インフィニット・ストラトス ファントム   作:OLAP

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更新おくれてしまいすいません。




モノクローム・アバター

「一夏、今日から貴方には私の部隊『モノクローム・アバター』に所属してもらう事になるわ。でもその前に渡すものがあるわ」

 

    年が明けて初めての訓練の日、俺は今日からスコールさんの部隊『モノクローム・アバター』に所属することになっている。

 

    今は整備室で改修してもらったライダを受け取りに来たのだが、スコールさんは俺にライダを渡す時に真剣な表情している。

 

「貴方には渡すものがある」

 

    スコールさんは近くにあった棚から何かを取り出して俺に持ってきた。

 

    それは亡国機業の制服と顔全体を覆うような仮面

 

「なんですか、この仮面?」

 

「貴方は世界でただ一人の男性IS操縦者、だからその素顔を隠すためにこの仮面が必要なのよ」

 

    そういう事か。気を使ってくれんだ。そんな事を考えながらその二つを撮ろうとした時、スコールさんに止められた。

 

「一夏、これを貴方が取るっていう事はこれから任務を受ける事になるのよ。それは貴方に人殺しをさせる事にもなる。施設の襲撃、暗殺、殲滅戦、様々な事が貴方に殺しをさせるの。それに戻れなくなるわよ」

 

    スコールさんが俺を諭すように話しかける。

 

 

 

 

 

それだけか?

 

 

 

 

 

そんなものISを動かした時から

 

 

 

 

 

誘拐されたときから

 

 

 

 

    俺はゆっくりとスコールさんに近づき、スコールさんが持っていた仮面を右手で掴む。そして左手で伸びた髪の毛をかきあげると仮面を装着する。仮面の側面から二本のベルトが飛び出して、後頭部の位置で二本のベルトが引っ付き、頭部に固定される。視界も普段とそんなに変わらない。よくここまで綺麗に視界を確保できるな。仮面を通して見る世界は何処となく異なる印象を受けた。

 

 

 

 

 

理解(カクゴ)している

 

 

 

 

 

「スコールさん……そんな事もわかっていなかったら銃なんて握りませんよ。銃を持っているのに人を殺す覚悟がないなんて甘い事は言わない。そんなのもわかっていなかったら訓練なんて受けていません。戦闘の技術も覚えません。戻れないのであれば進むしかないでしょ、進まなければ死んでしまう」

 

    俺がそう言うと、スコールさんは妖艶に笑った。何もかもを魅了し虜にしてしまいそうな笑み。そして

 

「ふふ、貴方ならそういってくれると思ったわ。ようこそ、私の部隊『モノクローム・アバター』に。コードネーム『ゼロ』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日から此方の部隊に所属することになりました、コードネーム『ゼロ』です」

 

    目の前のソファーに座っている人たちに向かって一礼する。声は仮面に付けられたボイスチェンジャーによって無機質なものになっている。

 

    今俺がいるのは『モノクローム・アバター』に与えられた部屋、亡国機業の実働部隊の部隊一つ一つにそれぞれ作戦会議などを行うための部屋が用意されている。

 

    室内にいるのは俺とスコールさんを合わせて五人、黒色のボブカットの二十代前半の女性、背中まで伸びた赤いロングヘアの女性、そしてオータム。

 

    三人の女性が俺のことを訝しむ様に見てくる。無理もないか、身長は一般的な小学五年生よりか高いが、成人女性の平均身長と比べると低い。そんな奴が奇妙な仮面をつけて、さらにボイスチェンジャーまで使えば怪しまれることは間違いない。

 

    それより、何で味方なのにわざわざ素顔を隠す必要があるんだ?

 

    遅かれ早かれ俺の正体がバレるなんて明白だ。それなのに何故?

スパイ対策?それともこの亡国機業の中にいる女尊男卑の考えを持った人間から守るため?

