復讐者が豊饒の女主人でこき使われるのは間違っているだろう!   作:ああああああ

1 / 8
プロローグ

むせかえるような血の匂いが、辺りを覆っている。うめき声と、悲鳴と、血しぶき。まさに地獄絵図だ。

 

「そこを退け、オッタル。俺が用があるのはお前じゃない」

 

「ノア・・・貴様自分が何をしているのか分かっているのか?」

 

「ああ、分かってるぜ。オッタル。俺は今日この日、この瞬間に神殺しを行う・・・フレイヤは俺が反旗を翻すことも織り込み済みでことを進めた。だから、お望み通り殺してやるんだよ!」

 

「貴様をフレイヤ様の所には行かせん!」

 

「ハッ!じゃあ、死ね!オッタル!!!」

 

金属がぶつかり火花が散り、衝撃は周囲の空気を吹き飛ばす。剣の腹でギチギチと揺れる剣を受け止めるオッタルに対し、先端を突き立てるノアは冷淡に告げる。

 

「流石だな、オッタルッ!やっぱりお前だけが、別格だ!!!」

 

「他のやつらはどうした?」

 

「5年もこのファミリアにいたんだぜ?他のやつらの戦い方も、癖も、全部知ってる!!!その上、自分の力に自信満々で、過信に満ち溢れてる!!!からめ手を使ったとはいえ、たかが13歳のガキにほぼ全滅とはッ!フレイヤファミリア持ちに落ちたもんだな!!!」

 

「ッ!」

 

その言葉の返答は斬撃。払われた剣によって双方、身体が僅かに後退し間合いを取る。

 

「特に傑作だったのは、アレンだ。自分のスピードとステータスを過信しているから、俺に負けるのさ。それに、あの自尊心と、狂信的なまでのフレイヤへの執着ッ!!!最速の名は返上したほうがいいぜ」

 

「・・・・・・」

 

「どうした!?オッタル、仲間が、貶されてるんだぜ?もっと吠えろよ」

 

「その程度の挑発に俺が乗ると思っているのなら、お前も愚かとしか言えないぞ」

 

「・・・・・ハッ、ダメ元さ。流石に、レベルが2つも離れてるお前は簡単には倒せないからな」

 

(とはいえ、状況は絶望的だ・・・ここまで、幹部どもを蹴散らすのでかなり消耗したし、正直傷が痛すぎて泣きそうだ)

 

「いくらお前とて、フレイヤファミリア全メンバーを相手にするのは不可能だ。あまり時間はないのではないか?」

 

「・・・フッ!!!」

 

ノアは、足裏から、魔力を放出し、衝撃を一方向に集中させることで爆発的な速度を生み出す。

 

瞬時に肉薄したノアは、刀を振るう。逆袈裟に奔った刃・・・同レベルの冒険者であれば、一瞬で決まったであろう斬撃。だが、そんなもの『頂天』には児戯に等しかった。

 

鮮血が舞う。斬られたのは、ノアの方だ。斬られる直前で、自分の動きが見切られていることに気づきわずかに、後ろにバックステップで後退したものの、傷は深い。

 

「ッ・・・痛ッッ・・・」

 

「あきらめろ、お前では俺には勝てない」

 

慢心ではなく、心の底からの言葉。それを分かっているからこそ、ノアは何も言い返さなかった。

 

「・・・まだ、刀を握るのか?今引けば、裁定はフレイヤ様次第だぞ。頭を冷やしたらどうだ」

 

「ハッ、冗談・・・いうな。俺があんたに勝てないのは、俺があきらめる理由にはならない!!!」

 

次の瞬間、ノアの姿は、オッタルの目の前から消失した。オッタルは、何かの気配を感じ取り、振り返る。

 

「・・・行くぞ」

 

静かに、呟いた瞬間、ノアの姿は、その場から消失した。

 

次の瞬間、ノアが現れたのは、オッタルの背後だった。

 

鮮血が、オッタルの胸から迸る。

 

その分厚い胸板には斬線が、真一文字に引かれている。

 

「なんだと?」

 

(刀身が視えなかった・・・)

 

レベル7の自分に視認できぬほどの速度の抜刀術。それは、数多の死線を乗り越えてきたオッタルにとって衝撃だった。

 

「哀れな男だ、ここまで強くなった原動力が復讐心とはな」

 

目の前に立っている少年にオッタルは目を向けて笑う。すでに体力は限界を迎え、魔力もほとんどのないだろう。足は震え、視界もオッタルを捉えているとはいいがたいほど、揺れている。だが、その眼にはまだ諦めはなかった。

 

「フレイヤ様とて、好んで貴様の姉を囮に使ったわけではない。それに最終的にやらせたのは俺だ。憎む相手を間違えるな」

 

「知ってるよ、そんなこと。最終的に手に掛けたのは闇派閥だし、フレイヤは提案しただけ。あんたは、役割上命令しただけだ。・・・分かってるよ、そんなこと。でも、何かを憎んでないとやってられねえんだよ」

 

「復讐に取りつかれるのは、お前の運命か・・・頭を冷やせ、ノア。お前には時間が必要だ」

 

オッタルは、限界に来ていたノアの意識を静かに刈り取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ここは」

 

「あ、起きたニャー。母ちゃん、目を覚ましたニャー」

 

「なんだい?やっと起きたのかい」

 

「な、アーニャ・フローメルに小巨人(デミ・ユミル)!?」

 

 

 

 

 

これは、英雄の物語ではない。悪役の物語でもない。これは、復讐に取りつかれた少年が安らぎを得る話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。