インフィニット・ストラトス ファントム   作:OLAP

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メルトリリス当たりました。キアラは外れました。


降り立つ破壊者

単眼の怪物。

 

異形の両腕の兵士。

 

鋼の乙女。

 

それらは突然現れた。

 

急遽開かれる事になった専用機限定タッグマッチ。

 

更織簪は姉の策略によって自身の専用機の制作が遅れる原因を作った織斑百春と組む事になった。

 

そしてタッグマッチの緒戦、簪と百春のペアは楯無と箒のペアと戦う事になった。

 

襲撃者は突然現れた。

 

アリーナに降りて来る十を超える無人機。

 

そいつらは四人に襲いかかった。

 

しかし所詮は絶対防御の発動しない無人機、国家代表の敵ではなかった。

 

楯無は容易く敵を両断し、屠った。

 

だが彼女には誤算があり、腹を両断したはずの機体が動き出して楯無の動きを止めた。

 

それからは楯無の体に数機の無人機が纏わり付き、自爆を行った。

 

爆発のは楯無の肉体を傷つけることはなかったが、それでもシールドエネルギーを空にすることには成功した。

 

姉を抱きかかえて泣き叫ぶ簪。

 

助けを求める。

 

されど『英雄(ヒーロー)』は現れない。

 

だが。

 

『破壊者』は現れる。

 

 

 

 

 

 

 

衝撃的登場。

 

上空からの落下と合わせて敵の一機を漆黒と黄金の大剣で屠る。

 

周囲の視線を一点に集めた新たな侵入者、ゼロ。

 

「亡国機業、ゼロ。篠ノ之束の命により、義もなく参戦した」

 

突如現れたゼロ、楯無を含めた専用機持ち達は呆気に取られるが、心を持たぬ無人機達は直様対応する。

 

ゼロの周囲を取り囲むように無人機達は動き回る。

 

(束さんの話では暴走したと言っていたが、本当に束さんが暴走させたのか?あの人が?ありえないだろ)

 

ゼロが今回IS学園にやってきたのは、篠ノ之束からのゼロに対する個人的な以来であった。

 

内容は暴走した無人機を無力化して欲しいとのことであったが、その事でゼロは幾つかの疑問点があった。

 

しかしそれ以上の事を考える気は起きない。

 

地面に突き刺していた剣を抜き取って、一度大きく振り回した。

 

風が引き裂かれ、空間が震える。

 

単眼がゼロを捉え、右腕のクローアーム、左腕のエネルギーガンをそれぞれ半々が構える。

 

一機、ゼロに向けてクローアームを構えながら飛び出した。背後からの攻撃、狙うは背中のスラスター。

 

「遅い」

 

振り向きざまの一閃。腕、胸を巻き込みながらその攻撃だけで量産型のISコアを破壊して無人機の動きを止めた。

 

大剣を右手で持ち替えて、刃にエネルギーをまとわせる。

 

単眼の左腕からエネルギーの弾丸が放たれ、ゼロは大剣で勢い良くふるってエネルギーの斬撃を飛ばした。

 

斬撃は弾丸を飲み込み、無人機達を切り裂いた。

 

しかしそれだけでは無人機は止まらず、追撃の一撃が直撃することで漸くコアが壊れて動きが止まった。

 

続けてゼロは此方に向けて両腕を突き出して来る無人機、ゴーレムに狙いをつける。ゼロもゴーレムに合わせて剣を地面に突き刺してから、右の掌を前に突き出した。

 

互いの掌からエネルギーが撃ち出され、エネルギーの激流と激流が衝突する。飲み込まれたゴーレムのエネルギー、流れに押し込まれ壁に激突、機体はバラバラになる。

 

壊れた敵に興味はない。

 

スラスターを駆使して高速で一機の背後に回り込み、コアがあるであろう心臓の位置を零落極夜を纏わせた右手で貫いた。

 

腕を引き抜き、別の機体が撃ってきたエネルギーの弾丸を左手に持った大剣の腹で防いだ。

 

次の狙いは鋼の乙女。

 

鋼の乙女、ゴーレムⅢは現在ゼロが確認できるだけでも二機存在している。二機は一箇所に固まってゼロの出方を伺っている様子だ。

 

先に動いたのはゼロ、圧倒的な加速度で鋼の乙女との距離を詰めた。

 

一振り目は両者を引き離すような縦の一撃、目論見通りに敵は別の方向に別れた。

 

