。

 美波も驚いた表情を浮かべていて、二人で口角を上げているレナを凝視。

 その顔は、絶大なる自信に満ち溢れていた。

 

「嘘ですよね!? まさか、そんなにカードが強いんですか?」

「ふふふ。さあ、二回目のチップよ。美波ちゃんは、どうするの? このまま勝負するか、それとも引くか」

「う、うぅ……」

 

 悩む素振りで、レナの顔色を窺う美波。

 しかし、勝負師アイドルの面目躍如と言うべきか、レナからは自信しか感じられない。

 プロデューサーも、彼女がはったりをかましているかわからず、眉根を寄せてしまう。

 

 “ハートの4”を交換して返ったカードが、“スペードの7”ではあった。

 そのため、プロデューサーは7からJのストレートを作ることができている。

 本来ならば、悩む間もなく勝負に出るべきであるのだが、いかんせんレナの雰囲気が気になってしまう。

 

 もしかしたら、レナの手は予想以上に強いのかもしれない。

 プロデューサーのようにストレート……いや、下手をすればフルハウスぐらいの可能性も。

 

 美波の方は普通の手だろう。明らかにレナを意識しすぎていて、自分の手を取り繕っている感じがない。

 せいぜいがスリーカード辺りかと思われる。

 だから、プロデューサーが気にするべきは、レナの手の強さ。

 

「さあ、どうするの美波ちゃん」

「う、う……降ります! 私は降ります!」

「あら、勝負から逃げてドロップ宣言ね。ふふ、プロデューサーさんは?」

「逃げていません! これは戦略的撤退と言って欲しいです!」

 

 トランプからレナの顔に視界を移せば、挑発的な目線が返ってきた。

 その表情が雄弁に語っている。プロデューサーさんも逃げるのかしら、と。

 

 これは、ある意味試されているのだろう。

 レナをスカウトした時のように、この勝負にプロデューサーがどう挑むかを。

 ならば、自分が取るべき選択肢は一つだった。

 

「俺は、チップを二枚にする」

「……へぇ。レイズをするのね。面白い。私もコールをするわ」

「正気ですか、プロデューサーさん! 明らかに、レナさんは強い手じゃないですか!」

「だからこそだよ。レナとの勝負は逃げるわけにはいかないからな」

「……勝負」

 

 プロデューサーの言葉に考え込む美波をよそに、レナは頬を綻ばせながら口を開く。

 

「じゃあ、行くわよ?」

「こい! 俺はストレートだ!」

 

 プロデューサーがテーブルにカードを置くと、レナの方も手に持つトランプを見せつける。

 レナの役は……ブタだった。

 

「えぇ!?」

「うーん、プロデューサーさんには通用しなかったか」

「よっし!」

「え、レナさんって強い役じゃなかったんですか!?」

「あら? 私そんなこと一言でも言ったかしら?」

「言ってはいませんでしたけど……」

「ふふ、美波ちゃんは私のはったりに騙されたってことね」

「うぅ。これは一杯食わされちゃいました」

 

 しょぼんと肩を落とす美波を見て、レナは嬉しそうな笑みを浮かべた。

 どうやら、やり込めたのが嬉しかったらしい。

 しかし直ぐに残念そうに肩をすくめ、プロデューサーの方を流し目で見やる。

 

「まあ、プロデューサーさんは騙せなかったけど」

「そりゃあ、レナのプロデューサーだからな。レナが勝負をしかけるかどうかはなんとなくわかるよ」

 

 その言葉に、目を見開いたレナ。

 どこか嬉しそうに微笑を湛えながら、次のカードを配っていく。

 

「やっぱり、プロデューサーさんとの勝負は刺激的ね」

「私だって、レナさんと勝負しているんですけど?」

「わかってるわよ。さあ、美波ちゃん。今回はどうする?」

「うーん……チップは賭けます」

「俺はチップが三枚増えたからな。今回も降りない」

 

 現在のチップの内訳は、美波が三枚にレナが二枚、そしてプロデューサーが七枚。

 余裕があるので、このまま畳みかけたいところだ。

 

「全員やるってことね。次は賭け金よ。どうする?」

「こ、今回も一枚で……」

「随分と弱気だな? 俺達におじけづいたか?」

「チップが沢山あるプロデューサーさんにそう言われてもなんとも思いません!」

「ははは。これは今回の勝負は俺の勝ちかな。とりあえず俺は二枚賭けようかな。チップに余裕があるし」

「じゃあ、私はとりあえず一枚。カード交換はどうする?」

 

 プロデューサーを睨んでいた美波は、ため息をついて交換するカードをテーブルに置く。

 

「私は二枚交換します」

「俺は三枚」

「私は二枚変えようかしら。さ、重要な二回目のチップタイムね」

 

 交換したあとのカードの役を見ると、“5のスリーカード”だった。

 先ほどよりは弱い役だが、充分勝ち目がある手だ。

 二人はどうだろうか、とそれとなく観察してみれば、美波は唇を一文字に結んでいた。

 

「むむむ……」

 