 

    思考張り巡らせながら、俺は横目で隣にいるスコールさんの顔を窺う。スコールさんは俺の目線に気づいたのかニコッと微笑んだ。

 

    はたから見れば、俺を安心させるために「大丈夫」や「心配ない」という意味で微笑んだように見えるだろう。

 

    しかし、俺にとってはこの微笑みは別の意味に見える。

 

「なあ、スコール。一つ聞いていいか?」

 

「なにかしらシルヴィア」

 

    ソファーに座っていた黒髪のボブカットのシルヴィアと呼ばれた女性が手を上げる。

 

「なんで、その子は仮面つけてるんだ?」

 

「これ?ええっとねえ、彼女は顔に酷い火傷をおってしまってるのよ。だから彼女自身が顔を他人に見せたくないらしくて、かめんをつけているのよ」

 

嘘ダッ!

 

    今のスコールさんの発言でわかったよ、この人は初めから俺を嵌める為に仮面をつけさせたのか。

 

「そうか……よしスコール。今からゼロの歓迎会を兼ねて風呂場に行くぞ、裸の付き合いというやつだ」

 

    シルヴィアさん、何言ってるんですか?俺、男ですよ。ああ、そうかこの人たちは俺を女として認識してるんだな。なら、そういうことを言っても仕方ないのか?

 

「あら、いいんじゃないの」

 

    スコールさん、貴方は俺が男だって知ってるじゃないですか。そこは普通止めるでしょ。なんで同乗してるんですか。

 

    やっぱりあの時の目は安心させる為のものではない。これから起こるかもしれない愉しい事に対して期待していた目だ。俺を抱き枕にして寝ていた時も同じ目をしていた。

 

    逃げよう

 

    そう思い、出口に向かって歩き出そうとしたその時、肩をスコールさんに掴まれた。スコールさんは俺に対して笑みを浮かべているが、瞳は笑ってなどいなかった。

 

   そして俺を掴んで離さないスコールさんの艶かしい手、先ほどから他の三人にばれないように振りほどこうとしているのだが、一向にふりほどけない。それどころかどんどんつかむ力が強くなって行き、俺の肩を今にも砕こうとしているのかもしれない。

 

    あれだな、スコールさんは始めからこの状況を作り上げようとしていたんだ。そして俺の正体が男だとわかった時の隊員たちの反応を楽しみにしているに違いない。

 

「ほら、あんたもそんなの付けてないでさ。アタシ達はそんな火傷なんて気にしないからさ。外そうぜ」

 

    シルヴィアさんが俺の仮面に手を伸ばしてくる。顔がばれてはいけない、そう思い、左手で仮面へと手を伸ばすシルヴィアさんの腕をつかもうとしたその時。

 

    ゴキリと右肩から変な、聞いたこともなく、聞きたくもない音が聞こえた。

 

    まあ、簡単に言うと右肩をスコールさんに外されました。……よくもやりやがったな。

 

    右肩を起点にして、体全体に痛みが走る。俺は思わず左手で右肩を治そうとする。

 

    しかし、そうしているうちにシルヴィアさんの手が俺の仮面にかけられる。そして仮面の側面にあるスイッチを押して留め具を外し、ゆっくりと顔から仮面を外していく。

 

    もう、無理

 

「え?」

 

    俺の顔を見て驚くシルヴィアさん、よくみると残りの二人も驚いている。

 

「……ど、どうも」

 

「「「はあああああああ!?」」」

 

    女性三人の心からの驚愕の声が部屋に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    あれから数分後、俺は部屋の中に備え付けられているソファーに座り、目の前のテーブルにはたくさんのお菓子やジュースが並べられていた。

 

    どうしてこうなってる

 

    俺の正体が発覚し後、軽いパニック状態に陥った。女性にしか使えない筈のISを使う部隊にまさか、男が入隊してくるなんて考えもしてなかったんだろう。

 

    そしてそのパニックをスコールさんがあっさりと収めて、それからは俺に関する説明の時間があった。最初は三人とも信じられないといった表情だったが、ライダを部分展開したのを見せると納得してくれた。

