世界は戦争が多い異世界へと転移したようです   作:スターリニウム

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第13話 モンスター処理と大規模侵攻の前夜

ーホルムストール教国 聖地 ベイト・カーメルー

 

ここは、ホルムストール教国にとって聖地でもあり、主要都市でもあるベイト・カーメル。

 

この都市は、古代から、世界の王[ジュゴボ]がこの地に巨大な穴を穿ち、そこから神々の力で生み出した燃える石や、光る石等の財宝を蓄えていると伝えられており、その石の採掘地でもある。

 

中心部にある宮殿前広場では、オーラウト王国の王都の奇襲成功を祝う式典が開かれていた。

 

そこには、教皇のフロイント2世も参加していた。

 

辺りは、騎馬兵や、騎士団などが行進し、そして無数のワイバーンが辺りを飛んでいるという、軍事パレードのような雰囲気だった。

 

「続いては、我が軍最新鋭の装備を揃えた、近衛騎兵隊の入場です!」

 

そう大声で伝えると、携帯式の魔導砲を装備した近衛騎兵隊が現れ、観衆は拍手喝采を送った。

 

しかし、この近衛騎兵隊は、教皇を護衛するために創られた部隊ではない。

 

近衛騎兵隊と謳ってはいるものの、実際は戦時中に戦力として送り込まれるれっきとした部隊なのだ。

 

各方面の軍が行進を終えると、フロイント2世の演説が始まろうとしていた。

 

すると、教皇の護衛が広場全体に渡るように大声で言い放った。

 

「教皇様の、御登場でございます!」

 

フロイント2世が表舞台に姿を表すと、観衆はすぐに静かになった。

 

そして、教皇が演説を始める。

 

「神聖なるホルムストール族に生まれた、諸君、昨日、敵国の主要都市の奇襲成功に加え、科学文明のソヌヴァ連邦と軍事同盟を正式に結んだ。これは誠に喜ばしいことだ、そして、我々ホルムストール族を貶してきたあの2か国どもに、今まさに天罰が下るときだ。」

 

「我々は、他の種族とは違い、世界の王の子孫だ。そして、ありとあらゆる面で優秀だ。そして、その優秀を活かすときが、まさにこの時だ。」

 

すると、黙って聞いていた観衆が、興奮しだした。

 

「今我々がすべきことは何か、それはわが民族を存続させるために、自らが全力を尽くすことだ!」

 

そう話すと、観衆は教皇に向かって歓声を上げた。

 

「教皇様万歳!教皇様万歳!教皇様万歳!」

 

という声が、雷鳴のように響き渡った。

 

 

2035年12月13日午前8時頃

ーオーラウト王国 ゼフテート郊外にてー

 

その頃、復興作業で忙しいゼフテートとは裏腹に、郊外の森林のすぐ脇の道路に、駐在アメリカ軍の車列が行進していた。

 

理由は、ここの近隣住民からモンスターが出没するという苦情が王国に伝えられていたため、王国が駐在アメリカ軍に処理を要請したためである。

 

この車列の中のハンヴィーに乗っていた、新兵のカーソンは、新兵の仲間たちと会話していた。

 

会話していると、突然指揮官が割り込んだ。

 

彼の名はグレイソン、新兵の部隊を指揮しているベテランだ。

 

「よしお前ら、早速初仕事が入った。今回我々は、近隣住民から苦情が出ている森に向かう。どうやらその森には狂暴なモンスターが出るそうだ、くれぐれも警戒は怠るな。それと、今回は森に近いティシュク村という所にある、ギルドという冒険者の集まりにも協力している。どのみち、この任務は我が軍にとって在庫処分にもなりえるだろう。」

 

そう説明していると、指揮官の無線にノイズがかかった。

 

指揮官はすぐに手に取った。

 

「こちら指揮官、何の用だ。」

 

「こちら最前列。もうすぐ指定された場所に到着します。搭乗している部隊に指示を。」

 

「了解した。」

 

会話が終わると、無線を近くに置いた。

 

「いいか、もうすぐで目的地に到着する。今のうちに武器の準備をしておけ。」

 

そう言ったので、新兵達はHK416の弾倉を挿入する。

 

しばらくすると、村とおぼしき建物の郡が見えてきた。

 

車列が村に入ると、住民たちは怪物を見るような目でこちらを見ていた。

 

「そういえば、俺が初めて軍の車両を見たときの事を思い出すな。」

 

カーソンが話をする

 

「で、初めて見た感想は?」

 

「正直あれに踏まれたらめちゃくちゃ痛そうだなって思ってたな。」

 

そう言って、車内に笑いが起こる。

 

しばらく進んでいると、冒険者ギルドと書かれた看板を見つける。

 

その建物は、3階建ての家屋のようなものだった。

 

そして、車列は入り口の前に止まった。

 

「さて、着いたぞ。くれぐれも挨拶ぐらいしておけ。」

 

車両から出ると、グレイソンが言った。

 

「ようこそいらっしゃいました!」

 

入り口の前で待っていたのは、まだ中学生ぐらいの女の子がカーソン達を迎えていた。

 

「え、えっと、君は確か......」

 

「私はアンヘル・ニャーミラ!ここの冒険者ギルドのギルド長だよ!」

 

こんな子供がギルド長をやっているのかと驚愕したカーソン達だった。

 

「なあ、俺達違うところに来たんじゃないのか?」

 

