そして日間8位!めちゃくちゃ嬉しい
「ここ……何処だよ」
眼を覚ました僕はあたりを確認する。どうやらここは何処かの河原のようだ。空は真っ暗であるがあちらほらと街灯が見えるため市街地である事は間違いない。では何処の国の市街地だ。そんな事を僕は考えていた。日本ならば最高、それ意外なら最悪だ。
あの施設を脱出するために下水道に飛び込んで、そのあとに気絶してからどれくらいの時間がすぎたのだろう。アサルトライフルは途中で落っことしてしまったが、なんとかナイフは落ちないでいた。あの子達は無事に逃げられたのだろうか。そんな事を考えながら僕は立ち上がり、歩き出す。
だが僕は自分の格好が気になった。怪しすぎるのだ。迷彩服の上には身の丈に合わない白衣、僕が警察官だったら職務質問をしているだろ。それに腕にはブレスレットがされてある、これも一応外しておきたい。僕はナイフを取り出して、ブレスレットを切断しにかかる。数分もすればブレスレットはきれたのだが、僕も自分の腕を傷つけてしまった。ブレスレットを捨てて、再び歩き出す。
「最悪だ……」
思わずそう呟いてしまった。施設が存在した場所、それは日本ではなく海外であった。アルファベットで描かれた看板、車の右側通行などなど。日本ではない要素がたくさんあった。
ならばどうやって僕は日本に帰ればいいのだ。こんな所を警察に見つかれば直ぐに何処かに連れていかれるだろう。それにパスポートも持っていないから不法入国者扱いである。言葉もわからない。
「マズイな」
僕はそんな事をを考えながら、ビルとビルの間に入って行った。
シュ!
ナイフが空を切る音が鳴る。続けざまにもう一発、目の前にいる浮浪児に向けて威嚇の一撃。ナイフに驚いた浮浪児はそのまま逃げて行った。
あれから数時間後、僕は今ビルの間で浮浪児と戦った。この数時間、この街を探索して見てわかったことがいくつかある。
先ず一つはこの街はゴーストタウンであるということ。いや、正確にいうとゴーストタウンになりかけの街、半ゴーストタウンであるということ。そのためにこの街にはまともに車が通っていないし、店も少ない。
それにこの街にはかなりの数の浮浪児がいる。さっきの浮浪児もその1人で、ビルとビルの間を歩いていた僕を見つけた。子供ならば勝てると思ったのだろう、いきなり僕に襲いかかってきたのでナイフを取り出して体の数箇所を切り裂いた。
これからどうすれば良いのか、そんな事は今の僕にはわからない。でも、生き残らなければならない。生きていればまだ可能性がある。
ぐうううう~~
忘れていた。そういえばどれくらいの間ご飯を食べていないであろうか、施設を脱出する直前の訓練に食べたご飯が最後だろう。だいたい一日から二日ぐらいか、はたまたそれ以上の期間食べていないのだろうか。もう僕の胃袋は限界だ。
重たい足をゆっくりと動かし始めて、食べ物を探しに歩く。どうすればいい。言葉は通じない、店も既にしまっているし何よりお金がない。そんな事を考えながら歩いていると僕はある物に目がいった。それは大型の蓋つきのポリバケツ、正式名称ポリペール。そしてそれが置かれてある場所はとあるレストランの裏口。
ゴクリ……
思わず僕は唾を呑んでしまった。いや、これは駄目だ。もしかしたら残飯が残っているかもしれない、けれどこれは食べてはいけない。食べてしまったら僕は戻れなくなってしまう気がする。だけど、僕は飢えを見たそうとする本能には勝つことができなかった。
ガツリ、ガツリ
「はう、はあはあ」
あれから数分後、僕はポリペールの中の生ゴミを食い漁っていた。マズイ、ただ単にマズイ。でもこれを食べなければ飢えて死んでしまう。だから食べる事を決して辞める事はない。
ご飯を食べ終え、また僕は歩き始める。ポツポツと雨が降り始める。雨はどんどん僕の体を濡らしていく。僕は雨を防ぎ、眠るための場所を探している。ふらふらとふらふらと歩いて行く。
「ーーー!ーーー!」
後ろで誰かが騒ぐ声がしたので振り返って見るとそこには先ほどの浮浪児ともう2人、少年がいた。多分、さっきの浮浪児の仲間で僕に仕返しに来たのだろう。
