無事にマーリンが当たって良かったです。
IS学園への突撃任務より一週間もたたない日のこと、亡国機業は新たな任務をゼロ達に命じた。
それはネオのとある施設の破壊だ。どうやらそれは先の任務の目標であったVTシステムと関わりが深いらしく、そしてその施設の規模の大きさからか、モノクローム・アバターだけではなく、他にも幾つかの部隊が参加することになったのだ。
自由落下、目標は数百メートル下に存在するネオの研究施設…………ただの研究施設のはずが、どうしたものか、警備や滞在している兵が多すぎる、と一夏は思った。
研究施設の四方地平線の彼方まで広がる砂漠となっており、眼下に見える研究施設も砂の中に隠れてある建物の頂点部分が砂から飛び出しているに過ぎない。
ワラワラと巣穴をほじくり返されたアリの様に飛び出してくるネオのIS部隊。
(予想以上だな、だがまだ許容範囲内だ。問題はアドルフたちの部隊だな)
今回の任務は主に2つの部隊に分けられている。施設の外でISなどの相手をする部隊と施設の内部に入り込んで必要な情報を取得する突撃部隊。因みにだが、ゼロはこの両方の役目をやるようにとスコールから直接の命令を出されてある。
『ゼロ、切り込みなさい』
『了解』
スコールからの命令を受けたゼロはほぼ垂直に地面に向けて落下していく。敵と敵の隙間をくぐり抜けて僅か10秒にも満たない時間で施設入り口近くの地面に着地した。
これからの一夏のやることは道の確保、取り敢えずは突撃部隊のための道を作らなければならない。
そのためには。
「さて、やるか」
周りを囲む敵を皆殺しにしなければならない。
ゼロは周囲を敵に囲まれている。それもそのはずだ。そうなるためにこの場所に落下してきたのだから。
先ずは一人目、シンプルかつ最速で、実力と機体の性能に差がありすぎたためか、ゼロは簡単に背後を取り首をへし折った。
それを見た他の兵士が銃を乱射してくるが、ゼロは殺した兵士を盾にして難なくその攻撃を受け止める。
「悪魔がァ!」
そんな叫び声を無視しながら、ゼロは次々と敵を処理していく。無駄に銃弾を消費しないために格闘戦をしながら。
『運搬員、直様来い。今現在は敵はいない。援護はこちらで行う』
ある程度余裕のできた頃、ゼロは突入班を乗せたISを呼びつけた。
『わかりました』
敵を全て倒し終えた直後、ゼロの直ぐ近くに巨大なコンテナを背負った1機のウルテナの後継機が着陸した。ISが着地するやいなや、コンテナの後方部から足が伸びてしっかりと地面に支えを置いた。
コンテナのハッチが開き、中から数名の隊員が飛び出した。全員が特殊な軽めの装甲を身につけており、ISほどではないがそれなりの防御力と攻撃力を持っている。彼らが今回の突入班である。
『アドルフ、任せたぞ』
ゼロは今回突入するメンバーの中でいちばん信頼を置いているアドルフに対して無線で声をかけた。
『わかっている。こちらももしかしたら使うかもしれないがな』
突入班は次々と施設の中に入っていく。
ゼロは周囲を警戒しながら、突入班が全員ISから降りるのを待った。
センサーに敵機の反応、急いで分析を行いそのコア情報を取得。
得られたデータに目を通して、思わずゼロは気分が高まってしまった。バキリバキリと右手の指の骨を鳴らす。戦闘準備など出来ている。
突入班を運搬してきたISのパイロットも敵機の接近に気づいたのか、急いでコンテナを運搬状態にしようとして焦りを見せてしまっている。
『落ち着け、俺がいる。危険は限りなくない、いつもやっていることを冷静に行え』
『でも、先輩』
『取り敢えずはゆっくりやれ…………って言いたいが、敵さんは速いみたいだ』
