世界は戦争が多い異世界へと転移したようです 作:スターリニウム
ーホルムストール教国 聖地 ベイト・カーメルー
ここは、ホルムストール教国にとって聖地でもあり、主要都市でもあるベイト・カーメル。
この都市は、古代から、世界の王[ジュゴボ]がこの地に巨大な穴を穿ち、そこから神々の力で生み出した燃える石や、光る石等の財宝を蓄えていると伝えられており、その石の採掘地でもある。
中心部にある宮殿前広場では、オーラウト王国の王都の奇襲成功を祝う式典が開かれていた。
そこには、教皇のフロイント2世も参加していた。
辺りは、騎馬兵や、騎士団などが行進し、そして無数のワイバーンが辺りを飛んでいるという、軍事パレードのような雰囲気だった。
「続いては、我が軍最新鋭の装備を揃えた、近衛騎兵隊の入場です!」
そう大声で伝えると、携帯式の魔導砲を装備した近衛騎兵隊が現れ、観衆は拍手喝采を送った。
しかし、この近衛騎兵隊は、教皇を護衛するために創られた部隊ではない。
近衛騎兵隊と謳ってはいるものの、実際は戦時中に戦力として送り込まれるれっきとした部隊なのだ。
各方面の軍が行進を終えると、フロイント2世の演説が始まろうとしていた。
すると、教皇の護衛が広場全体に渡るように大声で言い放った。
「教皇様の、御登場でございます!」
フロイント2世が表舞台に姿を表すと、観衆はすぐに静かになった。
そして、教皇が演説を始める。
「神聖なるホルムストール族に生まれた、諸君、昨日、敵国の主要都市の奇襲成功に加え、科学文明のソヌヴァ連邦と軍事同盟を正式に結んだ。これは誠に喜ばしいことだ、そして、我々ホルムストール族を貶してきたあの2か国どもに、今まさに天罰が下るときだ。」
「我々は、他の種族とは違い、世界の王の子孫だ。そして、ありとあらゆる面で優秀だ。そして、その優秀を活かすときが、まさにこの時だ。」
すると、黙って聞いていた観衆が、興奮しだした。
「今我々がすべきことは何か、それはわが民族を存続させるために、自らが全力を尽くすことだ!」
そう話すと、観衆は教皇に向かって歓声を上げた。
「教皇様万歳!教皇様万歳!教皇様万歳!」
という声が、雷鳴のように響き渡った。
2035年12月13日午前8時頃
ーオーラウト王国 ゼフテート郊外にてー
その頃、復興作業で忙しいゼフテートとは裏腹に、郊外の森林のすぐ脇の道路に、駐在アメリカ軍の車列が行進していた。
理由は、ここの近隣住民からモンスターが出没するという苦情が王国に伝えられていたため、王国が駐在アメリカ軍に処理を要請したためである。
この車列の中のハンヴィーに乗っていた、新兵のカーソンは、新兵の仲間たちと会話していた。
会話していると、突然指揮官が割り込んだ。
彼の名はグレイソン、新兵の部隊を指揮しているベテランだ。
「よしお前ら、早速初仕事が入った。今回我々は、近隣住民から苦情が出ている森に向かう。どうやらその森には狂暴なモンスターが出るそうだ、くれぐれも警戒は怠るな。それと、今回は森に近いティシュク村という所にある、ギルドという冒険者の集まりにも協力している。どのみち、この任務は我が軍にとって在庫処分にもなりえるだろう。」
そう説明していると、指揮官の無線にノイズがかかった。
指揮官はすぐに手に取った。
「こちら指揮官、何の用だ。」
「こちら最前列。もうすぐ指定された場所に到着します。搭乗している部隊に指示を。」
「了解した。」
会話が終わると、無線を近くに置いた。
「いいか、もうすぐで目的地に到着する。今のうちに武器の準備をしておけ。」
そう言ったので、新兵達はHK416の弾倉を挿入する。
しばらくすると、村とおぼしき建物の郡が見えてきた。
車列が村に入ると、住民たちは怪物を見るような目でこちらを見ていた。
「そういえば、俺が初めて軍の車両を見たときの事を思い出すな。」
カーソンが話をする
「で、初めて見た感想は?」
「正直あれに踏まれたらめちゃくちゃ痛そうだなって思ってたな。」
そう言って、車内に笑いが起こる。
しばらく進んでいると、冒険者ギルドと書かれた看板を見つける。
その建物は、3階建ての家屋のようなものだった。
そして、車列は入り口の前に止まった。
「さて、着いたぞ。くれぐれも挨拶ぐらいしておけ。」
車両から出ると、グレイソンが言った。
「ようこそいらっしゃいました!」
入り口の前で待っていたのは、まだ中学生ぐらいの女の子がカーソン達を迎えていた。
「え、えっと、君は確か......」
「私はアンヘル・ニャーミラ!ここの冒険者ギルドのギルド長だよ!」
こんな子供がギルド長をやっているのかと驚愕したカーソン達だった。
「なあ、俺達違うところに来たんじゃないのか?」
カーソンが隣の兵士に小声で言う。
「黙っとけ。」
そう会話していると、ギルドの仲間と思われる人達がぞろぞろと出てきた。
