インフィニット・ストラトス ファントム   作:OLAP

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今回はあるキャラのファンにとっては不快かも。


終わりが始まった日

その日はいたって静かな一日であるはずだった。

 

新入生が入学してから早一ヶ月と半、学園は一時的な落ち着きを見せている。

 

一年生たちは学園での生活に慣れ始め、楽しい学園生活に心を踊らせている。

 

二年生たちは進級したことによって後輩ができ、手本になろうとより一層学業に力が入っている。

 

最上級生の三年生はこれからの進路に向けて励んでいる。

 

これから夏休みが近づくに連れて、学園はまた騒がしくなって行くのだが、今はその騒がしさもなりを潜めている。

 

「……んで、何のようだ」

 

ゼロは今も用務員としての仕事を続けており、時間ができれば誰かの訓練を手伝っている。

 

男性IS操縦者という正体も知られてはいて、世間にも知られてはいるが、裏についている組織があまりにも強すぎて下手なことはできない。

 

本人も襲ってくる刺客は容赦なく殺している。

 

「ちょっと…………君にお願いがあるんだ」

 

朝の仕事が一段落した頃、ゼロは廊下でシャルロットに呼び止められた。

 

シャルロットがゼロに話しかけるのは始めてのことであり、ゼロも表面上は無警戒を装っているが心の奥では何があっても対処できるように警戒している。

 

「ならさっさとしろよ、コッチは仕事で忙しいんだよ。簡潔にまとめろよ」

 

何かが起きた際にいつでも拳銃を取り出せるようにISに命令を送った。

 

「………僕の両親が誘拐されたの……知ってるよね?」

 

デュノアの両親は数ヶ月前のネオによるフランス、パリの襲撃直後から行方不明になっており、ゼロはガーベラからネオに誘拐されたことを告げらている。

 

勿論その事はデュノアも知っている。

 

ショッピングモールでガーベラから告げられてある。

 

「この前ね、連絡があったんだよ………ある事をしなければ両親は殺されるんだ」

 

デュノアの目に涙が浮かぶ。

 

辛いのだろうか………

 

そんなモノは知らねえ。

 

デュノアがいくら涙を流しても、デュノアに関して何の感情もないゼロにとっては非常にどうでも良い問題なのだ。

 

「だから…………君のISを貰う!!」

 

デュノアがいきなりISから拳銃を呼び出してゼロに向けて構えた。

 

構えられた銃。

 

引き金はすでに指がかけられてある。何の迷いもなくその引き金は引かれるであろう。相手に対して感情を持っていないから躊躇いは存在しない。

 

ゼロの銃の引き金が──

 

廊下に発砲音が響き、ゼロの拳銃から飛び出た殺傷能力が一切ないゴム弾がデュノアが持つ銃に直撃して手から弾き落とした。

 

デュノアの異変を察知していたからこそ、先に動く事ができた。

 

「遅いな、不意打ちかませよ。テメエが正面から俺とやれると思うなよ…………今のはせめてもの情けだ」

 

ゼロは空いているもう一方の手に別の銃を呼び出した。

 

「今度はガチだ。テメエのドタマぶっ飛ばすくらい分けねえぞ………せめて理由くらい聞いてやる」

 

「君のISを奪えと命令されたんだ。じゃないと父さんと義母さんを殺されるんだ。漸く手に入れかけた家族の幸せなんだ!!だから君のISを奪う!!」

 

「そうか、だったら安心しろ。俺には関係ねえ!同情一切しない。テメエの両親が死のうと関係ない!俺にはコイツが必要なんだ。だからテメエに渡す筋合いなんて一切ないんだよ!わかったか?だから、諦めろ!!」

 

「そんなの諦められるわけ無い!!」

 

「そうかだったら──」

 

話してもラチがあかないと感じたのかゼロはデュノアの肩に狙いを定めて引き金を引こうとした。

 

「何してるんだ兄さん!」

 

廊下の奥から、銃声を聞いた百春がやってきた。百春からみればゼロがデュノアを襲っているように見える。

 

「あいつ……」

 

一瞬だけゼロの意識が百春に向けられ、デュノアから意識が外れてしまった。

 

「『リィン・カーネーション』!!!!」

 

一瞬の隙をついてデュノアが愛機であるリィン・カーネーションに身を包み込んだ。

 

両親の愛の象徴とも言える『リィン・カーネーション』、ソレを使って両親を取り戻す為にゼロに戦いを挑む。

 

「僕は二人を取り戻す!!」

 

「知らねえよ、『黒零』」

 

だがそんな事はゼロにとってはどうでも良い事なのだ。

 

間合いを詰めた両者は狭い通路の中で組み合う。

 

「君のISを奪えば、両親は帰ってくるんだ。そしたら……そしたら、百春に告白して、幸せな暮らしを皆でするんだ」

 

「そうか、おめでとう」

 

ゼロはデュノアの腕を弾くと胴体に素早く攻撃を繰り出し、最後にデュノアの頭を両手で挟んで外に投げ捨てる。

 

「そして殺す……テメエは今から敵だ」

 

「兄さん、待って!」

 

事態を詳しく知らない百春がゼロに近寄ってくる。

 

「何が起きたんだ!?どうして戦ってるんだ!」

 

「あいつが俺の相棒を奪おうとした。彼奴は敵になった。だから殺す……………百春、俺が彼奴を殺す前に彼奴を止めてみろ。できなければ彼奴は殺す」

 

ゼロはデュノアを追撃する為に廊下から飛び降りた。

 

「一体………何が起きてるんだ………」

 

 

 

 

 

「おら、どうした?俺を殺さないと両親は救えないぞ」

 

ゼロが弄ぶように次々と追撃の蹴りや殴打をデュノアに直撃させていく。

 

敵となれば今まで戦ってきたように一切の容赦はしない。

 

だが百春に止めてみろと言った手前、簡単に殺しはしない。

 

「君には勝てないのはわかってる…………だから、僕は悪魔の力を借りる」

 

次の瞬間、デュノアの乗るリィン・カーネーションのバイザーが降りて彼女の顔を隠した。

 

「これはネオから与えられた力。君を倒す為に僕は兵器になる」

 

リィン・カーネーションのボディカラーが変わっていく。

 

オレンジから漆黒に変わっていく。

 

彼女の実母が愛した花の名を冠する機体が、彼女の手によって穢されていく。

 

今の両親を守るために、彼女はその身を闇の中に染めていく。

 

「これは兵器の力、僕とISの意思を無視して敵を倒す為の最適解を選び続ける最悪のプログラム」

 

「成る程、胸糞悪い」

 

ISの意思を重視するゼロにとってみればISの意思を無視するこのプログラムは非常に腹立たしかった。

 

「僕は、君を倒す」

 

「やってみろよ」

 

これは終わりの始まり。

 

IS学園崩壊まで、あと数時間。

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