インフィニット・ストラトス ファントム   作:OLAP

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今回から学園祭編。
時間が飛んでるけど、気にしないでね。


第79話

 

 

IS学園学園祭は例年以上の盛り上がりを見せていた。

 

理由は簡単だ。世界で初めてISを動かした男性、織斑百春がいるからである。

 

ではその彼は今どうしているのかというと。

 

「織斑くん!次のお客様の接客に行って!」

 

「任せろ!」

 

クラスで行われている『執事メイド喫茶』のホール作業に追われていた。

 

かれこれ数時間、ほとんど休みなく注文に応えているため疲労困憊。

 

しかも相手をするのは生徒だけではなく、外部からやってきた部外者の相手もしなければいけず、その中には自社の商品を宣伝しようとする商社マンもいる。

 

あと少しで休憩が貰えるのだが、この忙しさと百春に対する注文が大量に発生しているため休めるか不安なのである。

 

「私、巻紙礼子と申します。もしよろしければ、我が社の商品を使いませんか?」

 

「い、いえ。そういうのは受け取れないことになっているんですよ」

 

「そう言わずに、マニュアルだけでもどうぞ」

 

あと少しで休憩に入れるというところで百春は運悪く、ISの装備を販売する会社のセールスウーマンに捕まっていた。

 

百春が商品のカタログをいらないと断っても、巻紙と名乗った女性は諦めずにしつこ過ぎる程に勧めている。

 

誰か助け舟を出してくれ、百春がそう思ったその時だ。

 

「お客様、只今大変混んでおります。他のお客様の迷惑になりますので、強引な勧誘はお辞めください」

 

メイド服に身を包んだ、ショートカットと二つのヘアピンが特徴的な鷹月静寐が助け舟を出してくれた。

 

「ありがとう、鷹月さん」

 

「大丈夫よ」

 

百春は鷹月に軽く耳打ちをしてお礼を言った。

 

「ですが──」

 

「そうだね、迷惑になってるよ」

 

一人の男性が百春たちに近づいた。

 

百八十センチメートルを超える背丈に高級なスーツを着ていてもわかる程のラガーマンのような鍛え抜かれた筋肉。

 

顔つきはかなり厳つく、それでも男らしい顔だ。

 

年は二十代半ばだろうか、巻紙と名乗った女性とほぼ同じくらい。

 

(この人、鷹月さんがさっきまで接客していた人だ)

 

「勧誘するなら場所を選んだらどうかな。周りの迷惑になっていることを考えよう。君は見たところ今年入社したばかりの新人さんのように見えるが、焦っても意味がないということだけ教えておこう」

 

男は口で巻紙を責め立てると、百春が持らっていた巻紙の名刺を手に取る。

 

「それに、『みつるぎ』なんていう名前の企業、私は一度も聞いたことがないのだが?」

 

「それは貴方の見聞が狭いだけでは?」

 

「違うねえ、私が聞いたことがないんだ。まるで存在しないかのように」

 

その言葉に巻紙は肩をビクリと反応させた。

 

「そういうことだ。早く帰るといい、君達は」

 

語尾の言葉を少し強調させながらスーツの男は巻紙を優しく説得した。

 

「……くっ、では失礼しました」

 

悔しそうな表情をしながら、巻紙はスーツの男を睨みつけながら教室の外に出た行った。

 

「あの、ありがとうございました」

 

百春はスーツの男性にお礼を言った。

 

「いやあ、気にしなくていいよ。ああいう輩には気をつけた方が良い。私も忙しいからね、失礼するよ……そうだ。これは君に、チップだ。取っておくと良い」

 

そう言って男性は財布から幾らかのお札を抜き取るとそれを鷹月に渡した。

 

鷹月はその金額に驚いた。

 

「そんな、こんなにもらえません。というか、もらっちゃいけません」

 

「日本じゃ珍しいけど、チップは素直に受け取るべきさ。それでは可憐な少女と未熟な戦士くん」

 

「……え?」

 

百春はその言葉に驚いた。スーツの男を止めようとしたが、男は百春を無視するかのようにさっさと教室の外に出て行った。

 

「これ凄いよ。十万円以上はある」

 

鷹月はチップを数え終わり、そしてその金額に驚愕していた。

 

