インフィニット・ストラトス ファントム   作:OLAP

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そして彼は力を手に入れる

 

「はい、口を開けて。あーん」

 

    お粥の乗ったスプーンを僕の口に近づけるスコールさん。その表情は物凄くいい笑顔である。この人、これをすごく楽しんでいるよ。僕は恥ずかしさで顔を赤くしながらお粥を食べる。

 

「よくできました」

 

    さらにからかうスコールさん。笑っているその顔は思わず見惚れそうになる。

 

    なんでこんな事になっているかと言うと、マドカが席を外して代わりにスコールさんがこの部屋に入って来た時に始まった。スコールさんは僕のためにお粥を持って来て、ベッドに備え付けられているテーブルに置いてくれた。僕はそれを食べようとスプーンを手にとったときだ。僕はスプーンを手に取るとそのまま落としてしまったのだ。しかもそれが一回ではなく、何回も。どうやらまだ上手く力が入らない。僕の腹を手術した時に麻酔を使ったのだがそれが原因じゃないかとスコールさんが答えた。

 

「なら私が食べさせてあげる」

 

    スコールさんからの突然の提案にめちゃくちゃ驚いた。そしてスコールさんはそのままテーブルに置かれたスプーンを手に取ると、お粥を掬うと僕の顔に近づけて来た。それが今の状況になるまでの過程だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでした」

 

「よく食べたわね」

 

    ご飯を食べ終わった僕はスコールさんに対してお礼を言う。スコールさんは微笑みながら返事を返してくれた。久しぶりに食べたまともなご飯、施設ではマズイ飯を食わされて、ゴーストタウンでは生き残るために生ゴミを食べて来た。久しぶりに食べたまともなご飯はすごく暖かくて美味しかった。だけど少し我儘を言わせてもらえるのであれば、早く美味しいお肉が食べたいです。

 

(やばい、飯食ったら眠くなってきた)

 

    満腹感と安心感からか僕は眠気に襲われた。目をしばしばとさせながら眠りに就こうとする。

 

ガラガラ

 

「あら、食器を取りに来たの?」

 

    扉が開かれると同時に1人の少女が部屋の中に入ってきた。虚ろげな意識の中で、僕はこの部屋に入ってきた少女をみる。その少女は橙色の髪で僕と同じくらいの年齢だ。思わずハッとした。僕はその少女に見覚えがあった。忘れるはずもない、僕が施設を脱出する時に最初に助けた少女、その子だった。でもどうしてここに?

 

「!」

 

    僕の方を見た少女は驚いていた。そして急いで僕のベットに近づくと食器を持って部屋から出て行った。僕は呆気に取られた。

 

「あ……あの、スコールさん。なんで彼女がここにいるんですか?」

 

    顔だけを動かしてスコールさんに訪ねてみる。

 

「ん?ああ、そういえば言うのを忘れていたわね。あなたがいた施設には私たちが襲撃をかけたのよ。そこで脱出していた彼女達を保護したのよ」

 

    その言葉を聞いた瞬間、僕の力が抜けた。そうか、そういえばあの雨の日にスコールさんやマドカと一緒にいた女の子、橙色の髪の毛だったな。でもまてよ、だったら。

 

「もしかして、スコールさんはあの場所にいたんですか?」

 

「ええ、いたわよ。それもISに乗って」

 

「それってつまり……」

 

「そうよ、あなたによって床を爆破されて落下したISに乗っていたパイロットよ」

 

「あははは……すいませんでした」

 

    僕は思わず謝った。まさかあのISが僕らをさらいに来たのではなく、救出をしに来た。つまり、僕が下手な事をしなければもう少し楽だったのだろう。

 

「それで下水道に逃げ込んだあなたを、あなたのつけていたブレスレットの発信機からあなたがついた場所を探し出して、迎えに行ったわけ」

 

「そう……ですか」

 

    僕は目を瞑る。そうか、そういうことだったんだな。なら他の奴らもここにいるんだな。そう思いながら時間はすぎた。

 

『ねえ、早く来てよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫?お兄ちゃん」

 

    僕は今、ベッドから起き上がって上半身の服を脱いでいる。そして側にはマドカが濡れたタオルで僕の身体を拭いている。ことの始まりは数分前、スコールさんが部屋から出て行ってゆっくりとくつろいでいた時の事だ。いきなりマドカが部屋の中に水の入った桶とタオルを持ってやって来た。どうやら僕がまだ風呂に入れない事を知ったのか僕の上半身を拭きに来たらしい。

 

「ありがとな、マドカ」

 

「ううん、気にしないでお兄ちゃん。私がやりたいだけだからさ」

 

    そういいながら、僕の身体を拭き 続けるマドカ。首、腕と拭いていった。そして背中を拭こうとした所でマドカの手が止まった。そしてそのまま僕の背中の模様を触った。

 

「やっぱりまだあるんだね、この模様」

 

「そうだな、多分一生消えることは無いだろうな」

 

「でも……これはお兄ちゃんだっていう証だよ」

 

