復讐者が豊饒の女主人でこき使われるのは間違っているだろう!   作:ああああああ

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第8話

ノアは、街の中を疾駆する・・・。放たれた魔物が民間人に被害を出す前に刈り取る。あの冒険者にも仕事が回るように、加減して魔物を刈り取っていく

 

ベルとシルバーバックの戦いを他の冒険者が邪魔しなければいい。まあ、その辺はオッタルが何とかするだろう。

 

「・・・何だあのモンスターは?」

 

ノアの視線の先・・・そこには極彩色の花のモンスターがいた。

 

 

 

ノアが、極彩色のモンスターを視認したと同時刻に、ティオナ、ティオネ、レフィーヤの三人も脱走したモンスターの駆除に当たっていた。

 

「蛇かと思ったけど、これは花かな?」

 

「どっちでもいいわ。行くわよティオナ。レフィーヤは詠唱お願い」

 

「は、はい!」

 

地中から出現した新種であろうモンスターと三人は戦闘を開始した。怪物祭にわざわざ武器など持ち歩いているはずはなく、ティオナとティオネは必然的に徒手空拳での戦闘となった。

 

「かったぁ〜!」

 

モンスターの皮膚を打撃した瞬間、ティオナは驚愕した。渾身の一撃が阻まれたのだ。

 

素手とはいえ、並みのモンスターであれば肉体を破砕する第一級冒険者の強撃だ、にも関わらず貫通も撃砕もかなわない。凄まじい硬度を誇る滑らかな体皮は僅かばかり陥没したのみで、逆にティオナの手足にダメージを与えてきた。

 

 「【解き放つ一条の光、聖木の弓幹ゆがら。汝、弓の名手なり】」

 

レフィーヤが詠唱を紡ぐ。花型のモンスターは姉妹に掛かりっきりでレフィーヤを歯牙にもかけていない。

 

 「【狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】!」

 

 速度に重点を置いた魔法が完成し、解放を前に魔力が収束した直後────それまでの姿勢を覆し、モンスターがレフィーヤに振り向いた。

 

 「え?」

 

その異常な反応に、レフィーヤの心臓は恐怖をはらんで震えた。

 

そして衝撃がレフィーヤの腹部を貫いた。

 

「グッ・・・」

 

痛みで、レフィーヤは吹き飛ばされた場所で動けなくなってしまう。

 

それを見逃すはずはなく、モンスターの攻撃がレフィーヤに迫る。

 

「「レフィーヤ、危ない!?」」

 

ティオナたちの悲鳴が耳を突き抜けるが、返事をすることも立ち上がることも出来ない。

 

そして、地面から伸びる黄緑色の突起物は防具を纏っていない無防備な腹に・・・・・・叩き込まれることはなかった。

 

「・・・え?」

 

代わりに、レフィーヤが感じ取ったのは何かに引っ張られる感覚と浮遊感、そして風を切るほどの圧倒的な速度だった。

 

「あ、あなたは・・・」

 

レフィーヤが恐る恐る目を開けると、そこには自分より少し年上に見える同胞が立っており、足元を見れば、自分が建物の上にいるのを視認できた。

 

(す、すごい。あの一瞬で、あの位置から私を助けて、ここまで運ぶなんて。私なんかとは違う。怖がって、足がすくんで、何もできなかったダメな私なんかとは)

 

「あ、あの、ありがとうございま「足がすくんで動けないほど、怖いのなら最初から戦いになど出るべきではないぞ」」

 

自分が助けられたのを理解してお礼を言おうとしたレフィーヤは、放たれた言葉に息をのんだ。初対面の人に、バカにされたことは気にならなかった。ただ・・・何も出来ずに足を引っ張った情けない自分に、腹が煮えくり返るほど怒りを覚えた。

 

「わ、私は・・・」

 

「違うというなら、前を向け!【千の妖精】!見ろ、お前の魔法があれば、助けられるはずの人間を、見ろ、懸命に戦う仲間の姿を。自分たちが誇り高いなどとくだらないことを抜かす、エルフであれば、何をするべきかはわかるだろ。お前は誰だ?何をなすべきだ?」

 

ぐっと喉を詰まらせるレフィーヤは俯いて、目を瞑り・・・左手を握りしめ、勢いよくその美しい双眸を見開いた。

 

「私は!・・・私はレフィーヤ•ウィリディス!ウィーシェの森のエルフ!神ロキと契りを交わした、このオラリオで最も強く、誇り高い、偉大な眷属ファミリアの一員!逃げ出すわけにはいかない!!」

 

吐き出した言葉は力を与え、今一度レフィーヤを鼓舞し、戦場へと立たせる。

 

(どんなに強がっても私はあの人たちに相応しくない。まだ弱くて、追いつけない。そんなこと誰よりも私がわかってる!)

