インフィニット・ストラトス ファントム   作:OLAP

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挨拶を済ませて彼は行く

 

    閑静な住宅街を俺はただ歩いている。もう世間は十二月らしい、けれどもここに来るまではそんな感じは一切しなかった。空気は乾いており、あたりの気は所々葉っぱが落ちて剥げている。

 

    訓練後の整備室での白騎士との会話から数日後、俺はスコールさんに頼み込んで日本、それも俺が住んでいた住宅街に連れてきてもらった。なぜかというと束さんから貰った誕生日プレゼントを取りにきたからだ。最初はスコールさんもダメだと言っていたが、俺からの説得によってとうとう折れてくれた。だが同時にある条件を出された。今までの知り合いに誰も合わないこと。俺はその条件を快く呑んだ。今更織斑千冬にも織斑百春にも会いたいとは思わない、けれども……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    俺は無事に家につくことができた。今は平日の午後三時ぐらい、織斑千冬と織斑百春は今家にいないとスコールさんから連絡が届いた。だから安心して侵入することができる。つい何ヶ月前までは住んでいた家なのに入る事が帰宅ではなく、侵入すると表現するのは些かむずかゆい。

 

    玄関の前に置かれてある植木鉢の底に隠してある鍵を拾う。どうやらこの隠し場所は俺がいた時から変わってないみたいだな。拾った鍵を鍵穴に差し込んで鍵を開ける。

 

ガチャリ

 

    ゆっくりとドアノブを引いて家の中に侵入して、素早く扉を閉める。そして内部の状況を確認する。

 

    ゴミはそれ程なく、埃も積もってはいなかった。俺がいない間に変わったな。

 

    そんなことを考えながら靴を脱いで目的の場所に向かう。廊下を少し進んで階段を登る。階段を登り終えて、とある扉の前で立ち止まるとそのまま扉をあけた。まず最初に感じたのは長い間使われていなかった倉庫に入った時のように、俺の鼻の中に大量の埃が入り込む。

 

「ゲホッ、ゲホッ」

 

    思わず咳き込んでしまう。部屋の中を進んで行って学習机の前に立つ。そして一つの引き出しを開けて中から一つのUSBメモリを取り出した。更に引き出しの中から三枚の写真を取り出す。一枚目は俺と両親が写っている物、二枚目は俺とマドカが写っている物。そして最後の一枚はアリサやティファの家族と一緒に写っている写真。それぞれ棚に飾られている物とは別物の写真。これぐらいなら持ってきても良いと思う。

 

「あ……」

 

    引き出しを閉めた俺の眼が机の上に置かれてある物に注意が行く。

 

アリサから貰ったネックレス

 

    あの日つけ忘れた俺の大切なもの。今はもう一度着ける事ができる。だからゆっくりとそれに手を延ばして首元まで持っていく。そしてゆっくりと首につけていく。そしてつけられたネックレスを大切に触って行く。

 

「……は!」

 

俺は慌てて時計を見た。そこに表示されていた時間は集合時間ギリギリだった。俺は直様家にいた形跡を消去して家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいません、遅れました」

 

    あれから数分後、俺は待ち合わせ場所に向かい、駐車されていたワゴン車に搭乗した。スコールさんは助手席に座っており、あとは運転席に一人だけ座っている。

 

「お疲れ様、欲しい物は手に入った?」

 

「はい、これです」

 

    俺はそう言ってポケットからUSBメモリを取り出す。それをスコールさんはじっくりとみる。そして見終えると前を向く。

 

「最後に何処か行きたいところはある?」

 

「そんなわがまま言っても良いんですか?」

 

「ええ、大丈夫よ」

 

    そう言う事ならわがままを言わせてもらおう。

 

「ならーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    あれから数分後、俺はとある霊園を歩いている。ここは家から車で数分で行く事のできる高い丘にある霊園、ここには俺の両親の墓がある。だから、一応挨拶を済ませておきたいと思ったから、スコールさんにわがままをいって連れてきてもらった。

 

    石で作られた道を一人で歩いて行く。辺りには人はいない、まあ平日の4時ぐらいだからいなくてもおかしくはないか。そんな事を考えながら、両親が眠っている墓まで歩いて行く。そして墓が肉眼で確認できるようになったとき、俺は誰かが墓の前にいる事に気づいた。俺は思わず体を隠せそうな物に隠れて、隠れながら音を立てないように近づいていく。そしてそのまま相手に見られないように相手の姿を見る。藍色の髪に僕より低めの背丈の少女。

 

「……アリサ」

 

    誘宵アリサ、俺の最初の友達で大切な人の1人。最後にあったのは第一回モンド・グロッソに織斑千冬の応援に行くために駅にいたときだ。あの時は何も言わずにいきなり見送りに来たから凄く驚いたな。それに……ああ、恥ずかしい。別れ際に呼び止められたと思ったらいきなりキスされたな。いきなりだったから凄い驚いたな。……別に嫌ではなかったけど。

 

    俺は彼女にばれないよう隠れながら彼女を見る。彼女の纏っている雰囲気は沈んでいた。俺と初めてのあった時と非常に似ている。

 

悔しい

 

    あんな風になっている彼女に対して何もできない自分に対して……思わず右手でネックレスを握りしめ、唇を噛みしめ、彼女から目を逸らしてしまう。もうこれ以上、今の俺にとって彼女を見るのは辛い。だから早くそこから立ち去ってくれ。

 

「じゃあ一夏くん、またね」

 

    彼女の声がしたので驚いて彼女を見て見る。気づかれたのか?そんな事を考えてながら確認すると、彼女は墓の前から立ちあがってそして別れの挨拶に手を降りながら霊園から出て行った。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    アリサが立ち去った後、隠れていた場所から出て来て墓の前に立つ。墓の前にはここに埋葬されてある人の名前が彫られてある。

 

    一つ目は織斑数児(すうじ)、俺の父親で職業は……あれ?父さん、仕事なにしてたっけ。決して無職ではないが、何をしていたのかは思い出せない。鍛えられた体のおかげで幼心でもすごく頼もしく見えた。休みの日にはよく家族サービスをしてくれた。大人になったらこんな父親になりたいなと思わせる人だった。

 

    二つ目は織斑季菜(きな)、俺の母親で職業は何処かの大学で研究をしていた。何を研究していたのかはよく知らない。昔から体が弱かったらしくて、俺が小学校に上がる直前になくなってしまった。母さんの作る料理は幼いころにしか食べた事はないけど、すごく美味しかった。あれがお袋の味と言うやつなのだろう、今まで食べた食べ物の中で一番美味しい物だ。

 

そして三つ目

 

 

織斑一夏

 

 

    やっぱり、もう死んでる事になってんだな。んなもん亡国機業に入った時から覚悟はしていた、だから悲しくもなんともねえ。

 

    俺は墓の前に座り、眼をつむって手を合わせる。そして眼を開けて手を離す。

 

「父さん、母さん久しぶり。そこに名前が彫られてあるけど、俺はまだ元気で生きているよ。この一年間で俺も世界も変わったよ。まあ、俺に至ってはこの半年間で住む環境とか色々変わったよ。でもそのおかげでマドカと再会できたよ。父さん、母さん。俺は親不孝者かもしれない、墓参りだって次はいつできるかわからない。それでも俺は行くよ……」

 

    そして俺は立ち上がり。

 

「いってきます」




次回はプレゼントの中身お披露目と亡国機業の開発部の部長登場。
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