 

    そしてそれからは自己紹介を軽く済ませて、俺の歓迎会の準備をしている。

 

「どうなってんのよ、スコール。アタシは聞いてないわよ、男性IS操縦者がいるのも、ウチに入隊してくるのも。会議で話上がった?」

 

「会議には上がっていたわよ、シルヴィア。あなたが休んでいた一回だけだけどね。それにこのことは副隊長以上の者しか知らないわよ」

 

「……あんときか、確かにアタシはいなかったけどさ、ひとこと言っても言ってくれても良かったんじゃないの?これでもこの隊の副隊長よ」

 

「そうね、次からは気をつけるわ」

 

    ふと部屋の隅を見てみれば、スコールさんとシルヴィアさんが軽く口論をしている。まあ、少ししたら収まるだろう。

 

    オータムはオータムでいそいそと用意している。

 

    さて今のところ問題は

 

「…………」

 

    さっきからおれの顔をじっと見ている赤髪の女性、確か名前はクーネさん。スコールさんやシルヴィアさんよりか若い。

 

    何だこの人は、俺の顔を見てそんなに面白いか?そんなことを考えているとクーネさんが此方に近づいて来た。そして俺の前に立つと、中腰になり俺の肩に両手を乗せてガッチリと掴む。そして顔だけをスコールさんの方に向ける。スコールさんもクーネさんが見ているのに気づいたのか、シルヴィアさんと一緒に此方を見ている。

 

「ねえ、スコール……」

 

    クーネさんがゆっくりと口を開き

 

「どうしたの、クーネ」

 

「……この子もらっていい!?」

 

    突然変な事を言い出した。

 

「だめよ」

 

「何故に!それよりスコール、この子何処で見つけたの。凄くないこの子の目、何か物凄い何かを秘めているような目。この子きっと将来有望よ!だから、ね!」

 

    息を荒げながら説得するクーネさん。

 

「アンタは落ち着きなさい!」

 

    何時の間にかシルヴィアさんがクーネさんの背後に移動して、クーネさんの首裏を手刀で叩いた。するとクーネさんは先ほどの興奮が嘘のように倒れた。

 

「悪いねえ、こんなやつだけどさ本当はいい奴だからさ。唯の子供好きだから、嫌いにならないでくれ」

 

   気絶したクーネさんを肩に担いだまま、俺に話しかける。シルヴィアさんは少し怖い人かと思っていたけど案外優しいんですね。

 

「よーし、それじゃあ一夏の歓迎会はじめるわよ!」

 

    シルヴィアさんの号令のもと、パーティーが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

部屋の隅で気絶しているクーネさんを放って置いて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー……つれえ」

 

    歓迎会を終えた俺はダンボールを抱えたまま新たにできた宿舎を歩く。

 

    あの後順調に歓迎会があった。お菓子を食べて、騒ぎ、話をしたりして盛り上がり終わった。

 

    訓練は明日からあり、今からは新しくできた寄宿舎への引っ越し作業。とはいってもダンボール二個分の衣服と勉強道具を運ぶだけだ。家具は既に向こうに用意されてあるらしい。家具を新しく買うのは部屋に住む本人たちの自由らしい。

 

    因みにだが、亡国機業の隊員達にはそれぞれ給料が支払われている。開発班や整備班などは時給制にボーナスがつく。実働部隊は基本給プラスのこなした任務によるボーナス。基本給は隊員の階級によって違う。給料は個人の口座にちゃんと振り込まれる。

 

 

 

 

 

 

    そんなこんなで部屋の前につきました。扉は木製で鍵付き。中にはいれば、入口付近に二段ベッドがそれぞれ二つずつ。どうやら四人部屋の様だ。

 

    二段ベッドを通り過ぎて奥にいけば、マットが敷かれている。そこにはテレビやテーブル、奥に行けば簡易型のキッチンまである。収納スペースもたくさんあり、窓からは新鮮な空気が入ってくる。

 