先ほどの浮浪児がこちらに向けて走ってくる。走りながら拳を構える、僕との距離がなくなると彼は思いっきり拳を振るった。顎目掛けて飛んでくる拳を体をそらす事で躱す。大振りの拳を躱された事でバランスを崩す少年、僕は彼の頭を掴んでそのまま四、五回膝蹴りを彼の顔面に食らわせる。蹴り終えて彼を離すとそのまま倒れてしまった。
「ーー!ーーー!」
少年の仲間達が何か叫んでいる。1人は恐怖していて、もう1人は怒っている様子だ。怒っている少年は手にナイフを持って此方に走ってくる。手に持っているナイフは僕が持っている様な軍隊で使われそうなものを小型化したのでは無く、ただの果物ナイフだ。ナイフを構えながら突き進んでくる少年。ここは狭いビルとビルの間、狭い通り道なので彼は突っ込んでくる事しかできない。僕に近づくとナイフを突き出す、だから左手を下から上に腕を払い相手の手首にぶつける。彼は手首の痛みに思わずナイフを手放してしまう。そして彼が怯んでいる隙に軽快なリズムでワン、ツーと顔を殴る。
「ふっ!ふっ!」
そして殴り終えると同時に腹に蹴りをいれる。そしてそのまま右腕を掴み、後ろに向けて放り投げる。ごろごろと転がって行く少年。
「ふう」
一旦息を吐いて残りの1人に向けて振り返る。
「ーーーーー!」
最後の1人がナイフを持って突っ込んできた。その距離は約大股二歩分、躱す事はもうできない。
ドスッ
僕の腹にナイフが刺さった。しかし、完全には刺さってはいない。なんとか刺さりきる直前に彼の手首をつかむ事で刺さるのを阻止したのだ。刺して来た少年は驚いた様子だ。痛い、流石に痛い。僕は左手で彼の手首を掴んだまま右手でナイフを取り出して、勢いよく彼の左肩にナイフを突き刺した。
「ーーーーー!」
酷く痛がる少年は暴れ出して、僕の腹からナイフを脱いてしまった。僕はそのまま彼の腹に蹴りを入れて飛ばした。
蹴り飛ばされた少年はナイフが突き刺さったまま何処かに走り去った。そして僕の後ろから殴られた少年が通り過ぎて、最初に倒された少年を抱えるとさっきの少年と同じ方向に走って行った。
「はあ、はあ……」
僕は思わず肩から息をしてしまう。僕はふらつきながらビルの壁に寄りかかると、そのまま座り込んでしまう。白衣を脱いで傷口の周りに白衣を巻きつけて血が出るのを防ぐ。
(やばい、意識が遠のいてきた)
僕は壁に寄っかかったまま、倒れこんでしまう。雨は先ほどよりも酷くなり、僕の体温を低下させていく。腹の周りの水たまりはほのかに赤く染まっている。
このまま僕は死んでしまうのだろうか……嫌だ、そんなのは嫌だ。まだアリサと合わなければならないし、マドカを見つけなければならない。
だんだんと意識が遠のいていく。
バシャ……バシャ
誰かが此方に向けて歩いてくる、誰だろう。誰が此方にきているのだろう。僕は其方に向けて眼を向ける。そこにいたのは三人、1人は豊かな金髪で千冬姉ぐらいの女性、そして残りは黒色と橙色の髪の色をした僕と同じ年ぐらいの二人の少女。この人たちはこの街の住人ではない。あまりにも服装が綺麗すぎる。金髪の女性はドレスの様なものを着ている。
僕はなんとか両腕を使って、彼女たちの元に這いずって行く。彼女達の所に行けば助かるかもしれない、そんな事を考えながら僕は進んで行く。そんな中、黒髪の少女が傘を投げ捨てて僕の元に走ってくる。
「お………ちゃん!………ちゃ……」
少女が僕を抱えながら何かを言っている。何だ、意識が遠のいているせいで何を言っているのかよく聞こえない。力の入らない首をなんとか動かして彼女の顔を見てみる。
「マド……カ?」
そこにいたのは数年前に誘拐された僕の妹、織斑マドカだった。本当にマドカなのか?いや、きっとこれは血のですぎで幻覚でも見ているのだろう。じゃなければこんな所にマドカがいるはずがない。でも幻覚であっても、マドカを見れて良かった。僕はなんとか左腕を動かして濡れているマドカの頬を撫でる。
「大きくなったな……マドカ」
僕はそういうと気絶してしまった。