「どうも、すいませんでした」
あの後僕は指導室に呼ばれてかなり説教された。そして今は包帯を巻かれた鹿狩瀬と教師からの連絡で駆けつけた鹿狩瀬の母親の三人だけのへやにいる。僕は鹿狩瀬にたいしてポケットに手を突っ込んだまま謝罪した。アリサを馬鹿にしたやつに謝る意思なんてない。
「それが謝っている態度ですか!何もしてないうちの子を一方的に殴って、これだから男は」
そういうと鹿狩瀬時子は僕にたいして平手打ちをしようとしてくる。僕はすかさずポケットから手を取り出して平手打ちのコースに割り込ませる。手と手がぶつかりそうになる。
グサリ
「いやあああ!」
何か刺さる音がすると同時に時子が手を抑えて悶え苦しむ。僕の手に持っているのはペン先の出たボールペン。
「危ないですよ、自分からボールペンに刺さりにくるなんて」
僕は時子を見下しながら喋る。時子の方はこちらを睨んでおり、今にも襲いかかってきそうだ。
「それに、一国会議員が小学生を叩こうとするなんて馬鹿ですか?」
僕の言葉を聞くと、鹿狩瀬親子は悔しそうな顔をした。それから暫く沈黙が続いた。いまから帰ったらところでアリサはすでに帰っているだろう。
ガララララララ
扉が開かれる音がしたのでそちらを見る。するとそこには僕の姉である織斑千冬がいた。
千冬姉は中に入ってくると扉を閉めてこちらによってくる。千冬姉は僕の頭を掴むと強制的に下げさせて、自分も頭を下げた。
「このたびは弟が失礼しました」
その様子にあっけに取られた鹿狩瀬時子ははっと我に帰り、ベラベラと喋り始めた。その内容は躾がなってないだの、教育ができてない、男の癖に生意気だなどなど。千冬姉は僕にかなり怒っていた。
「どうしてあんな事をしたんだ、一夏!?」
夜の家、そこでは千冬姉が僕にたいして凄い剣幕で怒っていた。
「それはあいつが「言い訳はいい……なぜあんな事をしたんだ」」
さっきからずっとこの調子だ。僕が訳を話そうとすれば言い訳はいらないなどと、一向に話は進まない。
「……あいつにムカついたからだよ、それ以外の理由はない!」
「そんな事で人様を殴ったのか、おまえは!」
凄い怒気で話す千冬姉。
「………………」
「どうした?」
僕の中の何かが変わった。
「千冬姉……大切な人を馬鹿にされたから殴っちゃいけないの、ねえ!」
「!」
僕の豹変ぶりに驚いたのか千冬姉は一歩下がる。
「大切な人を馬鹿にされたから許せなかったんだよ、確かに大人からみたら馬鹿げているのかもしれない。でも僕には許せないんだよ!ねえ、千冬姉の大切な物は何?」
「そ、そんなのお前たち家族に決まって「嘘だ!」!?」
僕の叫び声に驚く千冬姉。でもまだ止めない。
「じゃあ何でマドカのことを諦めるなんて言った!家族じゃねえのかよ、あんたの大切な家族!巫山戯んなよ、何が家族だよ。あんたは一回でも僕の柔道の試合に来たことがあるかよ、いつもいつも百春の試合ばっか優先しやがって。あんたの大切な家族は百春だけだろうが!あんたら二人にはマドカの家族面なんかさせねえ」
僕の様子に千冬姉はすこし怯えた様子でいた。
「に……兄さん。それぐらいにした方がいいんじゃないの」
百春がおどおどしながら声をかけてくる。
「百春、これは僕と姉さんの問題だ」
僕がそういうと百春は黙ってしまった。
「まってくれ一夏!違うんだお前は私の大切な家族なんだ!」
「こんな時だけ家族面しないで!さっきだって僕の言いたい事を何も聞かずに叱ろうとして、家族なら聞いてくれてもいいんじゃないの?」
僕はそれだけ言って、自分の部屋にもどっていった。
なんだったんだよあれは
兄さんが部屋から出て行った後、僕は足が震えていた。千冬姉が怒った事は今までに何回もあったが、兄さんがキレる事なんか一回もなかった。正直言うと、千冬姉の何倍も恐ろしかった。なんて言うかオーラと言うか背後霊というか何か不思議な物を感じさせた。はたから見ててこれだからもろに受けた千冬姉はそうとうなものだろう。
「私は……私は」
千冬姉はさっきから膝をついてこの調子だ。
これから僕らはどうなってしまうのだろうか。