 

劣等感に苛まれるほど、卑屈に陥ってしまうほど、憧憬は遠すぎる。心が折れてしまうほど遠い。

自身を受け入れてくれた彼女たちの隣りにいたいと、自分を何度も救い出してくれた彼女たちの傍にいたいと

 

「よし、そこまで吠えられれば上出来だな。生憎、俺も今は手ぶらでな。あんたの魔法でけりをつける・・・おい、そこのアマゾネス!!!聞こえてるか!!!」

 

「聞こえてるわよ!何よ!」

 

「できるだけ、そのモンスターを引き付けておけ!詠唱が終わるまでこのエルフは、俺が守ってやるッ!」

 

「はぁ?なんで誰とも知らないやつの言うことを聞かないといけないわけ!?」

 

「自分たちで、このエルフを守りながら戦えるかどうか考えてから反論したらどうだ!」

 

「・・・チッ」

 

「ティオネ、ここは協力してもらおうよ」

 

「・・・わかった、頼むわよ!」

 

ノアは、隣にいるレフィーヤに視線を向けて、抱きかかえた。いわゆるお姫様抱っこと言うやつをレフィーヤはされているのだ。

 

「ふぇ?」

 

「このほうが動きやすい。俺があんたを抱えたまま、逃げる。いわゆる、疑似並行詠唱と言ったところだ。触手の心配はしなくていい。どうせあの動きなら、俺には追い付けない。詠唱を続けろ・・・あと、目を閉じてたほうが身のためだ。酔うぞ?」

 

「え?え?抱えたままって?このまま走るんですか!?」

 

あまりの情報量に、レフィーヤは半パニック状態だが、ノアは問答することなく切り捨てる。

 

「そうだ、いくぞ」

 

「えええええええ!?」

 

触手を最低限の動きで躱しながら、モンスターの周りを疾駆する。

 

 「【ウィーシェの名のもとに願う】!」

 

詠唱を始めた、レフィーヤを狙い、触手がノアたちに襲い掛かる。が、ノアに触手は届かない。圧倒的なスピード。緩急。その組み合わせによって、食人花は追いつくことができない。

 

「な、なにあいつ!?」

 

「うわ、すっごい!速くない?」

 

姉妹の驚愕をよそに、詠唱の第一段階が完了した。

 

 「【エルフ・リング】」

 

長文詠唱が完成した魔法に魔法円(マジックサークル)が山吹色から翡翠色に変化する。収斂された魔力に戦闘していた2人が気づく。食人花も同様に。

 

レフィーヤに神が授けた二つ名は【千の妖精】。

 

エルフの魔法に限り、詠唱及び効果を完全把握したものを己の必殺として行使する、前代未聞の反則技。二つ分の詠唱時間と精神力マインドを犠牲にし、レフィーヤはあらゆるエルフの魔法を発動させる事が出来る。二つ名はその魔法に因んだものだ。

 

 「【閉ざされる光、凍てつく大地】」

 

召還するのはエルフの王女であるリヴェリアの攻撃魔法。極寒の吹雪を呼び起こし時さえも凍てつかせる無慈悲な雪波。

 

 「はいはいっと!」

 

 「大人しくしてろッ!」

 

4体の食人花がレフィーヤに急迫するが、ノアが躱し、二人が殴り蹴り弾いて突撃を阻む。

 

それでも地面からモンスターの触手は突き出てくる。二人は、衝撃が足や肩を掠め、流血する。

 

 「【吹雪け、三度の厳冬────我が名はアールヴ】!」

 

レフィーヤは紺碧の双眸を釣り上げ一気に詠唱を終わらせた。拡大する魔法円マジックサークルがレフィーヤの周りを光で包み込む。

 

ノアは、一瞬で建物の壁を蹴り食人花の肉薄する。

 

「射程圏内だ!」

 

「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」

 

三条の吹雪。ティオナたち姉妹が離脱する中、大気をも凍てつかせる純白の細氷がモンスター達に直撃する。食人花のありとあらゆるものが凍結され、やがて動きは完全停止した。

 

 「ナイス、レフィーヤ!」

 

 「散々、手を焼かせてくれたわね、この糞花ッ」

 

ティオナと若干いらだっているティオネが食人花の上に着地する。一糸乱れぬ渾身の回し蹴りが食人花の体躯の中央に炸裂し、文字通り粉砕した。

 

「まだ、残り一匹いるぞ!」

 

「―――【目覚めよ(テンペスト)】」

 

ノアが注意喚起した瞬間、突風が氷像とかした食人花を切り裂いた。聴こえてきたのは、風の妖精の音色。

 

あまりの衝撃に大地が削れ、地震の如く地が揺れる。粉塵に視界が覆われる中、一人の人影がレフィーヤたちの前に立っていた。やがて煙が晴れていきその姿が露となる。それは黄金の髪を靡かせた剣士。

 

アイズ・ヴァレンシュタインがそこに居た。

 

「げ?」

 

「アイズさん!」

 

出会ってはいけない相手に出会ってしまった、そんな反応をしているノアとは裏腹にあこがれの人の登場にレフィーヤは歓喜の声を上げた。

 

それと同時に、ノアは全速力で転がっていた魔石を1つだけ回収しその場を逃げ出した。

 


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