ゼロは素早く大剣を逆手に持ち帰ると槍投げの要領で一機の鋼の乙女に向けて投げつけた。

 

大剣は猛スピードで鋼の乙女に直撃して、ソレを大きく後方に吹き飛ばした。吹き飛ばされて壁にぶつかる乙女と地面に突き刺さった大剣。

 

ゼロはもう一体に迫った。

 

鋼の乙女は両腕のブレードを構えてゼロに向けて一突き。

 

ゼロの顔面に向けて放たれた筈の攻撃、気づいた時には鋼の乙女の顔面にゼロの腕が突き刺さり、乙女の腕は宙を待っていた。

 

零落極夜を纏わせた右手の手刀が乙女の腕を切り飛ばし、次の一手で顔面を抉り取った。

 

胴体を蹴り飛ばして腕を抜く。顔面のメインセンサーを潰された乙女は周囲を残されたセンサーで警戒するが、その程度ではゼロの動きを捉えることができない。

 

背後に回り込まれ、頭頂部から左右真っ二つに切り裂かれる。

 

残すは一機。

 

鋼の乙女はデタラメにゼロに向けてエネルギー弾を放ち続けるがソレは容易くかわされてしまう。

 

スラスターで地面を滑るように動いて弾丸を躱しながら地面に突き刺さっていた大剣を拾った。

 

──零落極夜

 

一瞬であった。

 

大剣の刃が漆黒に染め上げられたかと思ったら、ゼロの動きがもう位置段階加速された。

 

高度な技術である二重瞬時加速による超高速軌道の撹乱と零落極夜の刃による一振りで、一瞬にして鋼の乙女は地面にバラバラに崩れ落ちていった。

 

 

 

圧倒的、圧倒的な力。

 

ゼロは大剣を持ったまま両腕を大きく広げて勝利を示す。

 

沈黙の勝利宣言。

 

地面に転がり落ちている無数の無人機の残骸達、百春達は自分たちを苦しめていたあの集団をこうも容易く倒されたとなると自信を失いそうになっていた。

 

(次は何をしかけて来る)

 

百春は雪片二型を構えながら敵の出方を伺う。

 

ゼロと目が合った。

 

──戦うか?

 

奴は無言で語っていた。

 

……戦わねば。

 

……勝てない?

 

……関係ない。

 

もはやこれは一つの男の意地の話だ。

 

理解してもらうつもりは毛等もない。

 

雪片を握る百春の腕により一層力が入る。

 

そして一歩前に出た。

 

「……百春?」

 

隣に立っていた篠ノ之箒が百春の行動に違和感を感じてしまった。

 

「箒、僕はこれから自分の意地を突き通す」

 

戦闘開始、三秒前。

 

「だから」

 

二秒。

 

「僕を」

 

一秒前。

 

「理解しないでくれ」

 

零。

 

瞬時加速によって一瞬で最高速に持ち込んで距離を詰めて、小手調べの一振り。

 

容易く防がれる。

 

顔面に向けて蹴りが迫り、百春は咄嗟に腕でこの一撃を受け止める……ことはできずに蹴り飛ばされた。

 

地面を転がり、追撃のエネルギー弾が百春に迫り来る。転がる途中で自分から大きく後方に飛ぶと弾丸を全て躱した。

 

雪羅が変形して荷電粒子砲がゼロに向けて放たれ、ゼロも百春に対して右の掌を前に突き出してエネルギー砲を放った。

 

二つの力がぶつかり合った衝撃を引き裂いて二人は突撃する。

 

ゼロは大剣を短めに持って速度を上げて攻撃を行う。

 

「ちっとはマシになったな!それなら少しは誰かを守れるな!」

 

ゼロは百春の技量の上昇に素直に感心した。

 

もしこれで少しでも技量が上がっていなかったら、百春は零落極夜の一振りで上半身と下半身が別れることになっていただろう。

 

「僕はまだ、弱い!」

 

振り上げられた雪片をゼロは躱した。

 

 

 

 

 

 

「なんだ、何が起こっている」

 

篠ノ之箒は二人の戦いを見ながらそんな事を呟いた。

 

原因はゼロと戦っている百春にある。

 

百春の動きがゼロと戦えば戦うほどに、箒の目から見てもハッキリとわかるほど百春の動きが洗練され始めてきたのだ。

 

戦っているゼロに、まるで火に誘われる蛾のように、引きずりこまれているようであった。

 

このまま戦い続ければ百春は今心に存在している壁を破壊して新たな領域に踏み込むのだろう。

 

「やめろ……」

 

