インフィニット・ストラトス ファントム   作:OLAP

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第103話

 

「束さん、ゼフィルスの修理はどうなってますか?」

 

フランス、パリでの戦闘から数日後の事、ゼロは久しぶりに亡国機業の本部にやってきていた。

 

IS学園は臨時の休校、あんな出来事があってショックを受けた人間が多数いたからだ。

 

「うーん、そうだねえ。簡潔に言うと修理は不可能だね。機体が大破しているのもあるけど、コア自体が破損してるから、元に戻すのは無理。でもこの子はまだ死んでない」

 

亡国機業、開発部部長室の中でゼロと束はソファーに座って対面しながら会話していた。

 

「……そうですか、となると新たにエムの専用機作る時ですかねえ。丁度エムの奴の戦闘データは大量にありますし。例のモノを使うには彼奴が一番良い」

 

「そうだな、私もソロソロ作りたくなってきた気分なんだ」

 

壁に備え付けられたモニターにリリスが現れた。

 

画面の中で『希望』と書かれたプラカードを掲げている。

 

「リリスさんはそれよりも亡国のIS部隊に配属させる新型量産機の開発を急いだ方が良いんじゃないんですか?スコールさん言ってましたよ」

 

「まあ、それは間に合わせるよ。そこにいる束も利用してね」

 

「リリスちゃん、それは酷いよ…………それよりも、新型機を作るとなるとマドカちゃんは私が預かっていいの?」

 

コーラを飲んだあと、束が尋ねた。

 

「ええ、構いませんよ。今のエムは専用機がない状態、戦場に出れる状況じゃない。厄介な事を回されるのが多いモノクローム・アバターなら特に。だから今は束さんのところで大人しくしておいた方が心配せずにすむ」

 

ゼロはコーヒーを口に含んだ。

 

「いっくん、心配してるの?」

 

「少なくとも、死なれるのは嫌だな」

 

「冷たいね〜。本心は別のくせに」

 

ケラケラと束は笑った。

 

「はあ、それでは御二方とも頼みましたよ」

 

その言葉を残してゼロは部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえー、ゼロ。遊んでよお」

 

「あー、もう。掃除できないだろうが」

 

ゼロは自室に戻って、数日間掃除のしていなかった汚れた部屋を掃除しようとしたのだが、ティファニアに後ろから抱きつかれて……おんぶさせられて上手く掃除できないでいる。

 

IS学園に戻る前に自室を掃除しようと思っていたのだが、部屋にはいる直前にティファニアに見つかってしまった。

 

「ねえ、いいでしょう。ゼロ、最近はずっとアリサちゃんと一緒にいたんだからさ。たまには私に構ってよ」

 

「任務で行ってるんだから、しゃあねえだろ」

 

「いつもいつも任務任務って、私と仕事どっちが大事なの!?」

 

「面倒こじらした奴かおい!どっちも大事だ。大事のベクトルが違えから優劣決めれねえけどよお!」

 

ティファをおぶったまま、ゼロは嘆いた。もうなんかどうにでもなってしまえというような気分だった。

 

掃除も一段落ついたところで、ゼロは漸くティファニアをベッドの上におろした。

 

「疲れた」

 

「そんなに?」

 

「お前、人は重いのだよ」

 

ゼロは冷蔵庫から水を取り出した後、ソファーにどかりと座った。

 

「ねえゼロ、今年のクリスマス予定空いてる?」

 

ベッドに仰向けに寝転がりながらティファニアが聞いてきた。

 

例年ならばクリスマスとイブの日は亡国機業総出でパーティーが行われる。

 

ソレは狂乱の宴、誕生祭ではない。特定の宗教や文化に囚われる事を嫌っている亡国機業では、普通のクリスマスでは行わないような事をするのが伝統になっている。

 

「あ?無理だな。今年はアリサと予定がある。丁度休みが取れたし」

 

「え!?」

 

ティファニアはベッドの上で飛び起きた。

 

衝撃発言。

 

「え?」

 

「いや、買い物しに行くけど」

 

「それもうコースじゃん!カップルの定番お決まりコースじゃん!そのまま朝までやっちゃうコースじゃん!」

 

枕をブンブン振り回しながらティファが騒ぐ。そんな様子をゼロは面倒臭そうに見てる。

 

「かもなあ」

 

「ダメだよ、ゼロは案外流されやすい人間なんだから」

 

「流されやすいって……お前最初の時の事忘れたのか?俺流されなかったぞ、寧ろ俺は硬い意思を持っていたぞ」

 

モノクローム・アバターの副隊長に就任した日の夜の事を思い出しながらゼロはティファニアに喋った。

 

「違うよ、酔った勢いでレインとやっちゃった事だよ。あの日酔ったまま競い合って気づいたらなってたじゃん!」

 

その言葉を聞いてゼロはソファーから崩れ落ちた。思い出したくない事を掘り返されてしまったようだ。

 

「ティファテメエ、あんまり思い出したくねえ事思い出させるなよ。マジで後で覚悟しとけよ、絶対に虐めてやるからな」

 

「きゃー、それは楽しみ」

 

この後、暫くの談笑の後に二人は解散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

IS学園に戻る直前、ゼロは行きつけの喫茶店によってコーヒーとケーキを楽しんでいた。

 

IS学園でも自分でコーヒーを煎れてはいるが、ここの味には遠く及ばない。最近はずっとIS学園にいたため、今回の来訪を少し楽しみにしていた。

 

程よい音量で音楽が流れ、空間自体を楽しむ。

 

ゼロは基本的にこの場所には一人でくるため、今日もカウンターに座って店員の女の子と軽く談笑したり、新聞を読んだりする。

 

「うん、良いね。また腕を上げたね」

 

ケーキを嗜みながら、ゼロはソレを作った目の前の少女を褒めた。

 

「本当ですか!?今回のは自信があったんですよ」

 

「このままいけば、十分に店を出せるようになると思うよ。ですよね、マスター」

 

コップを磨いているマスターに声をかけた。

 

「うーん、そうだねえ。確かにケーキや料理は上手になったけど、コーヒーを煎れるのは未だ未だ修行不足だねえ。今は君の方が上手いと思うよ」

 

「ゼロさんと比べたら、確かに私なんて未だ未だですよ。でもいつかはマスターに負けないくらい上手くなってみせますよ」

 

自信満々に胸を張りながら少女は答えた。

 

その様子が余りにも朗らかで、ゼロは無意識のうちに微笑んでしまった。

 

そして時間が経ってコーヒーとケーキを食べ終えるとゼロは席を立って会計を終えた。

 

「また来るね」

 

「はい、お待ちしてます」

 

ニコリと少女が笑い、その笑顔を背に受けながらゼロは喫茶店から出て行った。




次回からはついにクリスマス、そしてイブのお話。
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