「……なんですか、これ?」
ティファの見舞いを終えた後、俺はスコールさんに呼びだされた。正確に言うとスコールさんとリリスさんの二人からだが。
リリスさんの執務室にきた俺はスコールさんから四角い箱の様な物を渡された。ISのコアのようだが声を感じない。
「コアみたいですけど」
「やっぱり声を感じないのね。リリスが聞こえないって聞いたから、あなたを呼んだのよ」
椅子に座りながらスコールさんが話しかけてくる。リリスさんはリリスさんで、ディスプレイの中で座っている。
それにしても声が聞こえないか、束さんのコアは全て声が聞こえるから。もしかしてこれは。
「あの施設にいたISのコアですか?」
「察しがいいねえ」
リリスさんが丸が書かれてあるプラカードを掲げた。
なるほど、確かにあれは声が聞こえなかった。それに数も多かった。
「声が聞こえない…………いや、違うな。心が無いんだと思います。000や001の様に心が無い。というより寧ろ心を排除していると言っていいのか?」
俺の考察にリリスさんはニヤリと笑う。
「私もそう思うな。心という余分なものを排除して作り上げられたISコア、私の予想だがこれは量産型だと思う。それも篠ノ之束が関与してない」
量産コア、今世界中がそれを作り上げるのに必死になっている物だ。そんなものを束さん以外の誰が作ったんだろうか。
「それはあなたでも作れるの、リリス?」
「そうだな、このコアについてなら六割がた解析がすんでいる。数日後には作り始めることができるだろうな…………でも、もしこれを一から作るとなれば少しキツイかな。それだけこれを作った奴が凄いということだろうな……ネオにはどんな開発部があるんだ。技術だけなら相当だぞ」
リリスさんでも作るのが難しいか、これを作った奴は一体どんな人間なんだ?
「そう、なら量産する準備をしておいたほうがいいわね。今度の幹部会で議題にあげましょう」
「そうしよう」
量産コアか……俺は使いたくないな。俺には
「もしこれが各国に知れ渡って量産されたらバランスが大変なことになるな」
「そうねえ、各国のIS保有数が増えるのはもちろんのことだけど、誘宵グループ以外にも民間の企業でISを保有する会社が増えるわね」
今現在、ISコアを保有している企業は皇さんが代表を務める誘宵グループしか存在しない。それ以外の企業はISの機体のボディを保有することはあってもコア自体は持っていない。
倉持研究所やデュノア社のような企業も作っているのはボディであり、コアはそれぞれの所属している国から貸し出されるのである。
しかし誘宵グループは他とは違い、自ら機体を開発し、自らが保有しているISコアを使用している。それにより、国との関係を持つことなく独立することができている。
誘宵グループはモンドグロッソに出場させる競技用のISを開発をしているのは勿論の事だが、主に開発しているのは災害時の救助用ISや深海や極寒の地などでの活用される極地用のISだ。
何故誘宵グループだけがISコアを保有しているかと言うと篠ノ之束の存在が大きく関わっている。コアの分配をする際に篠ノ之束が誘宵グループだけが会社としてコアを持つ事を許可したのだ。
「下手したら何処の企業もコアを持つわね」
スコールさんのいう事は最もだ。製造方法を知らないオリジナルとは違い、製造方法と資源さえ知ってしまえばいくらでも作れる。そうなれば隠れて製造する奴らも出てくる。バランスが崩壊するのも時間の問題だろう。
『おい』
少し不機嫌なゼロの声が聞こえる。俺は今待機形態のブレスレットをつけてはいないからこの近くにそれがあるんだろう。
俺に伝えたい事があるらしく、
ゼロは俺に話しかけたらしい。
「そうだな、だが所詮劣化型の量産コア。オリジナルのコアに勝る部分など量産性しかない。それ以外はオレ達の格下だ…………って
ISの性能の一部はコアに依存している。例えば武器を収縮しておくための拡張領域などはコアによって差がある。
「そうか、やはりこれは劣化品か……だが使わなければならないだろう」
リリスさんの言葉には同意する。相手はこれを使うのだから自然と敵の数は増える。だからそれに対抗するためにこちらも使わなければならない。
「……話が以上なら俺は失礼させてもらいます」
「お疲れ様、一夏。初めての任務、お疲れ。無事で良かったわ」
「ありがとうございます。では」
踵を返し、部屋を出て行く。
これからの戦いはより過酷になる。もっと鍛えないと。
「どうすんだあ、糞爺。あの量産コア、亡国機業の奴らに盗まれたじゃねえか」
何処かの一室、地図にも乗っていない極秘の建物の中に存在する部屋に二人の男がいた。
一人は中年の銀髪の男、ヨーロッパ系の人種の男。白衣を身に纏い、ソファーに座りながら、もう一人の男に話しかけている。
「……別に良い、寧ろあれは広めるために作ったのだ。あれを世界に広めれば、儂らの計画も早まるというものだ」
もう一人は老人、皺のあまりついてない顔つきに年齢の割に鋭い目つき。白色の髪は禿げている部分などはなく、二十代から三十代のそれに近い量がある。
「呑気だねえ」
「うるさい奴だ。誰のお陰で生きていると思っている。死にかけの貴様をドイツの研究所から拾ってきてやったのは誰だったかのう……」
「あーあー聞こえませーん。なあんでこんな目にあったんだろうかなあ、俺」
両手の人差し指を耳の穴に突っ込みながら叫ぶ中年。その姿はまるで無邪気な子供のようだった。
「ふん、知らん。儂は貴様の頭脳を高く評価してるんだがな」
「ほざくなよお、爺。量産コアなんて作りやがって」
「そんなことはどうでもよかろう貴様にはこれからも働いてもらわなければならない。儂らの為に。そして理想郷のために」