しかし箒はその姿に恐怖した。

 

何故ならば彼女には百春の姿が今は亡き彼の兄、一夏に被って見えたからだ。

 

「止まれ、百春!孤独になるぞ!」

 

箒の叫びに呼応するかのように紅椿に新たな装備が生まれた。

 

両肩の展開装甲が変形してクロスボウガンを作り上げる。

 

「百春!そこを退けえええ!!」

 

ボウガン『穿千』を構える箒、狙いは勿論ゼロ。

 

百春は危険を感じて咄嗟にゼロとの距離を離して上空に逃げ、ゼロは箒を見た。

 

大剣を右手に構え直して剣先にエネルギーを送り込む。剣先に大きなエネルギーの球体が生まれ、一瞬にして圧縮されて小さくなる。

 

「穿千!」

 

引き金は引かれ、圧倒的な量のエネルギーが銃口から放たれる。大剣を振り回し、球体を投げ飛ばす。

 

大地を焼き払う弾丸と回転しながら大地を飲み込む球体。二つはぶつかり合い、強烈な衝撃をアリーナに生み出した。

 

衝撃を斬り裂いて箒に迫る。

 

突然箒とゼロの間に弾丸の雨が降り注ぎ、ゼロは咄嗟にスラスターを噴かせて後方に下がった。

 

「大丈夫ですか!?百春さん」

 

「無事!?」

 

上空を見上げれば普段から百春と仲良くしている専用機持ち三人とラウラ・ボーデヴィッヒがいた。

 

「無事だ。それよりもあいつを倒すぞ。この数なら、倒せる。ここで捕まえてみせる」

 

箒は雨月をゼロに突きつけた。顔からは勝利できるという自信があった。

 

臨海学校で負けてから、箒達は特訓を重ねてきた。

 

……もう、負けることは無い。

 

箒の周りに全員が集まる。

 

構える。

 

動き出す。

 

前衛は百春、箒、凰の三人。

 

後衛はオルコット、ボーデヴィッヒ、デュノアの三人が担当する。

 

手始めにオルコットはBT兵器『青の雫』をゼロの周囲に展開した。

 

銃弾は何時でも撃ち出せる。

 

ゼロは呼吸を整えて、冷静に状況を判断する。

 

敵は六機、一機を除いて機体の性能は圧倒的に格下。パイロットの性能は送られてきた情報から判断するとボーデヴィッヒのみ気をつければ良い。

 

────問題ない

 

ゼロは一旦大剣を収縮して、両手を自由にする。大きく手を広げて相手の出方を伺う。

 

先陣切ったのは箒、雨月、空裂を構えながらゼロに突撃する。

 

彼女は元々二刀流が得意だったのか知らないが、剣術は中々のものであった。

 

正確無比にゼロの急所をついて来る攻撃はゼロにとって予測しやすいものである。

 

両手の手首をそれぞれ左右の手の甲で弾いて箒の胴体をガラ空きにする。

 

「倒せる……ねえ。舐められたものだ」

 

胴体に両手で掌底をブチ込んで勢いよく押し飛ばした。

 

背後からの気配、ゼロは頭をずらして迫っていたレーザーを躱し、振り向きながら右手からエネルギーの弾丸を放って『青の雫』を一機潰した。

 

百春と凰がゼロに挟み撃ちを仕掛けてくる。

 

ゼロの両腕のリーチに気をつけながら、長物を駆使しながらゼロの領域の外から攻撃をし続ける。

 

更にそこにオルコット、ボーデヴィッヒ、デュノアの三人からの援護射撃が入る。

 

ゼロは長物による攻撃は弾き、援護射撃は躱していく。

 

しかしそれは全てがうまくいくわけでは無い。僅か、ほんの僅かではあるが攻撃が当たり始める。

 

勝機が見えた。これをこのまま続けたならば勝つことができると思った。

 

攻撃が加速していき、ゼロもまた加速していく。

 

────滾る心を抑え込む。

 

僅かに凰の攻撃に焦りの色が見えてしまった。それは本当に僅かで普通の人ならば絶対に気づきはしない。

 

何年間も命のやり取りをして感覚が研ぎ澄まされすぎていたゼロだから気づくことができた。

 

ゼロの領域に完全に入り込んでしまった凰の得物、双牙天月の柄をゼロは掴んだ。

 

ゾワリと凰の背中に嫌な汗が流れた。

 

柄を引っ張られ、引きずりこまれる。

 

腹に膝蹴りを叩き込まれ、意識が僅かに失われる。

 