ゼロは右手をピシリと指先まで綺麗に伸ばした。そしてセンサーの反応する方向に指先を向けた。
淡い光が指先から漏れ始める。この段階に入って仕舞えば、後は少しの力を入れるだけで攻撃が開始される。
建物の陰から飛び出てくる1機、元々センサーで感づかれているのに気づいているのか、真っ向から向かってくる。
その機体は以前からゼロ達が出くわしている『ガスマスク』と勝手に呼んでいる機体の後継機なのだろう。所々ソレを思わせる形状をしているが、特徴的であったガスマスクはなくなり騎士のような面立ちに、両肩のアーマーは花びらを幾重も重ねたような形になっている。
「このコア反応からすると、ガーベラの野郎か。潰すか」
ゼロは右手からエネルギーを放射、ガーベラはそれに対して右手に持っていた銃槍一体型の突撃槍を振るって切り裂いた。
対峙する亡国機業とネオのそれぞれの最新機体。
『先輩、終わりました』
ゼロの背後でコンテナを縮小し終えた兵士が次は何をすれば良いかとしりたがっている。ゼロの掩護をすれば良いのか、それとも別の行動をとれば良いのか、その判断は副隊長であるゼロに任せられている。
『下がれ、そしてそのまま別のやつの掩護に迎え、具体的にはエムの』
振り返りもせずにゼロは素早く指示を出した。
『はい、わかりました。先輩頑張ってください』
『嗚呼』
ヒラヒラと腕を振って返答。
その直後に少し不満げな声を漏らしながら、後輩はエムの掩護に向かった。
「はっ!」
接近してきたガーベラからのランスの一突き。
互いが互いの得意な領域での戦闘。遠距離攻撃は通用しないことは理解している。
だからこそ、お互いが全力を出せる距離。
ゼロは半身になってその一撃を躱すのと同時に左腕でランスを抱えるように受け止めた。そして直様右の拳を固く握りしめると、ガーベラの顔面目掛けて放った。
しかし、上手くいかない。
ガーベラは腕からランスを切り離すと、素早くしゃがみこんでゼロに足払いを仕掛ける。
ゼロは一度もガーベラを見ることもなく、ガーベラがとった行動といままでの行動から次の行動を推測して、脚のスラスターを片方だけ噴かせて勢いよく蹴りを入れた。
ガーベラは咄嗟に腕を前にクロスさせてガードするも虚しく、蹴り上げられてしまった。
「フッ!」
そして直様、蹴り上げた脚とは反対の脚で落雷のような、スラスターによって加速された浴びせ蹴りを仕掛ける。
ガーベラは今度こそ両腕でその一撃を受け止める。
が、しかし。
(重い!)
一撃は重すぎた。
腕に意識を集中させていなければ、今頃腕は逆さ向きになっていたことだろう。それでも、ミシリミシリと機体が軋む音がガーベラに伝わる。
防がれたゼロは再度スラスターを噴かせて地面に着地、今度は左足で後ろ回し蹴りをガードの間に合わなかったガーベラの腹に直撃させた。
蹴り飛ばされるガーベラ。腹に伝わる衝撃はいかにISの堅い走行に包まれていると言えど、完全に打ち消すことができず今にも胃が破裂しそうになる。
空中で体制を立て直し、なんとか着地を行った。
ココまでか、機体の性能の差にソウ驚かずにはいられなかった。
黒零は圧倒的な性能を誇る。
近距離だろうが、遠距離だろうが御構い無しの戦闘範囲の広さ。
たった一人でも一軍隊とやりあえるほどの殲滅能力。
圧倒的な加速力と最高速度。
搭乗するゼロ自身の技量の高さ。
だが一番の有利な点はその全てを正しく運用するための電脳精霊ゼロと搭乗者であるゼロの動きを通常のISよりも速く、正確に伝えることができる脳波コントロールなのかもしれない。
「さあ、時間がないんだ。ここでお前は潰すぞ」
「くっ」
総合力の差でガーベラを追い詰めていくゼロ。
その姿はまるで悪魔のようであった。