 

 

 

 

 

 

(問題はなさそうね、外部からの人間が入ってくる以上警戒しないと)

 

生徒会長更識楯無は校内の見回りを行っていた。

 

今日この日、IS学園は大量の学外からの人がやってくる。それゆえに、生徒会や先生方は異常がないかの警備に追われていた。

 

「あのー、すいません。場所を尋ねたいのですが」

 

手にパンフレットをもった、ラガーマンのような体格のスーツ姿の男が道を尋ねてきた。

 

「はい、どこでしょうか?」

 

警備の他にもこのように道を尋ねられた場合は丁寧に道案内をしたりしている。

 

「ここなんですが」

 

スーツ姿の男は手に持っていた学園祭のパンフレットに乗せられてある地図を楯無に肩と肩が触れ合うように見せてきた。

 

「…………俺以外にもネズミが紛れている。気をつけろ、そいつらは俺たちの仲間ではない」

 

突然スーツ姿の男の声色が変わり、楯無はその変わった声に聞き覚えがあった。だが、思い出せない。

 

「織斑百春から目を離すな」

 

男はパンフレットを手放して、人ごみに混じるかのように消えて行った。

 

「あれは、そうだ…………ゼロ。マズイ」

 

楯無は思い出した。あのスーツの男は姿が変わってはいるが間違いはない、ゼロだと。

 

 

 

 

 

 

「おいティファ、そっちはどうだ」

 

スーツ姿の別人の男に変装したゼロは同じように変装してこの学園の中に変装してネオの人間を捜索しているはずのティファに通信を利用して声をかけた。

 

「そうねえ、流石は世界各国から人の集まるIS学園。食堂のレベルも種類も超一流ね」

 

「待て、お前は何をしている」

 

「なにって、お昼休憩。そういう時間でしょ。ゼロもこっちに来てさ、一緒に食べようよ」

 

呑気に明るい声でティファニアはゼロを誘った。

 

「ああ、そういえばもうそんな時間か。休憩を取る時間、確保してたな。忘れてた。俺は休憩は取らないから、お前だけとってろ」

 

ゼロはそれを伝えると連絡を切った。

 

「はあ、やっぱり無理か。一夏は少し張り切りすぎてるのよ、特に今回は。気を張りすぎて無理してる。何とかしないと」

 

ティファニアはここ最近無理して働いているゼロを心配した。

 

「これが終わったら気晴らしのためにデートに誘いましょう。そうしましょうったら、そうしましょう。安らぎは必要だから♪」

 

少し楽しげにリズムに乗せて歌うように独り言を周りに聞かれないように喋る。

 

ご飯を食べ進める。

 

「この席、空いていますか?」

 

誰かが声をかけて来た。どうやらティファニアの前の席が空いているのか知りたいらしい。

 

「空いてますよー」

 

本当は一夏が来た時のために開けていたのだが、もう来ないとなると開けておく必要はない。

 

「どなたか、待っているんですか?」

 

「ええ、そうなのよ。もう来ないけど」

 

ティファニアは声をかけて来た女性と顔を合わせることなく、眈々と答えた。

 

「それって…………一夏くん?」

 

「ッ!?」

 

突然出た一夏の名前に思わず目の前の女性を、ティファニアは見た。

 

「久しぶりね、ティファちゃん」

 

その女性はティファニアもよく知る女性、誘宵アリサだった。

 

「ど、どうして?」 

 

ティファニアはどうしてアリサが自分だと気づいたのかわからなかった。ティファニアも一夏と同じように顔の上に別人の顔のマスクをつけており、顔からは判断することができない。

 

それなのに、何故。

 

「ふふ、どうしてかしら?」

 

アリサは左手の薬指につけられてあるISの待機形態を見せびらかした。

 

そしてそれだけでティファニアは悟った。彼女は自分が身につけてあるNo.004のコアの反応で判断したのだ。

 

「一夏くんは来てないの?」

 

「……言えない。任務だもん」

 

「そう、来てるのね」

 

アリサは胸元につけてある、一夏が誕生日に貰った物とお揃いのネックレスを愛おしそうに撫でた。

 

「さあ、ティファちゃん。お話しましょ」

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