復讐者が豊饒の女主人でこき使われるのは間違っているだろう! 作:ああああああ
それなりに手入れされている入り口から共同墓地へ入る。
あの日から一度も来ていなかった場所だ。ここに来たら、姉が死んだことを心の底から認めてしまう気がして来たくなかった。
考えたくなかった。
受け入れたくなかった。
何かで意識をそらしていたかった。
でも、姉の声はもう聞こえないのだ。俺の名前を呼んでくれるあの優しい声はもう聞こえない。いやでも現実を見せつけられる。
「いつまでそこで突っ立ているきだにゃー」
「・・・うるさいぞ、アホ猫。一体何の用だ?」
「ミャーが誰の墓を参ろうとミャーの勝手ニャ。それに、そんな辛気臭い顔してたら墓の中にいるオミャーの姉も喜ばないニャ」
「知ったような口をきくなよッ!!!」
「ミャーは確かにオミャーのことはよく知らないニャ。でも、レインのことなら少しは知ってるニャ」
「・・・姉さんを?」
俺たちが入団するとほぼ同時に、アーニャとミア・グランドはファミリアを半脱退していたはずだ。接点はないはず。
「レインは良くうちの店に来てたにゃ。だから、仲良くなったニャ」
「・・・」
「レインはいつもオミャーの話をしてたにゃ。可愛い弟だってニャー。毎回毎回、弟自慢に付き合うこっちの身になってほしいニャッ!」
「姉さんが・・・」
「だから、多少は知ってるニャ。オミャーの父親がある同族に裏切りを受けて殺されたことも。オミャーは、そいつを探すためにオラリオに来たことも」
「ハハッ、随分姉さんはあんたに気を許してたんだな。そんなことまでしゃべってるとはな」
「この話を聞いたのは、レインが死ぬ前夜ニャ」
「ッッッ―――」
「レインは、自分に何かあったら弟のことを気にかけてほしいとミア母ちゃんに頼み込みに来たニャ」
・・・ギルドから、出された強制任務。囮は別に姉さんでなくてもよかったはずだった。レベルで言うなら、俺でもよかったはずだ。でも、そもそも任務の話が俺に伝えられたのは姉さんがダンジョンに潜った後だった。
話を聞いて、ダンジョンに向かおうとした俺を数人の
だけど、着いた時には、すべては終わっていた。姉さんのほかに数人の団員達。その全員が死んでいた。それも、明らかにいたぶったとしか思えない傷跡を残して。
・・・おそらく姉さんは、どうしても今回の件に俺を関わらせたくなかったのだろう。幹部を連れて行けば、死なずに済んだかもしれないのにもかかわらずわざわざ俺の監視に着けるようにフレイヤに頼み込んだのだろう。
そこまでして、俺を関わらせたくなかった理由。想像はついていた。おそらく、父の仇が関わっていたのだろう。俺が復讐を誓っていることに姉さんはあまり肯定的ではなかった。本当は、復讐なんて俺に目指してほしくはなかったのだろう。だから、自分で因縁を終わらせようとした。だから、万が一にでも俺が関わるのを止めようとした。
アーニャの話を聞き確信が持てた。
「勝手だよ。自己満足で弟を守って、勝手に死んでいくなんて・・・あまりにも勝手だ・・・」
「・・・」
「ずっと一緒にいるって言っていたくせにッ・・・結局は置いていくんだッ!父さんたちのように!ッ・・・」
「少年は―――レインが死んでから一回でも泣いたかにゃ?」
「ッ―――」
「ミャーは、泣いたニャ。ボロボロ泣いたニャ」
ふいに引っ張られる。引き寄せられて、アーニャの胸に頰があたった。腕が背中に回り、強く抱きしめてくる。アーニャの体温と鼓動が頬を通して伝わってくる。
「オミャーも泣くといいニャ―――悲しい時は泣くものニャ」
視界が歪む。目頭が熱くなり、じーんと鼻の奥が痺れるほど熱い涙が溢れてきた。ああ、そっか・・・俺泣いてなかったんだな。
「ッ―――クッ―――みんな勝手だ。おいていかれる側の気持ちなんか、考えてないッ・・・いつだって、自己犠牲なんて・・・最低の行為だ・・・置いていかれるくらいなら―――俺も連れて行ってほしかった」
静謐な月が見下ろす静かな墓地で、俺はアーニャの胸に継がるようにして泣いた。驚くほど泣いた。きっと、言葉にできない感情もすべて涙になってあふれたのだろう。
この日が13年という短い人生の中では一番泣いた日だった。でも、きっと長いエルフの生の中でも今日以上に泣くことはないと思うぐらい俺は泣き続けた。
主人公の親族と敵以外のオリキャラは出てきません。