「……ああ、そうだな」

 

    マドカからの言葉に思わず微笑んでしまう。むかしはこれがコンプレックスで仕方がなかった。皆から気持ち悪がられ、友達は碌にできなかった。でも今ではアリサやティファからの言葉のおかげで気にしなくはなった。

 

「何かあったの?」

 

「いいや、なんでも無いさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    そして翌日、担当の医者から自由に歩いて回っていいという判断を貰った。だから僕はスコールさんとマドカに亡国機業の内部を案内してもらえないかと頼んだ。二人は快く承諾してくれた。

 

「よいしょっと」

 

    ベッドから降りて、近くにあった松葉杖を使い歩き始める。一歩一歩、慣れない松葉杖を使いながら歩いていく。そして僕は病室に備えられた鏡に目が行った。そこに写っていたのは醜い人間、髪はボサボサで頬は痩せこけ、かつてあった強い眼光はすでに弱っていた。

 

(あんなことしてりゃそうなるわな)

 

   そんなことを考えながらまた一歩一歩歩いていく、扉の前に立ち取っ手を横に動かして扉を開ける。

 

   目の前に広がっていたのはゴミ一つない近代的なデザインの廊下、左右どちらを見てもゴミは無く清潔にされているのがわかる。そして廊下のあちこちにこの病室と同じような扉がある。

 

(確か待ち合わせ場所はこの廊下を左に進んだ先にあるロビーだったよな)

 

    僕はマドカ達と約束を思い出しながら廊下を進んでいく。最初はマドカが迎えにいくと言っていたが僕からそれを断った。なんでかはわからない、でもここで頼っててはいけないと思った。

 

    暫く歩くとロビーに着いた。そしてそこには既に二人が待っていた。

 

「お兄ちゃん!」

 

「あら、やっと来たのね」

 

   そして僕は二人にこの施設を案内された。

 

 

 

 

 

 

 

暫く施設を案内されてわかったことが幾つかある。

 

    まず一つ目、今僕がいるこの場所はとある国にある亡国機業の本部らしい。どうやら亡国機業は様々な国の政治に根深く関わっており、またネオも同様に様々な国の政治に根深く関わっているらしい。

 

    そして二つ目、亡国機業は世界各地に支部を設立しており、たくさんの構成員を送っているらしい。

 

 

 

 

 

 

    

 

    そして僕は今、僕が寝ていた治療区を抜け、この場所に住んでいる人が暮らしている居住区を移動して、ISなどを開発している開発区を移動している。亡国機業の本部はかなり広く、ここまで来るのにかなりの時間がかかった。慣れなかった松葉杖も今では上手く使いこなせている。

 

「ふっ、ふっ」

 

    少し疲れてきて、息が荒くなって来ている。

 

「大丈夫?お兄ちゃん」

 

「ん?ああ、大丈夫だぞ」

 

    マドカが心配してくれるが、僕は大丈夫だと答えた。でも実際のところはかなり疲れている。けれど、ここで手を借りるわけにはいかない。そんな事を考えながら僕は歩き続ける。

 

『やっと来てくれた』

 

    また……声がした。しかも今度は今までよりもはっきりと、声の発生場所はわかる。僕は歩くのを止めて、ある場所を見る。パスワードのかけられた扉、扉の上には整備室と書かれている。

 

「どうしたの?お兄ちゃん」

 

    マドカが声をかけてくるが、今の僕には気になる物がある。僕は方向転換をして扉へと向かう。パスワードによって鍵がかけられている筈の扉は、僕が目の前に立つだけで一人でに開いた。これは僕を招いているのか?

 

「嘘、なんで開くのよ」

 

    スコールさんが驚愕している。それもそうだろう、開く筈のない扉が開いたのだから。

 

    僕はその部屋の中に入っていく。部屋の中は真っ暗で入口付近だけが廊下から差し込む光で照らされている。奥は何も見えない、でも奥には何かがある。この感覚はいつ以来だろう、確か初めて束さんのラボに行った時にISを見つけた時の感覚にそっくりだ。

 

「君かい、僕を呼んでいたのは」

 

僕はまた一歩踏み出して、光の届かない暗い、暗い闇へと足を踏み入れる。松葉杖を捨てて自分の足だけで歩く。

 

「お前か、俺を呼んだのは」

 

『久しぶりですね』

 

また声がしてきた。

 

「お前はそこにはいない、そこにいるコアを通して俺に話しかけているだけだ。白騎士」

 

そして歩くのを止める。目の前は真っ暗で何も見えない。でも手を延ばす。

 

「動け、ISよ!」

 

そして更に手を延ばして何かに触れる。その瞬間、部屋一面に光が満ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

報告

 

我々が保護した織斑一夏。彼は正式に我々の組織に入ることを承諾し、施設を案内していたところ整備室にあったISを動かした。よって彼は私、スコール・ミューゼルの部隊で預からせてもらいます。

 

スコール・ミューゼル

 

 

 

 




連載17話でやっと主人公がISを動かしたぜ……長かった、長かった。
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