    良いな。全体的な広さはスコールさんの部屋と同じくらい。ここが今日から俺が暮らす部屋か…………

 

「誰かいるー?この部屋の入居者なんっすけど」

 

    扉が開く音がして少年の声が聞こえた。俺は振り返って、少年に挨拶しようとする。

 

「いますよー、同じくこの部屋の住居……者……の?」

 

    入ってきた少年の顔を見て、空いた口が塞がらなかった。それは向こうも同じ様だ。

 

「E52……」

 

「O10」

 

    二人とも、かつての番号で呼び合ってしまった。

 

    俺の目の前にいるのはあの日俺が戦った少年、E52。やっぱりあの後ここに入ってたんだな。

 

    そんな事を考えていると室内に嫌な沈黙が広がる。俺の目の前にいるのは俺が殺そうとした奴、相手の目の前にいるのは自分を殺そうとした奴。何を話したらいいかわからない。でも

 

「まあ、なんだ……中で話そうか」

 

「お、おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶり……ですね」

 

「そうっすね」

 

    とりあえずテーブル越しに床に座り、自己紹介を済ませようとするが話が繋がらない。

 

ならば

 

「すいませんでした。マジで俺も生き残るので必死だったんだ」

 

    テーブルに両手をついて頭を下げる。

 

「謝らなくていいさ、俺もお前の立場だったら殺してた。だから罪悪感は抱かなくていい。むしろお前があの時の相手で助かった。別のやつだったら俺は今頃あの世だからな」

 

「そうか、すまない。そういえば自己紹介がまだだったな、俺は一夏。一夏と呼んでくれ」

 

「よろしく、イチカ。オレはグレイ・ジーナス、グレイって呼んでくれ」

 

「ああ、これからよろしくなグレイ」

 

「他の奴らが来るのを待つか?」

 

「そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

「入るぞ」

 

    あれから二人で暫くくつろいでいると、部屋の中に新たに二人の少年が入ってきた。

 

「ええっとこの部屋で生活することになりましたジーク・オーバーです。よろしくお願いします」

 

    深緑色の髪をした、黒い目の少年。グレイとは違って落ち着いているみたいだ。

 

「アドルフ、よろしく頼む」

 

    もう一人は銀色の髪に赤い瞳の少年。何処か殺伐とした雰囲気を漂わせている。

 

「一夏だ。よろしく」

 

「グレイ、こっちもよろしくな」

    

 

 

 

 

「それでこれからどうするよ」

 

    部屋の引っ越しも全て終わったところでグレイが話を振った。

 

    部屋のベッドの割り振りは俺とジークが二段ベッドの上段、グレイとアドルフが下段になった。

 

「どうするって言われてもな」

 

「そうですねえ。もう遅いですし、お風呂にでも行きませんか?」

 

「裸の付き合いというやつか?」

 

「なら行くか!」

 

    四人とも制服を着込んで、風呂場に出かけた。

 

 

 

 

 

「つーかよぉ、一夏。なんでお前ネックレスなんてしてんだ?」

 

「なんだグレイ、つけていたら可笑しいのか。これは大切な人から貰ったんだよ」

 

「へえ、そうか」

 

    脱衣場には俺たちの他に誰もおらず、他に衣服もなかったことから俺たちの貸し切りみたいだ。

 

    上着を脱ぎ、ロッカーの中に入れる。そして全ての服を脱ぎ捨てて、ハンドタオルを持ち風呂場に向かう。

 

「一夏、君の背中どうしたんだい!?」

 

    ジークがいきなり、俺に向かって叫んだ。

 

    ああ、そういえばこいつらは俺の背中のこと知らないんだよな。

 

    昔はこの背中のことが嫌いだった。もし昔のままの俺だったら背中のことは隠していただろう。

 

    けれど今は違う。アリサやティファに褒められてからこれに対する俺の意識は変わった。

 

    だから

 

「いいだろ、これ。気に入ってんだぜ」

 

    少し自分で誇ってみよう。

    

 

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