インフィニット・ストラトス ファントム   作:OLAP

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一夏一日

 

 

「ん……んん……もう朝かよ」

 

目覚まし時計の音を聞いて、一夏は目を覚ました。数人が一緒に寝ても十分な大きさのベッドからもそりと起き上がり、日が漏れているカーテンに近づいてカーテンを両手で勢い良く開ける。

 

「いい、朝。そして…………今日も元気か」

 

下着しか身につけていない自分の体を見ながら、晴れ晴れとつぶやいた。

 

一夏は部屋に備え付けられているクローゼットからジャージを足り出して着替える。そしてドアに向かって歩きながら軽く上半身を捻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏は亡国機業本部の周りを走っている。その速度は朝のランニングにしては速く、他に走っている人たちをどんどんと抜かしている。途中で手を降ってくる女性に対して笑顔で挨拶している。

 

 

六十分走り、そして十分間程ダッシュをすれば一夏の身体は汗をビショビショにかいていた。一夏は元の場所まで戻り、近くにあったベンチに腰をかけて体重を背もたれにかける。

 

「はい、一夏」

 

「ありがとう、ティファ。また待っていたのか」

 

一夏はベンチの近くで待っていたティファからスポーツ飲料をもらい口に含む。そしてゴクゴクと音を立てながら飲んでいく、そしてその度に喉が動くのがわかる。

 

「つーかティファ、お前ここで待ってるぐらいなら一緒に走った方が良いだろ」

 

「それもいいんだけどさー、一夏の走る速度ってめちゃくちゃ速いじゃない。ほら、私も一回参加したけど直ぐに追いつけなくなったじゃん。だからこうして私も個人的に走った後に待ってるのよ」

 

「そうか、それは大変だな。よし、そろそろ時間だし俺は戻る」

 

「私はもう少し走ってくるからじゃあね」

 

「おう」

 

一夏はベンチから立ち上がって、後ろに手を降りながら部屋のある寮棟に向かっていく。

 

 

 

 

 

自分の部屋に戻った一夏はジャージを脱ぎ捨て洗濯籠の中に入れて、バスルームへと入って行った。亡国機業では個室にしかバスルームとトイレは無く、集団部屋の人たちは共同浴場や共同トイレをしようする。もちろん男女別々だ。

 

音楽を垂れ流し、鼻歌混じりにシャワーを浴びながら、丹念に肉体を洗う。凄く良い、贅沢を浴びている。

 

 

 

 

朝食は元ルームメイトの三人と食事を行う。他の三人は既に飯を食べており、そこに一夏が加わることになった。

 

「遅いね一夏、お疲れ?」

 

席に着くなりそうそう、ジークが尋ねて来た。確かに今日の一夏はいつもより数分程来るのが遅かった。

 

「ああいや、大丈夫だ。唯いつもより少し長くシャワーを浴びてしまっていただけさ。まあ、疲れているのかもしれないな」

 

「へえ、鉄人のようなお前でも疲れるんだな。初めて知ったよ」

 

「……殴るぞ、グレイ。俺も疲れるよ、此の所モノクローム・アバターと警護が重なってな、マジヤバイ」

 

「君がそんなことを話すなんて珍しいな」

 

「んああ、たまにはな。どうもIS学園に行った日から調子がおかしい。まあ、すぐに慣れるとは思うが。食欲も出ないし」

 

そんなことを話す一夏ではあるが、目の前のお盆におかれてある朝ごはんの量は、普通の人間のソレ以上だった。

 

 

 

朝食を食べ終えると、一夏は喫茶店に向かい、そこで珈琲を頼んで、タブレットからニュースを得ていた。

 

(宇宙コロニー計画進行中、量産型ISによって制作期間の大幅短縮。イギリス、ドイツ、フランスによる合同IS展示会、夏開催予定。ラファール社業績不信…………ねえ)

 

コーヒーを一口。

 

初めて飲んだ時は苦くて飲めやしなかったブラックコーヒーだが、副隊長になってから毎日飲むようになった為に慣れてしまった。

 