凰の両腕を抱きかかえながら、閂スープレックスを地面ではなく背後にいた百春に叩きつけた。

 

余りにも綺麗な流れであったため、後衛の三人は一瞬見とれてしまっていた。

 

凰から腕を離してゼロは後衛に向かう。

 

周囲を取り囲むように『青の雫』か動き、弾丸を意にも止めていないかのように簡単に躱しながら突き進んでいく。

 

「動きを止める!」

 

ボーデヴィッヒが両肩からワイヤーブレードを六本、ゼロに向けて放った。

 

そして他の二人はゼロの逃げ道を遮るように弾丸を撃ちまくる。

 

避ける道はなくなり、目の前からはワイヤーブレードが迫り来る。

 

受け止める、止まるといった面倒くさい選択肢を取る意味は無い。

 

逃げる場所が無いのならば作ってしまえばいいだけの話だ。

 

ワイヤーブレードの軌道を読み取り、先ずは手始めに手の甲で二本のワイヤーを弾いて別のワイヤーの軌道に誘導して二つを絡ませる。

 

残りの二本のワイヤーブレードを左手で掴み、ボーデヴィッヒを強引にワイヤーで手繰り寄せる。

 

ボーデヴィッヒもこうなることを予め予測していたのか、ゼロに向けてAICを発動……できなかった。

 

発動する直前にゼロの右手から飛び出たエネルギーの波がゼロに迫るボーデヴィッヒの肉体を押し返した。

 

怯んだ所を再度手繰り寄せて、ワイヤーを掴んだまま一本背負いで地面に叩きつけた。

 

ワイヤーから手を離して、ボーデヴィッヒの腹を両足で一度踏みつけると、残りの後衛二人に向けて跳んだ。

 

両手に新たな武器を呼び出す。

 

『零砲・改』

 

今までの零砲を第二形態様に改良されたもので前よりも幾つかの機能が増えた。

 

単純な破壊から技巧的な破壊までなんでもござれ。

 

空中を回転しながら、弾丸を撃つ。弾丸は正確無比に全ての宙を踊る青の雫を撃ち砕いた。

 

「嘘!?」

 

バラバラな軌道を描いていた筈のビットを容易く打ち砕かれてオルコットはその射撃の技量の高さに感嘆した。

 

ゼロが着地、それと同時に両脚でアリーナを駆け回りながら残りの二人に近づく。

 

二人は下がって距離を取ろうとするが、既に手遅れであった。もう二人のいる場所はゼロの領域の範囲内であった。

 

一瞬にして距離がゼロに詰められる。

 

二人の反応が僅かに遅れた。

 

近接格闘の得意ではないオルコットが手始めに狙われた。ブルー・ティアーズにつけられた唯一の近接武器であるインター・セプターを呼び出そうとしたが、それよりも早くゼロの放った弾丸がオルコットを吹き飛ばした。

 

宙を舞いながら追撃の弾丸がオルコットの体力をたやすくうばった。

 

残るはデュノアただ一人になった。

 

ゼロは武器を収縮、再び徒手になる。両手を硬く握りしめ、右手からエネルギーが漏れ美しく光る。

 

強烈な一撃が迫り、デュノアは躱さずに咄嗟の判断で左肩のシールドで防ごうとした。

 

だがそんなものは無意味であった。頑強なはずの盾は容易く砕け散り、ゼロの右手がデュノアの肩を掴んだ。

 

更に左手も盾を砕いた。

 

守る術がなくなってしまった。

 

左手に付着した残骸を振り払い、より一層拳を硬く握りしめた。

 

無慈悲な殴打がデュノアを襲う。顔面から胴体までくまなくゼロの拳がデュノアを砕きにかかる。

 

デュノアの膝から力が抜けていく。抵抗しようとしても、体が動くのとほぼ同時にゼロがその動きを止める。

 

「……」

 

大振りのアッパーがデュノアの胴体に吸い込まれる。

 

沈黙がアリーナを占領した。

 

崩れ落ちるデュノア。

 

ゼロは蹴りをいれて遠くに飛ばした。

 

 

 

全員倒れてしまった。

 

簡単にあっさりと。

 

暴虐の戦士が振るった圧倒的な暴力によって。

 

「どうした、これまでか。もっとやれる筈だろうが、それともぬるま湯過ぎて戦う心もないのか?」

 

ゼロは近くに倒れていたデュノアを蹴り飛ばした。

 