カーソンが隣の兵士に小声で言う。

 

「黙っとけ。」

 

そう会話していると、ギルドの仲間と思われる人達がぞろぞろと出てきた。

 

「あの.....貴方達が一緒に参加してくれる部隊?」

 

赤髪の女の子がカーソン達に質問をする。

 

「ああそうさ、俺らはアメリカ陸軍。王国から頼まれた。」

 

グレイソンが答える。

 

すると、その人達は、カーソン達が手に持っているHK416に注目する。

 

そのことに気付いたのか、グレイソンが説明をする。

 

「君達が見ていたこれは、銃というものだ。この武器は皮膚でも木材でもなんでも貫く。簡単に言ってしまえば勝るもの無しだ。」

 

そのことを聞くと、ギルドの仲間達は少し警戒した。

 

「それ、私達に向かって攻撃しないよね?」

 

「大丈夫だ、俺らはいちいち民間人を殺したりはしない。安心してくれ。」

 

そう言うと、彼らはホッとした。

 

「それでだ、我々は森林に生息する狂暴なモンスターがいると聞いて、王国から要請があって来たが、そこまで案内してくれないか?」

 

「は...はい。いいですよ。」

 

ギルド長が答えた。

 

「そうか、ありがとう。」

 

「では、私達についてきてください。」

 

「分かった。」

 

「よし、ギルドの仲間についていくぞ。」

 

そう言って、新兵達は、言われるがままに付いていった。

 

しばらく歩くと、森林の入り口があった。

 

「ここが問題の森林ですか。一見おかしい所はないように見えますが、本当に沸くのでしょうかこんなところに。」

 

カーソンが言う。

 

「まあ、沸いたら沸いたでさっさと撃てばいい話だ。」

 

グレイソンがそう言って、冒険者達と駐在アメリカ軍は森の中へと突き進んだ。

 

森へと入って数分経つと、モンスターが彼らの目に見えてきた。

 

「お、あれか」

 

「気を付けてください。あいつは例の狂暴なモンスターで──」

 

しかし、ギルド長の忠告を聞かず、グレイソンは勝手にHK416の照準を、狂暴なモンスターの後頭部に合わせ、引き金を引いた。

 

数発の弾丸がモンスターの後頭部に直撃し、モンスターはぐしゃりと倒れた。

 

冒険者たちは口をぽかんと開けて唖然していた。

 

「え?」

「なんだ、思ってたよりも弱かったな。」

 

グレイソンはすでに死んでいたモンスターに対して軽く呟いた。

 

「我々だけでここにいるモンスターを全滅出来ますね。」

 

「そうだな、このまま全滅させるか。射撃訓練にはよい場所だ。」

 

HK416を構えた新兵達は、再び前進した。

 

冒険者達は、ただ新兵達に付いていくしかなかった。

 

駐在アメリカ軍が、モンスターの処理を開始して数時間後、ついに狂暴なモンスターは全滅した。

 

「はぁ、やっと終わった。」

 

「まさかこんなにいたとは思いもしなかったぜ。」

 

カーソン達は疲れていた。

 

そう言っていると、ギルド長は駐在アメリカ軍を見ていた。

 

「どうした?」

 

カーソンが見ているのに気付く。

 

「あ、いや...アメリカの武器はすごいなぁと思って。」

 

「ああ、それは分かる。小さい頃に見たときはものすごく怖そうだって思ってからなぁ。」

 

「おい、そろそろ行くぞ。」

 

グレイソンがカーソンに呟く。

 

この後、駐在アメリカ軍は、王都へと戻っていった。

 

 


 

 

12月13日午後10時頃

ーホルムストール教国とオーラウト王国の国境付近ー

 

その夜、国境付近では、ホルムストール教国のオーラウト王国侵攻のために、部隊が配備されていた。

 

主な部隊は、ベイト・カーメル聖騎士団や、近衛騎兵隊、オーラウト人戦士隊*1、魔術師師団x5、ワイバーン150騎、そしてソヌヴァ連邦から借りている、戦車およそ15両が配備していた。

 

【挿絵表示】

戦車のイメージ

 

「愚かなオーラウト共め。攻撃しておけば戦力を少しでも削ることができたものを。」

 

そう言っているのは、今作戦の全部隊指導者となった、ノーノ・オーヴェストだ。

 

「オーヴェスト殿、たった今、作戦予定地に全戦力を集結させました。攻撃のご指示を。」

 

ベイト・カーメル騎士団の団長が報告しに来た。

 

「ああそうか、伝達ご苦労。」

 

そう言うと、団長は元へと戻った。

 

そして、ノーノ・オーヴェストは、深く深呼吸した後、声をあららげた。

 

「総員!攻撃開始ぃぃぃ!!」

 

その合図と同時に、ホルムストール軍は進軍を開始した。

 

こうして、オーラウト王国に対する直接進攻が始まった。

*1
ホルムストール在住のオーラウト人を対象にした、教皇に忠義を誓った者だけ入隊出来る部隊

次の章に関するアンケートです。異世界の国との展開はどうしますか?因みに日本は異世界の国々と国交を結んでいる条件です

  • 異世界の国が突如日本に宣戦布告する
  • 異世界の国が日本に反乱軍の鎮圧を要求する
  • 異世界の国に対し日本が宣戦布告する
  • その他(日本じゃないどっかの国が舞台)

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