 あれは、本当に悩んでいるような気がする。

 チラチラとレナの方に意識が向いていることから、彼女の役が気になっているらしい。

 そのレナ本人は、思わずといった様子で微かに口角を上げている。

 

 レナをプロデュースしていたからこそ気づいた、本当に些細な変化。

 恐らく他の人ではわからないそれに、プロデューサーは警戒心を引き上げる。

 顎に指を添えて数瞬目を伏せたあと、レナは思わず漏れてしまった、といった風の声音で呟く。

 

「どうしようかしら……」

 

 独り言とはいえ、当然近くにいるプロデューサーの耳に入る。

 唸っていた美波も聞こえたようで、悩んでいた顔色が明るくなる。

 

「もしかして、レナさんの手は悪かったんですか?」

「さて、どうかしら?」

「ふふふ。これは、今回は私の勝ちですね! チップを三枚賭けます!」

「え? マジか?」

「どうしますか、プロデューサーさん? この勝負(・・)から逃げますか?」

「ぐっ……」

 

 いきいきとこちらを煽ってくる美波に、プロデューサーも言い返そうとするが。

 先ほどのレナの表情が気になり、チップを賭けるか戸惑ってしまう。

 

 明らかに、レナはなにか腹に一物を抱えている。

 プロデューサーが見たのすら演技の可能性もあるが、あれは本心から漏れでたと感じた。

 また、美波の役も不安だ。ここまで自信があるということは、少なくとも勝負に出て勝てると思える程度の手ではあるのだろう。

 

 しかし、プロデューサーとしての意地が、ここで勝負を降りる選択を許さなかった。

 あえて不敵な笑みを張りつけながら、チップを四枚掴む。

 

「レイズ。俺は四枚だ!」

「ふふふ、それでこそ私が見込んだプロデューサーさんですよ。勝負から逃げていたら、軽蔑しましたもん」

「流石ね。じゃあ、私も自信がないけど全部のチップを賭けようかしら」

「つまり、二人は全部チップを賭けたと」

「プロデューサーさんは、三枚残していますね」

 

 プロデューサーの横にある残りのクッキーを見た美波は、じっと無言でプレッシャーを放ってきた。

 レナも満面の笑みを浮かべており、二人からの威圧がプロデューサーの心に重圧をかける。

 

 ここで、そんな危険な橋を渡る必要はない。

 保険としてチップを残しておくのは普通だ。それなのに、プロデューサーが目をそらそうとすれば、途端に美波達が失望した表情で俯くのだ。

 

 罠だとわかっている。わかっているが、アイドル達の悲しそうな顔を見て、己を貫けるプロデューサーはこの世にいるのだろうか。いや、いるはずがない。

 

「…………わかった! わかったよ! 俺も全部賭ける! これでいいだろ!」

「やった! プロデューサーさん男前ですね〜」

「ええ、私達のプロデューサーなだけはあるわ」

「くっ、二人して無理矢理賭けさせたくせに」

 

 語尾にハートをつける勢いで、両手を合わせて微笑む二人。

 せめての抵抗に睨みつけるも、同時に口笛を吹いて顔を背けられた。

 

「ま、まあ、カードを見せましょうか。全員チップを賭けてしまいましたし、この勝負で勝った人が、ポーカーの勝利ということで」

「わかったわ。せっかくだし同時に見せましょうか」

「了解。せーの……」

 

 三人同時にテーブルにトランプを置き、それぞれの役を確認。

 プロデューサーはスリーカード、対するレナはスペードのフラッシュだった。

 そして、美波はまさかのフルハウスだ。

 

「はっ!?」

「わお。今回はフラッシュだから自信あったんだけど」

「よし! フルハウスですから、私の役が一番強いですよね?」

「残念ながら、そうなるな」

 

 期待に満ちた目線を送ってくる美波に頷くと、笑顔で喜びを露わにする。

 

「やったぁ! 私の勝ちです!」

「ふぅ。これは一本取られたわね。まさか、美波ちゃんがフルハウスだったなんて」

「レナの手が良かったのは予想ついてたけど、美波が一番だとはなあ」

「あら? プロデューサーさんは私の手を読んでいたのかしら?」

「ん、まあな。なんとなく程度だけど」

「へぇ……ちゃんと、見ているのね」

「なんか言ったか?」

 

 小声で最後の言葉は聞こえなかったので、素直に尋ねてみたが。

 レナは首を横に振って、トランプを集めてまとめる。

 

「なんでもないわ。それで、美波ちゃん。トランプの感覚は掴んだかしら?」

「あ、はい。レナさんのおかけで、自信がつきました。これなら、どんなトランプゲームが来ても、大丈夫だと思います」

「それなら良かったわ。それじゃあ、みんなでクッキーを食べましょうか」

「わかりました。プロデューサーさんも、一緒に食べましょう?」

「……そうだな!」

 

 改めてクッキーを中央に持っていく二人を見て、意外と相性が良いのかもしれない、とプロデューサーは今度は二人で仕事を組ませようかと思うのだった。

 ちなみに、美波の仕事の対決したトランプゲームは、どちらが早くトランプタワーを作れるか、といった内容だったため、レナの話はほとんど役に立たなかった。

 

 

 

 

 

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