「来いよ、織斑百春!てめえはその程度なのか、なら俺が今この場にいる全員を殺し尽くしてやろうか!守りたいなんて二度とほざけねえ様にしてやろうか!」

 

硬く握りしめた拳を百春に突きつける。

 

「させるか、そんな事をさせるか」

 

雪片を杖にしながら、百春は立ち上がった。

 

「良いぞ、それでこそ助けられた人間だ。ならば刃を向けろ、怒りに染まるな。全身全霊でこの俺を止めてみな」

 

「うおおおおお!!」

 

ゼロに向けて百春が突撃する。

 

渾身の力を込めた一振りをしかけたが、手首を掴まれて容易く止められてしまった。

 

「ほら、簡単に捕まった。こんなんだから簡単に誘拐されてしまうんだよ、モンド・グロッソの時みたいにな」

 

「……黙れ」

 

百春の力が増した。

 

掴まれていない左腕にある雪羅のクローモードで攻撃を仕掛けるが、こちらも簡単に止められてしまう。

 

「お前の兄貴もそうだったぜ、簡単に捕まって、無様に泣き喚いて、最後には一人で絶望していやがった」

 

「黙れっていってるだろうが!!」

 

最後に残された蹴りを仕掛けたが、これも予測されていたかの様に防がれた。

 

「蹴りはこう放つんだぜ!」

 

鋼鉄の巨大な槍に貫かれたような衝撃が百春の腹を襲った。

 

「飛べよ」

 

百春の腕から手を離して、勢い良く百春を飛ばした。

 

「ああ、ぐぁっ!ああ!」

 

貫かれた衝撃に悶え苦しむ百春。

 

「ちったあ、マシにはなっているが全然だな。代表候補級にはなったようだが、せめて国家代表級になってくれねえと張り合いがない。雑魚を潰してもつまらない、滾る勝負をさせてくれよ」

 

言葉を言い終えると同時にゼロはしゃがみ、背後から迫っていた箒の攻撃を躱した。

 

「せめて殺意の線は隠してくれよ。目を閉じていても見れるよ」

 

「舐めるなよ!」

 

金色に発光している紅椿に乗った箒が両手に太刀を持ったまま何度もゼロに向けて切りかかった。

 

(この発光、単一能力によるものか?しかしシールドエネルギーの回復とは厄介なものだ)

 

ゼロはカウンターを何度も箒に叩き込みながら、減る事なく、寧ろ増え続けている紅椿のシールドエネルギーを見て、単一能力を見破った。

 

「この力があれば、私は貴様と戦える。力が生まれ続ける限り、私と紅椿は戦う事ができる。絢爛舞踏、力は生まれ続ける。消費する事しかないお前は、いつか朽ちる!」

 

「果たしてそうかな!」

 

大振りの一撃に合わせて、ゼロは箒の背後に回った。

 

「幾らエネルギーを生み出せると言っても、貴様が強くなったわけではない」

 

背後から顎と太腿を掴まれて肩に担がれ、ゼロは左足を軸に激しく回転を始める。

 

「貴様の骨を全て砕いてしまえば、戦う事ができないだろう。違うのか!?」

 

回転の勢いを殺す事なく、ゼロは箒を上空に投げ飛ばした。

 

箒の背中がゾワリと震えた。

 

彼ならば全身の骨を折るなど容易いという確信があった。

 

ゼロも上空に飛び上がり、回転する箒に追いついた。

 

右手で箒の後頭部を掴み、左手は左脚を掴む。左脚の脛で胴体を抑え込み、最後に右足で胸を踏み潰す。

 

「力の雪崩に飲み込まれてしまえ」

 

天高くから瞬時加速を行い、地面に向けて孟加速を始める。

 

箒は直撃はくらうまいと必死に足掻いて抵抗するが、ゼロのロックが余りにも堅すぎるため振りほどく事ができない。

 

「大雪山落とし!」

 

地面に直撃する、その寸前の事だ。

 

 

ゼロに向けて一振りの太刀が投げつけられた。

 

 

ゼロは咄嗟に拘束を解除して、その太刀を避けた。

 

ゼロは着地すると同時に太刀が投げつけられてきた方を見た。

 

「漸くお出ましか。ビビって尻尾巻いてんのかと思っていたぜ」

 

その人物は倉持技研が新たに作り上げた試験型第三世代機『打鉄・試三』に身を包んでいる。

 

「黙れ、これ以上は貴様の好きにはさせない。これからは私が相手だ」

 

戦乙女、織斑千冬参戦。

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