慣れとは恐ろしいモノだ。一夏は言葉には出さずそう思った。

 

何をするわけでもなく、ただゆっくりとした時間を過ごす。此の時間だけは誰かに邪魔されたくはない。

 

これからの一日の為に。

 

例えそれが親しい間柄の人間であっても邪魔されるのを一夏は嫌う。

 

「疲れているようだね」

 

物事には例外が存在する。

 

カウンターの奥から一人の初老の男性が声をかけてきた。

 

白髪交じりの黒髪をオールバックして、余った髪をゴムで留め、黒いエプロンを渋く着こなす。

 

亡国機業本部の中で喫茶店を営む『マスター』だ。

 

元々は何処かの部隊の隊長を務めていたが、今は退役して奥さんと一緒にこの店をきりもりしている。

 

一夏とはシルヴィアを通しての付き合いになるが、名前は知らない。いつも『マスター』と呼んでいるからだ。名前を知らなくて困ったことはない。

 

「……ここ最近はいつもより忙しかったですからね。長距離移動に、単独での施設破壊。それに加えて爺さんの警護。まあ、直ぐになれますよ」

 

一夏は極力疲れを相手に感じさせないようにニッと笑った。

 

「少し休んでみたらどうだい?年相応の子供みたいに遊んでさあ」

 

「遊び、ねえ……」

 

空になったコーヒーカップの淵を撫でながら、一夏はマスターの言葉を反芻した。

 

「してる……つもりなんだけどな」

 

「そうか、ならよかった」

 

マスターは何時の間にか用意していた自分用のコーヒーを飲んだ。

 

「あ、あの」

 

キッチンの奥から、一人の少女がケーキを乗せた皿を持って出てきた。

 

一夏が以前任務の時に助けた少女。あの後、元居た土地に戻るわけではなく、本人の希望でこの場所に残り、今現在は勉学に慎み、空いた時間にはこの喫茶店でアルバイトをしている。

 

日本人であった為に最初は他の人と会話するのに苦労していたが、一夏やマドカが手を貸して、なんとか普段の生活では困らなくなるまでにした。

 

「ケーキ焼いたんですけど、良かったら食べてもらえますか?」

 

そう言って、カウンターから差し出されたのはチョコレートのショートケーキだ。手作りなのだが形は綺麗に整っており、プロが作ったものだと言われても信じてしまいそうだ。

 

彼女は元々お菓子や料理作りは、同年代と比べれば高い技術力を持っていたのだが、亡国機業に来てからは、それらの道の所謂プロに教えを貰い、より高みへと昇華させた。

 

彼女の次にその手の事が得意なのは意外にも一夏であり、彼もまたスコールや十蔵達の手によってありとあらゆる技術をプロから学ばされ、己の力にしてしまった。

 

「へえ……」

 

一夏は皿に置かれたフォークを手に持って、ケーキを一口サイズに切った。そしてそれをフォークで突き刺し、自分の口に運んだ。ゆっくりと噛んで味わい、食事を楽しむ。

 

「うん、美味しい。珈琲に合うね」

 

そういいながら一夏は珈琲を一口口に吹くんだ。

 

「そう!そうなんですよ!」

 

少女はケーキを持ってきたお盆を胸に抱き寄せながら、パアッと明るい笑みを見せた。

 

自分の意図を一夏にわかって貰ったのが余程嬉しかったらしい。

 

それから一夏はゆっくりとした時間を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………これは?」

 

一夏はリリスの部屋に呼び出され、其処で与えられた書類を見てそんな一言を述べた。

 

「この前のクラス代表戦でお前が鹵獲した無人ISに関するデータ」

 

「それで、解析は済んだみたいだな。誰が作ったかは……どうせ束さんか」

 

一夏は与えられた書類に関係なく、勝手に決めつける。

 

「そのようだな、本当に驚くよ。流石はISの生みの親なかなかに常識外れのことをやってのける」

 

一夏は書類を一枚めくり、其処に書かれてあることに疑問を感じて、リリスを見た。

 

「面白い考えだろ?」

 

「あまり好ましくは無いがな」

 

物語は進んで行く。

 

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