「あの.....貴方達が一緒に参加してくれる部隊?」
赤髪の女の子がカーソン達に質問をする。
「ああそうさ、俺らはアメリカ陸軍。王国から頼まれた。」
グレイソンが答える。
すると、その人達は、カーソン達が手に持っているHK416に注目する。
そのことに気付いたのか、グレイソンが説明をする。
「君達が見ていたこれは、銃というものだ。この武器は皮膚でも木材でもなんでも貫く。簡単に言ってしまえば勝るもの無しだ。」
そのことを聞くと、ギルドの仲間達は少し警戒した。
「それ、私達に向かって攻撃しないよね?」
「大丈夫だ、俺らはいちいち民間人を殺したりはしない。安心してくれ。」
そう言うと、彼らはホッとした。
「それでだ、我々は森林に生息する狂暴なモンスターがいると聞いて、王国から要請があって来たが、そこまで案内してくれないか?」
「は...はい。いいですよ。」
ギルド長が答えた。
「そうか、ありがとう。」
「では、私達についてきてください。」
「分かった。」
「よし、ギルドの仲間についていくぞ。」
そう言って、新兵達は、言われるがままに付いていった。
しばらく歩くと、森林の入り口があった。
「ここが問題の森林ですか。一見おかしい所はないように見えますが、本当に沸くのでしょうかこんなところに。」
カーソンが言う。
「まあ、沸いたら沸いたでさっさと撃てばいい話だ。」
グレイソンがそう言って、冒険者達と駐在アメリカ軍は森の中へと突き進んだ。
森へと入って数分経つと、モンスターが彼らの目に見えてきた。
「お、あれか」
「気を付けてください。あいつは例の狂暴なモンスターで──」
しかし、ギルド長の忠告を聞かず、グレイソンは勝手にHK416の照準を、狂暴なモンスターの後頭部に合わせ、引き金を引いた。
数発の弾丸がモンスターの後頭部に直撃し、モンスターはぐしゃりと倒れた。
冒険者たちは口をぽかんと開けて唖然していた。
「え?」
「なんだ、思ってたよりも弱かったな。」
グレイソンはすでに死んでいたモンスターに対して軽く呟いた。
「我々だけでここにいるモンスターを全滅出来ますね。」
「そうだな、このまま全滅させるか。射撃訓練にはよい場所だ。」
HK416を構えた新兵達は、再び前進した。
冒険者達は、ただ新兵達に付いていくしかなかった。
駐在アメリカ軍が、モンスターの処理を開始して数時間後、ついに狂暴なモンスターは全滅した。
「はぁ、やっと終わった。」
「まさかこんなにいたとは思いもしなかったぜ。」
カーソン達は疲れていた。
そう言っていると、ギルド長は駐在アメリカ軍を見ていた。
「どうした?」
カーソンが見ているのに気付く。
「あ、いや...アメリカの武器はすごいなぁと思って。」
「ああ、それは分かる。小さい頃に見たときはものすごく怖そうだって思ってからなぁ。」
「おい、そろそろ行くぞ。」
グレイソンがカーソンに呟く。
この後、駐在アメリカ軍は、王都へと戻っていった。
12月13日午後10時頃
ーホルムストール教国とオーラウト王国の国境付近ー
その夜、国境付近では、ホルムストール教国のオーラウト王国侵攻のために、部隊が配備されていた。
主な部隊は、ベイト・カーメル聖騎士団や、近衛騎兵隊、オーラウト人戦士隊*1、魔術師師団x5、ワイバーン150騎、そしてソヌヴァ連邦から借りている、戦車およそ15両が配備していた。
戦車のイメージ
「愚かなオーラウト共め。攻撃しておけば戦力を少しでも削ることができたものを。」
そう言っているのは、今作戦の全部隊指導者となった、ノーノ・オーヴェストだ。
「オーヴェスト殿、たった今、作戦予定地に全戦力を集結させました。攻撃のご指示を。」
ベイト・カーメル騎士団の団長が報告しに来た。
「ああそうか、伝達ご苦労。」
そう言うと、団長は元へと戻った。
そして、ノーノ・オーヴェストは、深く深呼吸した後、声をあららげた。
「総員!攻撃開始ぃぃぃ!!」
その合図と同時に、ホルムストール軍は進軍を開始した。
こうして、オーラウト王国に対する直接進攻が始まった。
次の章に関するアンケートです。異世界の国との展開はどうしますか?因みに日本は異世界の国々と国交を結んでいる条件です
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異世界の国が突如日本に宣戦布告する
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異世界の国が日本に反乱軍の鎮圧を要求する
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異世界の国に対し日本が宣戦布告する
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その他(日本じゃないどっかの国が舞台)